GINZA SIX EDITORS
ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。
新しい“何か”が引力をもって待っている Something New Awaits to Entice You
安齋 喜美子
日々仕事で忙しくしている身にとって、”オトナ女子会”はなによりのご褒美。久しぶりに会う友人への”プチギフト”を探しに訪れるのが「GINZA SIX」だ。よく利用するのはB2Fのフードフロアで、「平翠軒」「ベッジュマン&バートン」「千年こうじや」は特にお気に入り。もちろん、自分のために“「エノテカ」でワイン”は必須。
先日はちょっと時間があったので、館内を散策。気になったのが6Fにある「EMIT FISHBAR(エミット フィッシュバー)」だった。
ここの魅力はなんといっても新鮮な生牡蠣。産地別に食べ比べができて楽しいのはもちろん、安全管理も徹底している。富山県の自社センターで特許技術を用いて海洋深層水で牡蠣を浄化しており、牡蠣は全国から、その季節にいちばんおいしい産地を厳選しているという。
この日の「本日の生牡蠣」(6ピース盛り合わせ 2,880円 ※以下全て税抜価格)は「兵庫県相生産」「兵庫県室津産」「広島県情島産情の雫」の3産地の牡蠣を食べ比べ。実は兵庫県の牡蠣は初体験。みずみずしくてクリーミー。
牡蠣にあたるのが怖くて、海外の取材などではいつも生牡蠣を我慢していた私。ならば、と、この日は思う存分、生牡蠣を爆食。フレッシュでミルキーな味わいが口中に広がる。シャンパーニュと一緒の生牡蠣は本当に”パラダイス”!
せっかくだからと「オイスター13ピースセット」(3,980円)もオーダー。生ハムとマンゴーなど、ちょっと変わった牡蠣の食べ方が新しい。ほかにも、牡蠣フライや香草焼き、素焼など、牡蠣の料理法のバリエーションが豊か。実はここには、ニュージーランドでよく見られる冷たいものから温かいものまで楽しめる一皿もあって、かの地を旅したことがある人なら、そんなプレゼンテーションにもきっと心躍らされるはず。
締めは「牡蠣とカブのペペロンチーノ」(1,380円)で。牡蠣のうまみがパスタとカブにしみ込んで美味。牡蠣はもちろんプリプリ。ランチは、これ一皿だけでも十分満足できるはず。「今度、さらっとお昼に寄ってみよう」と決意。ランチタイムやディナーなど、女性のひとり客も多いそう。
感動したのがワインのラインナップ。種類はさほど多くはないが、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランなど、牡蠣にぴったりのものがセレクトされている。価格も良心的で、「ペリエ・ジュエ グラン・ブリュット」(9,900円)も驚くほどリーズナブル。これはもう、シャンパーニュ&牡蠣好きの友人と近々再訪しなくては!
その後、館内散策の途中、引力を感じるように引き寄せられたのが2Fの「quarant'otto(クアラントット)」。可愛らしいディスプレイに「スイーツショップ?」と思ったら、ジュエリーショップだった。最初に心惹かれたのは壁に飾られた絵の数々。可愛らしくて、それでいて幻想的で、どこか別の次元に誘われるような感覚。描いたのは、ジュエリーデザイナーの伏見愛佳さん。
ジュエリーにはまったく無縁だった私を完全に魅了したのが、その世界観。デザインがただ美しいだけでなく、ジュエリーの向こうに“物語”が感じられるのだ。たとえば、中世の教会の回廊をモチーフにした「ウナスト―リア(ある物語)」(200,000円)という名前の指輪。回廊で男女が出会う姿が、とてもロマンティック。また、ラテン語をモチーフにした指輪「エデ・ビベ・ルーデ」は、「食べろ、飲め、遊べ。死後に快楽はなし」の意。フォークと真珠のデザインは「アレトレ(3時)」で、おやつの時間を意味するという。「真珠がおやつ」という発想はエスプリが効いていて楽しいし、デザインも可愛い。
この日、店頭に立っていた伏見さんに「今の気分は?」と聞かれて、「フリーランスなので、精神的にもっと“強さ”をもちたい」という私に、伏見さんがペンダントを選んでくださった。ジュエリーショップで試着なんて、今までほとんどなかったのに、次々につけてみたくなるデザインがいっぱい。「ジュエリーに呼ばれる」という経験は初めてのこと。ジュエリーは、ただのアクセサリーではなくて、自分の中のなにかと呼応するものなのだと実感する。
こちらがデザイナーの伏見愛佳さん。土曜日はなるべくお店に出て、お客様のジュエリー選びを手伝うという。「私のジュエリーを好きでいてくださるお客様とは、いろいろなことをお話ししたくて」と微笑む。本店はフィレンツェ。お会いできてよかった!
ハイヒールのペンダントヘッドは一見“シンデレラの靴”のように見える。でも、伏見さんによれば、これは自ら幸運を掴むために一歩踏み出す“カルメンの靴”、その名も「カルメン」(120,000円 ※チェーン別売)。仕事をする女性がお守りにするために購入することもあるそう。時計の文字が少しゆがんだペンダントへッドは「イル・テンポ(時計)」(26,000円 ※チェーン別売)。「今にも踊り出しそうな時間をつかまえて!」の意。フィーリングに合うジュエリーはなかなかないので、これは“出会い”なのだと思う。まずは仕事を頑張って、ここを訪れよう。
最後は、B2Fのフードフロアへ。ここはいつも新しい発見があるので、スルーできない。この日は「ふふふあん by 半兵衛麸」へ。京都の老舗のお麸専門店「半兵衛麸」が提案する新しいスタイルのお麸のお店で、京都の精進料理に欠かせないお麸をモダンにアレンジしたお菓子などを扱っている。お麩は美肌効果があるとされ、グルテンアレルギーがなければおすすめ。
「スープ de お麸」(各497円)。お湯を注いで焼き麸を入れるだけで、おいしいスープの出来上がり。休日の朝に飲んだら、いつもと気分が違ってきそうな予感。誰にでも喜ばれそうなので、”プチギフト”に決定。焼き麸の味はプレーン、チーズ、バジル、ブラックペッパーなど、バラエティ豊か。私はブラックペッパーがお気に入りに。
手にしているのは「梢」(294円)というお麸のお菓子。ココア、抹茶、紅茶と3つの味が楽しめる。ココアはサクッと軽い食感で、あとをひくおいしさ。これも3種の味を揃えてプレゼントにしたい。
京都の「半兵衛麸」へは、プライベートや取材で何度か訪れたことがある。元禄2年創業の老舗で、330年に渡り、時代に即した様々なお麸の食べ方を伝承してきた。「伝統を守り、真っ当なものをつくる」という意識が高い老舗だが、伝統に甘んずることなく、現代のライフスタイルに合う商品を次々と開発しているところが素晴らしい。「お麸がこんなに可愛いお菓子になるなんて!」と、またまた発見。個人的に好きなのがパルミジャーノ・レッジャーノとブラックペッパーを練りこんだスティック状のクラッカー「枝」(1,080円)。シャンパーニュやワインにぴったり!
もう何度も訪れているはずなのに、銀座に来るとついつい足が向いてしまうのがGINZA SIX。いつも新しい何かに出合えるという期待感と、ここなら「“ちょっと洒落たもの”が必ず見つかる」という安心感からだろうか。
Text:Kimiko Anzai Photos:Tomoko Shimabukuro Edit:Yuka Okada
GINZA SIX EDITORS Vol.76
安齋 喜美子
ワイン&フード ジャーナリスト。出版社勤務を経て独立。ライフスタイル誌やワイン専門誌で料理やワイン、旅などの記事を手がける。国内外のワイナリーや醸造家取材も多数。著書に『葡萄酒物語』(小学館)。『エクラ』(集英社)で「飲むんだったらイケてるワイン」連載中。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエの称号も持つ。Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中