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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

Escaping the Everyday Routine to Restore My Spirits

遠藤 友子 『VOCE』編集長

自分の人生が、こんなにも騒々しくなるとは思っていなかった───。私の仕事は美容雑誌「VOCE」の編集長だ。そして、まだ幼い子が2人いる。早朝にやっこら起きてから一日、「自分一人の時間」というものがトイレ以外に、ほとんどない。きっと私と同世代の方たちは、多かれ少なかれ頼られる存在になってしまって、自分のことは後回しになりがちではないだろうか。目減りしていく体力気力、そして少しずつ輪郭をゆるめていく容姿に片目をつぶってみないようにしているかもしれない。そんな毎日をパンクせずに過ごすためにはちょっと工夫が必要だ。
だから私は、月に一度、ルーティンな日々から脱走してみる。可能だったら携帯をオフにして、誰にも行先は告げずに、ひたすら自分のご機嫌をとる。好きでやっている仕事も、家庭での役割も愛し続けるためのひと工夫。

今日の逃亡先は落ち着きある大人空間、GINZA SIXだ。

かれこれ40年以上の付き合いになるのだから、自分のご機嫌ポイントは心得ている。真っ先に向かったのは、昨年12月末にオープンしたばかりというB2Fの「ホテルショコラ」(ネーミングからして魅かれる)。

なにせ、香水よりもカカオの香りで深呼吸するタイプで、チョコレートは常備。ブラックコーヒーとの組み合わせは最高だと思っているし、温かなチョコレートドリンクほど気持ちを和ませてくれるものはない。そんな私にとって、ここはまさにワンダーランド! お店の方によれば「ホテルショコラはイギリスのブランドですが、彼らは毎日何度もお茶をする。そのたびに甘いチョコレートを口にするので、糖分を摂りすぎないよう、砂糖の量をぐっとおさえているのが特長です」とのこと。なるほど、成分欄の冒頭には、砂糖ではなくカカオソリッドとある。

ホテルショコラを代表するというバトン型チョコレートをいただいてみた。出てきた感想は「今まで食べてきたチョコレートより深い!」。香りもコクも奥行きがあって上品、でも満足な甘さもある。撮影の手土産にも喜ばれそう。

そして、いまも本気で買おうと思っているのがこちら、「ベルべタイザー」なるチョコレートドリンクメーカー(¥10,000 ※以下全て税込価格)。イギリスの家電ブランド「デュアリット」(スタイリッシュなトースターが有名ですね)がホテルショコラのために開発した「完璧なチョコレートドリンク」を実現する専用機器だという。

店頭で販売しているミントフレーバーのホットチョコレート(¥500)を片手に、頭がぐるぐる。「このホットチョコレートを2分半で作れちゃうって」「洗うのも簡単らしいよ」「でも、あのキッチンのどこに置くのよ」。個包装のサシェはカカオのパーセンテージのグラデーションとミントやジンジャーなどのフレーバーがあってそそられる。この時点で、「自分ご機嫌指数」は早くもマックスに。

ちなみにホテルショコラのカカオは不当な就労のもとに生産されたものではない。それだけではなく、通常なら廃棄されるカカオシェルやカカオポットを使ってコスメまで作り出している。パッケージも堆肥化・リユース可能な資材に変えていっているという。その姿勢も含めて、ホテルショコラは私のステディブランドとなった。

日々の小さなストレスとなるのが、その時の気分とカラダにフィットしていない下着を身に着けていること。女性にとって下着は、心にも作用するとても大切なものだ。4Fまで足をのばすと、サンクチュアリのようなエントランスで迎えてくれる「WACOAL MAISON(ワコールメゾン)」にたどり着く。

上質なランジェリーを選びに来た、といいたいところだが、一番のお目当てはワコール独自の3Dボディスキャンで「自分のカラダと向き合う」こと。ここでは、デジタル計測によって自分のカラダを360度3Dで計測してくれる「3Dスマート&トライ」という無料サービスを受けられる。紙の下着に着替え、広めの証明写真機のようなボックスの中でバーを握ること5秒間。画面には見たことのない3Dでアウトラインを映し出された私がいた。現実。いかなる時も、現実から目を背けては何も解決しないのだ。

AIに丸裸にされた後は、ヒトの出番。スタッフの方がタブレットに映し出された輪切りのボディ(厚みや幅がわかる)などでプロポーションの傾向を解説、18箇所の細かい計測データをもとに、今の私に最適な下着を提案してもらえる。自己判断で、適正サイズより小さめのブラを選んでいる人が多いのだとか。計測データと生活スタイルや好みをあわせて示された下着には、自分では選ばないゴージャスなものもあって、なんだか恐縮してしまう。「ご自分では派手に思えても、身に着けていただくと、肌がきれいに見えたり意外と似合っていたりするものなんです」。店内をパトロールして目に留まったのは、リチャード・アヴェドンの写真集と上に置かれた繊細なレース。幾重にも重ねられ、金糸を織り込んだおとぎ話のようなレースに、遠く置き忘れていた女ゴコロが呼び戻される。やはり、ランジェリーの力は偉大!

計測、カウンセリング後には、自分のカラダの現実を数字で記録した子細なデータシートをプレゼントしてくれる。これがあれば病院のカルテのように履歴が残るので、以後計測せずともピッタリのランジェリーを選んでもらえる。渡されたクリアファイルは、花の模様で上手に数字が見えないよう工夫されていた。細部の細部まで女子でいさせてくれる空間なのだ。

最後に、ライブラリー風につくられた男性用コーナーもあるので、パートナーと選びに来てもお互いリラックスして過ごせる、ということも記しておこう。

チョコレートとレースで高揚した気持ちを引きずりながら訪れたのは、日々愛用している化粧品ブランド「コスメデコルテ」の旗艦店であるB1Fの「Maison DECORTÉ(メゾンデコルテ)」。

美容誌に携わっていると、コスメデコルテというブランドの実力とホスピタリティがよくわかる。一流メーカーならではの長期にわたる研究が生み出す最先端技術を、日常的に「無理なく使い続けられる形」でユーザーに届けるという、一見相反する使命を同時にやってのける。そして、コスメデコルテが支持される理由は、「使い心地が気持ちいいから、香りがすきだから」という理由で、使い続けてしまう商品構成にある(実際、私は今まさにシリーズでコスメデコルテを使っている)。続けられるから、当然効果も出やすいというわけ。ここでは贅沢にも、コスメデコルテの最高峰ライン「AQミリオリティ」のアイテムをつかったフェイシャルトリートメント(60分・¥22,000〜)が受けられる。

まずは、インテリアデザインの巨匠マルセル・ワンダースが手がけた空間でカウンセリング。
シミ、シワ、たるみ、あとクマも! 年相応に肌悩みが多すぎて「全部盛りでお願いします!」という無茶ぶりオーダーにも笑顔で「はい、おまかせください」。

3つあるトリートメントルームはそれぞれに異なるコンセプトでつくられている。専用にアレンジされた空間、香り、音楽で、トリートメントの効果を最大化するという。この日、私が通されたのは水面を連想させる「Calm」という部屋。この暗さ、温度、光の揺らめき。誰にも追われないシェルターにかくまわれたような時間。

スチーマーで肌をほぐしながら丁寧にクレンジングしたあと、天然ダイヤモンドをセットした美容機器で吸引しながら角質ケアしてもらうと、角質と蓄積汚れがグレーの輪っかになって吸い取られていた。セルフケアでは行き届かない角質ケアが、やっぱり必要だと実感。そこからのハンドケアで驚いたのは、施術してくださる手の温かさ。顔まで温泉につかっているようで、みるみる巡りがよくなっていく。日々、自分の手でスキンケアするのも大切な時間だけれど、やはり「人に手をかけてもらう」ことの贅沢さは格別だ。

今回選んだのは90分のトリートメント(¥33,000・初回の方は限定で¥24,750)。施術を終えて、私はファンデーションを塗らなかった。正しく光を反射できるようになった肌はツヤと血色がよみがえり、そのままで出かけたくなるような仕上がりだったのだ。あぁ、私の肌はまだこんなにイキイキしている。自然と背筋が伸び、口角もあがる。自分の納得いく肌であること。肌の可能性を信じられること。それは、意外なほど自分のエネルギーになるものだ。やっぱり美容っていいなぁ。こうして巡り巡って、結局脳ミソは仕事に戻っていく。

でも、これでいい、と思う。くたびれて、ちょっと逃げ出して、またくたびれにいく。そんなメビウスの輪のような日々が、意外と気に入っているから。

Text: Tomoko Endo Photos: Michika Mochizuki Edit: Yuka Okada(81)

GINZA SIX EDITORS Vol.106

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遠藤 友子

1998年講談社に入社。FRIDAY、ViVi、GLAMOROUSを経て、2018年よりVOCE副編集長、2020年より編集長。 @vocemagazine
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

ホテルショコラ

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WACOAL MAISON

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Maison DECORTÉ

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2021.03.08 UP

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