The Undiscovered Italy あなたが知らないイタリアの顔
Interview with Kazuki Toyoda
DIRECTOR
「コロナ禍は試練というよりも“準備期間”だと捉えています。EコマースやSNSの浸透が急速に進んだここ10年ほどで、ファッション業界の様相は大きく変わりました。パンデミック以前は走りながら考えているような状態でしたが、今こそじっくりとこれからのことを考え、世界が元に戻った時に備える好機。そんな想いのもとでショップの拡張に踏み切りました」
店舗面積を約3.5倍に広げ、ウィメンズアイテムも揃えてリニューアルした「ジェンテ ディ マーレ」のGINZA SIX店。その舵取り役を務める豊田一樹氏は、出口の見えない難局の中でもポジティブな姿勢を崩さずにいる。
〈ジェンテ ディ マーレを指揮する豊田一樹。イタリアに太いパイプを持ち、数々のブランドを日本でヒットさせてきた。フィレンツェで年2回行われる服飾展示会「ピッティ・ウォモ」にも欠かさず赴き、新鋭の発掘に心血を注いでいる。〉
ショップ名はイタリア語で「海の人」という意味。世界観のモチーフとしたのは、イタリアの“かかと”部分に位置するプーリア州の街並みだ。アドリア海に面し、白亜の家々が並ぶリゾート地。抜けるような青空のもとでオリーブの木々が実をつける、開放感にあふれた土地である。そんな当地の象徴的魅力を投影して、透き通った海、輝く太陽を思わせるブルーとイエローの壁がクリーンな店内のアクセントとして配されている。大幅増床とも相まって、寛ぎの中にほのかな高揚感を覚える心地よいムードに満ちた空間だ。そこに並ぶのは、ジャージー素材を使ったジャケットやクリーンなカジュアルシャツなど、快適な着心地と洗練を両立させたアイテムの数々。エフォートレス意識が高まる昨今のニーズにもぴったり合致するラインナップだ。
〈南伊プーリアをイメージしたオブジェや写真をちりばめ、開放的な空間を演出。実際に現地で購入したものも多いそう。〉
「イタリアのファッションというと、洗練されたミラノや色気あるナポリのスタイルを想像する方も多いかもしれません。しかしジェンテ ディ マーレがお伝えしたいのは、それらとはひと味違うイタリアの魅力です。プーリア人たちは、皆のんびりと大らかな性格。ファッションに関しても、ビシッと決めるというよりは肩肘張らない自然体の装いを好みます。それでいて、あくまでエレガンスを大切にするのがイタリア人らしい。そんな彼らのスタイルを日本にもご紹介したいのです。名店がひしめく銀座ですが、当店のようなドレスカジュアルを機軸にしたショップは意外と数少ない。そこに独自性を感じていただけると思います」
この秋冬にはイタリアを代表するテーラリングブランド、ラルディーニの展開もスタート。多くのショップが取り扱う超人気銘柄だが、ジェンテ ディ マーレではリラックス感を重視したプーリア的スタイルに落とし込んで提案されているのが印象的だ。
〈秋冬から展開するラルディーニは、伝統の職人技とモダンな感性の共存で大人気を博するブランド。左/コート 220,000円(ラルディーニ) シャツ 62,700円(アスペジ) 右/コート 149,600円・ジャケット 137,500円(ともにラルディーニ) シャツ 27,500円(ジャンネット) パンツ 38,500円(ブリリア 1949)〉
「とにかく、プーリアのライフスタイルに惚れ込んでしまったのです。景色は綺麗だし、酒も食事も最高。人々もあたたかい。出張で数日過ごすだけで、とても豊かな気分になります。イタリアには、日本人がまだ知らない顔がたくさんある。そんな新しい魅力を知るきっかけとして当店がお役に立てたら、これほど嬉しいことはありません」
ファッションを通して、新たなライフスタイルに出会う。ジェンテ ディ マーレは、そんな発見のための場所だ。
〈メンズ・ウィメンズがバランスよくラインナップ。パートナーとショッピングを楽しめるGINZA SIX店。〉
Text: Hiromitsu Kosone
Photos: Miyu Takaki
Editing Direction: Yuka Okada(81)
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