GINZA SIX EDITORS
ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。
欲張りな大人世代をも受け止めるGINZA SIXの包容力 The all-encompassing nature of GINZA SIX from the perspective of a member of the greedy adult generation
古泉 洋子
まもなく平成も終わろうとしているのに、まだまだ欲にまみれている不埒な50女です。何においても選択の基準はおもしろいと思えるかどうか、自由を謳歌し、本能のままに生きてしまったがゆえに、常識的な大人の女像の枠には収まりきれず…。
ファッションエディターとして随分長らく仕事をしておりますが、主戦場でもコンサバとモード、エレガントとカジュアル、ラグジュアリーとリアルなどなど、両極の間を未だ揺れ動いております。昨今では元来の食いしん坊ぶりに拍車がかかり、お酒を軸に!さまざまな美味しいものを求めて、世界を彷徨うという欲の深まりようです。
しかしながら、私のような欲張りでユニークな大人は一体どこで買い物をすればいいのか。正直、困っております。百貨店は正統派の成熟世代、セレクトショップはいい女目指しなおしゃれママ、駅ビルはモテを意識したアラサー女子……東京広しと言えど、本当にぴったりくる店がないッ!!(某ルーペCM並みのキレ具合で。笑) かねがね思っておりました、GINZA SIXはそんなわがままな個性派をも受け止めてくれる空間なのではないかと。その包容力に身を委ねてみることにいたしましょう。
真っ先に向かったのは、私的お気に入り「N˚21(ヌメロ ヴェントゥーノ)」。アレッサンドロ・デラクアが手がけるミラノのブランドです。新世代のイタリアモードを牽引し、大人なのにイノセント、エレガントなのにチアフル、両極を欲する私の好みを満足させてくれるのです。
この日も2年越しで愛用する「N˚21」のチェックのコートで。お店に入るとまず目に留まったのが、同じボンディング素材のショートコート(145,000円 ※以下、全て税抜価格)。この素材は温かいのに、なにせ軽い。私たち世代は素材が重かったり、脱ぎ着しにくかったり、もうそういう着心地が悪いのは無理なんです! 春にはまた注目のフラワープリントで派手めな配色ですが、ベースが黒なので黒髪のアジア人にもトライしやすそう。
春までのトランジショナル コレクションをあれこれチェックしていると、大好物を発見! 子供の頃はソフィア・ローレン、大人になってからはモニカ・ヴィッティ、一貫してイタリア女優推しとお伝えすればおわかりいただけるでしょうか。60~70年代にそんな女優たちが着ていそうなブラウス(64,000円)です。ところは地中海沿いのヴィラ、でも決してお嬢さんっぽくではなく、けだるくミステリアスな微笑みで…。ひたすら妄想が膨らみます。東京で着るならイエローと相性のいいカーキのカーゴパンツ、足元はパイソンで強さを加えてカジュアルダウンするのがおすすめ。
あ、この黒いドレス(129,000円)も素敵! 「N˚21」のアイコンカラー、ピンクベージュの襟に愛らしいビジューのエンブロイダリーが煌めいています。ノスタルジーを感じさせる手仕事、もう、見ているだけでキュンキュンしますね。
続いて立ち寄ったのは、世界的な建築家によるコンテンポラリーな内装の「BALLY(バリー)」。1851年にスイスのシェーネンヴェルトでリボン製造からスタートした、170年近くの歴史を持つ老舗ブランドです。
靴&バッグブランドのイメージが強いので、リボン?? と思われた方も多いかもしれません。でも「バリー」と言われてすぐ思い出すのは、あの赤と白の“バリー ストライプ”。よくよく考えるとスイス国旗の配色と……そう、リボンですね。さまざまなアイテムに使われていますが、こんな風にさりげなく配されたスリッパシューズ(78,000円)もあります。フィッティングしてみると、ラグジュアリーなのにリラックスできる履き心地。ヘビロテ間違いなしです。
で、なぜ「バリー」が靴作りを始めたかというと、創業者のカール・フランツ・バリーがパリ出張で街を行く女性のおしゃれな靴に魅了され、妻へのギフトにとスイスに持ち帰ったことがきっかけなんです。しかも妻のファッションに対する美意識にインパイアされ、多くの作品が生まれたのだとか。愛を感じるエピソードですね。春の新作バッグ「CECYLE(セシル)」(240,000円)は、その愛妻の名を冠したコレクション。90年代のアーカイブから復刻したダイヤモンドキルトがさりげない高級感を醸し出しています。キーホールのクラスプ部分はマグネットになっていて、ストレスなく物の出し入れが可能。気が利いてます。
そういえば春財布=張る財布と言われ、春先は財布の買い替えどきでもあります。さほど運気や方位などには神経質にはならないたちですが、欲深さゆえでしょうか、財布だけは別。お金が貯まるのは何色だとか、どの日に使い始めるのがいいとか、しっかりインプット済みです。「バリー」でもまさに金運がアップしそうな、落ち着いたイエローの長財布(56,000円)をチェックしました。
GINZA SIXは本当に広いのでぶら歩きの流れで、気軽に立ち寄れるカフェも押さえておきたいところ。ということで、最後は以前から気になっていた「PHILIPPE CONTICINI(フィリップ・コンティチーニ)」へ。フィリップ・コンティチーニはフランス・スイーツ界の巨匠です。
パティシエの高頭さんが、いちごの美味しい時季限定のパフェ“ヴェリーヌパフェ フレジェ”(1,800円)を目の前で作ってくださいました。いちご、カスタード入りクリーム、いちごのコンポート、いちごのソルベ…手際よく何層にも重ねられていきます。「これが素材を縦にレイヤードする有名なヴェリーヌ技法か、クリームは使うたびに冷蔵庫にしまうのね」と繊細な仕事振りを思わずマジマジと凝視してしまいました。「ひどく甘いのでは?」と躊躇しましたが、クリームがとても滑らかでエアリー、いちごのほどよい酸味とともに、あたかも飲み物のごとく!胃袋へ。
お話を伺えば、なんでも最近はパフェを求めて男性も多く来店するのだとか。おひとりさまも気兼ねなく立ち寄れるカウンターというのもポイントです。ちなみに私はといえば、スイーツの店であえての塩味系チョイス。意外にアタリが多いんです、パーラーのサンドウィッチとか!
“トマトとモッツァレーラのゴーフル”(2,000円)は、軽やかに焼き上げたそば茶入りのゴーフルがベース。わかりやすく言うとワッフルです。そこにトマトとモッツァレーラをのせ、さらにエメンタール、グリュイエール、コンテと3種のチーズをとろけさせています。もちろん手にはシャンパーニュ! “モエ・エ・シャンドン ブリュット アンペリアル”(200ml 2,400円)です。夕方にアペリティーヴォ感覚で頂けば、贅沢気分を味わえそうです。
GINZA SIX、恐るべし。私のように欲深くこだわりも強い、世のマーケティングから置き去りにされそうな、ニッチな個性派をも包み込んでくれる貴重な空間でした!
Text:Hiroko Koizumi Photos:Hal Kuzuya Edit:Yuka Okada
GINZA SIX EDITORS Vol.72
古泉 洋子
ファッションエディター。モード誌から女性誌まで幅広いターゲットの雑誌を中心に活躍。『Numéro TOKYO』ではファッション・エディトリアル・ディレクターも務める。モードをリアルに落とし込むことを得意とし、著書に『この服でもう一度輝く』、『スタイルのある女は、脱・無難! 87 Fashion Tips』(ともに講談社)。GINGERweb(幻冬舎)では、愛のお叱りメンター ジョバンナ洋子ペンネームで生き方とワインを絡めたコラムも連載中(https://gingerweb.jp)。またECサイトなどのファッションディレクションも手掛けている。Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中