A Bridge to India ファッションの先にある今のインドを
Interview with Mami Jin
Owner
GINZA SIXでもっとも色彩に溢れた店であり、インドの手仕事を落とし込んだ服や雑貨をキュレーションする「パサンド バイ ヌキテパ」。そのオーナー神 真美さんとインドとの物語の始まりは、ロンドンでファッションを学んだ時代に遡る。学生でありながら、プロジェクトをきっかけにファッションコンサルタントとして起業したのは23歳のとき。程なくしてインドで洋服を作りたいと思い至る。
「理由はその頃一緒に仕事をしたインド人たちの心の大きさに魅せられたから。何もかも円滑に進まないお国柄なのに終始親切で、ルールがないぶん柔軟なんです。それと私は幼少期から通信簿で『集団行動が苦手』と指摘されてきたタイプで(笑)、常に“人と同じことをせずどうジャンプできるか”を模索している部分があって、ロンドンにはあるのに当時の日本になかったインドの服に『可能性があるかも』と」
〈ウォッシャブルなのも重宝する、ヌキテパの定番ワンピースを着こなす神 真美さん。壁に見るデリーの蚤の市で買った宗教画は「ほのぼのとした牛の絵が穏やかな気持ちになりませんか?」と語る。アルミのフラワーベースはGINZ A SIX店でも販売中。自邸にて。〉
そこから一切のコネもないインドに通い、当初は失敗も重ね、出会えた現地のパートナー、工場や職人に支えられること約20年。今回のコロナ禍を受け以前は年4〜5回通っていた工場に行けない状況でも思い通りの商品が仕上がってくることを、神さんは「20年来のつながりがあるから今の私があることを教えてくれた」と振り返る。
〈一角のフォトギャラリー。インドの少女に囲まれた若い日の神さんの姿も。〉
そうして店頭に届けられる主軸のブランドは3つ。ヒンディー語で“お気に入り”を意味する“Pasand(パサンド)”に紐付いて店名にも冠されたne Quittez pas(ヌキテパ)は、インド綿を使ったリラックスモードのワンピースブランド。mala KALANCHOE(マーラ カランコエ)はよりモダンなシェイプのワンピースに特化し、リサイクル素材を使い生産者の雇用環境に配慮するなど、次時代を見据えたブランド。ジュエリーブランドのUPARA(ウパラ)ではインド伝統の18金宝飾のハンドテクニックを残しつつ、削ぎ落としたデザインを叶えた。
「GINZA SIXに出店を決めたのは、いわゆる百貨店とは違って視野が広く、私にも似た自由な感性のお客様がギャザリングできる場所だと感じたからです。店舗も通路もスペースが確保され、社員が心地良く働けるとも思いました。今後は私たちのフィルターを通したインドのライフスタイル雑貨も充実させて、皆さんの日常に入っていける幸せをもっと伝えていきたい。iPhoneを見るだけで実際の旅をしなくなった人々に、先駆的でモダンな今のインドを」
〈上品な光沢と落ち感があるニュアンスカラーのオリジナルのレーヨンジャカードにやはりオリジナルの花柄をキルティング。新作のチャイニーズジャケット 各 41,800円〉
ちなみに今回の撮影は、最近も某有名デザイン誌の表紙に採用されたばかりの自邸で行われた。名作家具からアートまで、そこはまさに神さんが届けたいインドの物たちが集約され、多様な視野の人々がギャザリングするもう一つのかけがえのない場所でもある。
〈家具や照明はほぼ名作ヴィンテージ。こちらはピエール・ジャンヌレがインドのチャンディーガルの都市計画のために手がけたチェア。〉
「好きな仕事をして、世界を渡り、身の回りに好きなものを集めて、人生を全うする。パサンド バイ ヌキテパは、そんな生き方にチャレンジするよろこびを次の世代の女性たちに伝える店でもありたいです。
フラワーリング(ウパラ) 275,000円〈18YG×ムーンストーン〉・バングル(ウパラ) 660,000円〈18YG×ルビー〉
Text: Yuka Okada(81)
Photos: Miyu Takaki
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