What is the Future of Vintage?
ヴィンテージの目利きが選ぶ逸品
ファッショントレンドの移り変わりがますます目覚ましいなか、10年後、いや、50年後にも価値が失われることがないアーカイブとは? 4つの実力派ヴィンテージショップが言葉を通して継承する永遠のマスターピース。
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ALAÏAのジャケット
「創業者のアズディン・アライアは、永遠に語り継がれるデザイナーだと思います。まるで彫刻作品のように洗練されたデザインに、袖を通すと驚くほどに身体を美しく見せてくれるパターンワーク。ひとつの服に対して実直に取り組み、芸術的な作品を発表し続けた彼のDNAは、今の『アライア』にも強く感じられます。こちらはクラシックなショート丈のジャケットなのですが、フードつきというのが新しい。ラペルから続いているフードは一見カジュアルな印象を抱かせますが、首裏にダーツを入れることでシャープな雰囲気に。ウエストに向けてタイトになるのもミニマムです。様々なブランドで経験を積んだ現クリエイティブ・ディレクターのピーター・ミュリエならではのMIX感が楽しめる一着なのではないでしょうか」
ウエストに向かってダーツを施した、コンパクトなフォルムのショート丈ジャケット。ラペルと一体型のフードは実際に被ることもでき、シルエットに変化を与えられる。ストレッチウールツイル素材を使用。セットアップとして着られる同素材のパンツも展開している。¥266,200/アライア(3F)
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VALENTINOのミニドレス
「台形シルエットのミニドレスは『ヴァレンティノ』らしい一着。1968年に発表されたホワイトコレクションの資料からも、短めの着丈で、ブランドの頭文字である“V”のロゴがあしらわれたドレスが作られています。そんな当時の雰囲気を汲み取りながら、ファンシーツイードで可愛らしさを加えた本作は、まさにメゾンの真骨頂。その領域に達するには、クリエイティブディレクターであるピエールパオロ・ピッチョーリの、ブランドへの愛が不可欠だと思います。長年メゾンで歴を積んできた彼だからこそ、創業者であるヴァレンティノ・ガラヴァーニの意匠を受け継いでいる。そしてローマの工房にて生み出される、職人の高いクラフトマンシップを、何十年も絶えずに続けられているのも素晴らしいことだと感じます」
2023年フォールコレクションで展開するミニドレス。表情豊かなファンシーツイード生地に、襟と袖口、ポケットに配したパイピングがアクセントになっている。フロントポケットの“V”ロゴはブランドを象徴するモチーフのひとつで、華やかさと重厚感をプラス。¥500,500/ヴァレンティノ(B1F〜4F)
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Selection by [The Vintage Dress]
“ミュージアム”をコンセプトに、ヨーロッパで買い付けた希少なピースを手に取りながら買い物を楽しめる「ザ ヴィンテージ ドレス」。なかでも、店名でもあるドレスの取り扱いが豊富。昨年・今年と「VALENTINO(ヴァレンティノ)」のアーカイブを扱ったメゾン認定のイベントも開催し話題に。IG: @the_vintagedress
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Rick Owensのドレス
「『リック・オウエンス』のデザインは、無国籍かつジェンダーレスで、唯一無二の存在感を放っています。新しい風をファッションに吹き込んだ先駆者でありながら、今もなお昇華し続けようとする気概は、インディペンデントに活躍する未来のデザイナーの目標になると思います。彼が手掛ける服は命が宿っているようで、そして彫刻作品のよう。こちらのドレスは、まさにそんな特徴が表れています。ウエストから放射的に広がったドレープに、深いスリット、フレアに広がった袖は、優雅で大胆、そしてエレガント。一生クローゼットに残しておきたくなりますね。身に纏う年齢によって魅力が変わると思います。シワが増えたり、体型がだらしなくなってもいい。自分の成熟度に合わせてこのドレスもきっと、より美しくなるはずです」
「リック・オウエンス」のコレクションラインより。左右が非対称のデザインになっているロング丈のドレスは、ウエスト部分よりツイストするようにドレープが入ることで、流動的なシルエットを構築している。ボディや襟元はゆったりとしたスクエアカット。¥265,100/リック・オウエンス(3F)
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DIORのバッグ
「メゾンを代表する“レディ ディオール”バッグは、“カナージュ”ステッチを施し、淡いゴールドのメタル製D.I.O.R.チャームがシルエットを引き立てます。上品でさりげないデザインながら、時代を超えて愛されている名品ですよね。それでいてファッションと調和するのは、『ディオール』が服づくりから始まっているから。どんな装いにも似合うからこそ、アレンジが加わっても魅力が失われないんです。例えばこのバッグのように、横長のフォルムに変わっても誰もが“レディ ディオールだ”とすぐにわかる。デザイナーが代わってそれぞれの解釈が入ってもクラシックであり続けることこそが、永続的に価値があるアイテムたる理由だと思います。娘や息子へ、そして孫へと、代々受け継がれていってほしいバッグですね」
ダイアナ元妃がシンボルとなったことで知られている“レディ ディオール”を横長のフォルムにアップデート。滑らかなラムスキンに“カナージュ”のステッチを施したデザインはタイムレスな雰囲気。取り外し可能なストラップ付き〈W26×H13.5×D5cm〉¥690,000/ハウス オブ ディオール ギンザ(B1F〜4F)
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Selection by [EVA fashion art]
モードラバーに愛されている代官山のヴィンテージショップ「エヴァ ファッション アート」。オーナーの宮崎聖子さんが集める洋服や小物たちは、着る人が映画の主人公のようになれるかのような輝きを放つ。アーカイブを再解釈したリメイクや、オリジナルのアイテムも展開している。IG: @eva_vintagetokyo
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HERNOのニットブルゾン
「上質なニットは、正しく手入れをすれば一生着られます。なかでもイタリアメイドは作りも上質で、気候が日本と近いので着やすいものが多い。目を惹くカラーリングを得意としているのも特徴です。お店でもよく買い付けていますが、数十年後にヴィンテージとなったこの『ヘルノ』のブルゾンを見つけたら、必ずバイイングしますね。ポイントは、毛足の長いアルパカ混のニットが触り心地よいこと。白からグレー、ブルーへのグラデーションが繊細に表れているのは、良い素材を使用している証です。一方で、裏地は機能的なナイロンで。そのギャップがユニークながら、着心地に配慮されているのはさすが。一緒にいる時間が長ければ長いほど愛着が湧き、様々な着こなしが楽しめる。そんな素敵な相方になれると思います」
表地にアルパカを混紡したニット、裏地にナイロンを使用。高級感のある素材使いが上品な雰囲気を漂わせながらも、寒さから首を守る立襟や、開閉しやすいW使いのファスナーなど、機能性にも優れている。ストライプ柄のニットは、身頃と袖の柄合わせまで見事。7月入荷予定。¥152,900/ヘルノ(3F)
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Parabootのシューズ
「老舗シューズメーカーが作る“BARTH”は、普段履きできるところが長所。もちろん重厚感のあるフォーマル向けの革靴も素敵ですが、機能性が伴ってこそ長く語り継がれてゆく逸品と呼ばれるのではないでしょうか。フランス海軍潜水部隊に納入されていたデッキシューズをベースにした本作は、撥水性や速乾性に優れ、甲板に上がっても滑りにくいラバーソールを使用するなど、スペックは折り紙付き。『パラブーツ』ならではの品の良さも併せ持っているため、カジュアルな装いからセットアップまで幅広く合わせられるのも魅力。接客をするときにヴィンテージ服との合わせとして、このモデルをお客様にご紹介することも多いんですよ。色展開は定番の“AMERICA”からシーズンカラーまで、好きなものを選んで欲しいです」
タフな環境にも耐えうる本格的なスペックのデッキシューズ“BARTH”の定番カラー。水に濡れた路面でも滑りにくいオリジナルのラバーソールや片足でも着脱しやすいヒールキッカーなど、理にかなったディテールが随所に。アッパーには艶のあるカーフレザーを使用。“AMERICA” ¥35,200/パラブーツ(5F)
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Selection by [SURR by LAILA]
国から年代、デザイナーズブランドからミリタリーまでメンズヴィンテージを網羅したいなら「シュール バイ ライラ」へ。知識と経験を誇る店長の福留健太さんの接客は、服の背景やカルチャーを知ることができ、より理解を深めることができる。海外デザイナーの来店も多いのだとか。IG: @surr_by_laila
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DIESELのデニムパンツ
「2020年にグレン・マーティンスがクリエイティブ・ディレクターに就任した新生『ディーゼル』は、数十年後に改めて高く評価されると思っています。彼が手掛ける近未来的で力強いデザインが、世界中で愛されているブランドと融合し、面白い化学反応を生み出している。その象徴がロゴです。我々のようなショップでは、アーカイブを当時のロゴやモチーフで年代を分けることが多いのですが、遠い未来ではシャープな“D”マークが、ブランドにとって大事なターニングポイントになっているのかなと。ロゴパッチを腰部分に施したこちらは、ジーンズをトラックパンツに変換した現代アート的作品。様々な要素をMIXさせていく創造性には、ベルギー出身デザイナーならではの、シュルレアリスムへのアティチュードを感じます」
イージーパンツにオーバーダイ加工を施し、ヴィンテージの風合いを表現。ディーゼルの根幹ともいえるデニムを現代的に再解釈した脱構築的なデザインは、グレン・マーティンスが得意とする手法だ。ブランドカラーであるレッドは、生地にウォッシュをかけることで端正に。¥59,400/ディーゼル(5F)
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KENZOのデニムジャケット
「1990〜2000年代にかけて裏原宿カルチャーを牽引してきたNigoさんが手がける『ケンゾー』のデニムジャケット。現代のラグジュアリーストリートシーンの中でも、今後アーカイブされていくべき価値のある作品だと確信しています。カイハラデニムを使用した上質な素材と、絶妙なウォッシュ加工のバランス。ヴィンテージを熟知している彼だからこそ、経年変化したデニム本来の姿を表現することができるんです。胸ポケットやウエスタンスタイルの襟などのディテールも細かいですね。日本から世界へ羽ばたいていった歴史あるブランドと、デザイナー自身の原体験を組み合わせることで、作品にストーリー性が生まれ、より深みのあるデザインに昇華されていく。過去から現在、未来へとつながっていくと思います」
Nigoさんが愛用しているワークウェアに着想を得たトラッカージャケット。コントラストの効いたステッチや、ウエスタンカラー、洗いがかったデニムの風合いなどはヴィンテージを連想させる。短めのボクシーシルエット。¥114,400/ケンゾー(3F)
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Selection by [Archive Store]
店長の鈴木達之さんが世界中から集めたアーカイブを、ギャラリーのような洗練された空間で展示する「アーカイブストア」。1980〜2000年代のデザイナーズを中心に、1点もののウェアから、流通数の少ないシルバーアクセサリーまで、稀少価値の高いピースを取り扱っている。IG: @archivestore_official
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Edit & Text: Minori Okajima
Photos: Ayumu Yoshida
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