森本啓太 個展「KEITA MORIMOTO Illuminated Solitude」
銀座 蔦屋書店
Art
銀座 蔦屋書店は、店内イベントスペースGINZA ATRIUMにおいて、2024年11月9日(土) ~ 11月27日(水)の期間に、現代アーティスト・森本啓太の初の作品集刊行を記念して個展「KEITA MORIMOTO Illuminated Solitude」を開催いたします。
森本は風景画や人物画を、レンブラントやエドワード・ホッパーを連想させるドラマチックな光の表現を用いて、古典的な技術を現代に持ち込み、ありふれた街並みを劇的な世界へと変貌させます。自動販売機やファストフード店、駐車場といった日常的な主題に焦点を当てることで、森本は現代の生活における構造的な脆弱性や道徳的規範に疑問を投げかけています。本展では、2021年に日本に活動拠点を移した後に制作した作品を中心に、作品集の表紙となる2枚組の大作《Between Our Worlds》(2024)を含む絵画作品13点のほか、初の木版画作品2点を展示いたします。また本展と併せ、2024年11月9日(土)より銀座 蔦屋書店にて作品集の販売を開始します。
[アーティストステートメント]
今回刊行することになった初の作品集と今回の展覧会は、僕自身の12年にわたる創作活動を振り返りながら、都市の中で感じる葛藤や孤独感、そして全てから逃げ出したい感覚などをテーマにしています。僕が2006年、16歳の時に大阪からカナダへ移住した際、慣れ親しんだ世界から切り離されたような強烈な孤独感を感じました。そして時間が経つにつれ、徐々に仲間意識も生まれたのですが、そこには常に微かな違和感が付き纏っていました。2021年に日本に戻ったときも、そこでの「当たり前」と呼ばれる感覚に戸惑いがあり、生まれ育った母国のはずなのに、そこではなにが現実なのかがわからなくなる事がよくありました。
こうした経験を通して、僕の作品には現実は一枚岩ではないという感覚が強く表れていると思っています。同じ国に住んでいても、違うコミュニティに足を踏み入れるときに感じる違和感――これは、僕が異国で感じた疎外感と似たものかもしれない。そして、同じ場所にいても、その時の気持ちによって全く違う現実が見えてくる瞬間、僕はそういうときに人間の心の深い部分にある真実が現れるのではないかといつも考えています。
僕の作品には、あえて決まった物語を持たせていませんが、それはただ空白を残すわけではありません。それぞれの作品は、観る人が心の奥底にある感情や問いに気づく「装置」のようなものです。主にテーマとして描いているのは、社会という同調を求める構造の中で感じる違和感や孤独感です。日常の中でふと湧き上がる「自分はここにいていいのか?」という問いや、都市の中で感じる微かな不安、そしてそこから逃げ出したいという感情を表現しようと絵を描き続けています。
今回の展覧会を通して、僕の作品が観る人だれかの心情や記憶と重なり合い、心に何かが残るきっかけになれば嬉しいです。
森本啓太
《Between Our Worlds》(2024)※画像は作品の一部です
■木版画作品について
エディションワークスと共同制作することになった木版画と、その元になった絵画の制作過程を紹介します。今回の作品2点は、僕が絵画で表現してきた技法やテーマを元にして、木版画固有の表現にも影響を受け、独自の構図で制作を行いました。特に、油彩画の豊かな質感や色彩を、木版画という全く違うメディウムにどう落とし込むかが大きな挑戦となりました。
例えば「Fragmented Paths」では、木版画特有のグラデーションを活かすために、油彩画の複雑な構図をあえてシンプルにして、シルエットに流しこむようなグラデーションを取り入れました。この作品の制作過程では、メディウムの違いが構図にどう影響するかを深く考えさせられました。そして、この木版画ならではの表現に、新しい絵画表現の可能性を感じてワクワクしました。また、このプロセスを通じて、自分が作品で追求してきた「曖昧な現実」をもっと効果的に表現できたと感じています。現実と幻想の境界が曖昧になる瞬間を捉えることで、観る人の現実が少し揺らぐような感覚を楽しんでいただけますと幸いです。(森本啓太)
[作品集について]
『KEITA MORIMOTO Illuminated Solitude』
著:森本啓太
発行:カルチュア・コンビニエンス・クラブ
発売:美術出版社
価格:7,150円(税込)
発売日:2024年11月11日(月)
仕様:142ページ、A4上製本、日英バイリンガル
ISBN:978-4-568-10583-4 C0071
※銀座 蔦屋書店では2024年11月9日(土)から先行発売
[アーティストプロフィール]
森本啓太 (KEITA MORIMOTO)
1990年大阪生まれ。2006年にカナダへ移住し、2012年オンタリオ州立芸術大学 (現・OCAD大学)を卒業。カナダで活動したのち、2021年日本に帰国。現在は東京を拠点としている。バロック絵画や20世紀初頭のアメリカン・リアリズム、そして古典的な風俗画の技法やテーマに強い関心をもち学んできた森本は、これらの伝統を参照し、ありきたりな現代の都市生活のワンシーンを特別な物語へと変貌させる。象徴的に「光」を描くことによって、その神聖で普遍的な性質を消費文化の厳しい現実と融合させ、歴史のもつ深みと現代的な複雑さが共鳴する作品を生み出している。森本の作品は、トロント・カナダ現代美術館、K11 MUSEA、宝龍美術館、Art Gallery of Peterborough、The Power Plant Contemporary Art Gallery、フォートウェイン美術館などで展示されてきた。他にコレクションとして、滋賀県立美術館、アーツ前橋、ハイ美術館(アメリカ)、Fondazione Sandretto Re Rebaudengo(イタリア)、マイアミ現代美術館(アメリカ)がある。
個展
2023「as we didn’t know it」Night Gallery (ロサンゼルス、アメリカ)
2023「A Little Closer」KOTARO NUKAGA (六本木・東京、日本)
2022「In Between Shadows」ATM Gallery (ニューヨーク、アメリカ)
2022「Contrasting Memories」Nicholas Metivier Gallery (トロント、カナダ)
2021「After Dark」KOTARO NUKAGA (天王洲・東京、日本)
2020「Garden of Light」Nicholas Metivier Gallery (トロント、カナダ)
グループ展
2023「Focal Point 2」LONG STORY SHORT NYC (ニューヨーク、アメリカ)
2023「Quiet Storm」LONG STORY SHORT PARIS (パリ、フランス)
2023「Dieci」ARTUNER, Palazzo Coardi di Carpeneto (トリノ、イタリア)
2023「絶滅の先のハナシ」MtK Contemporary Art (京都、日本)
2023「The Descendants」K11 MUSEA (香港)
2023「The Midnight Hour」The Hole (ニューヨーク、アメリカ)
2022「Crossing」KOTARO NUKAGA (六本木・東京、日本)
2022「Under Current」宝龍美術館 (上海、中国)
2022「Seasons in the City」ARTUNER,Palazzo Capris (トリノ、イタリア)
2022「What It Could Be」Stony Island Arts Bank (シカゴ、アメリカ)
2022「Romancing Relevance」WOAW Gallery (香港)
2022「Escape From New York」Another Gallery (ロサンゼルス、アメリカ)
[展覧会詳細]
森本啓太 個展「KEITA MORIMOTO Illuminated Solitude」
会期:2024年11月9日(土) - 11月27日(水) ※終了日は変更になる場合があります。
時間:11:00 ~ 20:00 ※最終日のみ18:00閉場
場所:銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM (イベントスペース)
主催:銀座 蔦屋書店
協力:KOTARO NUKAGA
お問い合わせ:03-3575-7755(営業時間内) / info.ginza@ccc.co.jp
2024.10.21 UP