GINZA SIX EDITORS
ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。
世界の「GINZA」で、一級品に目もくらむ夢心地の時間 Spending Time Transfixed by Luxury Articles in a Global Ginza
河島 裕子
東京に住んで約30年…。とはいえ、10代前半までの多感な時期を地方で過ごし、40代になっても未だ田舎育ちマインドから抜けきらない私にとって、「銀座」という街はえらいキラキラしたオーラを放っているのです。さらに、とある婦人誌で年に一度の銀座特集を10年以上も担当させていただいてきたというご縁もあって、銀座の別格感を年を重ねるほどにヒシヒシと肌で感じるこの頃。GINZA SIXがオープンしたときには、かつて銀座の重鎮にインタビューした際に、「銀座は世界の『GINZA』へと変わろうとしている」という話を聞いたことを思い出し、まさにあの予言が今現実になるのだなぁ、と思ったものでした。
そんな私が銀座に足を運んだ時は、つい“大人にしか似合わない本物”を探してしまう。だからGINZA SIXで気になるショップは?と問われた時に私が迷わず挙げたのは、顔がシワッシワになるまで使い続けたい3つの憧れブランドでした。
1軒目は、ベルギーのレザーブランド「デルヴォー」。これぞ一生モノ!という逸品に出会える場所です。デルヴォーは、ベルギー王国建国の1年前の1829年に誕生し、1883年には王室御用達ブランドとして認められ、以降王室と密月関係を続けてきた由緒あるメゾン。世界最古のラグジュアリーレザーグッズブランドなのだそうです。
美術館のようなノーブルさが漂う店内に、整然と並べられたバッグたちの優雅で美しいことときたら…。いやぁ、素人目にも“極上”であることが伝わってくるレザーの質感は、圧巻です。
そんな中、遊び心を効かせたニクいヤツを発見! 限定品「ミニチュア・ベルジテュード」は、ブランドのアイコンバッグ「ブリヨン」のミニチュアサイズのバッグ型チャームで、バッグ同様、高い技術を持つ職人が同じ製法で造り上げているという、なんとも贅沢なアイテム。シュールレアリスムをテーマに、パンチの効いたデザインとリュクスなモノづくりを融合した、ベルギーらしいセンスがたまりません! チャームだけれど、実際に名刺入れとかにしちゃっても可愛いかも?なんて、思わず想像しちゃったりして。
しかし、私がここに来た真の目的はこちら。未来の私のパートナー、ショルダーバッグ「ミュタン」の下見です。“クリスピーカーフ”という表情のあるレザーの風合いもいいんだなぁ。こちら、2016年の秋冬にデビューしたのですが、その直後から目をつけておりました。早速、斜めがけにしてみたり、肩がけしてみたり、体へのなじみを思う存分チェックして…、う〜ん、やっぱり素敵!! ちなみにお値段は¥460,000(以下、全て税抜き価格)。まだまだ遠い道のりですが、いつの日か必ずや…。
すでに気分が盛り上がりまくっている私が次に向かったのが、大人の女性のための上質なベーシックを提供してくれる「ファビアナフィリッピ」。ニットの一大生産地であるイタリア・ウンブリアを代表するブランドの一つです。ニュアンスのある絶妙なアースカラーと肌に心地よいリッチな素材感が、「なんかあの人違うわ…」って囁かれてしまいそうな洗練された空気を醸してくれるのですよ。
このトルソーが着ているパーカーの肩から腕にあしらわれている“ルーチェ”というチェーンのディテールが、ブランドのシグネチャーモチーフとなっています。
ショップに足を踏み入れた直後、早速心惹かれるワンピースを発見! ウールシルクカシミヤのロングニットとプリーツワンピースを重ねた(って、写真では全身が見えず失礼! ぜひブティックでその素敵さをご自身の目でご確認ください)デザインは、それだけでオシャレ度極まってしまう一枚です(¥166,000)。これは本気でその場で買ってしまおうか迷いに迷いました。
さらに勧められるがままにトライしたのが、ルーチェのリボンタイがついたチェスナッツブラウンのシルクブラウス(¥138,000)とウールシルクのニットにフォックスファーがあしらわれたゴージャスなストール(¥270,000)。たちまちリュクス感漂うマダムに…。新しい自分を発見してしまいました。こんな未知との遭遇も、ショッピングの醍醐味ですね。
しかし、後日再び足を運び私が選んだのは、襟もとにルーチェのアクセントが施されたシンプルな白シャツでした。まずはここから私の“ファビアナ道”をスタートです。
最後は、フランスのレザーブランド「ペラン」へ。1893年に誕生し、今年創設125周年を迎えた歴史あるクチュールハウスで、こちらは日本初のブティックです。グローブメーカーとしてスタートしたブランドが生み出すバッグには、既成概念を超えたコンセプチュアルなものがたくさん!
グローブと一体型になったようなクラッチなど、手もとのお洒落にフォーカスしたデザインがユニークです。
こちらはかの名建築家、故ザハ・ハディド女史とのコラボレーションのクラッチバッグ(¥304,000)。手の甲をドラマティックに彩るデザインは、アヴァンギャルドな雰囲気ながらとてもエレガント。メタルパーツは、右手にも左手にもフィットする絶妙なフォルムです。
余談ですが、私は夫がフランス人ということもあり、フランスを訪れる機会がしばしばあるのですが、フランス人の着こなしで素敵だな、と思うのは自分にぴったりと似合うレザーアイテムをケアしながら長く大切にしているということ。初めてパリに訪れた学生時代、パレロワイヤルあたりにあるグローブショップにふらりと立ち寄り、自分の手にぴったりと合うグローブを購入し、長く愛用していたことを思い出しました。以来、冬にフランスに訪れる際はついグローブショップをのぞいてしまうのです。
で、今やバッグがメインアイテムという「ペラン」で、おすすめのグローブがあるか聞いてみました。
すると、こんなグローブがありましたよ。「エッフェル」というシリーズのグローブ(¥110,000)は、防寒用というよりもはやアクセサリーですが、しなやかなレザーが手に吸い付くようで着け心地も最高。私のメンズばりのビッグハンドも優しく包み込んでくれました。手首にバングルのようなゴールドメタルが配されていて、只者ではないお洒落感です。
和装にも似合っちゃいそうな、小ぶりなハンドバッグたちも。この日は、つい黒いレザーばかりに目がいってしまいましたが、黒のレザーは、上質であるほどその魅力が発揮されるのだと、このペランで実感しました。
銀座の名所で本物に出会うひととき。名品と呼ばれるものの背景には、堅実なモノづくりとストーリーがあり、それがお洒落をいっそう楽しくしてくれるのだと身に沁みて感じた秋の初めのファッションクルーズでした。
Text:Hiroko Kawashima Photos:Sachiko Horasawa Edit:Yuka Okada
GINZA SIX EDITORS Vol.57
河島 裕子
アパレル商社勤務の後、フリーのファッションライターに。現在は『家庭画報』をはじめ大人の女性に向けた雑誌で、ファッションやジュエリー、時計を中心に幅広く執筆中。強烈な個性を持つフランス人の夫と息子の三人家族。2018年9月より、拠点をフランス北部の田舎に移し、大自然の中でのんびり生活をスタート。移住直前に猛勉強した金継ぎと蒔絵を、フランスの地で実践中。夢は、フランスの田舎(できればブルゴーニュ)で家族とともにB&Bを営むこと。Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中