Everything is Linked トライリンクに込めた人生観
HOORSENBUHS
Fashion
夏の陽射しで輝くサンタモニカビーチを見ながら到着したジュエリー&ライフスタイルブランド「ホーセンブース」の旗艦店はアトリエも兼ねる。通りから少し奥まったショップで、ダークウッドの外観、ブラックとメタルが基調の内装に重厚感があるが、大金庫のようなゴールドの扉、オーバーサイズのアートや家具に囲まれていても、不思議なほど威圧感がない。案内してくれたブランドディレクターのケサー・パーカーは「なるほどね、それはきっとホーセンブースの起源がファインジュエリーにあるからじゃないかな。僕らはジュエラーとしてブランドを始めたので、細かなディテールに配慮する術を知っている」という。続いて「これを着けてみて」と渡された18Kとダイヤモンドのインフィニティブレスレットを手に取ると、ハイクオリティな質感とディテールの美しさに息を呑む一方、決して重いと感じない。着装効果は高揚感に近く、インテリアとジュエリーをブランドDNAで連動させたケサーの言葉の意味を実感した。
級友でもあるロバートとケサー。壁のアートは顧客兼コラボレーターの芸術家ダミアン・ハースト邸で遊んだスピン画に彼がホーセンブースロゴを施して二人に贈った。
自分らしさをカタチにつなげた
トライリンクデザイン
一通り案内が終わった頃、特別仕様のハーレーダビッドソントラックが到着し、創始者でクリエイティブチーフのロバート・キースが登場した。怪物のようなトラックの影響か、予想外のごつい風貌である。アトリエへ移動すると、バイクやスケボー、サーフボード、自転車が何台もあり、工具各種やアートも多く、なにやら楽しそうだ。
「いつでもクリエイティブな才能のある人たちに囲まれていた」というロバートは映画制作、俳優、写真など常にアーティストマインドな表現に携わってきた。ヴィンテージュエリーを愛し、ある時「自分の」ジュエリーを創りたいと思った。2005年のことだ。
「このトライリンクのリングを粘土で試作し、ダウンタウンのジュエリー地区にある工房をかたっぱしから当たった。粘土なんかじゃダメで、モデルはワックスで作るという基本さえ知らなかった。やっとできたリングを着けていたら、『その指輪、ヴィンテージ?とてもすてき。私も欲しいわ』と声をかけられてね。コーヒーショップだったから、ストロー袋を指に巻いてサイズを測り、連絡先を交換した。その瞬間、ジュエリーデザインってこういうことかと脳内で何かが爆発したんだ。頭にはジュエリーの形や色、大小のダイヤモンドなどイメージが続々と浮かび、それは自分の人生を一変させたコズミックな体験だった。その時以来アイデアが尽きたことはない」
作業中のロバート。
第一号となったその記念のリングは現在も毎日愛用しているが、ホーセンブースという名称の由来は、キース家の先祖が16世紀のオランダで営んだ商船名で、シグネチャーのトライリンクデザインも港に停泊する船のチェーンがインスピレーションだ。リンクはどんなに小さなリングやイヤリングにもデザインされ、ホーセンブースを知る人なら一目瞭然のブランドIDである。仕上がったばかりという最新作エメラルドのインフィニティネックレスも繊細なホーセンブースのオープンリンクを複雑に組み合わせてつなげており、デザインと巧みな職人技がなすブランドヘリテージを体現する。
ロバートが手にするインフィニティリング〈18KYG×ダイヤモンド〉¥1,980,000・同じく右はインフィニティシリーズの新作ダイヤのブレスレット(価格未定)・トライリンクブレスレット〈18KRG〉¥3,080,000・〈SV925〉¥594,000
「人生にはいろんなことがあるだろ、でもみんなつながっている」とリンクの意義を語るロバートの腕には、数字の3が3つ並ぶタトゥーがあり「3は自分のマジックナンバーなんだ」と語る。親から子へ、大切な人へ、世代を超えて継承してほしいとデザインされたタイムレスなジュエリー。家族や友人への愛と人生への深い思いを込めたトライリンクにはコズミックなブランドDNAが内包されている。
パンデミックで旅もままならないが、店舗のすべてをデザインし、ネジの形状までこだわったGINZA SIX店とつながる日も彼らは楽しみにしている。
GINZA SIX店でも展開中のアパレル。レンジャージャケット各¥253,000/ホーセンブース(3F)
Interview with Robert G. Keith and Kether Parker
Founder/Creative Chief & Brand Director
Text: Chinami Inaishi Photos: Yoshihiro Makino Editing Direction: Yuka Okada(81)