we+見えない価値を発見する、「Waste, Reborn.」デザインワークショップ
次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム「SCUOLA GINZA SIX」にて、コンテンポラリーデザインスタジオwe+を講師に迎えた特別ワークショップが開催されました。
we+は、リサーチと実験を通じて新たな視点や価値を生み出すデザインスタジオです。素材や自然現象、社会や環境との関係性に着目し、日常の中で見過ごされてしまうものに新たな価値を見出す活動を続けています。


今回のテーマは、「すてるものが、うまれかわる。- Waste, Reborn. -」
割れてしまったガラスや陶器や端材など、本来であれば廃棄される素材を活用し、世界にひとつだけの花瓶を制作するワークショップです。
「なぜ捨てられるのだろう?」から始まる創造の時間
ワークショップの冒頭では、we+のデザインへの向き合い方について紹介が行われました。

「今日の朝、朝ごはん食べた人。ヨーグルトの蓋とかペットボトルとかゴミが出るものがあったと思う人はいますか?」we+は子どもたちが日常で不要になるものがどれだけあるのかを想像するように促しました。
「同じゴミでも、形が細かく崩れてしまってリサイクルできないものもあります。」子どもたちは、リサイクルに使えない素材がどのようなものなのかを学びました。

「僕たちはこういった素材を使って作品を作っています。」


続いて、「デザイナーという職業が何か知っていますか?」 どのような思考プロセスで普段we+がデザインを行っているかを子どもたちに想像してもらいました。we+が考えるデザインとは普段は見落としがちな現象、素材や資源に丁寧に向き合い、新たな視点や価値を生み出すことだと子どもたちに伝えました。子どもたちは、身の回りにあるものを異なる角度から捉える面白さについて学びました。
「捨てられるものも、見方を変えることで新しい可能性が生まれる。」そんなメッセージとともに、ワークショップはスタートしました。
左官という日本の伝統技術に触れる
今回のワークショップでは、原田左官の協力のもと、日本の伝統技術である左官の技法を体験しました。まず子どもたちは、「左官とはどういった技術なのか?」の説明をうけました。その後、土台に塗る土の作り方を知りました。ノリと土を混ぜる工程を初めて見る子どもも多く、できた土を実際に触って柔らかさなどを体感しました。




まずは、花瓶のベースとなる好きな形の木材を選びます。

子どもたちに向けて講師が最初に伝えたのは、「草花は本来、土から生えているもの。自分で土を塗りながら、その草花が生き生きと咲いていた風景を想像してみてください。」という言葉でした。ただ作品を作るのではなく、自然とのつながりや素材の背景に思いを巡らせながら制作が進められました。
廃棄物に新たな命を吹き込む
土の中に混ぜ込んだのは、割れてしまったガラスや陶器の欠片。かつては私たちの暮らしを支えていたものの、役目を終えたことで廃棄される運命にあった素材たちです。今回のワークショップでは、それらを左官の「骨材」として再利用。土に混ぜ込み、洗い出しによって表面に現れる模様として蘇らせました。



単なるリサイクルではなく、素材の持つ記憶や魅力を引き出し、新たな役割を与えます。

we+が大切にしている価値観を、子どもたちは実際に手を動かしながら体感していきました。子どもたちは好きな色のガラスを選んで、洗い出しの際に出てくるガラスの表面の美しさを堪能していました。
初めて触れる鏝(こて)と真剣なまなざし
制作では、左官職人が実際に使用する鏝を使いながら土塗りに挑戦しました。

鏝を扱う作業は想像以上に難しく、最初は戸惑う姿も見られましたが、職人たちのサポートを受けながら少しずつコツを掴んでいきます。
「どうしたらきれいに塗れるだろう」そんなことを考えながら、子どもたちは真剣な表情で取り組んでいました。

時には欠けた穴を手で埋めたり、自分で模様をつけたり、グラデーションになるように色調整をしたり、子どもたち一人ひとりが違う発想で取り組んでいたのが印象的でした。we+のメンバーは答えを与えるのではなく、自分で考え、試し、発見することを大切にしています。


同じ素材を使っていても、出来上がる表情は一人ひとり異なります。その違いこそが創造の面白さであり、子どもたちは制作を通して、自分だけの表現を形にしていきました。その時々の温度や空気の乾燥によって土の塗りにくさなどがあり、四苦八苦しながら工夫をこらし、伝統技術の難しさと様々な知恵や道具を使いながら左官技術を試せたのは子どもたちにとって非常に有意義な時間となりました。
洗い出しで現れる、思いがけない美しさ
制作のクライマックスは、「洗い出し」の工程です。
表面に塗った土を優しく洗い流していくと、その下からガラスや陶器の欠片が少しずつ姿を現します。

土の中からキラリと光る色鮮やかな素材が顔を出した瞬間、会場には驚きと歓声が広がりました。
「見て!」 「きれい!」
子どもたちの表情が一気に輝いたのが印象的でした。
それまで廃棄物だった素材が、美しい模様として生まれ変わる瞬間を目の当たりにし、「価値とは何か」を自然と感じ取る時間となりました。
最後は自分で選んだ花とともに
完成した花瓶には、それぞれ好きな草花を選んで生けていきます。

同じ花瓶はひとつとして存在せず、選ぶ花によって作品の表情も大きく変わります。

花を生け終えた瞬間、自分の手で作り上げた作品を誇らしげに見つめる子どもたちの笑顔が会場に広がりました。

保護者の方々からも、「普段できない体験ができた」 「子どもの発想に驚かされた」といった声が聞かれ、親子で創造の時間を共有する貴重な機会となりました。
デザインは世界の見方を変える
今回のワークショップは、花瓶を完成させることだけが目的ではありませんでした。
観察すること。
想像すること。
手を動かして試してみること。
そして、価値がないと思われていたものの中に美しさや可能性を発見すること。we+が日々の活動で探究している「新しい視点を生み出すデザイン」を、子どもたち自身が体験する機会となりました。
完成した作品は、それぞれの発見や想いとともに、子どもたちの手によって持ち帰られました。

ABOUT SCUOLA GINZA SIX
「SCUOLA GINZA SIX」は、GINZA SIXが2022年より継続して開催している、次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラムです。“Enrich your creativity”をテーマに、各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャーやアートを中心とした多彩なワークショップを展開しています。※「SCUOLA」はイタリア語で「学校」を意味します。
ABOUT we+
we+は、林登志也と安藤北斗によって2013年に設立されたコンテンポラリーデザインスタジオです。リサーチと実験を基盤に、見過ごされがちな現象や素材に新たな視点を与え、現代社会における新しい価値を提案しています。自然環境、テクノロジー、素材、社会との関係性を横断しながら、国内外で数多くのプロジェクトや展覧会を展開。デザインを通じて、人々の世界の見方を更新し続けています。
ABOUT 原田左官
原田左官は、伝統的な左官技術を継承しながら、現代の空間やアート、デザインの分野へと表現の可能性を広げる左官集団です。素材が持つ魅力を最大限に引き出し、日本古来の技術を次世代へ伝える活動にも積極的に取り組んでいます。今回のワークショップでは、洗い出し技法を通じて、ものづくりの楽しさと素材の新たな価値を子どもたちへ届けました。Photography by: Kai Tada
