交差する感性と未来を切り拓くプロダクトの共鳴
海外から異なる文化を背景にGINZA SIXへ訪れるゲストの探究心の先にある、ブランドとプロダクトを発掘!彼らの熱い視線が向けられるのは、懐かしさと新しさ、自然とテクノロジー、機能と装飾、最先端と伝統など、相反する要素を強靭なアイデアで両立させたものたち。なぜ、これらのクリエーションが人気を集めるのか。また、幅広いジャンルの最高峰が揃うGINZA SIXの特質とは何か。ここでは西洋的な基準だけに捉われないスタイリスト、SF作家兼外資系企業のコンサルタントといったクリエイターたちの表現から、その答えの一端に迫る。ドメスティック一辺倒の価値観を揺るがすラグジュアリーを手に入れて、変貌を遂げる準備を始めよう。
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An Eye Toward the Past and Future
国際的な視点から捉える
懐かしくも新しい人間像
「現代のファッションがどこから来て、どこへ向かうのか。前後の流れを捉えた上で、ビジュアルづくりに携わっています」
東京を拠点に活動するスタイリストの山口翔太郎さんは、国内外のファッション雑誌で数多くの仕事を手がけるフロントランナー。今特集ではGINZA SIXのグローバルメゾンから、ウェア、ジュエリー、ガジェットをモデルと掛け合わせ、ヘアメイクや背景とリンクしていくスタイリングを担った。
「新しくも、どこか懐かしい。そういうものが自分にとっては心に残るビジュアルです。上のルックはMcQUEENの最新ドレスですが、髪型はアレキサンダー・マックイーン本人がデザインをしていた時代のコレクションを思い出させもするし、東洋的なまとめ髪とも通じるタイトなフォルム。過去とは切り離されていないけれど、違和感というかたちで未来を感じさせるファッションストーリーが偶発的に生まれました」
そんな山口さんのキャリアは独自の軌跡を描く。日本で実績を積み上げて世界へ、というより、国外のマガジンに直接コンタクトを入れるところから撮影を実現させ、逆にそのクリエーションが日本の雑誌やブランド、セレブリティの目に留まり、今の活躍に至る。
「この“迂回”が、日本の業界を絶対視せず、外側の視点から自分たちの強みに気づくきっかけになりました。西洋的な美の価値基準が強かった世界的なファッションの流れのなか、アジアというバックボーンは変化球という自覚がありましたが、今は違う。海外のクリエイターが発信するビジュアルに触れて目を鍛え、国外のオーディエンスを意識しながらも、西洋発のものを手本にするのではなく、これまで見たことのないものを提示したいです」
Shotaro Yamaguchi
山口翔太郎/1987年京都府生まれ。スタイリスト。2011年に独立。国内のファッション誌をはじめ、ロンドンの『TANK MAGAZINE』、アムステルダムの『FANTASTIC MAN』、ヘルシンキの『SSAW』といった海外誌、ファッションショー、広告、セレブリティのスタイリングを手がける。
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美醜の規範を問いかけたファッションモード界の伝説的アンチヒーロー、アレキサンダー・マックイーン。そこに新たな解釈を書き込んだのが、若きクリエイティブ・ディレクターのショーン・マクギアーだ。この秋冬からGINZA SIXで展開となった就任後初のコレクションから、ここではジャージー生地にラミネート加工を施し、波のように輝くドレスを。カーフレザーを使用したポインテッドトゥのアンクルブーツ、そのヒールの後ろには、ブランドを象徴するスカルがエンボス加工で刻印されている。
ドレス¥ 467,060・ブーツ¥223,850〈ヒール7cm〉/アレキサンダー・マックイーン(3F)
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Awaken Your Inner Glow
肌の秘められた輝きを呼び覚ます
至高のデイリーケア
心の内奥に働きかけ、美しい肌を創造する。社会と接するその表面をいつくしむアプローチは、未来の美を発掘する行為かもしれない。
究極の美容機器を日本の技術で作り出す「A. GLOBAL」。2023年秋に多様な美を求める世界のユーザーへ届ける意志を示し、旧ブランド名「ARTISTIC&Co.」から名称を変更した。ブランドを代表する美顔器“ZeusⅢ”は重厚感があるが手に取ると約186gと軽量。ヘッドには肌に馴染む24金の表面加工が施されている。電気の刺激で表情筋を活性化し、中高周波によって肌の奥まで温め血流促進。潤沢な機能を搭載しながらも直感的に操作できるタッチパネルや言語設定など、ユーザビリティにもこだわった日本製の安心感が、世界中のユーザーを惹きつけている。
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企画から設計、製造まですべてのプロセスを岐阜県の羽島市で一貫して行う100%のジャパンメイド。彫刻作品のような美顔器“ゼウスⅢ”は従来なら複数の美容機器に分かれた機能を1台に搭載したオールインワン。また、国籍、性別、年齢それぞれの多様な美しさに根ざしたライフスタイルに対応するため定額利用サービスを開始。プレミアムプランは月額¥15,000で“ゼウスⅢ”を含む全17種のプロダクトから1点を選べて気軽に体験できる。
美顔器“ゼウスⅢ” ¥330,000/エーグローバル(B1F)
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Tech Meets Tradition
精緻なテクノロジーを搭載し
風格のある伝統的な装飾をまとう
精緻なテクノロジーは、実用性を追い求めて辿り着いた高性能の先に、遊び心を宿す。現代のパーソナリティに高揚と活気をもたらすのはファッションだけではなく、日々の暮らしをともにする道具。
シチズン時計の“カンパノラ”は、1918年の創業以来、100年を超える時を刻むマニュファクチュールが育んだロマンの結晶。手元の小さな腕時計に視線を落とす一瞬に、壮大な天空を思う気持ちを封じ込めた2024年7月発売の限定モデル“星顕”は、漆塗りに貝の真珠層を散りばめる伝統技法「螺鈿」で星のまたたきを表現する。模様には個体差があり、自分だけの一本を見つけることができる。太陽光や室内光をエネルギー源として時計を駆動させるシチズン独自の光発電技術、エコ・ドライブを搭載し、環境保護への意識が高い海外のゲストにも人気だ。
銀座、そしてGINZA SIXで過ごす束の間、世界各地の文化や芸術、職人技術に触れてきたインバウンドのゲストを新鮮に刺激する、伝統を取り入れたオリジナルが貫かれている。
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〈CITIZEN FLAGSHIP STORE TOKYO〉
1918年に創業し、時計の部品から、完成時計の組み立て、調整まで自社で一貫して製造できるマニュファクチュールとして、世界約140の国と地域でビジネスを展開しているシチズン時計。GINZA SIXのフラッグシップストアに併設される工房には熟練の修理技師が在籍。修理やメンテナンスの案内はもちろん、普段は目にすることのない腕時計の内奥を知り、時を刻むメカニズムをその場で知ることができる。愛用品との関係性を支えるサポートも充実。
ウォッチ“カンパノラ”〈光発電エコ・ドライブ、ステンレス、ケース径43.5×厚み14.8mm〉¥385,000/シチズン フラッグシップストア トウキョウ(1F)
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At the Crossroads of Innovation
思いがけないイノベーションは
多様な欲望が集まる場所で起こる
グローバルなゲストが注目するブランドとプロダクトを発掘し、そこから未来の素描を試みた本企画。ラストは外資系コンサルタント、そしてSF作家として独自の世界を切り開く樋口恭介さんにインタビュー。SF思考を補助線にGINZA SIXのさらなるパースペクティブを提示する。
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ここではないどこか。SF(サイエンス・フィクション)はいつも未踏の地を目指してきた。好奇心旺盛でダイナミックなその視点の先にある隠された未来を見通すべく、SF作家の樋口恭介さんに話を聞いた。
「小説を書く一方で、東京大学で教鞭をとり、外資系コンサルティングファームにも所属しています。いわゆるコンサルタントとして企業と手を組み、事業計画、経営戦略を考える。現状に課題を感じて、変化を求めている人々に並走し、どういう変化をしていくべきかを考え未来のシュミレーションをする役割と言ったらいいでしょうか」
樋口さんがその実行者であるように、未来を捉えようとするSF 思考は、現代においてさまざまな領域に応用されている。文化的なコンテンツだけでなく、大企業による商品開発や新規事業の構想といったビジネスの分野、都市開発の現場においてもSF作家がチームの一員に加わることは、世界的にごくメジャーな動きになってきた。
「そもそも日本には『ドラえもん』をはじめ、イノベーション思考を体現するアニメや漫画のアーカイブがあるでしょう。だから納得しやすいと思うのですが、SFとは、壮大な話だけではなく、現実を絶対視せず、そんなこともあり得るのか、と思考させる営みのすべてです。そのオルタナティブが、かえって現実をつぶさに観察し考え直すきっかけになり人間の欲望を逆照射する。“それ以外の道”を求めることが未来を創造していくのだと思います」
そうしてさまざまな角度で未来へのアプローチを試みる樋口さんは、GINZA SIX、銀座、そして東京というグローバルな都市の可能性をどう見ているのだろうか?
「まず、都市が持つ交差性というのは、未来を切り拓くイノベーションの土壌になると思います。東京、特に銀座など、観光客の方々が多く訪れる都市には、あらゆる国の言語が行き交い、異なる文化圏の方々の欲望を目の当たりにできる。その勢いを体感することは、どう考えても、いいことです。人間は、他者の欲望を知って、そちらが気になり、違う方向へ行きたくなる生き物です。バブルとバブルがぶつかり大きくなったり、いびつなかたちが生まれたり。自分とは異なる人間と出会い、自分や世界の輪郭が拡張されていくのが、僕が希望を持つ都市のイメージですね」
さらに都市を舞台とする文化のなかでも特にファッションは、ここではないどこかを求める最たるもののひとつと言えるのかもしれない。欲求としての物欲をエネルギーにして自分の新しい輪郭を更新しようと試みる。すると、前もって想像していなかった自己のイメージや内面的なアティチュードと出合ったり、これを着てどこに行こうか、何をしようか、と未来の行動が作られていく。
このパートでも紹介している「AMBUSH®」をはじめとするユニセックスなムードのアクセサリーは特に象徴的だ。かつてパールは女性が身につけるものという意識があったが、その垣根は完全に溶解しつつある。今企画のビジュアルしかり、クリエイターが生み出す写真や映像が新奇な人物像を提案し、それがSNSを通して世界の裏側まで届けられ、選択肢を複数化していくのだ。
「都市の文化であるストリートカルチャーの本質は“ナシをアリにする”という営みでしょう。こうあるべきだ、という規範をひっくり返し価値観を刷新してしまう。醜いとされたものをクールなものにしてしまう。ファッションにはそういう歴史がありますよね。人工物ってやっぱり面白いな、とSF作家としては言いたい。人は、人に影響されるだけではなく物からも触発されます。それもまた、他者です。GINZA SIXという“箱”のなかにも多方向の欲望があり、人工物がうごめいている。そこで何を選び、自分のものにするか。その組み合わせには、独自の知性と自分自身を未来に向けて分岐させていく力があると思います」
Kyosuke Higuchi
樋口恭介/1989年岐阜県生まれ。作家、コンサルタント、東京大学大学院客員准教授。早稲田大学文学部卒業後、外資系コンサルティングファームに勤務。現在はテクノロジー部門のマネージャーを務め、DX戦略を中心とする案件を手がける。2017年に『構造素子』で第5回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞してSF作家デビュー。また、編集者として『異常論文』をはじめ、雑誌やWEBで企画や制作。スタートアップ企業Anon Inc.のSFプロトタイピング案件も数多く担当し、日本国内のその分野の発展に関わる。
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ライターやピルケースといった日用品をジュエリーに転じて、装飾品に対する既存の価値観に風穴を開けたAMBUSH® 。2024年秋は上品な印象のパールに相反するチェーンを合わせ、可愛らしいベアのモチーフにクリスタルをまとわせてラグジュアリーに昇華するなど、馴染みのモチーフを、パワフルな存在に転ずるセンスは秀逸。
上からイヤリング(2個セット)¥49,500 ・リング¥44,000・ネックレス¥242,000・ネックレス¥242,000・ネックレス¥61,600/アンブッシュ® ワークショップ ギンザ(3F)
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*掲載内容は9/2(月)時点の情報です。
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Editor in Chief: Yuka Okada (81)
Edit & Text: Yoshikatsu Yamato
Photos: Saram Han (McQUEEN, A. GLOBAL, AMBUSH® WORKSHOP GINZA)、Kohei Kawatani (CITIZEN FLAGSHIP STORE TOKYO)
Styling: Shotaro Yamaguchi (McQUEEN, A. GLOBAL, AMBUSH® WORKSHOP GINZA / eight peace)
Hair: Waka Adachi (McQUEEN, AMBUSH® WORKSHOP GINZA)
Makeup: Yoko Minami (McQUEEN, A. GLOBAL, AMBUSH® WORKSHOP GINZA)
Models: Nizi (AMBUSH® WORKSHOP GINZA / THE MANAGEMENT)、Tian (McQUEEN, A. GLOBAL / Image)
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