Redefining Menswear 伝統と変革で作る新時代の服
DUNHILL GINZA CONCEPT STORE
Fashion
1893年創業の老舗メゾン「ダンヒル」に新しい息吹をもたらすべく、2017年にクリエイティブ・ディレクターに就任したマーク・ウェストン。彼はかつて、バーバリーを再び世界的な人気ブランドへと押し上げたクリストファー・ベイリーの右腕として、多大な貢献をもたらしたデザイナーでもある。
そんな彼にまず「あなたにとってダンヒルとは?」という質問を投げかけてみると意外な答えが返ってきた。
「まったくの偶然なのですが実はダンヒルに参加する以前に、もしも私がこのブランドを任されたら、どのように自分の視点や表現をかたちにするだろうと考えたことがありました。そのような想像を楽しむのはダンヒルは疑う余地もなく、本当の意味でイギリス唯一の素晴らしいラグジュアリーメンズブランドだからです」
ロンドンのメイフェアにあるダンヒル・ヘッドクォーターのアトリエにて。マーク自身もこの一角に自身のデスクを構える。
歴史あるメゾンに新風を吹き込むにはクラシックへの真摯な理解に加え、モダンへの造詣の深さも欠かせない。
「クラシックはエレガントで厳格でありながら、臨機応変で肩肘を張らない気楽さがプラスされていると思います。一方モダンは、伝統を引き継ぎながらも、それを時代に即して自由に解き放ち、新しさを確立することではないでしょうか。クラシックの新解釈はダンヒルにおいて私の一貫したテーマです。時にはセンシュアリティや挑発が古い概念を打ち破る手段となりますが、同時にエレガントさを保ち続けることは重要です。そのさじ加減はとても大事ですね」
「シャツやカマーバンドバッグに使われているシルクジャガードの生地はイタリアの古い工場で生産したもの。織りを裏返したモチーフを使うことで抽象的に仕上げ、伝統にひとひねり加えることでデザインの新たな冒険をするのが好き」とマーク。
2021年秋冬コレクションは、あえてテーマを設けていない。理由はテーラリングをより深く探求し、一つひとつのプロセスを大切にして、服やアクセサリーそのものにフォーカスを置きたいからだとマークは語る。色使いも特徴的だ。「色とプリントは明るさと楽しさを加味してくれますからね」と微笑む。
マークはこのコレクションを「とても英国的」とも話す。「英国の人々は他国とは全く違う非常に独創的な着こなしが得意です。たとえ雑然としていても不思議とスタイリッシュ。フォーマルでありながらも実用的。そして自分のスタイルにとても自信を持っている。それに通じると考えています」。
この秋冬コレクションのために参考にした書籍。
GINZA SIXにあるダンヒルのコンセプトストアは、厳選されたラグジュアリーグッズと、エクスクルーシブなアイテムが並ぶ心踊る店だ。
「壁とファサードはシーズンごとにアップデートされ、最新コレクションを体感できます。周りに広がるダンヒルのユニバースを楽しんでいただけたら嬉しいです」
上品なドットのファブリックはシャツやジャケットとして登場。
そして世界が大きく揺れる今、彼もまた新たな価値観を模索している。
「ここでの過去3年間を振り返り、ブランドのために何を大切とすべきかを反芻して考えています。パンデミックは制度化された消費や労働への疑問を持つきっかけともなっているのは間違いないでしょう。私たちは所有物を減らし、より良いものだけを求め、今生きているこの時を慈しみながら、正しいと感じる方向へ一歩踏み出していかなくてはならないと思っています」
「ブランドのヘリテージとコンテンポラリーな機能性を同時に体現したダンヒルの新アイコン」として、マークもお気に入りというこちらのバッグ。ネオンピンクは銀座エリアの新作エクスクルーシブ・カラー。GTロックバッグ〈高さ17x幅11.2xマチ5.6cm〉¥ 320,100/ダンヒル GINZA コンセプト ストア(2F)
Interview with Mark Weston
Creative Director
Text: Miyuki Sakamoto Photos: Aya Goto Editing Direction: Yuka Okada(81)