GINZA SIX magazine - Autumn 2019
最近、あるイタリアンレザーのトートバッグを手に入れた。
残念ながらいつも散財しているGINZA SIXで買ったわけではなく、ある日本の女性がたった一人でつくっている、まだ名もなきブランドのものである。
でも、使い始めてみるとそこには、久しぶりに、大きな感動があった。
リアルな編集者が使うという意味で正真正銘のエディターズバッグとしてそれなりに大ぶりの容量ながら、目一杯の荷物を入れてもだらりとせず、程よい緊張感を保ったたたずまい。タフな持ち手は肩にしっとり寄り添う。それでいて素材感は使うほどくたびれることもなく、やわらかく、艶やかになっていく。
そして、このバッグを作っている一人の手から、どうして、このクオリティが生まれるのか。その「ものづくり」の場所を訪れ覗いてみたい、と思った。
一方でGINZA SIXにも言わずもがな、山を越え海を越え、どれもが人間の手から生まれ、その悦びを感じさせてくれる多くのものが集まっている。でも、ショッピングという圧倒的な快感の最中には、その原景までを想像しての取捨選択は、なかなか難儀なのも事実。断捨離の時代に生き、年金の代わりに現金を残さないといけない世代なのに、衝動買いの癖すら治る気配はないのは、本当に困ったものだ。
今回のGINZA SIX magazineでは、そういうわけでときに銀座を離れ、イタリアから日本の地方まで、ものが生まれる場所や人々を旅し、伝えている。
「だから、こんなにしっくりくるんだ」という最愛品の答え合わせを。
「ならば、ちょっと見に行ってみようか」という新たな欲求を。
たとえ衝動買いであっても、そこにもっと悦びを。
「ものづくり」を想像する力で。
GINZA SIX magazine 編集長
岡田 有加
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