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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

Falling in Love with London Once Again in the Middle of Ginza

岸 由利子

可愛いものよりカッコいいものが好き。華美なものよりシンプルな中にさらりと光るこだわりのディテールに心は踊る。ワンピースよりスーツ、カットソーよりシャツ、スカートよりは断然パンツ。そんな私が惹かれるのは、メンズテイストの洋服、もしくはどこか中性的な雰囲気のある洋服です。

「女性らしいアイテムとか、もっと冒険すればいいのに」と周りの人に言われることもありますが、これがいかんせん似合わないのです。特に膝丈のスカートは私の鬼門アイテム。自分の苦手意識も手伝っているところはあるけれど、ちぐはぐな印象になってしまうんです。似合わない理由はきっと、ロングヘアーは似合うけど、ショートカットはなぜかしっくりこないというのと似ていて、その人が本質的に持っている姿形や雰囲気との相性が関係しているのかもしれません。

ところで、冬も近いし、そろそろ新しいアウターが欲しい。これぞという一着を探し求めて、メンズ&ウィメンズを展開する複合店が多くそろうGINZA SIXをぶら歩きしてきました。

3Fの「NEIL BARRETT(ニール・バレット)」は、国内初のメンズ&ウィメンズの複合店。ブラックのガラスウォールが美しいタイムレスな空間にずらりと並んだコレクションに、早速胸は高鳴ります。ブランドアイコンの「サンダーボルト(稲妻)」があしらわれたアイテムも素敵ですが、私のお目当ては、ニール・バレットならでは、イギリス仕込みのテーラリングを駆使した繊細な仕立てのジャケット。実は…というほどのビッグニュースでもないのですが、デザイナーのニール・バレットさんは、現在の文筆業に至る前に洋服のデザイナーを生業としていた私が学生時代を過ごしたロンドンのセントラル・セントマーチンズ美術大学の大先輩。在学中から敬愛するデザイナーの一人です。

ショップに行くのは久しぶりで、メンズはもちろんのこと、ウィメンズのカッコいいジャケットがたくさんあって、初っぱなからテンションは上がりっぱなし。まだ袖も通していないのに、ピンと来る一着がハンガーにかかっているのを見るだけで、幸せな気持ちにさせてくれる洋服の力って、やっぱり偉大です。

このウールジャケット(125,000円 ※以下全て税抜価格)。テーラーで誂えたかのように、体にぴったりと沿うパーフェクトなフィット感でありながら、しなやかで快適な着心地を叶えているところに惹かれました。オーセンティックなテーラードの構築とスポーティーな感覚が絶妙なバランスで溶け合った一着は、フォーマルからカジュアルまでさまざまなシーンまで活躍してくれそうです。

メンズの牛革リュック(129,000円)は、サラッと背負える軽快で洗練されたデザインで、PCやiPad、資料やノートなどの仕事道具を持ち運ぶにはちょうど良いサイズ感。使うごとに革が自分になじんできたら、ますます離せなくなること必至。長く愛用したいアイテムです。

シャツやジャケットのシルエットや素材感が気に入って、買ってはみたものの、もう一つ何かアクセントが欲しくて、自分でスタッズ加工を施すことがよくあります。作り手の方には失礼を承知でトンカチしている私ですが、このレザーシューズ(102,000円)に出会い、DIYスピリットは一瞬にして、時の彼方に飛んでいきました。純粋に素敵。

しれっと私物化しちゃっていますが、このバイカーズジャケット(275,000円)は、肩幅、着丈、袖丈、襟の高さ、ステッチの入る箇所など、バイカーズに欲しい要素がすべて叶えられていました。ハードなアイテムなのに上品な印象を与えてくれるのは、そうするべく細部に趣向が凝らしてあるからなのでしょう。

サイドラインが大胆なカーブを描くオーバーサイズのデザインは、カッコいい。でも、私にはハードルが高そう。そんな第一印象を鮮やかに裏切ってくれたのが、ミリタリーグリーンが美しいカシミア混のウールコート(197,000円)。首をすっぽりと覆うユニークな衿のディテールに、真新しい安定感を感じました。軽いのに温かく、機能美を備えた粋なアウターです。

次に向かったのは、4Fの「HELMUT LUNG(ヘルムート・ラング)」。こちらもメンズ&ウィメンズを展開する複合店で、Mark Thomas(マーク・トーマス)によるメンズラインを取り扱っているのは、国内では路面店以外、GINZA SIX店のみです。

気に入ったアイテムは、色違いで買いそろえて(というよりも、買ってしまう…)、これでもか!というくらい着倒すほうです。とはいえ、そうそう巡り会えるものでもないですが、この羊革のアウター(95,000円)とウールのトレパン(32,000円)は、上下全色欲しいくらいドンズバでした。

フード付きレザーアウターのブラックは文句なしにカッコいい。色違いのグレーは憎らしいほど新鮮。上質なウール素材のトレパンは、かっちりめのワイドパンツに見えるのに、いわゆるトレパン以上の心地良さ。この冬だけでなく、来年もその先も、長く愛用できるアイテムだということは重々承知。でも全部そろえるとなると…。これは、お財布とよ~く相談しなくてはなりません。

最後は、5Fの「JOSEPH(ジョゼフ)」へ。ロンドンというと、私の中ではサヴィル・ロウやヴィヴィアン・ウエストウッドと同じくらい、ジョゼフのイメージが強くあります。ロンドンに留学した当初、住んでいた学生寮から歩いて行けるところにジョゼフのお店があって、散歩がてらによく立ち寄りました。スローン・スクエア駅のメインストリート、スローンストリートの端のほうにあるその店を訪れるたび、「これがロンドンかぁ」と感じ入っていた若き日の自分を懐かしく思い出しながら、ブルーやグリーン、ベージュなど、色別に美しくディスプレイされた洋服を眺めては手に取り、試着する、の繰り返し。こちらのお店もメンズ&ウィメンズを展開する複合店です。

またしても心奪われたのは、カーキのウールコート(160,000円)。大胆な配色のビッグポケットが気に入りました。カシミアのストール(42,000円)は元から三角形になっていて、無造作に巻くだけで様になることを教えてくれたのは、店員の方でした。流石です。

ジョゼフの店舗に隣接する「JOE’S CAFE(ジョーズ・カフェ)」は「SEASON IN THE POT」をコンセプトに、洋服と同じように季節ごとに変わる紅茶や日本茶などのティーセレクションやスイーツが楽しめるセレクトブックカフェ。店内の壁一面を覆う大きな本棚には、ダミアン・ハーストの作品集から、中野香織さんの著書「ダンディズムの系譜」まで、ブックディレクターの幅允孝さん率いるBACHによってセレクトされた、主にイギリスやロンドンにまつわるレアな本がずらり。ゆっくりとくつろぎながら、ジョゼフの世界観に浸れるGINZA SIXの隠れ家的スポットです。

イギリスといえばアフタヌーンティーということで「JOE’S High tea set」(4,500円)をいただきました。紅茶はキャッスルトンのダージリン ファーストフラッシュ。英国式の3段トレイの中身は、下からサンドウィッチ、ケーキ、スコーン。サンドウィッチは、ジョーズ・カフェで人気の高いイチゴのほか、季節のフルーツのイチジクとキュウリの3種類。

アフタヌーンティーは、下から順番にいただくのが慣習ですが、「全体的にしっかり甘くしているので、あえてキュウリのサンドウィッチを最後に残しておくと、さっぱり食べ終えられます」と店員さん。オススメどおりに食べてみると、これが想像以上に美味しかった!

薄くスライスしたキュウリが幾層にも繊細に重ねられた上に、白ワインビネガー、無塩バター、岩塩、ブラックペッパーでシンプルな味付け。キュウリの見方ががらりと変わる絶品です。

さらにジョゼフの店内とジョーズ・カフェでは、宝塚歌劇団の花組スター、柚香光(ゆずかれい)さんをモデルに起用したキャンペーン写真のエキシビションが、2018年11月4日まで開催中です。ジョゼフのもの作りを支える素材や機械の一部である「エレメンツ」、そこから生まれる「オブジェクツ」である服の対比が生み出す、美しくパワフルなコントラストは必見。GINZA SIX店では、こうしたアートの展示を随時行っていて、洋服とともにジョゼフの世界観をまるごと体感できる贅沢な空間です。

銀座の中心で、ロンドンを堪能した午後。やっぱりロンドンが好き。改めて、そう確認した時間でした。またロンドンが恋しくなったら、GINZA SIXに来ようと思います。

Text:Yuriko Kishi Photos:Mariko Mibu Edit:Yuka Okada

GINZA SIX EDITORS Vol.62

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岸 由利子

ライター、翻訳家、画家。MALKOMALKAのデザイナーを経て、2008年より執筆業に転身。ファッション、腕時計、医療、福祉、スポーツなどの分野を中心に取材、執筆をしている。画家としては、店舗などの壁画を中心に活躍。近年はミュージシャンへの衣装デザインの提供やプロダクトデザインも手掛ける。自身のインスタ<kishiyuriko>にてライフワークとする京都花街の魅力をコツコツ更新中。
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

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2018.10.26 UP

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