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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

The Door to New Style Opens in Ginza

坪田 あさみ フリーエディター

人生のピークを60歳と定めている私にとって、40代はまだまだひよっこ。イタリアンマダムのような日に焼けたゴージャスな肌に、ゴールドのチェーンネックレスを何重にも巻き、スジ足と言われる引き締まった脚でヒールを履きこなす。シワや白髪、デコルテのそばかす(シミ?)さえも勲章のようにまとい、大人の色気を自信満々に放つ。若輩者は太刀打ちできないような迫力のある存在感と大人な文化はまだ日本には根付いてはいない。

小手先のおしゃれだけじゃない、本当に手に入れたいのはその先にある何か。装うことに対するフィロソフィーは、生き方やライフスタイルと決して切り離すことはできない。またその逆も然り。もちろん一足飛びにはその境地にたどり着けるわけもないが、目標とする60歳までに幸いまだ時間はある。

10年後自分はどんな女性像を手に入れたいだろうか? そんなことを妄想したい日はヒントを探しに大人のためのワンダーランドGINZA SIXがちょうどいい。今日はイタリアブランド縛りで気になる店を巡ることにする。

まず訪れたのは、南イタリアの陽気なムードと地中海をイメージした内装で個性を放つ「Gente di Mare(ジェンテ ディ マーレ)」(4F)。イタリアブランドといえばクラシカルなイメージが強いが、こちらは今どきなイタリアンカジュアルブランドが勢揃いする、日本人にも着こなしやすいセレクトショップ。以前はメンズが中心だったが、今年の2月にユニセックスな店舗へとリニューアルを遂げた。ゆったりとした店内には、ファッションはもちろん雑貨やアクセサリー、インテリア小物などがディスプレイされ、トータルで楽しめるようになっている。

新しく加わったというレディースコーナーへ。アスペジやチルコロ、デュノなど人気ブランドが充実していて、大人の夏スタイルに使いやすそうなアイテムが豊富だ。

若い頃はストリート誌の編集部に勤め、その後フリーになってからもカジュアル畑を歩いてきた私にとって、年齢を重ねたからといって必ずしもコンサバティブなスタイルへ移行するわけではない。それでもただのカジュアルスタイルでは顔も体もついて行かないと感じている40代にとって、こうした洗練された大人のカジュアルブランドとの出会いはとても貴重だ。おしゃれの幅が一気に広がる気がしてうれしい。

チルコロで定番人気だというストレッチコットンジャケット(59,400円 ※以下全て税込価格)をはおらせていただく。これまでロング丈のボクシーなメンズ風ジャケットばかり着ていた私にとって、このコンパクトさと軽い着心地はかなり新鮮。やはりイタリアンマダムはジャケットでさえも女らしさを意識したシルエットで、カーヴィに着こなすのだと再認識。かっちり真面目になりすぎず、ストレスフリーな着心地もいい。リモート会議など上半身だけできちんと感を表現することが多い昨今、自宅でも快適に取り入れられそうだ。

店内には洋服はもちろん小物類もイタリアブランドが充実している。シンプルなデザインとカラーリングでどんな服にも合わせやすいと人気上昇中のスニーカーブランド「フィリップモデル」(59,400円〜)も多数セレクト。スポーツブランドのカジュアルさとは一線を画すたたずまいは、大人のこなれ感を演出してくれそう。6月23日からはGINZA SIXの3階でPOP UPも開催される予定だそうだ。

海のそばで暮らしている私にとって、ストール(25,300円)などのビーチで映える布類は何枚あっても困らない。遊び心や可愛げのある色柄と巻きやすく軽い質感のものは、首や頭に巻いて日よけ対策に、またカゴバッグに入れてアクセントにするなど大活躍だ。自宅で洗えてすぐ乾くのも夏にちょうどいい。

私物のバングルとも馴染みすぎてこのまま付けて帰ってしまいそうなバッファローホーンの細バングルは「ランドシヌール」のもので一本1,430円というリーズナブルさ。多連付けしても迫力が出過ぎず、手持ちのバングルや時計とも組み合わせやすそう。繊細な色みがしゃれた印象に見せてくれる。薬指につけたリング(3,850円)もビッグサイズながら焼けた肌に馴染み、上品なカジュアルさを演出してくれる。

他にもカラフルな絵付けが楽しいフィレンツェのキッチン雑貨やカプリ島の高級フレグランス「カルトゥージア」なども購入可能。ぐるりと店内を見て回るだけでも異国情緒を満喫できるよう考えられている。プレゼントを探す時にもチェックしたい。

続いて、実用性が必要な靴の場合、どんなおしゃれで履きたくとも年齢とともに諦めてしまうデザインがある一方で、女としての矜持を感じるイタリアンマダムたちの足元に少しでも近づきたいと思い、やはり今年の2月に満を持してオープンした「Gianvito Rossi(ジャンヴィト ロッシ)」(2F)を訪れることに。

シューズ界のマエストロを父に持つジャンヴィト ロッシ氏がデザイナーを務める人気ブランドだが、オンリーショップを構えるのは都内ではここだけ。これまでセレクトショップやデパートの靴売り場でコレクションの一部を購入できたが、独自の世界観を体感できるこちらはジャンヴィトファンならずとも絶対に見逃せないスポットである。

エレガントで女らしく、それでいて今どきなエッジを効かせたデザインや、緻密に計算されたハンドメイドならではの履き心地のよさが両立するジャンヴィト ロッシの靴は「走れるパンプス」として名高く、女性誌で特集されることも多い。ペタンコ靴ばかりですっかりふくらはぎの筋肉が退化してしまった私も、こちらのパンプスなら履けるのではと試着させていただくことに。

着用したのはブランドを代表するヒール高8.5cmのパンプス(86,900円)。体重を支えるスティレットヒールのほっそりした美しい見た目に反し、安定感抜群で全くグラつかない。高いヒールで歩く時特有の余計な力がかからず、ヒールを履いている緊張感がほとんどない。「走れる」という評価にも納得だ。

イタリアの石畳の上をパンプスで歩くのは東京のアスファルトのそれよりも何倍も大変だと思うが、妙齢のマダムたちが現役感たっぷりに闊歩できるのは、長い歴史を持つイタリアのクラフツマンシップが若い世代のデザイナーズブランドにもしっかりと継承されているからだろう。

着用したのはスウェード素材のダークオリーブ。辛口ながらニュアンスを含んだ絶妙な色合いにうっとり。甘くないのにセンシュアル。大人のいい女度をアップしてくれること間違いなしだ。

スウェード以外にスムースレザー、パテントと3種類のレザーに15色以上のカラーバリエーションが揃う。色出しの美しさにしばし目を奪われる。一足に決めるには数日かかりそうだ。

とはいえ仕事柄デイリーに履く靴は楽ちんであることがファーストプライオリティである私は、安心感のあるフラット靴も何足か試させていただいた。フラットでもきれいに見えるフォルムは、会ったことのないジャンヴィトさんにブラボーとお伝えしたくなるほど。こちらは人気の「プレキシィ」のフラットタイプ(88,000円)。

牛革と透明なPVCを組み合わせたデザインは、肌の抜け感があり、フラット靴にありがちな野暮ったさは皆無。ポインテッドトゥなのもスマートだ。改良を重ねたというこのPVCは足への当たりがとても柔らかく、レザー以外の素材にも妥協がないのはさすがで、高級ブランドへの信頼感がさらに高まる。気温の上昇とともに柔らかくなるから、素足で履く真夏はさらに快適にフィットするだろう。

カジュアルなストラップサンダル(83,600円)もジャンヴィト ロッシの手にかかればしゃれ感倍増だ。夏の鉄板カラー・メタリックシルバーは白よりも汚れが目立たず、モダンで華やかながら合わせる服をえらばない万能色。足首周りのストラップはゴムになっているので着脱にストレスがなく、せっかちな私にとってはうれしい限り。

ナッパレザーを編んだストラップが特徴的なデザインとポップな色が可愛すぎる新作「トロピア」もディスプレイ。まさに大人の遊び心が満載!

さらに、日本ではまだ広く知られてはいないが、本質を見極めることや自分だけの個性を重要視するイタリアンマダムたちに人気のバッグブランドがあるとお聞きし、1928年創業のミラノの老舗「SERAPIAN(セラピアン)」(3F)にも立ち寄ってみた。鮮やかな内装にあしらわれた「モザイコ」ウォールの圧倒的な美しさにしばし目を奪われる。

こちらの店舗では日本で唯一セラピアンのビスポークサービスが受けられ、何百通りものラムレザーのコンビネーションから好みのバッグをフルオーダーすることができるという。初回の打ち合わせはイタリアの職人とZOOMで繋いで行うそうで、なんだかとってもワクワクする。完成まで約4か月かかるが、特別な逸品を手にする贅沢はそのくらいの時間の経過がちょうどよい。

ちなみに私が座っているこちらの椅子にもモザイコ柄があしらわれていて、さりげなくラグジュアリーさが漂う店内。イタリアでは車の内装をフルオーダーする強者もいるそうで、一体どれくらいの月日と金額がかかるかなど、庶民には想像もできない。

このモザイコ柄だが、近くで見れば見るほどその繊細さに驚かされる。細かな切れ目の中に短冊状の細長いレザーを一本ずつ編み込んでいくのだが、たわみや緩みが出てはいけないし、力が入りすぎると土台のレザーに亀裂が入ってしまいそう。

ミラノの工房では4人の熟練したクラフツマンがいて、既製品の中にも彼らのちょっとした遊び心や個性が加えられることもあるそうだ。つまり既製品でも世界にたったひとつの逸品を手にするラッキーな人がいるということ!

現在特に人気なのがコンパクトなフォルムの中にモザイコ柄を堪能できるモダンな「ぺトラ」。マチがしっかりあり小さめサイズながら身の回りのものをきちんと収納できるのもいい。取り外しができるショルダーストラップがついているので、アクティブなムードでも楽しむことができる。

ワントーンのモザイコ柄も美しいことこの上なし。これだけ上質なレザーと職人技が組み合わせされば相当お高くなるのでは、と身構えてしまったが、こちらは147,000円とうれしい価格設定。本物の上質さを知るマダムたちに支持されているのも納得だ。私もさっそく“欲しいバッグリスト”に追加した。

リュクスなムードの小物類も豊富にラインナップ。ちょうどお財布を探していた私はピンクやオレンジの色鮮やかなモザイコ柄のコンパクト財布が気になってしょうがない。

コロナがきっかけで生まれたマスクケース(各15,400円)はプレゼントとしても人気だという。飲食中にこんなしゃれたマスクケースがさっと出てきたら思わず惚れてしまいそうだが、自分だと大量の領収書を入れてパンパンに膨らませている様子が目に浮かび思わず苦笑する。本物のエレガンスにはまだまだ遠い道のりだ。

これまで好きだったものが全く似合わなくなる「おしゃれ迷子」になる人がアラフォー世代には多いというが、それは経験値を重ねて自分をよく知っていると思うからこそ、陥りがちなことではないかと思う。「年を取ったから似合わない」のではなく、「次の世代にステージが上がった」時、どんな自分になっていたいかをイメージすることが重要で、それは新しいおしゃれの扉を開くきっかけにもなる。そんな妄想をするのにGINZA SIXほど刺激を与えてくれる場所はないように思う。理想の10年後を探す旅はまだまだ続く。

Text: Asami Tsubota Photo: Makiko Obuchi Edit: Yuka Okada(81)

GINZA SIX EDITORS Vol.108

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坪田 あさみ

出版社勤務を経てフリーのエディター・ライターとして独立。大人世代の女性ファッション誌をはじめ、書籍、カタログ、webコンテンツなどの企画・編集・ライティング全般に携わる。マリソルオンラインにて「おしゃれと暮らしと時々名品」を連載中。オムレツサンドが人気の逗子にあるカフェ「サンダウナー 東京オムレツ」も経営する。 Instagram: @asamit1201
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

2021.05.15 UP

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