2025年春に始動した、GINZA SIXと設計事務所〈DAIKEI MILLS〉との3年にわたるアートプロジェクト「A Tree」がPhase 2を迎え、国内外で活躍する6組のデザイナーによる作品を2025年秋より順次展開しています。2025年秋、2026年冬、そして2026年春の3回にわたり、2組ずつの作品が登場し、訪れる人に新たな発見をもたらします。
「A Tree」 は吉野の山から届く吉野杉から始まります。これまでの展示という枠を超え、原木から家具、小さな建築として進化していくような壮大なプロジェクトです。 Phase 1では、ものづくりの原点に本質的な価値を見出し、吉野杉の無垢材を活かした椅子が館内を彩り、屋上には幻想的な光の演出が施されたアートパークが登場しました。Phase 2では、6組のデザイナーが吉野の森や林業の現場に触れ、現地で感じたインスピレーションをもとに作品をデザインします。
〈A Tree|エイ・ツリー〉[第二フェーズ]
- デザイナー
- Siin Siin / KUO DUO / Rio Kobayashi / Fabien Cappello / Max Lamb / Faye Toogood
- 制作
- E&Y / 豊永林業 / 大谷木材
- 展示場所
- 3F~5F 中央吹き抜け周りレストスペース
- 展示期間
- 2025年10月31日(金)~
Index
01
Designer - Siin Siin
Siin Siin(シーン・シーン)は東京を拠点に活動するデザイナー。彼の実践は、観察を手がかりに、過程のなかにとどまる姿勢に特徴がある。結論に急ぐのではなく、素材や場に向き合いながら、そこに立ち現れる断片や揺らぎを受け止め、かたちの手がかりとしていく。制作においては、確かさよりも不確かさに価値を見出し、思いがけず現れる逸脱を、修正すべきものではなく新たな構築の起点として扱う。
その過程で浮かび上がるのが痕跡である。切断や溶接の跡、手の震え、機械のエラーといった通常は隠される要素をあえて残し、静かに表出させることで、人と道具と素材のあいだにある関係性や、行為や時間の記憶を物質に宿らせている。
最終的に立ち現れる作品は、過程と痕跡の集積であると同時に、それらをひとつの場として編み上げた構成でもある。静かでありながら濃密な気配をまとい、空間のなかに呼吸するように存在する。その実践は、既存の区分にとらわれず、日常に潜む微細な出来事を別のかたちへと結び直している。
Collection -
Tou Tou
Designed by Siin Siin
本作で用いた吉野杉は樹齢120-130年程度。1898年刊行の『吉野林業全書』や1914年の『吉野林業概要』などに記された知見と同時代に植えられたものと推定されます。これらの資料を読み進めるうち、過去を辿るというよりも目の前の木の息づかいを読み解くような感覚を覚えました。歴史と素材が折り重なるような時間感覚のなかで、時代とともにかたちを変えながら受け継がれてきた知恵と営みの蓄積をこの杉に重ね、今日もそれに向き合う人々への敬意とともに本作に取り組みました。
吉野での滞在を通して、林業従事者との対話、明治期から現代までに至る記録や道具の実見、伐木や製材の立会いを含む観察を行い、加工にあたっては、樽丸をはじめとする材の一工程である「間割(けんわり)」を参照しました。斧を使って丸太を小口から割るこの技法は、繊維方向に忠実であるがゆえに加工方向が限定され、形状に制約が生まれます。裂かれた断面には、木が自ら割れていくような質感がそのまま現れます。これら二つの要素は、いずれも吉野杉の素直な木目と呼応する、素材と技法の関係性から導かれた造形であるといえるでしょう。
一方で、現代林業の現場で用いられるハーベスタやプロセッサ、グラップルといった重機のディテール、とくに油圧ダンパーに見られるシリンダー形状をモチーフに、ステンレス製のジョイントパーツを制作しました。間割によって得られた木材の各セグメントはこのジョイントによって接続され、間割による痕跡と現代の機械加工に特有の合理性とが内在するよう構成しています。
なお、今回選択した吉野杉は、伐木時に根元が大きく裂けていた木でした。偶発的な力の作用を感じさせるその裂け目に、市場的な価値とは異なる魅力を感じたことが、この木が育まれてきた時間に寄り添いたいと考えるきっかけになりました。
02
Designer - KUO DUO
KUO DUO(クオ・デュオ)は、ソウルを拠点とするインダストリアルデザインスタジオ。プロダクト、家具、空間デザインを中心に、クリエイティブディレクションまで幅広く活動している。
デザイナーのファチャンとユミンは、ソウルの弘益大学でインダストリアルデザインを学んだ後 、Cecilie Manz Studio、Form Us With Love、Shigeki Fujishiro Design、SWNAなど、国内外のデザインスタジオで経験を積んだ。そこで培った国際的な視点と感性をもとに、自身のスタジオKUO DUOを設立。
KUO DUOは、量産を前提としたプロダクトデザインから、限定エディションのアートピース、展覧会や空間インスタレーションに至るまで、デザインの境界を横断的に拡張し続けている。 彼らの作品は、素材や製造技術に対する新しいアプローチと、機能性・シンプルさとの美しいバランスを追求する姿勢で特徴づけられる。 実験的でありながら丁寧な手仕事を重ね、素材構造の可能性を深く探求し、時を超えて愛されるデザインを生み出している。
さまざまなブランドやクライアントと協働し、立体的なデザインの領域で多彩な成果を発表してきた彼らは、2025年にフランス・パリの「Maison&Objet」でRising Talent Awardを受賞し、その創造性と完成度が国際的に評価された。
Collection -
KIRI KABU
Designed by KUO DUO
「KIRI KABU」は、KUO DUOによる家具コレクションで、精緻な木工技術を通して吉野杉の本来の美しさを称える作品です。本コレクションは、吉野の森で見つけた切り株に着想を得ています。かつて成長の始まりであった切り株は、今では静かな終わりの痕跡としてそこに残ります。この生と時間の二重性から、デザイナーたちはGINZA SIXの空間に切り株が点在する光景を想像し、訪れる人々に休息や再生、そして静かな思索のひとときを提供する場を描きました。
KUO DUOは、吉野杉の淡い辺材と濃い心材の鮮やかなコントラストと、密に刻まれた年輪のリズミカルなパターンが生み出す美しさに注目しました。精密なカッティングと木工旋盤加工によって、各丸太は円柱状の切り株のような形状に整えられ、辺材と心材の微妙な色彩のグラデーションや年輪の質感が際立ちます。その結果、切り株を彫刻的に再解釈し、木々の痕跡を日常の中で静かに息づく機能的なオブジェへと昇華させています。
さらに、限られた素材を最大限に活かすため、一本の木を9つのセクションに分割しています。4つの部材は再び組み立てて円柱状の土台とし、旋盤で削って「KIRI KABU」形状に仕上げます。残りの5つは板材として座面や背もたれなどの構成要素に使用されます。
「KIRI KABU」は、自然と室内空間との対話を生み出し、現代都市環境の中でも吉野杉の穏やかさと層のある美しさを体験できる機会を提供します。各作品は森の落ち着いたエネルギーを宿し、自然と人間の営みをつなぐ、静寂と熟考のひとときをもたらします。
03
Designer - Rio Kobayashi
Rio Kobayashi(リオ・コバヤシ)は、ロンドンを拠点に活動するデザイナー/メイカーである。日本・栃木県に生まれ、日本、オーストリア、イタリアにルーツをもつ環境で育ち、幼い頃から道具や素材に親しんできた。18 歳でオーストリアに渡り、伝統的な家具制作の徒弟制度のもとで3年間修行。構造や精度といったクラフトの基礎を身につけた。
その後、ミラノ、東京、パリ、ベルリン、インスブルックなどでデザインスタジオやアーティストとの協働を重ね、2017 年にイーストロンドンに自身のスタジオを設立している。彼の作品は、日本とオーストリアのクラフトの伝統を背景にしながらも、現代ヨーロッパデザインの実験的な要素を取り入れ、家具やオブジェ、空間へと展開される。動きや構造、かたちの関係性を探り、精密さと遊び心が共存する表現が特徴である。
大胆な色づかいや細部へのこだわり、さりげない物語性を通して、個人的な経験や文化的背景を直接語るのではなく、触感や空間を通して体験として伝えている。これまでに作品は、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)、ロンドン・デザイン・フェスティバル、ミラノ・デザイン・ウィーク、デザイン・マイアミ、フリーズ・アート・フェアなどで発表され、国際的なデザインメディアにも紹介されてきた。
Collection -
Edisni tuo
(or Insideout)
Designed by Rio Kobayashi
「Edisni tuo」は、日本とオーストリアにルーツを持つデザイナー Rio Kobayashiによる、反転、動き、そして文化の再解釈といったテーマを探求した家具シリーズです。
その中心にあるのは、物理的にも概念的にも丸太を内側から外へと「ひっくり返す」という、シンプルでありながら深い身振りです。このプロジェクトは、Rio Kobayashi の制作活動における重要な転機となるもので、人生の半分以上を日本の外で過ごし活動してきた彼にとって、日本でかたちとなった初期の作品のひとつであり、郷愁ではなく、距離と西洋的視点によって再構築された「帰還」でもあります。それはまるで、内側に海苔を巻いた「裏巻き寿司」が日本料理に対する西洋的な再解釈であるように、Edisni tuo の作品も「当たり前」を反転させるものです。樹皮は残され、切断面があらわになり、通常は捨てられる部分が要素として前面に出されます。
動きという発想は、日本最古の林業地のひとつである吉野を訪れた際に生まれました。このシリーズに使用された木材の産地でもある吉野の森で、静かに揺れる梢を見つめながら、その揺らぎをどのようにかたちへと翻訳できるかを、Rio Kobayashi とそのチームは模索しました。その結果として生まれた家具は、さりげない “ぐらぐら” とした揺れを備えており、座るとわずかに揺れるその動きが、意外性を生み、GINZA SIX に訪れた隣り合う人々の間に自然なつながりや対話を促します。
椅子からスツール、ベンチへと展開するこのシリーズは、無垢材の力強さと造形の明快さが共存する作品群です。
Team: Irene Yamaguchi, Flavia Brändle, Amy Tai and Jan Stawiarski
04
Designer - Fabien Cappello
Fabien Cappello(ファビアン・カペッロ)は、メキシコ・グアダラハラを拠点に活動する家具・プロダクトデザイナーである。スイス・ローザンヌ州立美術学校およびロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学び、現在は実践的なデザインワークとメキシコのマテリアルカルチャーに関する調査研究を並行して行っている。こうした活動を通じ、彼のスタジオは現代デザインにおいて、国際的な水準で影響があると位置付けられている。
彼の一連の作品は、そのデザイン戦略を具体的なかたちとして可視化するものである。カペッロは自身のアプローチを、「新たな価値観の秩序に結びつく、非アスピレーショナルな美学を提示する試み」と述べている。そこでは、ヴァナキュラー文化の要素や、産業の中で見過ごされがちな素材や技法が用いられるが、それは模倣のためではなく、有効な解決策である。彼が目指すのは、日常生活の機能的・社会的側面に応答する耐久性と文化的意義を備えたオブジェクトや空間の創出である。また、メキシコのマテリアルカルチャーに関するリサーチや出版プロジェクトを通じて、デザインや製造、マテリアルのシステムが都市やアイデンティティ、そして私たちが共に生きるあり方をどのように形づくっているのかを問い続けている。
2021年には、《Objetos de Hojalata para el Hogar(家庭のためのトタン製品)》というコンセプトブランドを立ち上げ、グアダラハラ中心部の伝統的なトタン職人のネットワークと協働している。じょうろ、バケツ、花器、キャンドルホルダーといった日用品をガルバナイズドスチールで再設計するこのプロジェクトは、今日の産業の中で見過ごされがちな技法の経済的・文化的価値、そして小規模生産の有効性を強調するものである。これらのプロダクトは、ロンドン、日本、オーストリア、アメリカなど、国際的に展開されている。
Collection -
Multi
Designed by Fabien Cappello
私がデザインしたこのベンチは、GINZA SIX において、「座る」という行為を、パブリックな体験へと変えるものです。
一本の木を用いて、多くの人が快適に座れるベンチをつくることは可能なのか。また公共空間におけるベンチにおいて、どのように快適さや人を招き入れる感覚を育むことができるのか。そうしたいくつかのシンプルな問いを探っています。
空港やバスターミナル、待合スペースなどに見られる一般的な公共ベンチの形式を参照し、このベンチは人々がともに座ることを促します。デザインは技術的な基盤を持ちながら、色付きの木材を取り入れることで、現代的で親しみやすい佇まいを与えています。
構造と構成は、木材の質と製造そのものを際立たせています。各パーツは、構造上の役割にとどまらず、ベンチとしての快適さや人を招き入れる性質を支えるためにも不可欠な要素です。
05
Designer - Max Lamb
Max Lamb(マックス・ラム)は、1980年、イギリス・コーンウォール生まれ。家具・プロダクトデザインの分野において、その革新性と実験的な手法で広く評価されているデザイナーである。彼の創作活動は、伝統的な職人技と前衛的なデザイン哲学の融合によって特徴づけられている。
コーンウォールの自然に囲まれて育った彼は、自然との深い結びつきを持ち、その影響は作品にも色濃く反映されている。ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学び、卒業後すぐに独自のデザイン手法で注目を集めた。以後、素材とプロセスの限界に挑戦し続け、現代デザインシーンの中心人物となった。
Max Lambの特徴は、素材への飽くなき探求心にある。石や金属、発泡材、段ボールなど、あらゆる素材を用いて、素材本来の性質を引き出す作品を制作している。その結果として生まれる作品は、触覚的で力強く、機能性と芸術性が融合したユニークな存在感を放つ。
Max Lambのデザインは、家具であれ小規模なプロダクトであれ、粗削りで触覚的な質感を備えた独自の美学を示している。それぞれの作品は固有の物語を内包し、使い手と対象とのあいだに身体的で直感的なつながりを生み出す。彼の作品はしばしば、機能性と芸術的表現が調和する形で共存し、デザインという分野の従来の境界に挑戦している。
Collection -
Cedar is a
Soft Wood
Designed by Max Lamb
それは一本の木から始まり、一本の木で終わる。そのあいだにあるのは、大谷さんと彼のバンドソー。ほかには何もない。大谷さんは、そのバンドソーで何ができるだろうか。
「Cedar is a Soft Wood」は、大谷さんと彼のバンドソーだけによってつくられるプロジェクトである。ひとりの人間と、一台の機械。一本の杉の木は、いくつかの短い丸太へと切り分けられる。丸太は一本ずつ台車に載せられ、レールに導かれながら、バンドソーの刃の軌道へと押し出される。刃の歯は丸太の木口に触れ、木目に沿って、まっすぐに一筋の切れ込みを刻んでいく。ノコ刃が生む2mmの細い隙間は「カーフ(kerf)」と呼ばれる。刃が丸太の端へ届く、その直前で、大谷さんは切断を止める。刃を引き戻し、丸太を7mm横へと移し、ふたたび平行な切れ込みを入れる。そして、もう一本、さらにもう一本。それが、次の切れ込みまでに保たれるべき最小限の安全な距離である。一枚一枚の板の厚みは5mm。5mmの厚みをもつ吉野杉の板は、しなやかにたわむ。切れ込みのない丸太は、ただ硬い。杉は、柔らかくなる。
ほんのわずかな力を加えるだけで、薄い杉板はカーフへと静かに沈み込み、隣の板に触れる。板はさらに曲がり、三枚目の板に触れ、またその次へと続いていく。やがて、ひとつに重なり合い、わずかな曲線を帯びながら、再び一本の丸太となる。柔らかな背をもつ、原型のような杉丸太の椅子。そして、切り落とされた端材から生まれる、小さく素朴なスツール。
杉は、柔らかい木である。
06
Designer - Faye Toogood
Faye Toogood(フェイ・トゥーグッド)はイギリス出身のデザイナー。インテリア、ホームウェア、美術、ファッションをまたぐ多彩な表現を行い、特定の分野やスタイルにとらわれない活動で知られている。
ブリストル大学で美術史を学び、雑誌『The World of Interiors』のインテリアエディターを8年間務めた後、2008年にロンドンでスタジオ「Toogood」を設立。以降、世界中の美術館に作品が収蔵・展示されており、代表的なものにヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン)、NGV(メルボルン)、フィラデルフィア美術館、コーニング・ガラス美術館(ニューヨーク)、ファベルジェ博物館(サンクトペテルブルク)などがある。
イギリスの田園地帯で育った彼女の作品には、風景や自然物からのインスピレーションが色濃く反映されており、干し草や頭蓋骨、空模様をモチーフにした作品も多い。代表作「Spade」チェアや「Roly-Poly」チェアは、その彫刻的なフォルムで広く知られている。自身を「アウトサイダー」と呼ぶ彼女は、建築家、彫刻家、家具職人、イラストレーターが交差する場としてのスタジオを築き、ジャンルを越えた協働から生まれる詩的で前衛的な作品を世に送り出している。
Collection -
FIVE SPIRITS,
ONE SUGI
Designed by Faye Toogood
Faye Toogoodは吉野山を訪れた際、森の静けさに満ちた精神的な気配に強い印象を受けた。杉の枝を風が渡る音に耳を澄ませながら、彼女は一本の大きな木が、その長い生のあいだに森のまわりから何を聞き、何を学んできたのだろうかと想像しはじめた。
「FIVE SPIRITS, ONE SUGI」は、彼女が子どもたちに読み聞かせる物語を思い描きながら書いた物語である。
吉野の森に生きる5匹の動物が、長い時間を生きる一本の木を訪れ、それぞれの知恵を分かち合う。やがてそのときが来ると、杉は自らの体を差し出す。森を近くに感じさせるかたちの中で、もう一度生きることを知っていたからである。シカの弓なりの線。キツツキのリズムの刻み。ヒキガエルの地に根ざした曲線。キツネのずる賢い角度。クマのやわらかな重み。
木にささやいた 動物たちの声
杉は百年
立っていた
それからさらに半世紀
沈黙のなかで
そして ひづめがひとつ ふるえながら
がまん強い森の地面を わたってきた
シカがやってきた
ほとんど
足あとも残さず やわらかなクエスチョンマーク
弓なりの線のそばで
彼女は言った 「かたむくことは倒れることじゃない
それは 光に仕える生き方」
キツツキは聞こえた
姿が見えるより先に カタカタとひびく
タップ タップのリズム
くちばしが木の皮を打つ 彼は止まり
言った 「続けることは見るための方法
暗い場所を通り抜けるための」
ヒキガエルは息を吸い 吐き
そして跳んだ 苔と影から
その背中は 風雨にさらされた石
「耐えることは住まい
そして待つことが
家をつくる」
すばしこいキツネがななめから入りこんだ
いたずらがそうするように
そして にやりと笑い
「すべての道が並んで待っているわけじゃない
いくつかの道は
きみがつくるもの」
クマがやってきた
重く そして夕方のようにあたたかく
その声は低く 森のように深かった
「強さは いちばんやさしい
かたち
やわらかさがそれを導くとき」
木は彼らの教えを受け取った
根と葉を通して
その知恵を
年輪と木目に刻み
枝はそのささやきをこだまさせる
風が吹くたびに
そして
その体が旅に出て
椅子というかたちへと
作り変えられたとき
森は木の下で息づき
ささやいた
「生きて もういちど」
[CREDIT]
- Photos:
- MEGUMI
- Web design:
- Tomohiro Tadaki [Thaichi]
- Edit & Produce:
- Hitoshi Matsuo [EDIT LIFE], Rina Kawabe [EDIT LIFE]






















