Copyright 2025 GINZA SIX | GSIX | ギンザ シックス | 銀座シックスAntenna Feed – GINZA SIX | GSIX | ギンザ シックス | 銀座シックス All rights reserved.. /images/general/logo_for_rss.jpg GINZA SIX | ギンザ シックス https://admin.ginza6.tokyo GINZA SIX | ギンザ シックス https://admin.ginza6.tokyo Tue, 11 Feb 2025 02:57:44 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.7.3 【親子で楽しむ自由研究】VRカメラで3D映像を撮って、メタバースな未来を身近に感じる。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/137119 Thu, 18 Aug 2022 11:00:03 +0000 no ひとりで没入するのではなく、 みんなで楽しめる3D映像を。 「VR(バーチャル・リアリティ)」や「メタバース」という言葉を耳にする機会は増えたものの、実際にその世界が作られる過程については、知らないことも多いのではないでしょうか。メディアアーティストで東京藝術大学教授の八谷和彦さんは、「VRの世界をもっと身近に体験して欲しい」と、みんなで楽しめる3D映像の展示『Homemade CAVE』を発表しました。 メディアアートとは、コンピュータやエレクトロニクス技術を使った美術表現のこと。八谷さんはこれまでに、『視聴覚交換マシン』や『ポストペット』などのコミュニケーションツールや、ジェットエンジン付きスケートボード《エアボード》、メーヴェからインスピレーションを得たパーソナルフライトシステム《オープンスカイ》などの作品を発表してきました。どの作品もわくわくするアイデアが詰まった発明的な視点があって人々を楽しませてくれます。今回の展示作品『Homemade CAVE(ホームメイド ケイブ)』は、どのように生まれたのでしょうか。 「最近のメタバース体験というと、VRゴーグルを装着してひとりで仮想現実の世界に没入するものが主流です。それももちろん面白いのですが、コロナ禍で他者とのふれあいが少なくなった今、僕はみんなでわいわい3D映像の世界を楽しめる仕組みを考えたくなりました。CAVE(ケイブ)というのは、最新のものというよりは実は昔のVR技術で、1992年に米国のイリノイ大学が発表したVR装置で、部屋全体を『視覚提示装置』にするものです。壁3面と床の合計4面に映像をプロジェクションし、センサーで体験者の位置と視線を追跡して、それをもとに映像を映し出します。部屋ごと新しく作るわけですから、とても大規模な装置で、当時、費用も数億円はかかっていました。それを、より簡単でより安価にして、3Dテレビ3台を使ってやってみようというのが『Homemade CAVE』のアイデアです」(八谷さん) 8組のアーティストが、 多様なVR作品を展示。 ワークショップを実施した日から約1週間、GINZA SIXの4F中央吹き抜けレストスペースでは8組のアーティストのVR作品を体験することができました。歴史ある街並みをデジタル化した龍 lilea / Ryo Fujiwaraさんの「小江戸VR」、3D仮想空間の表現を追求したVoxelKeiさんやGOROmanさん、せきぐちあいみさんの作品、VRで銀河系を旅するクワマイさんの作品、八谷さんが手がけたポストペットの作品や動物の食事シーンを見られる「FirstBite」と、幅広いラインナップが登場。 『Homemade CAVE』にはエンジニアのROBAさんが開発したPortalgraphという技術が採用されていて、ヘッドマウントディスプレイなどの専用デバイスを必要とせず、3DグラスでVRの世界を体験できます。ひとりがスティック操作で視点を変えていく世界を、複数人が同時に簡単に楽しむことができるのは、この技術によるものです。 自分のぬいぐるみが3D映像に! VRカメラを使って撮影。 「VR空間をみんなで一緒に気軽に楽しむ。これを子どもたちにも体験してもらいたかったんですよね。それで、子どもたちが好きなものを持ってきてもらって3D映像作品を作るワークショップを企画しました」(八谷さん) ワークショップでは、お気に入りのぬいぐるみなど、映像作品の“主人公”となるものを子どもたちに用意してもらいました。ポケットモンスターやとなりのトトロなど人気アニメキャラクターのぬいぐるみや、駅名を学べる置物型の玩具など、それぞれの好みが伝わってきます。 撮影に使用したのは「Insta360 EVO アクションカメラ」。折りたたむと前後2つのレンズを備えた360度カメラになり、開くと前方に2つのレンズがある180度カメラになる仕組みです。今回は、左右の目となる2つのレンズを使い、VR180形式の3D動画を撮影しました。八谷さん自作の自撮りスティックの先にぬいぐるみを固定し、小型カメラを手元にセットして撮影。撮影スティックは子どもたちがひとりでも持てる軽量サイズです。 自由な発想が生まれていく。 ロケハン&アングルチェック。 自撮りスティックにぬいぐるみがつくように下準備をしたら、屋上庭園「GINZA SIXガーデン」へ! 八谷さんからの「屋上をロケハンして、どこで撮影をするといいか考えてみよう」という声がけを受けて、子どもたちは「お花のあるところがいい」「木の上を歩かせてみたい」「空を飛んでいるように撮影をしよう」など自由なアイデアが生まれていきます。 続いて、ひとりずつ撮影をする工程に。まずはシミュレーションをしながらカメラのアングルや動き決めていきます。奥行きを活かした構図や、ダイナミックなカメラワークを考える子もいて、ここにも個性が表れていました。 「VR180で撮れるカメラは2台持っているのですが、今回は子どもたちが使うことを考えて『Insta360 EVO アクションカメラ』にしました。このカメラはアクションカムがベースなので、手ぶれ補正機能が優れています。子どもたちがカメラワークをあまり気にせず撮影できるように、と思ってこれにしたのですが、見事に立体感の楽しめる映像に仕上がってホッとしました。基本的にあまり難しいことは考えないで、どう撮影したら自分の大好きなぬいぐるみたちがかわいく、かっこよく撮れるのか、それを大事に撮影して欲しいとお願いしました」 全員の撮影が終わったら、再び3Dテレビのある展示エリアへ。撮影データを取り込み、八谷さんがコンバート作業を行います。データを取り込むときには左右のレンズで別々に見えていた映像が、コンバート作業をするとひとつの映像に。その過程も子どもたちは静かにモニタリング。どんな動画ができるのかワクワクしながら待っています。 視点を変えながら映像を見ると、 動画の世界に入り込んだよう。 そして全員分のコンバート作業が完了!3Dメガネをかけて、完成した映像をみんなで鑑賞しました。 ぬいぐるみが森の中を歩いている様子も、恐竜のキャラクターが空を飛んでいる様子も、見事に立体的に楽しむことができました。奥行きのある世界は、手を伸ばせば自分もそこに入れるような没入感があります。自分の作品の順番になるとセンサーのついたトラッカーを持って、視点を自由に変えることも体験。子どもたちは上下左右に視点をずらしながら、自分たちが撮影した動画の世界に入り込み、3D世界の楽しさと自由を体感しました。「こうやってメタバースの片鱗に触れて、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいですね」と八谷さん。 あの動物たちにご飯をあげたい! VRが叶えるささやかな願望。 「ぬいぐるみを主役に」という発想は、八谷さんが『Homemade CAVE』で発表した作品『FirstBite』から生まれたそうです。 「昨年、コロナ禍で緊急事態宣言が出たときに、誰とも一緒にごはんを食べられない状況になって、その鬱憤からか“動物たちに延々とご飯をあげる映像を撮りたい!”と思うようになりました(笑)。そこで伊豆シャボテン動物公園にご協力いただいて、フェネックやカワウソ、レッサーパンダ、ワオキツネザルなどの餌やり風景をVRカメラで撮影したんです。手元のスティックは撮影に使ったものなので画面にも出てるのですが、それを動かすことで、まるで自分が餌をあげているような感覚に。また自由に視点を変えることができます。実はこの動画撮影の経験が今回のワークショップの発端でした。銀座の真ん中で動物を撮影するのはなかなか難しいので、お気に入りのぬいぐるみにしよう!と。ぬいぐるみも言うなれば生き物を似せて作ったバーチャルな存在です。それをバーチャル・リアリティの世界で動かしてみるのも面白いかな、と思ったんです」 楽しい!どうなってるの? 好奇心をくすぐるコンテンツ。 VRゲームやメタバース空間でのチャットなど、普段の生活の中で新たなテクノロジーを体験する未来はすでに始まっていますが、今回のワークショップのように、実際に自分の手で作品を作ることによって、テクノロジーを理解する深度も変わってきそうです。常に先端技術を取り入れながら作品発表を続ける八谷さんに、家族で気軽に楽しめるおすすめコンテンツも伺いました。 「今、僕がちょっとハマっているのがスマートフォンのアプリ『Metascan』。スマートフォンで気軽に3Dモデルを作成することができるんです。やり方はとても簡単で、アプリをダウンロードしたら3Dスキャンしたいものを360度、様々な位置から撮影していきます。ここでのポイントは、撮影対象は動かさず、自分が360度ぐるっとまわって撮影をすること。撮影対象に当たる光源の位置を変えないほうがいいので、必ず自分が動きましょう。だいたい50枚くらい撮影をすればOK。あとは、撮影した動画をアップロードすれば自動でデジタル画像を解析・統合して立体的な3DCGモデルを作成してくれます。これをフォトグラメトリーと言います」 *MerascanはiOS用のアプリですが、「WIDAR」など、Androidスマホで使えるフォトグラメトリアプリもあります。 今回、唇の形をしたケーキをフォトグラメトリーに。とんかつやラーメンなどさまざまな食べ物の3DCGモデルを作ることを「#メシグラメトリー」と呼んでSNSで共有するなんていう造語も派生しているそう。 「作りやすいのは、食べ物や石像など動かないもの。人間や動物だと動いてしまうため同一データを取りにくく、難しいかもしれません。いろんなものでチャレンジして、上手に3DCGモデルを作るにはどうすればいいかを研究してみるのも楽しいと思いますよ」(八谷さん) 八谷和彦|メディアアーティスト・東京藝術大学先端芸術表現科教授 1966年生まれ。九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)画像設計学科卒業、コンサルティング会社勤務の後、(株)PetWORKsを設立。愛玩メールソフト『PostPet』、お互いの見ているものを交換する装置『視聴覚交換マシン』、ジェットエンジン付きスケートボード『AirBoard』、『風の谷のナウシカ』の劇中に出てくる架空の航空機「メーヴェ」をオマージュした飛行装置の開発プロジェクト『OpenSky』など、時代ごとに注目作品を発表し続けている。 Photo:Koichi Tanoue text:Kana Umehara Edit:Rina Kawabe(Edit Life),Hitoshi Matsuo(Edit Life) ABOUT SCUOLA GINZA SIX GINZA SIXが企画運営を行う「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを開催していきます。今後の企画にもぜひご注目ください。

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ひとりで没入するのではなく、
みんなで楽しめる3D映像を。

「VR(バーチャル・リアリティ)」や「メタバース」という言葉を耳にする機会は増えたものの、実際にその世界が作られる過程については、知らないことも多いのではないでしょうか。メディアアーティストで東京藝術大学教授の八谷和彦さんは、「VRの世界をもっと身近に体験して欲しい」と、みんなで楽しめる3D映像の展示『Homemade CAVE』を発表しました。

メディアアートとは、コンピュータやエレクトロニクス技術を使った美術表現のこと。八谷さんはこれまでに、『視聴覚交換マシン』や『ポストペット』などのコミュニケーションツールや、ジェットエンジン付きスケートボード《エアボード》、メーヴェからインスピレーションを得たパーソナルフライトシステム《オープンスカイ》などの作品を発表してきました。どの作品もわくわくするアイデアが詰まった発明的な視点があって人々を楽しませてくれます。今回の展示作品『Homemade CAVE(ホームメイド ケイブ)』は、どのように生まれたのでしょうか。

「最近のメタバース体験というと、VRゴーグルを装着してひとりで仮想現実の世界に没入するものが主流です。それももちろん面白いのですが、コロナ禍で他者とのふれあいが少なくなった今、僕はみんなでわいわい3D映像の世界を楽しめる仕組みを考えたくなりました。CAVE(ケイブ)というのは、最新のものというよりは実は昔のVR技術で、1992年に米国のイリノイ大学が発表したVR装置で、部屋全体を『視覚提示装置』にするものです。壁3面と床の合計4面に映像をプロジェクションし、センサーで体験者の位置と視線を追跡して、それをもとに映像を映し出します。部屋ごと新しく作るわけですから、とても大規模な装置で、当時、費用も数億円はかかっていました。それを、より簡単でより安価にして、3Dテレビ3台を使ってやってみようというのが『Homemade CAVE』のアイデアです」(八谷さん)

8組のアーティストが、
多様なVR作品を展示。

ワークショップを実施した日から約1週間、GINZA SIXの4F中央吹き抜けレストスペースでは8組のアーティストのVR作品を体験することができました。歴史ある街並みをデジタル化した龍 lilea / Ryo Fujiwaraさんの「小江戸VR」、3D仮想空間の表現を追求したVoxelKeiさんやGOROmanさん、せきぐちあいみさんの作品、VRで銀河系を旅するクワマイさんの作品、八谷さんが手がけたポストペットの作品や動物の食事シーンを見られる「FirstBite」と、幅広いラインナップが登場。

『Homemade CAVE』にはエンジニアのROBAさんが開発したPortalgraphという技術が採用されていて、ヘッドマウントディスプレイなどの専用デバイスを必要とせず、3DグラスでVRの世界を体験できます。ひとりがスティック操作で視点を変えていく世界を、複数人が同時に簡単に楽しむことができるのは、この技術によるものです。

自分のぬいぐるみが3D映像に!
VRカメラを使って撮影。

「VR空間をみんなで一緒に気軽に楽しむ。これを子どもたちにも体験してもらいたかったんですよね。それで、子どもたちが好きなものを持ってきてもらって3D映像作品を作るワークショップを企画しました」(八谷さん)

ワークショップでは、お気に入りのぬいぐるみなど、映像作品の“主人公”となるものを子どもたちに用意してもらいました。ポケットモンスターやとなりのトトロなど人気アニメキャラクターのぬいぐるみや、駅名を学べる置物型の玩具など、それぞれの好みが伝わってきます。

撮影に使用したのは「Insta360 EVO アクションカメラ」。折りたたむと前後2つのレンズを備えた360度カメラになり、開くと前方に2つのレンズがある180度カメラになる仕組みです。今回は、左右の目となる2つのレンズを使い、VR180形式の3D動画を撮影しました。八谷さん自作の自撮りスティックの先にぬいぐるみを固定し、小型カメラを手元にセットして撮影。撮影スティックは子どもたちがひとりでも持てる軽量サイズです。

自由な発想が生まれていく。
ロケハン&アングルチェック。

自撮りスティックにぬいぐるみがつくように下準備をしたら、屋上庭園「GINZA SIXガーデン」へ! 八谷さんからの「屋上をロケハンして、どこで撮影をするといいか考えてみよう」という声がけを受けて、子どもたちは「お花のあるところがいい」「木の上を歩かせてみたい」「空を飛んでいるように撮影をしよう」など自由なアイデアが生まれていきます。

続いて、ひとりずつ撮影をする工程に。まずはシミュレーションをしながらカメラのアングルや動き決めていきます。奥行きを活かした構図や、ダイナミックなカメラワークを考える子もいて、ここにも個性が表れていました。

「VR180で撮れるカメラは2台持っているのですが、今回は子どもたちが使うことを考えて『Insta360 EVO アクションカメラ』にしました。このカメラはアクションカムがベースなので、手ぶれ補正機能が優れています。子どもたちがカメラワークをあまり気にせず撮影できるように、と思ってこれにしたのですが、見事に立体感の楽しめる映像に仕上がってホッとしました。基本的にあまり難しいことは考えないで、どう撮影したら自分の大好きなぬいぐるみたちがかわいく、かっこよく撮れるのか、それを大事に撮影して欲しいとお願いしました」

全員の撮影が終わったら、再び3Dテレビのある展示エリアへ。撮影データを取り込み、八谷さんがコンバート作業を行います。データを取り込むときには左右のレンズで別々に見えていた映像が、コンバート作業をするとひとつの映像に。その過程も子どもたちは静かにモニタリング。どんな動画ができるのかワクワクしながら待っています。

視点を変えながら映像を見ると、
動画の世界に入り込んだよう。

そして全員分のコンバート作業が完了!3Dメガネをかけて、完成した映像をみんなで鑑賞しました。

ぬいぐるみが森の中を歩いている様子も、恐竜のキャラクターが空を飛んでいる様子も、見事に立体的に楽しむことができました。奥行きのある世界は、手を伸ばせば自分もそこに入れるような没入感があります。自分の作品の順番になるとセンサーのついたトラッカーを持って、視点を自由に変えることも体験。子どもたちは上下左右に視点をずらしながら、自分たちが撮影した動画の世界に入り込み、3D世界の楽しさと自由を体感しました。「こうやってメタバースの片鱗に触れて、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいですね」と八谷さん。

あの動物たちにご飯をあげたい!
VRが叶えるささやかな願望。

「ぬいぐるみを主役に」という発想は、八谷さんが『Homemade CAVE』で発表した作品『FirstBite』から生まれたそうです。

「昨年、コロナ禍で緊急事態宣言が出たときに、誰とも一緒にごはんを食べられない状況になって、その鬱憤からか“動物たちに延々とご飯をあげる映像を撮りたい!”と思うようになりました(笑)。そこで伊豆シャボテン動物公園にご協力いただいて、フェネックやカワウソ、レッサーパンダ、ワオキツネザルなどの餌やり風景をVRカメラで撮影したんです。手元のスティックは撮影に使ったものなので画面にも出てるのですが、それを動かすことで、まるで自分が餌をあげているような感覚に。また自由に視点を変えることができます。実はこの動画撮影の経験が今回のワークショップの発端でした。銀座の真ん中で動物を撮影するのはなかなか難しいので、お気に入りのぬいぐるみにしよう!と。ぬいぐるみも言うなれば生き物を似せて作ったバーチャルな存在です。それをバーチャル・リアリティの世界で動かしてみるのも面白いかな、と思ったんです」

楽しい!どうなってるの?
好奇心をくすぐるコンテンツ。

VRゲームやメタバース空間でのチャットなど、普段の生活の中で新たなテクノロジーを体験する未来はすでに始まっていますが、今回のワークショップのように、実際に自分の手で作品を作ることによって、テクノロジーを理解する深度も変わってきそうです。常に先端技術を取り入れながら作品発表を続ける八谷さんに、家族で気軽に楽しめるおすすめコンテンツも伺いました。

「今、僕がちょっとハマっているのがスマートフォンのアプリ『Metascan』。スマートフォンで気軽に3Dモデルを作成することができるんです。やり方はとても簡単で、アプリをダウンロードしたら3Dスキャンしたいものを360度、様々な位置から撮影していきます。ここでのポイントは、撮影対象は動かさず、自分が360度ぐるっとまわって撮影をすること。撮影対象に当たる光源の位置を変えないほうがいいので、必ず自分が動きましょう。だいたい50枚くらい撮影をすればOK。あとは、撮影した動画をアップロードすれば自動でデジタル画像を解析・統合して立体的な3DCGモデルを作成してくれます。これをフォトグラメトリーと言います」

*MerascanはiOS用のアプリですが、「WIDAR」など、Androidスマホで使えるフォトグラメトリアプリもあります。

今回、唇の形をしたケーキをフォトグラメトリーに。とんかつやラーメンなどさまざまな食べ物の3DCGモデルを作ることを「#メシグラメトリー」と呼んでSNSで共有するなんていう造語も派生しているそう。

「作りやすいのは、食べ物や石像など動かないもの。人間や動物だと動いてしまうため同一データを取りにくく、難しいかもしれません。いろんなものでチャレンジして、上手に3DCGモデルを作るにはどうすればいいかを研究してみるのも楽しいと思いますよ」(八谷さん)

八谷和彦|メディアアーティスト・東京藝術大学先端芸術表現科教授

1966年生まれ。九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)画像設計学科卒業、コンサルティング会社勤務の後、(株)PetWORKsを設立。愛玩メールソフト『PostPet』、お互いの見ているものを交換する装置『視聴覚交換マシン』、ジェットエンジン付きスケートボード『AirBoard』、『風の谷のナウシカ』の劇中に出てくる架空の航空機「メーヴェ」をオマージュした飛行装置の開発プロジェクト『OpenSky』など、時代ごとに注目作品を発表し続けている。

Photo:Koichi Tanoue
text:Kana Umehara
Edit:Rina Kawabe(Edit Life),Hitoshi Matsuo(Edit Life)

ABOUT SCUOLA GINZA SIX

GINZA SIXが企画運営を行う「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを開催していきます。今後の企画にもぜひご注目ください。

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SCUOLA GINZA SIX
【親子で楽しむ自由研究】体験することで見えてくる、 “現代アートの入り口”とは? https://admin.ginza6.tokyo/magazine/136336 Mon, 08 Aug 2022 01:00:15 +0000 no フィールドワークを取り入れて、 現代アートを身近なものに。 東弘一郎さんのアート作品には、制作した地域の背景にある特性や、制作過程で生まれる“つながり”が組み込まれています。現在、東京藝術大学大学院 美術研究科 博士後期課程に在籍中。大学の卒業制作のために作られた「無限車輪」は、優秀作品に授与されるサロン・ド・プランタン賞(首席)を受賞したほか、TVや新聞、雑誌などのメディアに取り上げられるなど注目を集めています。自転車を漕ぐと、縦7列、横8列、計56個の車輪が一斉に動き出す「無限車輪」はGINZA SIXの三原テラスでも展示が行われました。そのスケールの大きさと連なって回り続ける車輪の景色に、終わりのない雄大なサイクルを感じます。車輪はよく見るといずれも錆びていたり、汚れていたり、古いものだとわかります。これは、東さんが現在活動を行っている、取手市を歩いて見つけてきた廃棄自転車の車輪なのだと教えてくれました。 「作品を作る前に、まずはその町のことを知ろうと自分の足で歩いてみました。フィールドワークですね。その過程で、取手市は自転車の街として発展しようとした歴史があることを知りました。最初のきっかけは、何の気なしに話を聞いたおじいさん。『何かいらないものはないですか?』と聞いたら自転車が1台どころか3台、4台と出てきて(笑)。そこから家々に放置されている自転車を活用して、捨てられたものを現代アートの作品として命を吹き込むことができないかと考えるようになったんです」(東さん) 東さんが大事にしているのは、そういった作品制作に至るまでのプロセス。その過程を作品に組み込むことでアートの成り立ちを伝えたい、と言います。 「現代アートって“なんだかよくわからないもの”と言いますか、とらえ方が難しいですよね。でも、『こういう人と関わって、こうやってもらってきた自転車なんだよ』と話すと、ひとつの視点が生まれる。それがヒントになってアートの読み解き方が変わっていくんですよね。美術には詳しくないおじさんが“これは俺の息子の自転車なんだ”って作品をみんなに解説してくれることもありました。アートが、会話を生んで、人々に変化を与える。それが大事だと思うんです」(東さん) 今回、東さんがおおみかアートプロジェクト協力のもと行った子どもたちのためのワークショップも軸にはこの考え方が根付いています。 普段は体験することのない、 巨大スケールのもの作り。 ワークショップのために用意されたのは、古紙をリサイクルして作られた紙パイプ。それと輪ゴムだけ。 「今回、やりたかったことはシンプルなんです。子どもたちに自分のスケールを超えるものを作る面白さを知ってほしかった。自分の作品もそうですが、自分の身体の大きさを超えるもの作りって、なかなか体験できないですよね。コロナ禍では図工の授業も一人ひとりでやるものがほとんどだと思います。ひとりの手の中でおさまる作品作りしかできていないんじゃないかな、と。だからこそ、みんなで協力してひとつの大きなものを作る体験をしてみてほしかった。紙パイプは1.2mの長さがあります。これは大人にしてみると3mのパイプをもっている感覚。とても大きなものを持って作り上げる経験によって、“普段得ることのできない何か”を感じてもらいたかったんです」(東さん) まず最初に紙パイプ3本を輪ゴムでつなぎ合わせて三角形を作ります。それをさらに3つ組み合わせて、子どもたちと同じくらいの大きさの正四面体に。立体の形になると、それだけで子どもたちはワクワク。世界が広がっていきます。続いて、みんながそれぞれ作った正四面体を組み合わせてトンネル作りのステージへ。最初は「やりたくない!」と紙パイプで別の遊びをしていた子どもも「形」がみえてくるとアイデアが生まれてくるようで「ここはもっと高くしよう!」と屋根を伸ばしたり、「この通路を伸ばしたい」という発想が生まれたり、どんどん紙パイプのトンネルが拡張していきます。 パイプ1本だと見えない景色が、 徐々に、子どもたちに見えてくる。 紙パイプのトンネルは気づけば大人の身長も超える大きさに。「ぐらぐらした時は、どう支えたら安定するかを考えてつなげてみようね」。サポートするスタッフのアドバイスを聞きながら、いろいろと考えながら組み立て作業が続きます。子どもたちでは手が届かないところはパパやママも参加してお手伝い。気がつけば大人も夢中になって「もっと安定させて広げるにはこうしたほうがいい」と真剣な議論が広がります。 「それもひとつの狙いだったんです。子どもたちを見守るだけじゃなくて、大人も参加したくなる企画にしたかった。大人も『子どもたちがこうしたいんだ』というのがわかるとアイデアが膨らんでいくじゃないですか。すると自ら手を動かさざるをえない。『気づけば一緒になってトンネル作りに夢中になっていた』というお言葉もいただけて嬉しかったです。子どもたちが作ったトンネルをくぐる、という、大人が子どものスケールを知る体験、という点もこのワークショップのポイントなんですよね」(東さん) ここにパイプを通したい、と高い場所の作業をするときは抱っこをしてもらって。親子で協力しながら、紙パイプのトンネルが完成しました。子どもたちは「ここが入り口、ここに部屋があって、ここは屋根になっているんだよ!」と自分たちが作り上げた“作品”をそれぞれ解説してくれます。 「不思議ですよね。パイプ1本だと見えてこないものが、形を作って、組み合わせて一つの造形になると、子どもたちの中で自由な設定が生まれていく。これが現代アートにつながる発想だと思います。そういう感じ方、考え方の入り口を感じ取ってもらえたら嬉しいです」(東さん) 休憩を挟みながら約1時間の制作の末、遂に完成! 最後にみんなで鑑賞会と記念撮影も。それぞれ組み立てたトンネルのどこが好きか、どこがよくできたと思うかを発表しあいました。 読み解き方がひとつわかれば、 アートはより面白くなっていく。 そもそもこのワークショップのアイデアは、東さんが高校の教育実習に出向いた際に行った授業がきっかけになっていると言います。 「最初は、割り箸だったんです。割り箸を使った小さなマケット(模型)作りをしました。割り箸の端を割って、別の割り箸を挟む。学生にはその単純なルールだけを与えて、次にどうつなぐかは隣の人に渡していって、それが最終的にどういう造形になるか、というのをやりました。それを洗濯バサミでやったらどうなるか、教室の机と椅子でやったらどうなるか、とスケールを変えていきました」(東さん) 東さんが高校の授業で教えたかったことと、今回のワークショップで伝えたかったこと、そしてご自身の作品制作にもすべて繋がっている、プロセスに思考を巡らすことの大切さ。 「現代アートの解釈ってなかなか難しいじゃないですか。作品の横についている説明書きのキャプションを読んでも、いったいどうやって作品を見たらいいか、わからないことも多い。授業やワークショップでやったことは、簡単なルールというコンセプトだけですが、でもそこに決まりごとがあることを自分の体験として知ると、なぜこういうわけのわからないものができ上がったのかが理解できるようになる。その感覚を知ってほしかったんです」(東さん) 「アートはひとつ読み解き方がわかれば、ヒントが増えて面白くなるはず」。東さんはそう熱弁します。東さんが現在進めている芸術祭「星と海の芸術祭」でも、現代アートと街をつなげて、新しいアート発信のあり方を画策中。ここでも新しいアート体験に出会えそうです。 まちでつくる、まちとつくる。 東さんが企画するアート展。 「今回、ワークショップを一緒にやったおおみかアートプロジェクトのメンバーと茨城県日立市にある大みか町で芸術祭を行います(8月11日〜8月28日)。地元の方からなにかできないかと相談を受けて、実際に大みか町を訪れたんです。そこには日立の製作所があり、町工場がとてもたくさんあるものづくりの町だとわかりました。ものづくりとアートは当然のことながら相性がいい。そこで、『まちでつくる、まちとつくる』をテーマにアートイベントができないかと考えたんです」(東さん) 駅前に「無限車輪」が登場するほか、地元の歴史ある大甕神社や久慈町漁港、海水浴場がメイン会場に。東さんの声がけで集まったアーティストたちが参加するほか、遺跡やまちの産業を案内するフィールドワーク要素を取り入れた「大みかまちなかツアー」や地元の工務店での木工ワークショップや交流センターでの空き缶ワークショップなども予定されているので、興味がある方はぜひご参加を。 その作品をどこで作り、どこに置くのか。制作において、その場所との結びつきを常に大切にしている東さん。アートの面白さ、楽しさだけでなく大みか町の魅力もこの芸術祭を通して伝えてくれそうです。 「僕がやっていることは彫刻などを作ることとはちょっと違うんです。ものと向き合って、形がどうだ、重心をどこに置こうか、とかそういうことを考えるんじゃなくて、いろんな人との関わりを作品に落とし込みたいんですよね。だから、フィールドワークをして、おじいちゃん、おばあちゃんとか土地の人と話して、ときには畑の野菜やお菓子などをいただいて(笑)。そういうつながりがわかるような形で作品を作っていきたいんです。 僕の作品には関わってくださった工務店の名前もクレジットしていて。その工務店もできれば作品を置く地元の方々にやってもらっているんです。ある日突然、どこかから有名な作品がやってきて、誰か知らない人に設置されるより、地元の工場で作ったものを地元の業者の方々が設置して、その町に置いたほうが、地域の人々に受け入れられやすいと思うんですよね。地元で作った作品なら何かがあって壊れたときもすぐに直せますし、愛着も湧く。もっと言えば、工務店の人が自発的にアートを作ったっていいと思うんです。現代アートってそれくらい自由でいいし、可能性のあるものであっていいと思うんです」(東さん) 東さんの作品は、この他にも新潟県の越後妻有で行われている「大地の芸術祭」で「廻転する不在」が展示されています。また、千葉県香取市佐原でもアートプロジェクトが始まっていて、今後はほかの場所でも作品作りをしてみたいとも。日本全国にある様々な場所で、東さんが町を歩き、人とふれあい、着想が生まれる芸術作品。今後どのような作品が誕生するのか楽しみに待ちましょう。展示はもちろん、その場所で出会う人々との何気ない会話からも、新たな世界が広がるかもしれない。そう思わせてくれるのも、東さんの作品の魅力なのかもしれません。 東弘一郎|美術家 1998年、東京都生まれ。アーティスト/東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程在籍/星と海の芸術祭総合ディレクター。自転車と金属を組み合わせて、主に動く立体作品を制作している。宮田亮平賞受賞。サロン・ド・プランタン賞受賞。 主な展示に、大地の芸術祭2022、第24回岡本太郎現代芸術賞展など。 Photo:Masanori Kaneshita text:Kana Umehara Edit:Rina Kawabe(Edit Life),Hitoshi Matsuo(Edit Life) ABOUT SCUOLA GINZA SIX GINZA SIXが企画運営を行う「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを開催していきます。今後の企画にもぜひご注目ください。

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フィールドワークを取り入れて、
現代アートを身近なものに。

東弘一郎さんのアート作品には、制作した地域の背景にある特性や、制作過程で生まれる“つながり”が組み込まれています。現在、東京藝術大学大学院 美術研究科 博士後期課程に在籍中。大学の卒業制作のために作られた「無限車輪」は、優秀作品に授与されるサロン・ド・プランタン賞(首席)を受賞したほか、TVや新聞、雑誌などのメディアに取り上げられるなど注目を集めています。自転車を漕ぐと、縦7列、横8列、計56個の車輪が一斉に動き出す「無限車輪」はGINZA SIXの三原テラスでも展示が行われました。そのスケールの大きさと連なって回り続ける車輪の景色に、終わりのない雄大なサイクルを感じます。車輪はよく見るといずれも錆びていたり、汚れていたり、古いものだとわかります。これは、東さんが現在活動を行っている、取手市を歩いて見つけてきた廃棄自転車の車輪なのだと教えてくれました。

「作品を作る前に、まずはその町のことを知ろうと自分の足で歩いてみました。フィールドワークですね。その過程で、取手市は自転車の街として発展しようとした歴史があることを知りました。最初のきっかけは、何の気なしに話を聞いたおじいさん。『何かいらないものはないですか?』と聞いたら自転車が1台どころか3台、4台と出てきて(笑)。そこから家々に放置されている自転車を活用して、捨てられたものを現代アートの作品として命を吹き込むことができないかと考えるようになったんです」(東さん)

東さんが大事にしているのは、そういった作品制作に至るまでのプロセス。その過程を作品に組み込むことでアートの成り立ちを伝えたい、と言います。

「現代アートって“なんだかよくわからないもの”と言いますか、とらえ方が難しいですよね。でも、『こういう人と関わって、こうやってもらってきた自転車なんだよ』と話すと、ひとつの視点が生まれる。それがヒントになってアートの読み解き方が変わっていくんですよね。美術には詳しくないおじさんが“これは俺の息子の自転車なんだ”って作品をみんなに解説してくれることもありました。アートが、会話を生んで、人々に変化を与える。それが大事だと思うんです」(東さん)

今回、東さんがおおみかアートプロジェクト協力のもと行った子どもたちのためのワークショップも軸にはこの考え方が根付いています。

普段は体験することのない、
巨大スケールのもの作り。

ワークショップのために用意されたのは、古紙をリサイクルして作られた紙パイプ。それと輪ゴムだけ。

「今回、やりたかったことはシンプルなんです。子どもたちに自分のスケールを超えるものを作る面白さを知ってほしかった。自分の作品もそうですが、自分の身体の大きさを超えるもの作りって、なかなか体験できないですよね。コロナ禍では図工の授業も一人ひとりでやるものがほとんどだと思います。ひとりの手の中でおさまる作品作りしかできていないんじゃないかな、と。だからこそ、みんなで協力してひとつの大きなものを作る体験をしてみてほしかった。紙パイプは1.2mの長さがあります。これは大人にしてみると3mのパイプをもっている感覚。とても大きなものを持って作り上げる経験によって、“普段得ることのできない何か”を感じてもらいたかったんです」(東さん)

まず最初に紙パイプ3本を輪ゴムでつなぎ合わせて三角形を作ります。それをさらに3つ組み合わせて、子どもたちと同じくらいの大きさの正四面体に。立体の形になると、それだけで子どもたちはワクワク。世界が広がっていきます。続いて、みんながそれぞれ作った正四面体を組み合わせてトンネル作りのステージへ。最初は「やりたくない!」と紙パイプで別の遊びをしていた子どもも「形」がみえてくるとアイデアが生まれてくるようで「ここはもっと高くしよう!」と屋根を伸ばしたり、「この通路を伸ばしたい」という発想が生まれたり、どんどん紙パイプのトンネルが拡張していきます。

パイプ1本だと見えない景色が、
徐々に、子どもたちに見えてくる。

紙パイプのトンネルは気づけば大人の身長も超える大きさに。「ぐらぐらした時は、どう支えたら安定するかを考えてつなげてみようね」。サポートするスタッフのアドバイスを聞きながら、いろいろと考えながら組み立て作業が続きます。子どもたちでは手が届かないところはパパやママも参加してお手伝い。気がつけば大人も夢中になって「もっと安定させて広げるにはこうしたほうがいい」と真剣な議論が広がります。

「それもひとつの狙いだったんです。子どもたちを見守るだけじゃなくて、大人も参加したくなる企画にしたかった。大人も『子どもたちがこうしたいんだ』というのがわかるとアイデアが膨らんでいくじゃないですか。すると自ら手を動かさざるをえない。『気づけば一緒になってトンネル作りに夢中になっていた』というお言葉もいただけて嬉しかったです。子どもたちが作ったトンネルをくぐる、という、大人が子どものスケールを知る体験、という点もこのワークショップのポイントなんですよね」(東さん)

ここにパイプを通したい、と高い場所の作業をするときは抱っこをしてもらって。親子で協力しながら、紙パイプのトンネルが完成しました。子どもたちは「ここが入り口、ここに部屋があって、ここは屋根になっているんだよ!」と自分たちが作り上げた“作品”をそれぞれ解説してくれます。

「不思議ですよね。パイプ1本だと見えてこないものが、形を作って、組み合わせて一つの造形になると、子どもたちの中で自由な設定が生まれていく。これが現代アートにつながる発想だと思います。そういう感じ方、考え方の入り口を感じ取ってもらえたら嬉しいです」(東さん)

休憩を挟みながら約1時間の制作の末、遂に完成! 最後にみんなで鑑賞会と記念撮影も。それぞれ組み立てたトンネルのどこが好きか、どこがよくできたと思うかを発表しあいました。

読み解き方がひとつわかれば、
アートはより面白くなっていく。

そもそもこのワークショップのアイデアは、東さんが高校の教育実習に出向いた際に行った授業がきっかけになっていると言います。

「最初は、割り箸だったんです。割り箸を使った小さなマケット(模型)作りをしました。割り箸の端を割って、別の割り箸を挟む。学生にはその単純なルールだけを与えて、次にどうつなぐかは隣の人に渡していって、それが最終的にどういう造形になるか、というのをやりました。それを洗濯バサミでやったらどうなるか、教室の机と椅子でやったらどうなるか、とスケールを変えていきました」(東さん)

東さんが高校の授業で教えたかったことと、今回のワークショップで伝えたかったこと、そしてご自身の作品制作にもすべて繋がっている、プロセスに思考を巡らすことの大切さ。

「現代アートの解釈ってなかなか難しいじゃないですか。作品の横についている説明書きのキャプションを読んでも、いったいどうやって作品を見たらいいか、わからないことも多い。授業やワークショップでやったことは、簡単なルールというコンセプトだけですが、でもそこに決まりごとがあることを自分の体験として知ると、なぜこういうわけのわからないものができ上がったのかが理解できるようになる。その感覚を知ってほしかったんです」(東さん)

「アートはひとつ読み解き方がわかれば、ヒントが増えて面白くなるはず」。東さんはそう熱弁します。東さんが現在進めている芸術祭「星と海の芸術祭」でも、現代アートと街をつなげて、新しいアート発信のあり方を画策中。ここでも新しいアート体験に出会えそうです。

まちでつくる、まちとつくる。
東さんが企画するアート展。

「今回、ワークショップを一緒にやったおおみかアートプロジェクトのメンバーと茨城県日立市にある大みか町で芸術祭を行います(8月11日〜8月28日)。地元の方からなにかできないかと相談を受けて、実際に大みか町を訪れたんです。そこには日立の製作所があり、町工場がとてもたくさんあるものづくりの町だとわかりました。ものづくりとアートは当然のことながら相性がいい。そこで、『まちでつくる、まちとつくる』をテーマにアートイベントができないかと考えたんです」(東さん)

駅前に「無限車輪」が登場するほか、地元の歴史ある大甕神社や久慈町漁港、海水浴場がメイン会場に。東さんの声がけで集まったアーティストたちが参加するほか、遺跡やまちの産業を案内するフィールドワーク要素を取り入れた「大みかまちなかツアー」や地元の工務店での木工ワークショップや交流センターでの空き缶ワークショップなども予定されているので、興味がある方はぜひご参加を。

  • © OMIKA ART PROJECT

その作品をどこで作り、どこに置くのか。制作において、その場所との結びつきを常に大切にしている東さん。アートの面白さ、楽しさだけでなく大みか町の魅力もこの芸術祭を通して伝えてくれそうです。

「僕がやっていることは彫刻などを作ることとはちょっと違うんです。ものと向き合って、形がどうだ、重心をどこに置こうか、とかそういうことを考えるんじゃなくて、いろんな人との関わりを作品に落とし込みたいんですよね。だから、フィールドワークをして、おじいちゃん、おばあちゃんとか土地の人と話して、ときには畑の野菜やお菓子などをいただいて(笑)。そういうつながりがわかるような形で作品を作っていきたいんです。

僕の作品には関わってくださった工務店の名前もクレジットしていて。その工務店もできれば作品を置く地元の方々にやってもらっているんです。ある日突然、どこかから有名な作品がやってきて、誰か知らない人に設置されるより、地元の工場で作ったものを地元の業者の方々が設置して、その町に置いたほうが、地域の人々に受け入れられやすいと思うんですよね。地元で作った作品なら何かがあって壊れたときもすぐに直せますし、愛着も湧く。もっと言えば、工務店の人が自発的にアートを作ったっていいと思うんです。現代アートってそれくらい自由でいいし、可能性のあるものであっていいと思うんです」(東さん)

  • 東弘一郎作品「自連車」。© OMIKA ART PROJECT

東さんの作品は、この他にも新潟県の越後妻有で行われている「大地の芸術祭」で「廻転する不在」が展示されています。また、千葉県香取市佐原でもアートプロジェクトが始まっていて、今後はほかの場所でも作品作りをしてみたいとも。日本全国にある様々な場所で、東さんが町を歩き、人とふれあい、着想が生まれる芸術作品。今後どのような作品が誕生するのか楽しみに待ちましょう。展示はもちろん、その場所で出会う人々との何気ない会話からも、新たな世界が広がるかもしれない。そう思わせてくれるのも、東さんの作品の魅力なのかもしれません。

  • 「大地の芸術祭」に展示される「廻転する不在」。

東弘一郎|美術家

1998年、東京都生まれ。アーティスト/東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程在籍/星と海の芸術祭総合ディレクター。自転車と金属を組み合わせて、主に動く立体作品を制作している。宮田亮平賞受賞。サロン・ド・プランタン賞受賞。 主な展示に、大地の芸術祭2022、第24回岡本太郎現代芸術賞展など。

Photo:Masanori Kaneshita
text:Kana Umehara
Edit:Rina Kawabe(Edit Life),Hitoshi Matsuo(Edit Life)

ABOUT SCUOLA GINZA SIX

GINZA SIXが企画運営を行う「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを開催していきます。今後の企画にもぜひご注目ください。

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SCUOLA GINZA SIX
【親子で楽しむ自由研究】フラワークリエイターから学ぶ、ドライフラワーの楽しみ方。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/135751 Tue, 26 Jul 2022 01:00:12 +0000 no 発色がよくて色鮮やか。 スペシャルなドライフラワー。 ワークショップのテーブルに用意されたのは、カーネーションやアジサイ、母子草、ラグラス、かすみ草などのドライフラワーたち。篠崎さんのクリエイションファクトリーである「PLANT by edenworks」のドライシステムで管理されています。まず、その発色がよく鮮やかなドライフラワーに感動します。 「edenworksは“花を棄てず、次に繋げる”をテーマに掲げています。ドライフラワーは、独自の製法で1本ずつきれいに色が残るように丁寧にドライにしています。それでもドライフラワーは退色が早い。なので必要なものは食紅などを使い染色もしています。食べても大丈夫な染料を使うことで安心して花に触れてもらえるし、きれいな色をずっと楽しんでもらうことができます」(篠崎さん) 実験のようなワクワク感。 親子参加のワークショップ。 この日のワークショップでは、篠崎さんのドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」でも取り扱うオリジナルパッケージ「POST FLOWER(ポストフラワー)」を作ります。まず、お母さんは、好きなドライフラワーをコラージュのように選んでパッケージに。子どもたちは、お花の缶バッジを作ります。 ピンセットでシャーレに花びらや小さな蕾など好きな花を並べます。実験のようでちょっとワクワク。猫じゃらしのようなラグラスやかすみ草のピンクやブルーの淡いカラーがかわいくて子どもたちに人気でした。花を自由に並べてアレンジメントが出来たら、最後は自分で押し花のようにプレスします。好きなものを自由に選んで、デザインしたドライフラワーの缶バッチが完成です。 大好きな水色と紫色をベースに。「これがかすみ草?」と花の名前が書かれたカードを眺めながら、花の名前や花言葉を知ることができたのも、とても楽しそうでした。 お母さんも同じように20〜30種あるドライフラワーの中から好きなものを選び、パッケージに。どの向きで入れるときれいに仕上がるか、色のバランス、配置を考えながらセレクトした花をパッケージに詰め込みます。篠崎さんが「花の後ろに葉っぱを差し込むときれいに仕上がりますよ」とアドバイス。パッケージは真空パックにすることで、湿気や劣化を防ぎ、虫がつくこともありません。 花を贈る行為が繋がっていく。 パッケージに込められた想い。 親子で作ったアイテムをひとつのパッケージにまとめて完成。このパッケージは定形外郵便として140円切手を貼って送ることができるそうです。 「このパッケージのアイデアを実現したいと思ったのは、もっと気軽に花を送りやすくしたかったから。生花を送ろうとするとクール便で手配しないといけないし、配送料もそれだけかかる。子どもたちにとっては、全然気軽じゃないですよね。 このパッケージは郵便局に何度も足を運んで、どんなパッケージなら立体的にドライフラワーを送ることができるかなと考えて生み出したもの。縦長サイズは長型の和封筒と実は同じサイズなんです。横長サイズのものもあり、それは洋封筒と同じです。厚みが3cmというのも規定通り。その中であれば自由に中身を考えることができました。 パッケージを透明にしたことで中が花だとわかり、郵便局の方もとても丁寧に届けてくださる。販売をはじめて6、7年が経ちますがつぶれてしまった、などおしかりを受けたこともありません」(篠崎さん) POST FLOWER relay a message ver.(ポストフラワー リレー ア メッセージ バージョン)は、送るだけの一方通行ではなく、パッケージの中にはもうひとつ返信用のポストカードも封入しています。 「これはもちろん受け取った方がお返事を書いてもいいし、別の方にドライフラワーのパッケージをまた送ってもいい。どこへ向かってでもいいと思うんですが、繋がっていてほしくて。私が、ドライフラワーのパッケージをはじめたのは母の影響なんです。うちの母がずっとドライフラワーを飾っていて。その頃は私もまだ若くて『埃がたまるからもう棄てて』とお願いしたら、思い出の花を棄てられない、と一つひとつビニール袋に入れてリボンをかけて、飾りつけし直したんです。それが、このドライフラワーのパッケージの発想に繋がっています。残したいものをどう大事にするか、そして、花の楽しみ方の可能性を循環させていきたい。そんな願いが、込められています」(篠崎さん) 棄てずに、新しい価値を。 EW.Pharmacyの処方箋。 篠崎さんは、2015年に自身初のフラワーショップ「edenworks bedroom」を代々木上原にオープン。生花の破棄を出したくないと、開店は週末限定。それでも枯れてしまうもの、棄てないといけないものが出てしまうと、それを加工する発想を思いつきます。ドライフラワーとして新しい価値を見出そうとドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」を2017年から始動しました。 「Pharmacy(ファーマシー/薬局)」と名付けたお店では、処方箋を出すように、その人その人に合わせたドライフラワーをセレクトし、オリジナルのパッケージやボトルに。また、ドライフラワーを作る「PLANT by edenworks」ではドライフラワーに加工してくれるサービスも。 「お店で選んでいただくのはもちろん、自分でドライフラワーを作ることもおすすめします。生花を購入したら、5日ほど楽しんで、そのあとドライフラワーにしてみてください。ドライにしたあとは、そのまま飾っておいてもいいし、花びらだけを瓶詰めにしたり、ポプリにするのもいいですね。花の世界は、いろいろルールがあるイメージですが、わたしは常に自由でいいと思うんです。自由に花の世界を、いろんな楽しみ方をしてみてほしいんですよね」(篠崎さん) 親子でドライフラワー作り。 大切にすべき3つのポイント。 篠崎さんが教えてくれた、ご家庭で作るドライフラワーのルールは3つ。 ⑴ドライフラワーにしやすい花を選ぶ。 ⑵日の当たらない場所で乾燥させる。 ⑶自然乾燥で、しっかり1ヶ月程度干す。 「まず、おすすめなのがバラやかすみ草。手に入りやすいですし、かすみ草はとくにドライにしやすいので1〜2週間できれいにドライになります。色があるものを選ぶとふわっとした印象で素敵です。バラは花の芯までしっかり乾燥させるのに1ヶ月程度。花を下向きにして吊るしてください」(篠崎さん) 色をきれいに残すためには直射日光は絶対にNGだそう。 「バルコニーなどは避けてくださいね。日に当てないほうが色の持ちがいいので、暗めの部屋か窓のないところに吊るしてください。お風呂場など湿気のある場所もNGです。浴室乾燥でドライにするのもいいと思いますが、その場合はしっかり湿気をとってから干すようにしてください」(篠崎さん) ドライフラワーにオススメの花をさらにいくつか。 ケイトウ、エリンジニウム、セルリア デルフォニウム、カンガルーフォー、スターチス どれも1ヶ月程度干して、しっかりドライにしてからアレンジを。 「水分が残っているとカビてしまうこともあります。乾燥の目安は、吊るしている状態から元に戻して、花の頭がお辞儀をしない状態ならOKです。触ってみた感触や、ピーンとたっている様子で判断を。ドライも日々変化しますから。その様子を楽しんで、花たちの変化を感じ取ってみてください」(篠崎さん) 篠崎恵美|フラワークリエイター、edenworks 代表 2009年に独立。ディスプレイやブランドとのコラボレーション、映像や広告などでも花にまつわる様々な創作を行う。2015年フラワーショップ「edenworks bedroom」を代々木上原にオープン。続く2017年にドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」を奥渋谷に、2019年に「PLANT by edenworks」をスタート。 2021年には花と人を繋ぐフラワーショップ「ew.note」を新宿駅に開店。アーティスト活動としては、イタリアミラノにて紙の花のプロジェクト「PAPER EDEN」を発表。その後アムステルダム、上海、パリなど国内外でインスタレーションを行なっている。 Photo:Masanori Kaneshita text:Kana Umehara Edit:Rina Kawabe(Edit Life),Hitoshi Matsuo(Edit Life) ABOUT SCUOLA GINZA SIX GINZA SIXが企画運営を行う「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを開催していきます。今後の企画にもぜひご注目ください。

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発色がよくて色鮮やか。
スペシャルなドライフラワー。

ワークショップのテーブルに用意されたのは、カーネーションやアジサイ、母子草、ラグラス、かすみ草などのドライフラワーたち。篠崎さんのクリエイションファクトリーである「PLANT by edenworks」のドライシステムで管理されています。まず、その発色がよく鮮やかなドライフラワーに感動します。

「edenworksは“花を棄てず、次に繋げる”をテーマに掲げています。ドライフラワーは、独自の製法で1本ずつきれいに色が残るように丁寧にドライにしています。それでもドライフラワーは退色が早い。なので必要なものは食紅などを使い染色もしています。食べても大丈夫な染料を使うことで安心して花に触れてもらえるし、きれいな色をずっと楽しんでもらうことができます」(篠崎さん)

実験のようなワクワク感。
親子参加のワークショップ。

この日のワークショップでは、篠崎さんのドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」でも取り扱うオリジナルパッケージ「POST FLOWER(ポストフラワー)」を作ります。まず、お母さんは、好きなドライフラワーをコラージュのように選んでパッケージに。子どもたちは、お花の缶バッジを作ります。

ピンセットでシャーレに花びらや小さな蕾など好きな花を並べます。実験のようでちょっとワクワク。猫じゃらしのようなラグラスやかすみ草のピンクやブルーの淡いカラーがかわいくて子どもたちに人気でした。花を自由に並べてアレンジメントが出来たら、最後は自分で押し花のようにプレスします。好きなものを自由に選んで、デザインしたドライフラワーの缶バッチが完成です。

大好きな水色と紫色をベースに。「これがかすみ草?」と花の名前が書かれたカードを眺めながら、花の名前や花言葉を知ることができたのも、とても楽しそうでした。

お母さんも同じように20〜30種あるドライフラワーの中から好きなものを選び、パッケージに。どの向きで入れるときれいに仕上がるか、色のバランス、配置を考えながらセレクトした花をパッケージに詰め込みます。篠崎さんが「花の後ろに葉っぱを差し込むときれいに仕上がりますよ」とアドバイス。パッケージは真空パックにすることで、湿気や劣化を防ぎ、虫がつくこともありません。

花を贈る行為が繋がっていく。
パッケージに込められた想い。

親子で作ったアイテムをひとつのパッケージにまとめて完成。このパッケージは定形外郵便として140円切手を貼って送ることができるそうです。

「このパッケージのアイデアを実現したいと思ったのは、もっと気軽に花を送りやすくしたかったから。生花を送ろうとするとクール便で手配しないといけないし、配送料もそれだけかかる。子どもたちにとっては、全然気軽じゃないですよね。

このパッケージは郵便局に何度も足を運んで、どんなパッケージなら立体的にドライフラワーを送ることができるかなと考えて生み出したもの。縦長サイズは長型の和封筒と実は同じサイズなんです。横長サイズのものもあり、それは洋封筒と同じです。厚みが3cmというのも規定通り。その中であれば自由に中身を考えることができました。

パッケージを透明にしたことで中が花だとわかり、郵便局の方もとても丁寧に届けてくださる。販売をはじめて6、7年が経ちますがつぶれてしまった、などおしかりを受けたこともありません」(篠崎さん)

POST FLOWER relay a message ver.(ポストフラワー リレー ア メッセージ バージョン)は、送るだけの一方通行ではなく、パッケージの中にはもうひとつ返信用のポストカードも封入しています。

「これはもちろん受け取った方がお返事を書いてもいいし、別の方にドライフラワーのパッケージをまた送ってもいい。どこへ向かってでもいいと思うんですが、繋がっていてほしくて。私が、ドライフラワーのパッケージをはじめたのは母の影響なんです。うちの母がずっとドライフラワーを飾っていて。その頃は私もまだ若くて『埃がたまるからもう棄てて』とお願いしたら、思い出の花を棄てられない、と一つひとつビニール袋に入れてリボンをかけて、飾りつけし直したんです。それが、このドライフラワーのパッケージの発想に繋がっています。残したいものをどう大事にするか、そして、花の楽しみ方の可能性を循環させていきたい。そんな願いが、込められています」(篠崎さん)

  • © edenworks, Mitch Nakano

棄てずに、新しい価値を。
EW.Pharmacyの処方箋。

篠崎さんは、2015年に自身初のフラワーショップ「edenworks bedroom」を代々木上原にオープン。生花の破棄を出したくないと、開店は週末限定。それでも枯れてしまうもの、棄てないといけないものが出てしまうと、それを加工する発想を思いつきます。ドライフラワーとして新しい価値を見出そうとドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」を2017年から始動しました。

  • © PLANT by edenworks

「Pharmacy(ファーマシー/薬局)」と名付けたお店では、処方箋を出すように、その人その人に合わせたドライフラワーをセレクトし、オリジナルのパッケージやボトルに。また、ドライフラワーを作る「PLANT by edenworks」ではドライフラワーに加工してくれるサービスも。

「お店で選んでいただくのはもちろん、自分でドライフラワーを作ることもおすすめします。生花を購入したら、5日ほど楽しんで、そのあとドライフラワーにしてみてください。ドライにしたあとは、そのまま飾っておいてもいいし、花びらだけを瓶詰めにしたり、ポプリにするのもいいですね。花の世界は、いろいろルールがあるイメージですが、わたしは常に自由でいいと思うんです。自由に花の世界を、いろんな楽しみ方をしてみてほしいんですよね」(篠崎さん)

親子でドライフラワー作り。
大切にすべき3つのポイント。

篠崎さんが教えてくれた、ご家庭で作るドライフラワーのルールは3つ。

⑴ドライフラワーにしやすい花を選ぶ。
⑵日の当たらない場所で乾燥させる。
⑶自然乾燥で、しっかり1ヶ月程度干す。

「まず、おすすめなのがバラやかすみ草。手に入りやすいですし、かすみ草はとくにドライにしやすいので1〜2週間できれいにドライになります。色があるものを選ぶとふわっとした印象で素敵です。バラは花の芯までしっかり乾燥させるのに1ヶ月程度。花を下向きにして吊るしてください」(篠崎さん)

色をきれいに残すためには直射日光は絶対にNGだそう。

「バルコニーなどは避けてくださいね。日に当てないほうが色の持ちがいいので、暗めの部屋か窓のないところに吊るしてください。お風呂場など湿気のある場所もNGです。浴室乾燥でドライにするのもいいと思いますが、その場合はしっかり湿気をとってから干すようにしてください」(篠崎さん)

ドライフラワーにオススメの花をさらにいくつか。

ケイトウ、エリンジニウム、セルリア
デルフォニウム、カンガルーフォー、スターチス

どれも1ヶ月程度干して、しっかりドライにしてからアレンジを。

「水分が残っているとカビてしまうこともあります。乾燥の目安は、吊るしている状態から元に戻して、花の頭がお辞儀をしない状態ならOKです。触ってみた感触や、ピーンとたっている様子で判断を。ドライも日々変化しますから。その様子を楽しんで、花たちの変化を感じ取ってみてください」(篠崎さん)

篠崎恵美|フラワークリエイター、edenworks 代表

2009年に独立。ディスプレイやブランドとのコラボレーション、映像や広告などでも花にまつわる様々な創作を行う。2015年フラワーショップ「edenworks bedroom」を代々木上原にオープン。続く2017年にドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」を奥渋谷に、2019年に「PLANT by edenworks」をスタート。 2021年には花と人を繋ぐフラワーショップ「ew.note」を新宿駅に開店。アーティスト活動としては、イタリアミラノにて紙の花のプロジェクト「PAPER EDEN」を発表。その後アムステルダム、上海、パリなど国内外でインスタレーションを行なっている。

Photo:Masanori Kaneshita
text:Kana Umehara
Edit:Rina Kawabe(Edit Life),Hitoshi Matsuo(Edit Life)

ABOUT SCUOLA GINZA SIX

GINZA SIXが企画運営を行う「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを開催していきます。今後の企画にもぜひご注目ください。

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SCUOLA GINZA SIX
都市の中で自然の造形美に浸る。「LOUNGE SIX」に込められたラグジュアリーの本質。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/131257 Thu, 28 Apr 2022 08:35:28 +0000 no 天井部分がゆるやかにカーブした、有機的なフォルムの黒漆喰の分厚い壁と、表情豊かな鉄の扉、その傍らに「LOUNGE SIX」の文字。GINZA SIXの一隅にあるここは、GINZA SIX MEMBERSHIPのVIP会員(*)が利用できるプレミアムラウンジです。GINZA SIX内の体験をサポートするコンシェルジュが常駐するほか、厳選した季節ごとのフードメニューやスイーツ、ドリンクなどのサービスも行うこのラウンジでは、各方面で活躍する気鋭のアーティストや文化人を講師に招いたイベントや、ブランドとのコラボレーションイベントも開催しています。 この空間を設計したのは、現代美術作家の杉本博司さんと建築家・榊田倫之さんが率いる「新素材研究所」。2008年の設立以来、美術館、ショップ、住宅などを世界各地に手がけ、ますます活躍の場を広げています。 ラウンジ内にはさらに、杉本さんによる作品の数々も飾られていて、ここはまさに、世界指折りの美術家である杉本さんの世界に浸れる空間。GINZA SIXオープン5年を機に、杉本さん・榊田さんのお二人にお話をお聞きしました。 買い物の合間に、 自然を感じられる場所を。 --お二人が率いる新素材研究所がこの「LOUNGE SIX」を設計なさって5年が経ちます。改めて、このプレミアムラウンジの設計のコンセプトを教えていただけますか。 榊田倫之 特別なお客様がお買い物をされる合間にひとときを過ごす場所ということでしたので、自然を感じられる空間にしたいという思いは最初からありました。一般的に商業施設は、商品を紫外線から保護するために、自然光が入らないケースが大半。だからこのラウンジが、都会の中の庭のような役割を果たすといいなと思ったのです。 ラウンジの場所として決まっていたのは、ほかのショップスペースと同じく自然光の入らない場所だったのですが、どうしても外光にはこだわりたかった。そこで建物に開口部(窓)をつけていただき、縦桟(たてざん)の障子を配しました。昼間はこの障子越しに自然光を感じられ、夜には光源が暖色に変わって暖かな光に包まれる。光の演出だけで、外を感じられる空間としています。 時間を経ることで、 より美しくなっていく建築。 --重い鉄の扉を抜けると、レセプションでは大きな壁に掛かる杉本さんの大作「海景」が迎える。この壁を回り込むと今度は抜けのいい、落ち着いたラウンジが広がっているという空間構成ですね。「自然を感じる場所」というお言葉がありましたが、無垢木、古色豊かな石など、ラウンジ空間には自然素材がふんだんに使われています。 杉本博司 素材の扱いは私たちが得意とするところでもあります。既存の建築はどうしても、完成した時点がピークで、だんだんと古びていくという印象が強い。私たちが目指すのは、それとは逆に時間の経過とともに美しさが増していく、まさに自然の造形美のような空間です。 榊田 たとえばエントランスの鉄の扉は、大正時代に看板建築などに使われたブリキの板金技術を使って葺いていただきました。レセプションの床は、1910~70年代にかけて京都を走っていた市電の下に敷き詰められていた古い石です。 木ならば杉や松のような針葉樹、石ならばポーラス(多孔質)な凝灰岩。日本古来の素材である一方で、建築資材としては経年変化のしやすい、どちらかというと現代建築には敬遠される素材で美しさを織り上げたいという気持ちがあります。ピカピカの大理石や鏡面で仕上げた分かりやすい高級さではなく、マットで深みのある面で高級感を構成していく。すべての細部にこだわりながら、いやな要素が何ひとつない空間というのは、ひとつ目指すところでもあります。 --建築における経年変化の美、削ぎ落とした美に共感が集まっているからこそ、お二人と新素材研究所の活躍の場も広がっているのでしょうね。 榊田 想像以上に共感を得られているという感覚です。たとえば住宅ならば、家を建てるのが3軒目、4軒目といったクライアントも少なくありません。ラグジュアリーを突き詰めていくと、居心地のよさや、自分にとって価値があるかどうかが鍵になってくるのではないかと感じます。そういう中で我々を選んでいただいていることには、大きな責任も感じます。 --5周年にあたり、ラウンジ内の杉本さんの作品も、一部掛け替えがなされました。 杉本 今私の後ろにある「Past Presence」のシリーズは、ニューヨークのMoMAからのコミッションで彫刻庭園を撮影したものです。ジャコメッティやエリー・ナーデルマン、クレス・オルデンバーグといった20世紀の巨匠たちの作品をぼかして撮影する技法で撮影しています。今回持ってきたのは、一年以上MoMAに展示していた作品。ちょっとしたMoMAの分室みたいな気持ちで楽しんでいただけたらと思います(笑) 変化しても揺るぎない、 銀座というブランド。 --お二人にとっての「銀座」とは、また銀座に求めることがあれば教えてください。 杉本 私の実家は、戦前に銀座二丁目で創業した銀座美容商事という美容品を扱う問屋でした。戦後は御徒町に移ったのですが、そんなところから、銀座は物心つくずっと以前から連れてこられてきた街ですね。母親の友人の洋裁店で子ども服をオートクチュールであつらえて、そのよそ行きの服を着せられて週末に高級中華店に連れて行かれたり。今はなくなってしまった店も多いし、ずいぶん様子も変わったけれども、街としてのブランドが揺らぐことはないと思っています。 少し話はそれますけれども、僕は小学校5年生のときに、かつてこの「GINZA SIX」の場所にあった松坂屋銀座店の屋上で銀座の風景を描いたんです。それが子どもたちの絵のコンテストに入賞して、世界巡回に出かけたんですけど……結局帰ってこなかったですね(笑)。あの絵はどこに行ったのかな? あの時いた屋上に近い場所に「LOUNGE SIX」を設計したのかと思うと、なんだか不思議なご縁がありますね。 榊田 私は上京して20年あまり、人生の約半分を東京で過ごしていますが、その間ツーリストの視点で東京を見たことがなかった。実は最近、帝国ホテルにしばらく滞在して初めて東京に降り立った人の視点を体験してみたんです。そうしたら、銀座という街は自分が考えていたよりも良い意味でずっとスケールの小さい街だということが見えてきました。ここのところ特に、銀座・日比谷・日本橋・丸の内……と、エリアを細分化して語ることが多いけれど、どこも歩いて回って行ける距離だなと再認識しました。広い意味での銀座には、まだまだ歩いてこそ発見できる路地裏やスポットがある。いま、週末に歩行者天国になるのは「GINZA SIX」前の銀座中央通りだけだけれど、もっと銀座全体、東京全体のスケールで、人が優先されるような都市になると、さらに魅力が増すと思います。 杉本 僕はアナクロニスト。古いものに価値を見出します。世の中、進化しているように見えて、同時にいいものがどんどん失われていっている側面があるなあと思います。人間そのものは変わらないのだから、やはり古いものも、新しいものと同じように大切にしていきたい。このラウンジのような場を通じて、「GINZA SIX」にいらっしゃる、若くかつ好奇心や余裕のある方たちにも、そういう視点が伝わるといいなと思います。 *DIAMONDステージ会員、GINZA SIXカード(プレステージ)をお持ちのPLATINUMステージ会員 杉本博司(すぎもと・ひろし)|1948年東京生まれ。現代美術作家。70年渡米、74年よりニューヨーク在住。写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆、料理と多岐に渡って活躍する。2008年榊田倫之と建築設計事務所「新素材研究所」設立。2009年公益財団法人小田原文化財団設立。1988年毎日芸術賞、2001年ハッセルブラッド国際写真賞、2009年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)受賞。2010年紫綬褒章受章。2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲。2017年文化功労者。 榊田倫之(さかきだ・ともゆき)|1976年滋賀県生まれ。建築家。2001年京都工芸繊維大学建築学専攻博士前期課程修了後、株式会社日本設計入社。2003年榊田倫之建築設計事務所設立後、建築家岸和郎の東京オフィスを兼務する。2008年杉本博司と新素材研究所を設立。現在、榊田倫之建築設計事務所主宰、京都芸術大学非常勤講師、宇都宮市公認大谷石大使。杉本博司のパートナー・アーキテクトとして数多くの設計を手がける。2019年第28回BELCA賞など受賞多数。 ========== アーティスト本人による、 ギャラリートークも開催。 「LOUNGE SIX」内のアートの掛け替えをしてすぐの2022年4月9日、抽選に応募の10組20名を迎えて、杉本さんご本人が登壇するギャラリートークが開催されました。杉本さんが手がけた空間のなかアーティスト本人による作品解説を聞く至福のひととき。ベージュ アラン・デュカス東京による特別スイーツも、贅沢な時間に華を添えました。「LOUNGE SIX」では“大人の遊びと学びの場”をコンセプトにした体験イベント「クリエイティブサロン」をはじめ、様々なイベントを開催しております。 ========== Text: Sawako Akune(GINGRICH) Photo: Norio Kidera Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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天井部分がゆるやかにカーブした、有機的なフォルムの黒漆喰の分厚い壁と、表情豊かな鉄の扉、その傍らに「LOUNGE SIX」の文字。GINZA SIXの一隅にあるここは、GINZA SIX MEMBERSHIPのVIP会員(*)が利用できるプレミアムラウンジです。GINZA SIX内の体験をサポートするコンシェルジュが常駐するほか、厳選した季節ごとのフードメニューやスイーツ、ドリンクなどのサービスも行うこのラウンジでは、各方面で活躍する気鋭のアーティストや文化人を講師に招いたイベントや、ブランドとのコラボレーションイベントも開催しています。

この空間を設計したのは、現代美術作家の杉本博司さんと建築家・榊田倫之さんが率いる「新素材研究所」。2008年の設立以来、美術館、ショップ、住宅などを世界各地に手がけ、ますます活躍の場を広げています。

ラウンジ内にはさらに、杉本さんによる作品の数々も飾られていて、ここはまさに、世界指折りの美術家である杉本さんの世界に浸れる空間。GINZA SIXオープン5年を機に、杉本さん・榊田さんのお二人にお話をお聞きしました。

買い物の合間に、
自然を感じられる場所を。

--お二人が率いる新素材研究所がこの「LOUNGE SIX」を設計なさって5年が経ちます。改めて、このプレミアムラウンジの設計のコンセプトを教えていただけますか。

榊田倫之 特別なお客様がお買い物をされる合間にひとときを過ごす場所ということでしたので、自然を感じられる空間にしたいという思いは最初からありました。一般的に商業施設は、商品を紫外線から保護するために、自然光が入らないケースが大半。だからこのラウンジが、都会の中の庭のような役割を果たすといいなと思ったのです。

ラウンジの場所として決まっていたのは、ほかのショップスペースと同じく自然光の入らない場所だったのですが、どうしても外光にはこだわりたかった。そこで建物に開口部(窓)をつけていただき、縦桟(たてざん)の障子を配しました。昼間はこの障子越しに自然光を感じられ、夜には光源が暖色に変わって暖かな光に包まれる。光の演出だけで、外を感じられる空間としています。

時間を経ることで、
より美しくなっていく建築。

--重い鉄の扉を抜けると、レセプションでは大きな壁に掛かる杉本さんの大作「海景」が迎える。この壁を回り込むと今度は抜けのいい、落ち着いたラウンジが広がっているという空間構成ですね。「自然を感じる場所」というお言葉がありましたが、無垢木、古色豊かな石など、ラウンジ空間には自然素材がふんだんに使われています。

杉本博司 素材の扱いは私たちが得意とするところでもあります。既存の建築はどうしても、完成した時点がピークで、だんだんと古びていくという印象が強い。私たちが目指すのは、それとは逆に時間の経過とともに美しさが増していく、まさに自然の造形美のような空間です。

榊田 たとえばエントランスの鉄の扉は、大正時代に看板建築などに使われたブリキの板金技術を使って葺いていただきました。レセプションの床は、1910~70年代にかけて京都を走っていた市電の下に敷き詰められていた古い石です。

木ならば杉や松のような針葉樹、石ならばポーラス(多孔質)な凝灰岩。日本古来の素材である一方で、建築資材としては経年変化のしやすい、どちらかというと現代建築には敬遠される素材で美しさを織り上げたいという気持ちがあります。ピカピカの大理石や鏡面で仕上げた分かりやすい高級さではなく、マットで深みのある面で高級感を構成していく。すべての細部にこだわりながら、いやな要素が何ひとつない空間というのは、ひとつ目指すところでもあります。

--建築における経年変化の美、削ぎ落とした美に共感が集まっているからこそ、お二人と新素材研究所の活躍の場も広がっているのでしょうね。

榊田 想像以上に共感を得られているという感覚です。たとえば住宅ならば、家を建てるのが3軒目、4軒目といったクライアントも少なくありません。ラグジュアリーを突き詰めていくと、居心地のよさや、自分にとって価値があるかどうかが鍵になってくるのではないかと感じます。そういう中で我々を選んでいただいていることには、大きな責任も感じます。

--5周年にあたり、ラウンジ内の杉本さんの作品も、一部掛け替えがなされました。

杉本 今私の後ろにある「Past Presence」のシリーズは、ニューヨークのMoMAからのコミッションで彫刻庭園を撮影したものです。ジャコメッティやエリー・ナーデルマン、クレス・オルデンバーグといった20世紀の巨匠たちの作品をぼかして撮影する技法で撮影しています。今回持ってきたのは、一年以上MoMAに展示していた作品。ちょっとしたMoMAの分室みたいな気持ちで楽しんでいただけたらと思います(笑)

変化しても揺るぎない、
銀座というブランド。

--お二人にとっての「銀座」とは、また銀座に求めることがあれば教えてください。

杉本 私の実家は、戦前に銀座二丁目で創業した銀座美容商事という美容品を扱う問屋でした。戦後は御徒町に移ったのですが、そんなところから、銀座は物心つくずっと以前から連れてこられてきた街ですね。母親の友人の洋裁店で子ども服をオートクチュールであつらえて、そのよそ行きの服を着せられて週末に高級中華店に連れて行かれたり。今はなくなってしまった店も多いし、ずいぶん様子も変わったけれども、街としてのブランドが揺らぐことはないと思っています。

少し話はそれますけれども、僕は小学校5年生のときに、かつてこの「GINZA SIX」の場所にあった松坂屋銀座店の屋上で銀座の風景を描いたんです。それが子どもたちの絵のコンテストに入賞して、世界巡回に出かけたんですけど……結局帰ってこなかったですね(笑)。あの絵はどこに行ったのかな? あの時いた屋上に近い場所に「LOUNGE SIX」を設計したのかと思うと、なんだか不思議なご縁がありますね。

榊田 私は上京して20年あまり、人生の約半分を東京で過ごしていますが、その間ツーリストの視点で東京を見たことがなかった。実は最近、帝国ホテルにしばらく滞在して初めて東京に降り立った人の視点を体験してみたんです。そうしたら、銀座という街は自分が考えていたよりも良い意味でずっとスケールの小さい街だということが見えてきました。ここのところ特に、銀座・日比谷・日本橋・丸の内……と、エリアを細分化して語ることが多いけれど、どこも歩いて回って行ける距離だなと再認識しました。広い意味での銀座には、まだまだ歩いてこそ発見できる路地裏やスポットがある。いま、週末に歩行者天国になるのは「GINZA SIX」前の銀座中央通りだけだけれど、もっと銀座全体、東京全体のスケールで、人が優先されるような都市になると、さらに魅力が増すと思います。

杉本 僕はアナクロニスト。古いものに価値を見出します。世の中、進化しているように見えて、同時にいいものがどんどん失われていっている側面があるなあと思います。人間そのものは変わらないのだから、やはり古いものも、新しいものと同じように大切にしていきたい。このラウンジのような場を通じて、「GINZA SIX」にいらっしゃる、若くかつ好奇心や余裕のある方たちにも、そういう視点が伝わるといいなと思います。

*DIAMONDステージ会員、GINZA SIXカード(プレステージ)をお持ちのPLATINUMステージ会員

杉本博司(すぎもと・ひろし)|1948年東京生まれ。現代美術作家。70年渡米、74年よりニューヨーク在住。写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆、料理と多岐に渡って活躍する。2008年榊田倫之と建築設計事務所「新素材研究所」設立。2009年公益財団法人小田原文化財団設立。1988年毎日芸術賞、2001年ハッセルブラッド国際写真賞、2009年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)受賞。2010年紫綬褒章受章。2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲。2017年文化功労者。

榊田倫之(さかきだ・ともゆき)|1976年滋賀県生まれ。建築家。2001年京都工芸繊維大学建築学専攻博士前期課程修了後、株式会社日本設計入社。2003年榊田倫之建築設計事務所設立後、建築家岸和郎の東京オフィスを兼務する。2008年杉本博司と新素材研究所を設立。現在、榊田倫之建築設計事務所主宰、京都芸術大学非常勤講師、宇都宮市公認大谷石大使。杉本博司のパートナー・アーキテクトとして数多くの設計を手がける。2019年第28回BELCA賞など受賞多数。

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アーティスト本人による、
ギャラリートークも開催。

「LOUNGE SIX」内のアートの掛け替えをしてすぐの2022年4月9日、抽選に応募の10組20名を迎えて、杉本さんご本人が登壇するギャラリートークが開催されました。杉本さんが手がけた空間のなかアーティスト本人による作品解説を聞く至福のひととき。ベージュ アラン・デュカス東京による特別スイーツも、贅沢な時間に華を添えました。「LOUNGE SIX」では“大人の遊びと学びの場”をコンセプトにした体験イベント「クリエイティブサロン」をはじめ、様々なイベントを開催しております。

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Text: Sawako Akune(GINGRICH)
Photo: Norio Kidera
Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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The 5th anniversary, Ginza, インタビュー
歴史、建築、デザイン、文学……。 銀座で見つける文化のレイヤー。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/126320 Thu, 31 Mar 2022 19:20:50 +0000 no --森岡さんが、茅場町にあった書店を移転し、1期間1冊というテーマ性の高い「銀座森岡書店」をオープンなさって7年になります。現在の場所に移ってきたきっかけは何だったのでしょうか。 「茅場町の店舗が10年目を迎えるにあたって、新しいことをしたいと思ったのがそもそもの端緒です。原爆投下直後の1945年、広島に『アトム書房』という本屋がありました。この先60年は草木も生えないと言われる中で、ある若者が広島の復興を担おうと古本屋を始めたんです。その様子を写真家の木村伊兵衛が写真に収めていて、広島市立図書館に保管されていたりもする。移転を考え始めたのは東日本大震災の後でもありました。関東大震災からの復活、戦後の復活、震災からの復活。日本人がそうやって幾度も立ち上がってきたことを、人々が集まる場所でやりたい。1冊ずつ本を売ることはそういうところから生まれたアイデアですね。 そのタイミングで、現在の書店がある銀座1丁目の鈴木ビルの物件が出てきました。この建物は1929年の完成で、東京都の歴史的建造物に指定されているのですが、その来歴にも惹かれていたんです。実はこのビルには、名取洋之助や土門拳、亀倉雄策、熊田千佳慕といった面々が出入りして、対外宣伝誌の『NIPPON』をつくっていたそうです。昭和初期、ここでこの面々が意見を交わし合っていたのかと思うとそれだけですごい。 でもコロナ禍に突入して、さすがにこれまでかと思いましたね……。もうだめだ! という時にふっと助けてくださる方が現れたり、文化助成の補助金に挑戦したりして、なんとか生きながらえました。 コロナ禍は銀座を直撃しました。ウチだけではなく、どこも本当に大変で。それもあって、この際に銀座の良いところを見ようという気持ちが芽生えました。街を散歩して、いろんな発見をしましたよ」 --銀座を歩いて見つけたそういった発見をいくつか教えていただけますか。 「たくさんありますよ~。つい最近気づいたのが……明治から昭和初期にかけて活躍した政治家・後藤新平が関東大震災後に敷設に尽力した昭和通りは、道幅が44m。そして銀座を東西に横切るもう1本の中央通りは幅27mです。この数字を電卓で計算するとなんと約1.6:1で黄金比なんですよ! 銀座という街が長く安定するのはこういう要素があってこそなのか! と思いましたねえ。それから1932年完成の和光の建築。あの屋上にある時計台は四方がほぼ正確に東西南北を向くようにつくられているそうです。南側の時計は、南中の日光を受けて、毎日12回鐘を鳴らしている。当たり前の事実ともいえるけれど、それってよく考えるとすごいこと。太陽の最大限のエネルギーを受け続け、鐘を鳴らし続けている……。あの辺りがエネルギーに満ちているのは、そういうことの恩恵のような気すらします(笑)」 --ものすごくユニークな捉え方ですね。長い歴史のある銀座の街だからこその、ミステリアスな側面を感じます。 「ええ、まだまだあるんです。銀座って実はとても植物が多い。“柳通り”“マロニエ通り”“椿通り”など、植物の名を冠した通りが多いのもさることながら、アジサイの多さも特筆すべきものがあります。圧倒的なシンボルといえるのが柳。これも調べていくと実に多くの逸話が出てきます。 古い立派な建築を見ていくのも面白いですよ、森岡書店が入っている1929年完成の鈴木ビルもいい風情ですし、現在アンリ・シャルパンティエが入っている〈ヨネイビル〉も1930年完成と同時期の作品です。ほかに〈教文館〉のビルが1933年のアントニン・レーモンドの作だということは今ではあまり知られていませんね。 デザインの街、という側面も捨てがたいです。中央通りを歩くだけで、GINZA SIX、三菱UFJ銀行、MIKIMOTOは原研哉さん率いる日本デザインセンター、松屋銀座の書体は仲條正義さん、松屋銀座とメトロをつなぐ地下通路のタイルは佐藤卓さん……。良質のデザインが一堂に会する街であるというのは、ひとつの価値だと感じます」 --次々と知らなかった話ばかりが出てきて驚きます。まだまだお伺いしたいところですが(笑)、この街に根を張り、あらゆることを調べられ、実際に足を運んで……と年月を重ねてきた森岡さんにとって、銀座とはどんな街でしょうか? 「職人の街、ですね。デザインや建築にしてもそう、バーテンダーの人の氷のつくり方や、各店がしのぎを削るショートケーキやモンブランのバリエーション、お店の接客……。すべてが職人技の一言に尽きると思います。そういった職人的美学の礎には、1872年に銀座で生まれ、銀座と共に歩んできた資生堂の初代社長である福原信三さんの存在が大きくあると思います。銀座に店を構えたことで、そういったことが徐々にわかってきました。 この7年間で横のつながりも生まれてきていて、コロナ禍はその絆を強めるきっかけにもなりました。 銀座3丁目に店を構える和菓子店「木挽町よしや」の三代目・斉藤大地さんが始めた「銀座もの繋ぎプロジェクト」の輪に私も入れていただいたのは大きなきっかけです。 それから呉服店「銀座もとじ」の泉二啓太さんや「銀座松﨑煎餅」の松﨑宗平さんが旗振り役となった「銀座玉手箱」というプロジェクトも印象的です。銀座で商いをするいくつものお店の商品をひとつの箱に入れてお買い求めいただくもので、僕はそこに伊藤昊写真集『GINZA TOKYO 1964』を出品させてもらいました」 ーー森岡さんは、GINZA SIXに入っていた「シジェームギンザ」とコラボレーションしてバターサンドの販売なども手がけておられます。そういうお仕事を通じて、GINZA SIXをどのようにご覧になっていますか。 「GINZA SIXには、6Fに蔦屋書店があるからかなり頻繁に行くのですが、インテリアも外観もとてもきれいで、余白が多い。それをすごくいいなと思っています。余白が多いことが商業施設としてどうかというのは、ひょっとして議論の余地があるのかもしれませんけれど(笑)、いち客としてはすごく好きです。 先ほどお話しした伊藤昊さんの写真集は、1964年、前回の東京オリンピックの頃に銀座の各地を撮影したものです。1枚ずつロケ地や状況を読み解いていくととても面白い。その中にアドバルーンが写り込んだ1枚があって……。今では全く見かけなくなりましたけど、希望に満ちたアドバルーンがとてもいいなあと思っています。GINZA SIXでいつか何かできるならば、中央の吹き抜け空間でアドバルーンを上げてみたいなあ。次の6周年には6本を上げてみるなんてどうですか?」 〈プロフィール〉 森岡督行(もりおか・よしゆき)|森岡書店代表。1974年山形県生まれ。資生堂『花椿』で「現代銀座考」を連載中。それをまとめた『800日間銀座一周』(文春文庫)を2022年4月に出版。共著の『ライオンごうのたび』(あかね書房)が全国学校図書館協議会選定図書に選ばれた。 Text: Sawako Akune(GINGRICH) Photo: Kousuke Tamura Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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--森岡さんが、茅場町にあった書店を移転し、1期間1冊というテーマ性の高い「銀座森岡書店」をオープンなさって7年になります。現在の場所に移ってきたきっかけは何だったのでしょうか。

「茅場町の店舗が10年目を迎えるにあたって、新しいことをしたいと思ったのがそもそもの端緒です。原爆投下直後の1945年、広島に『アトム書房』という本屋がありました。この先60年は草木も生えないと言われる中で、ある若者が広島の復興を担おうと古本屋を始めたんです。その様子を写真家の木村伊兵衛が写真に収めていて、広島市立図書館に保管されていたりもする。移転を考え始めたのは東日本大震災の後でもありました。関東大震災からの復活、戦後の復活、震災からの復活。日本人がそうやって幾度も立ち上がってきたことを、人々が集まる場所でやりたい。1冊ずつ本を売ることはそういうところから生まれたアイデアですね。

そのタイミングで、現在の書店がある銀座1丁目の鈴木ビルの物件が出てきました。この建物は1929年の完成で、東京都の歴史的建造物に指定されているのですが、その来歴にも惹かれていたんです。実はこのビルには、名取洋之助や土門拳、亀倉雄策、熊田千佳慕といった面々が出入りして、対外宣伝誌の『NIPPON』をつくっていたそうです。昭和初期、ここでこの面々が意見を交わし合っていたのかと思うとそれだけですごい。

でもコロナ禍に突入して、さすがにこれまでかと思いましたね……。もうだめだ! という時にふっと助けてくださる方が現れたり、文化助成の補助金に挑戦したりして、なんとか生きながらえました。

コロナ禍は銀座を直撃しました。ウチだけではなく、どこも本当に大変で。それもあって、この際に銀座の良いところを見ようという気持ちが芽生えました。街を散歩して、いろんな発見をしましたよ」

--銀座を歩いて見つけたそういった発見をいくつか教えていただけますか。

「たくさんありますよ~。つい最近気づいたのが……明治から昭和初期にかけて活躍した政治家・後藤新平が関東大震災後に敷設に尽力した昭和通りは、道幅が44m。そして銀座を東西に横切るもう1本の中央通りは幅27mです。この数字を電卓で計算するとなんと約1.6:1で黄金比なんですよ! 銀座という街が長く安定するのはこういう要素があってこそなのか! と思いましたねえ。それから1932年完成の和光の建築。あの屋上にある時計台は四方がほぼ正確に東西南北を向くようにつくられているそうです。南側の時計は、南中の日光を受けて、毎日12回鐘を鳴らしている。当たり前の事実ともいえるけれど、それってよく考えるとすごいこと。太陽の最大限のエネルギーを受け続け、鐘を鳴らし続けている……。あの辺りがエネルギーに満ちているのは、そういうことの恩恵のような気すらします(笑)」

--ものすごくユニークな捉え方ですね。長い歴史のある銀座の街だからこその、ミステリアスな側面を感じます。

「ええ、まだまだあるんです。銀座って実はとても植物が多い。“柳通り”“マロニエ通り”“椿通り”など、植物の名を冠した通りが多いのもさることながら、アジサイの多さも特筆すべきものがあります。圧倒的なシンボルといえるのが柳。これも調べていくと実に多くの逸話が出てきます。

古い立派な建築を見ていくのも面白いですよ、森岡書店が入っている1929年完成の鈴木ビルもいい風情ですし、現在アンリ・シャルパンティエが入っている〈ヨネイビル〉も1930年完成と同時期の作品です。ほかに〈教文館〉のビルが1933年のアントニン・レーモンドの作だということは今ではあまり知られていませんね。

デザインの街、という側面も捨てがたいです。中央通りを歩くだけで、GINZA SIX、三菱UFJ銀行、MIKIMOTOは原研哉さん率いる日本デザインセンター、松屋銀座の書体は仲條正義さん、松屋銀座とメトロをつなぐ地下通路のタイルは佐藤卓さん……。良質のデザインが一堂に会する街であるというのは、ひとつの価値だと感じます」

--次々と知らなかった話ばかりが出てきて驚きます。まだまだお伺いしたいところですが(笑)、この街に根を張り、あらゆることを調べられ、実際に足を運んで……と年月を重ねてきた森岡さんにとって、銀座とはどんな街でしょうか?

「職人の街、ですね。デザインや建築にしてもそう、バーテンダーの人の氷のつくり方や、各店がしのぎを削るショートケーキやモンブランのバリエーション、お店の接客……。すべてが職人技の一言に尽きると思います。そういった職人的美学の礎には、1872年に銀座で生まれ、銀座と共に歩んできた資生堂の初代社長である福原信三さんの存在が大きくあると思います。銀座に店を構えたことで、そういったことが徐々にわかってきました。

この7年間で横のつながりも生まれてきていて、コロナ禍はその絆を強めるきっかけにもなりました。

銀座3丁目に店を構える和菓子店「木挽町よしや」の三代目・斉藤大地さんが始めた「銀座もの繋ぎプロジェクト」の輪に私も入れていただいたのは大きなきっかけです。

それから呉服店「銀座もとじ」の泉二啓太さんや「銀座松﨑煎餅」の松﨑宗平さんが旗振り役となった「銀座玉手箱」というプロジェクトも印象的です。銀座で商いをするいくつものお店の商品をひとつの箱に入れてお買い求めいただくもので、僕はそこに伊藤昊写真集『GINZA TOKYO 1964』を出品させてもらいました」

ーー森岡さんは、GINZA SIXに入っていた「シジェームギンザ」とコラボレーションしてバターサンドの販売なども手がけておられます。そういうお仕事を通じて、GINZA SIXをどのようにご覧になっていますか。

「GINZA SIXには、6Fに蔦屋書店があるからかなり頻繁に行くのですが、インテリアも外観もとてもきれいで、余白が多い。それをすごくいいなと思っています。余白が多いことが商業施設としてどうかというのは、ひょっとして議論の余地があるのかもしれませんけれど(笑)、いち客としてはすごく好きです。

先ほどお話しした伊藤昊さんの写真集は、1964年、前回の東京オリンピックの頃に銀座の各地を撮影したものです。1枚ずつロケ地や状況を読み解いていくととても面白い。その中にアドバルーンが写り込んだ1枚があって……。今では全く見かけなくなりましたけど、希望に満ちたアドバルーンがとてもいいなあと思っています。GINZA SIXでいつか何かできるならば、中央の吹き抜け空間でアドバルーンを上げてみたいなあ。次の6周年には6本を上げてみるなんてどうですか?」

〈プロフィール〉
森岡督行(もりおか・よしゆき)|森岡書店代表。1974年山形県生まれ。資生堂『花椿』で「現代銀座考」を連載中。それをまとめた『800日間銀座一周』(文春文庫)を2022年4月に出版。共著の『ライオンごうのたび』(あかね書房)が全国学校図書館協議会選定図書に選ばれた。

Text: Sawako Akune(GINGRICH)
Photo: Kousuke Tamura
Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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The 5th anniversary, Ginza, インタビュー
知れば知るほど人間くさい街。 この街のプレイヤーとして、銀座に思うこと。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/126384 Thu, 31 Mar 2022 19:20:14 +0000 no --田島さんはこの春まで雑誌『Hanako』の編集長を務められ、今春から『BRUTUS』編集長に就任されました。ずっと銀座勤めということですね。 「僕のマガジンハウスへの入社は1997年。今年で25年間銀座に勤務していることになります。銀座に通っている期間がようやくこの数年で人生の半分を超えて、やっと最近 “銀座のことなら知っています”と胸を張って言えるようになったところです(笑)。元々は出身地の埼玉県浦和市から通っていたのですが、すごく若い頃は、銀座は大人の街すぎて自分なんぞが闊歩するには畏れ多いという気持ちでした。マガジンハウスが銀座にあるのは、創業者の縁もあって築地の印刷所の2階に拠点をかまえ、その後近くの東銀座へ移ったと聞いています。編集者としては、より魅力的でトレンドを感じられる街に近いことはアドバンテージですから、とてもいい立地だと感じています」 --『Hanako』編集長時代に、GINZA SIXとのコラボ企画なども手がけていただきました。 「僕が『Hanako』の編集長になったのが5年半前。GINZA SIX開業の少し前で、オープンに合わせて大きなタイアップをご一緒しました。誕生したときは、いわゆる商業施設でここまでアートをきちんと扱っていることに驚いたのを鮮明に覚えています。現在、名和晃平さんの作品が展開している中央の吹き抜けのアートは、オープン時は草間彌生さんでしたよね。あの規模の作品をけっこうな頻度でかけかえているのはすごい! それからパトリック・ブランやチームラボなど、パブリックアートもかなりクオリティーの高い作品揃いで、ちょっとしたミュージアムのようでもありますね。さまざまなテナントの入る商業施設は、“受け皿”であるハコそのものの魅力は出しづらいもの。ところがGINZA SIXは谷口吉生さんによる建築、そしてアートによってハコの魅力がきちんと出ている。それこそがGINZA SIXの個性ですし、アートやデザインにプライオリティを置くこと自体、銀座という質の高い街だからこそ成立している気もします」 --雑誌『Hanako』は、定期的に銀座特集も手がけられていますよね。 「『Hanako』の創刊は1988年。今年で34年になるのですが、その間に銀座特集を80回以上、つまり年2回以上のペースでやっているんです。僕が編集長の間は、月刊誌でありながらも春と秋の2回。ただこの2年と少しのコロナ禍の間は、地元からの広告も減ってしまったこともあり、正直なところ、銀座の特集を存続させるのはきつかった。やめた方がいいのでは……という向きもなくはなかったのですが、銀座特集を止めることは、『Hanako』にとってもマガジンハウスにとっても、何か大事なものを失くしてしまうのではないかという思いがあって、踏ん張って特集をつくり続けました。そして今回、5周年を機にまたGINZA SIXさんからお声がけいただいてご一緒できたので、踏ん張ってきてよかったなあと感慨深いです」 --田島さんにとって、銀座はどんな街ですか? 「僕ね、若い頃は金髪短パンでビーサンで出社したりしていたので(笑)、それもあって銀座の中心には行きづらかった。ちょっと背筋を伸ばして、それなりの格好をしていかないとふさわしくない街、という印象が今もありますね。そういったきらびやかで、道行く人たちもおしゃれで……というイメージは変わらないのですが、一方で銀座は知れば知るほど人間くさい街だなあと今は思います。 世界に類を見ない美しい大きな街なのだけど、街に関わる人々が皆、街に対する思いが強い。取材などで会う若旦那の方々や、お店を営む方々など、誰もがどうすれば銀座はもっとよくなるかを考えている愛情深い方ばかりです。この規模の街で、それはちょっと奇跡的なことだと思います。「世界一、大きな下町」とでもいう感じ。皆さんが銀座という街が保ち続けてきたブランド性をリスペクトしながら、新しい風を吹かせようと日々努力していることに感心するばかりです。だからこそ銀座を本拠地とする者の一人として、街に対して何かしたいなという気持ちは僕にもあります」 --編集者としてGINZA SIXに求めるものや今後へのご希望があれば教えてください。 「取材でいろんな街へ行きますが、やはり銀座は稀有な街。GINZA SIXは、建築やアートの力もあってブラブラと歩いて楽しめる、かつての“銀ブラ”感に近い感覚を残しているので、銀座のよさを表している商業施設だと思います。谷口吉生さんによる建築の外観も、商業施設にありがちなするっと真っ平なものではなくて、店が連なっているように見えますよね? 若いニューラグジュアリー層にとって、大人のための老舗ばかりが並んでいる印象の銀座は、行く理由を見出すのは難しい面があったと思う。でもGINZA SIXには、魅力的なテナントがあり、カルチャーにも触れられるし、かつそこで過ごすことで銀座のよさを体感できる。この街の魅力が次の世代につながっていくきっかけになりそうですよね。 GINZA SIXって、屋上や廊下などの共有部分など、ちょっと寛げる“余白”の場所が多いですよね? コロナ禍が落ち着いたら、ああいう場も活用しながら雑誌のイベントなどでもっとご一緒できたらなあと思います。実は『Hanako』では、創刊30周年のイベントで、今いるこの6Fのテラスで読者の方々をお招きしてシャンパンで乾杯したんですよ。銀座を見下ろすこのロケーションはなかなかない。今はコロナ禍のこともあって人を呼ぶイベントは難しい面もありますが、時機を見てまた何かやりたいですね。 それからせっかくマガジンハウスは銀座にあるのだから『BRUTUS』『Hanako』『POPEYE』『GINZA』『& Premium』……とそれぞれの編集部セレクトのポップアップをつくるなんて試みも面白いかもしれないですね。お互いに銀座を盛り上げるプレーヤーとして、これからもお付き合いが続いていくことを楽しみにしています」 >>『Hanako.Tokyo』に掲載されているGINZA SIXの記事はこちらから。 ・「GINZA SIX春グルメ① ニューオープン情報も。春グルメニュース!」 ・「GINZA SIX春グルメ② 限定メニュー目白押しのB2フロアで、ワンランク上の手土産を」 ・「GINZA SIX春グルメ③ レストランフロアで味わう、春の限定メニュー」 〈プロフィール〉 田島朗(たじま・ろう)|マガジンハウス『Hanako』『BRUTUS』発行人、『BRUTUS』編集長。1974年生まれ、97年マガジンハウス入社。98年『BRUTUS』編集部に配属、2010年副編集長に。16年『Hanako』編集長就任、大リニューアルを行う。22年より現職。 Text: Sawako Akune(GINGRICH) Photo: Mai Kise Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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--田島さんはこの春まで雑誌『Hanako』の編集長を務められ、今春から『BRUTUS』編集長に就任されました。ずっと銀座勤めということですね。

「僕のマガジンハウスへの入社は1997年。今年で25年間銀座に勤務していることになります。銀座に通っている期間がようやくこの数年で人生の半分を超えて、やっと最近 “銀座のことなら知っています”と胸を張って言えるようになったところです(笑)。元々は出身地の埼玉県浦和市から通っていたのですが、すごく若い頃は、銀座は大人の街すぎて自分なんぞが闊歩するには畏れ多いという気持ちでした。マガジンハウスが銀座にあるのは、創業者の縁もあって築地の印刷所の2階に拠点をかまえ、その後近くの東銀座へ移ったと聞いています。編集者としては、より魅力的でトレンドを感じられる街に近いことはアドバンテージですから、とてもいい立地だと感じています」

--『Hanako』編集長時代に、GINZA SIXとのコラボ企画なども手がけていただきました。

「僕が『Hanako』の編集長になったのが5年半前。GINZA SIX開業の少し前で、オープンに合わせて大きなタイアップをご一緒しました。誕生したときは、いわゆる商業施設でここまでアートをきちんと扱っていることに驚いたのを鮮明に覚えています。現在、名和晃平さんの作品が展開している中央の吹き抜けのアートは、オープン時は草間彌生さんでしたよね。あの規模の作品をけっこうな頻度でかけかえているのはすごい! それからパトリック・ブランやチームラボなど、パブリックアートもかなりクオリティーの高い作品揃いで、ちょっとしたミュージアムのようでもありますね。さまざまなテナントの入る商業施設は、“受け皿”であるハコそのものの魅力は出しづらいもの。ところがGINZA SIXは谷口吉生さんによる建築、そしてアートによってハコの魅力がきちんと出ている。それこそがGINZA SIXの個性ですし、アートやデザインにプライオリティを置くこと自体、銀座という質の高い街だからこそ成立している気もします」

--雑誌『Hanako』は、定期的に銀座特集も手がけられていますよね。

「『Hanako』の創刊は1988年。今年で34年になるのですが、その間に銀座特集を80回以上、つまり年2回以上のペースでやっているんです。僕が編集長の間は、月刊誌でありながらも春と秋の2回。ただこの2年と少しのコロナ禍の間は、地元からの広告も減ってしまったこともあり、正直なところ、銀座の特集を存続させるのはきつかった。やめた方がいいのでは……という向きもなくはなかったのですが、銀座特集を止めることは、『Hanako』にとってもマガジンハウスにとっても、何か大事なものを失くしてしまうのではないかという思いがあって、踏ん張って特集をつくり続けました。そして今回、5周年を機にまたGINZA SIXさんからお声がけいただいてご一緒できたので、踏ん張ってきてよかったなあと感慨深いです」

--田島さんにとって、銀座はどんな街ですか?

「僕ね、若い頃は金髪短パンでビーサンで出社したりしていたので(笑)、それもあって銀座の中心には行きづらかった。ちょっと背筋を伸ばして、それなりの格好をしていかないとふさわしくない街、という印象が今もありますね。そういったきらびやかで、道行く人たちもおしゃれで……というイメージは変わらないのですが、一方で銀座は知れば知るほど人間くさい街だなあと今は思います。

世界に類を見ない美しい大きな街なのだけど、街に関わる人々が皆、街に対する思いが強い。取材などで会う若旦那の方々や、お店を営む方々など、誰もがどうすれば銀座はもっとよくなるかを考えている愛情深い方ばかりです。この規模の街で、それはちょっと奇跡的なことだと思います。「世界一、大きな下町」とでもいう感じ。皆さんが銀座という街が保ち続けてきたブランド性をリスペクトしながら、新しい風を吹かせようと日々努力していることに感心するばかりです。だからこそ銀座を本拠地とする者の一人として、街に対して何かしたいなという気持ちは僕にもあります」

--編集者としてGINZA SIXに求めるものや今後へのご希望があれば教えてください。

「取材でいろんな街へ行きますが、やはり銀座は稀有な街。GINZA SIXは、建築やアートの力もあってブラブラと歩いて楽しめる、かつての“銀ブラ”感に近い感覚を残しているので、銀座のよさを表している商業施設だと思います。谷口吉生さんによる建築の外観も、商業施設にありがちなするっと真っ平なものではなくて、店が連なっているように見えますよね? 若いニューラグジュアリー層にとって、大人のための老舗ばかりが並んでいる印象の銀座は、行く理由を見出すのは難しい面があったと思う。でもGINZA SIXには、魅力的なテナントがあり、カルチャーにも触れられるし、かつそこで過ごすことで銀座のよさを体感できる。この街の魅力が次の世代につながっていくきっかけになりそうですよね。

GINZA SIXって、屋上や廊下などの共有部分など、ちょっと寛げる“余白”の場所が多いですよね? コロナ禍が落ち着いたら、ああいう場も活用しながら雑誌のイベントなどでもっとご一緒できたらなあと思います。実は『Hanako』では、創刊30周年のイベントで、今いるこの6Fのテラスで読者の方々をお招きしてシャンパンで乾杯したんですよ。銀座を見下ろすこのロケーションはなかなかない。今はコロナ禍のこともあって人を呼ぶイベントは難しい面もありますが、時機を見てまた何かやりたいですね。

それからせっかくマガジンハウスは銀座にあるのだから『BRUTUS』『Hanako』『POPEYE』『GINZA』『& Premium』……とそれぞれの編集部セレクトのポップアップをつくるなんて試みも面白いかもしれないですね。お互いに銀座を盛り上げるプレーヤーとして、これからもお付き合いが続いていくことを楽しみにしています」

>>『Hanako.Tokyo』に掲載されているGINZA SIXの記事はこちらから。
・「GINZA SIX春グルメ① ニューオープン情報も。春グルメニュース!
・「GINZA SIX春グルメ② 限定メニュー目白押しのB2フロアで、ワンランク上の手土産を
・「GINZA SIX春グルメ③ レストランフロアで味わう、春の限定メニュー

〈プロフィール〉
田島朗(たじま・ろう)|マガジンハウス『Hanako』『BRUTUS』発行人、『BRUTUS』編集長。1974年生まれ、97年マガジンハウス入社。98年『BRUTUS』編集部に配属、2010年副編集長に。16年『Hanako』編集長就任、大リニューアルを行う。22年より現職。

Text: Sawako Akune(GINGRICH)
Photo: Mai Kise
Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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The 5th anniversary, Ginza, インタビュー
銀座には、いつかの時間がふと紛れ込んできても、おかしくない雰囲気がある。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/126386 Thu, 31 Mar 2022 19:19:50 +0000 no --ご著書『だいちょうことばめぐり』(河出書房新社)は、「銀座百点」での連載をまとめたエッセイ集ですね。「銀座百点」のことは以前からご存知でしたか? 「はい。亡くなった祖母の家にも届いていて、お話をいただいたときはとてもうれしかったです。編集部の方にお聞きしたのは、『銀座百点』は戦後しばらくしての創刊で、女性の職業として編集室をつくることがひとつの目標としてあったそうです。今でも編集部は女性だけ。そういう背景も素晴らしいと思いますし、あの小さな判型も好きです。女性の小さなハンドバッグや、男性のジャケットの内ポケットにもすっと入るサイズで、レジ脇などに置かれていて、お会計待ちの時なんかにぱらぱらとめくって、『まあ持って帰りますかね』って感じで無造作に連れていける、あの気楽さがいい。いかにも雑誌らしい雑誌ですよね」 --「だいちょうことばめぐり」の「だいちょう」は、歌舞伎の脚本である「台帳」のこと。本作では、歌舞伎だけでなく、日々のことごとが時空や距離をまたぎながら印象的に描かれていました。 「はじめお話をいただいたときは、毎月歌舞伎をテーマに書いてほしいということだったのです。本にも書いている通りに歌舞伎は好きですけれど、さほどに勉強しているわけではありません。歌舞伎の演目からテーマの説明まで、何年間も連載するのはちょっと荷が重い……とお答えしたら、なし崩し的に、毎回歌舞伎の演目が一行出てくればいいということになりました(笑)。それで基本的には四季折々の身辺雑記になりました。タウン誌の喜びは街の中で気軽にめくって読むことだと思っていましたから、季節や食べ物のことを思い出すようなことを書いていきました」 --エッセイの緩やかな軸になっている歌舞伎のことば。朝吹さんにとって歌舞伎の魅力はどんなところですか? 「自発的に通うようになったのは、大学に入った頃です。旧歌舞伎座の幕見席が当時1,000円もしないくらいで、かつ出入りも自由。ライブに行くような感覚で気軽に通っていました。ちょうど日本文学を勉強し始めた時期でもあったので、下座音楽や謡、台詞などを体に染み込ませたいと思っていたんです。最初のうちは、言葉も音楽もよく分からなかったのが、だんだん聞こえてくるようになる。そこからかかっている演目の台帳を図書館で借りて読んだり、あるいは同時代に書かれた作品を読んだりするようになりました。 歌舞伎を見たり、あるいはお祭りのお囃子を聞いたりするとき、かつて生きていた人に近づきたいという気持ちが湧きます。当時の人たちが耳にしていたものを自分も耳にしたい、今生きている役者越しの幽霊たちに会いたいし、その役者を見ていた観客たちの幽霊にも会ってみたい。そういう気持ちで見に行っているように思います」 --作中には歌舞伎座を中心に、銀座という街が幾度か登場しました。朝吹さんにとって銀座はどんなイメージの街ですか。 「子どもの頃の記憶でいうと、友達同士で遊びに行く場所ではもちろんなかったですね。何かの用事のついでに両親や祖父母に連れられて、たとえば資生堂パーラーに行ったり、博品館でおもちゃを買ってもらったり。大人に連れられてくる、大人が楽しむ街。子どもは付属的な存在でしたから、退屈でさほど好きではありませんでした(笑)。大人たちも普段着ではなかったですし、そういうパリッとしたイメージは今も持っています。 今では友だちと会うことが多いかな。頻繁にというわけではありませんけれど、こことここが好き、という決まったところがいくつかあります。歌舞伎を見に行ったり、1丁目の〈ギャラリー小柳〉にアートを見に行ったり……。7丁目の〈銀座ウエスト〉の喫茶室は、夜が好きです。蛍光灯がぼうと光って、渋い空間なのになんだか未来的で。おでんの〈やす幸〉さん〈お多幸〉さんも行きますし、8丁目の月光荘〈月のはなれ〉でたまに友達とお茶をすることも……。あっ、GINZA SIXではB2Fの荻野屋さんでよく釜飯を買って帰ります(笑)! 取材で今伺っている『中村藤𠮷本店 銀座店』(4F)は、京都の帰りに京都駅のお店で生茶ゼリイを買って新幹線の中でいただいています。おいしいんですよね。GINZA SIXの向かいにある〈かねまつ〉本店ビルの2階にあるカフェで、通りを歩く人を見ながら原稿を書いていることも多いですね」 --原稿を外でも書かれるんですか? 「外で書くことが多いです。今日もパソコンを持ってきています。家でも書くのですが、家では眠くなったらすぐに寝てしまうので、なるべく外に出ています。原稿を書く時は〈和光〉のティーサロンもたまに行きますね……、ひとつの街に行ったら何軒か回遊しながら書いています」 --歌舞伎を通じてかつて生きていた人に会いたいという先ほどのお言葉もそうですが、朝吹さんのご著書を読んでいると、眼前の景色にいくつもの時間のレイヤーを感じる瞬間がある。昔からのつながりの上に今があるという感覚をもたらしてくれる印象があります。 「時間と銀座ということでいうと、私は吉田健一(1912年-生まれ、昭和に長くわたって活躍した文芸評論家。父は元首相の吉田茂)がとても好きです。銀座には吉田健一が飲んだり食べたりしたという場所がたくさんあります。『海坊主』という短編は、ある男が銀座でお酒を飲んでいたら、相手が海坊主だったという掌編。特に昔からあるような銀座の店には、そういう出来事が起きてもおかしくないような雰囲気が今もありますね」 --最後に銀座やGINZA SIXに思うことがあれば教えてください。 「昔遊郭や高いお料理屋で重要だった場所はお手洗いだそうです。一人になるトイレで現実に戻ってしまうといけません。だからとっても凝って絢爛につくったそう。銀座には現実を忘れかける素晴らしいお手洗いが多い! 和光は居心地がよくて、資生堂パーラーも。 GINZA SIXのお手洗いもとってもきれいですよね。広々として明るすぎず、清潔で、品があるからショッピングの高揚感を保つことができる。パウダースペースに、きちんとゴミ箱が備え付けられているのがたいへんありがたいです。お化粧直しをした後のゴミがパッと捨てられます。お手洗いの空間がピッとしていると、使う方もこの美しさを保とうという緊張感が生まれる気がします。 今回この取材で、初めて屋上の空間を知りました。こんなのびのびとできる憩いの場所があるなんて知らなかった! 桜も咲いていますね。今度地下でお弁当を買ってここで食べてみたいと思います」 朝吹真理子(あさぶき・まりこ)|作家。2009年「流跡」でデビュー。10年同作で第20回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を最年少受賞。11年「きことわ」で第144回芥川賞を受賞。その他の作品に、小説『TIMELESS』などがある。21年「銀座百点」でのエッセイをまとめた『だいちょうことばめぐり』を上梓。 Text: Sawako Akune(GINGRICH) Photo: Mai Kise Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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--ご著書『だいちょうことばめぐり』(河出書房新社)は、「銀座百点」での連載をまとめたエッセイ集ですね。「銀座百点」のことは以前からご存知でしたか?

「はい。亡くなった祖母の家にも届いていて、お話をいただいたときはとてもうれしかったです。編集部の方にお聞きしたのは、『銀座百点』は戦後しばらくしての創刊で、女性の職業として編集室をつくることがひとつの目標としてあったそうです。今でも編集部は女性だけ。そういう背景も素晴らしいと思いますし、あの小さな判型も好きです。女性の小さなハンドバッグや、男性のジャケットの内ポケットにもすっと入るサイズで、レジ脇などに置かれていて、お会計待ちの時なんかにぱらぱらとめくって、『まあ持って帰りますかね』って感じで無造作に連れていける、あの気楽さがいい。いかにも雑誌らしい雑誌ですよね」

--「だいちょうことばめぐり」の「だいちょう」は、歌舞伎の脚本である「台帳」のこと。本作では、歌舞伎だけでなく、日々のことごとが時空や距離をまたぎながら印象的に描かれていました。

「はじめお話をいただいたときは、毎月歌舞伎をテーマに書いてほしいということだったのです。本にも書いている通りに歌舞伎は好きですけれど、さほどに勉強しているわけではありません。歌舞伎の演目からテーマの説明まで、何年間も連載するのはちょっと荷が重い……とお答えしたら、なし崩し的に、毎回歌舞伎の演目が一行出てくればいいということになりました(笑)。それで基本的には四季折々の身辺雑記になりました。タウン誌の喜びは街の中で気軽にめくって読むことだと思っていましたから、季節や食べ物のことを思い出すようなことを書いていきました」

--エッセイの緩やかな軸になっている歌舞伎のことば。朝吹さんにとって歌舞伎の魅力はどんなところですか?

「自発的に通うようになったのは、大学に入った頃です。旧歌舞伎座の幕見席が当時1,000円もしないくらいで、かつ出入りも自由。ライブに行くような感覚で気軽に通っていました。ちょうど日本文学を勉強し始めた時期でもあったので、下座音楽や謡、台詞などを体に染み込ませたいと思っていたんです。最初のうちは、言葉も音楽もよく分からなかったのが、だんだん聞こえてくるようになる。そこからかかっている演目の台帳を図書館で借りて読んだり、あるいは同時代に書かれた作品を読んだりするようになりました。

歌舞伎を見たり、あるいはお祭りのお囃子を聞いたりするとき、かつて生きていた人に近づきたいという気持ちが湧きます。当時の人たちが耳にしていたものを自分も耳にしたい、今生きている役者越しの幽霊たちに会いたいし、その役者を見ていた観客たちの幽霊にも会ってみたい。そういう気持ちで見に行っているように思います」

--作中には歌舞伎座を中心に、銀座という街が幾度か登場しました。朝吹さんにとって銀座はどんなイメージの街ですか。

「子どもの頃の記憶でいうと、友達同士で遊びに行く場所ではもちろんなかったですね。何かの用事のついでに両親や祖父母に連れられて、たとえば資生堂パーラーに行ったり、博品館でおもちゃを買ってもらったり。大人に連れられてくる、大人が楽しむ街。子どもは付属的な存在でしたから、退屈でさほど好きではありませんでした(笑)。大人たちも普段着ではなかったですし、そういうパリッとしたイメージは今も持っています。

今では友だちと会うことが多いかな。頻繁にというわけではありませんけれど、こことここが好き、という決まったところがいくつかあります。歌舞伎を見に行ったり、1丁目の〈ギャラリー小柳〉にアートを見に行ったり……。7丁目の〈銀座ウエスト〉の喫茶室は、夜が好きです。蛍光灯がぼうと光って、渋い空間なのになんだか未来的で。おでんの〈やす幸〉さん〈お多幸〉さんも行きますし、8丁目の月光荘〈月のはなれ〉でたまに友達とお茶をすることも……。あっ、GINZA SIXではB2Fの荻野屋さんでよく釜飯を買って帰ります(笑)! 取材で今伺っている『中村藤𠮷本店 銀座店』(4F)は、京都の帰りに京都駅のお店で生茶ゼリイを買って新幹線の中でいただいています。おいしいんですよね。GINZA SIXの向かいにある〈かねまつ〉本店ビルの2階にあるカフェで、通りを歩く人を見ながら原稿を書いていることも多いですね」

--原稿を外でも書かれるんですか?

「外で書くことが多いです。今日もパソコンを持ってきています。家でも書くのですが、家では眠くなったらすぐに寝てしまうので、なるべく外に出ています。原稿を書く時は〈和光〉のティーサロンもたまに行きますね……、ひとつの街に行ったら何軒か回遊しながら書いています」

--歌舞伎を通じてかつて生きていた人に会いたいという先ほどのお言葉もそうですが、朝吹さんのご著書を読んでいると、眼前の景色にいくつもの時間のレイヤーを感じる瞬間がある。昔からのつながりの上に今があるという感覚をもたらしてくれる印象があります。

「時間と銀座ということでいうと、私は吉田健一(1912年-生まれ、昭和に長くわたって活躍した文芸評論家。父は元首相の吉田茂)がとても好きです。銀座には吉田健一が飲んだり食べたりしたという場所がたくさんあります。『海坊主』という短編は、ある男が銀座でお酒を飲んでいたら、相手が海坊主だったという掌編。特に昔からあるような銀座の店には、そういう出来事が起きてもおかしくないような雰囲気が今もありますね」

--最後に銀座やGINZA SIXに思うことがあれば教えてください。

「昔遊郭や高いお料理屋で重要だった場所はお手洗いだそうです。一人になるトイレで現実に戻ってしまうといけません。だからとっても凝って絢爛につくったそう。銀座には現実を忘れかける素晴らしいお手洗いが多い! 和光は居心地がよくて、資生堂パーラーも。

GINZA SIXのお手洗いもとってもきれいですよね。広々として明るすぎず、清潔で、品があるからショッピングの高揚感を保つことができる。パウダースペースに、きちんとゴミ箱が備え付けられているのがたいへんありがたいです。お化粧直しをした後のゴミがパッと捨てられます。お手洗いの空間がピッとしていると、使う方もこの美しさを保とうという緊張感が生まれる気がします。

今回この取材で、初めて屋上の空間を知りました。こんなのびのびとできる憩いの場所があるなんて知らなかった! 桜も咲いていますね。今度地下でお弁当を買ってここで食べてみたいと思います」

朝吹真理子(あさぶき・まりこ)|作家。2009年「流跡」でデビュー。10年同作で第20回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を最年少受賞。11年「きことわ」で第144回芥川賞を受賞。その他の作品に、小説『TIMELESS』などがある。21年「銀座百点」でのエッセイをまとめた『だいちょうことばめぐり』を上梓。

Text: Sawako Akune(GINGRICH)
Photo: Mai Kise
Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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The 5th anniversary, Ginza, インタビュー
淡い光の反射がつくりだす、きらびやかな銀座の空気感。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/126391 Thu, 31 Mar 2022 19:19:25 +0000 no 《Reflex Ginza》2022年 ©Kenta Cobayashi 自ら撮影した写真に、デジタル上編集によって絵画のようなストローク(筆致)を施し、具象と抽象が複雑に組み合わされた作品をつくる小林さん。今回の新作は、小林さん自身が銀座の街並みを撮影し、編集加工したグラフィックと映像で構成されています。気鋭のアーティストの目に、銀座は果たしてどのように映ったのでしょうか。 −−小林さんはさまざまな都市の風景を題材にした作品を多く制作されています。銀座をモチーフにした作品は今回が初めてですか? 「はい。元々渋谷に住んでいたこともあり、渋谷周辺が活動の中心でした。2017年には湘南に拠点を移したので、正直に言うと銀座はあまり来る機会がなくて……(笑)。“ラグジュアリーなお店が多いな”くらいの印象で、今回のお話をいただくまでは、ほとんど銀座のことを知りませんでした。そこで戦前・戦後の銀座を撮った写真集から銀座の歴史やファッションの流れを知ることから作品制作を始めました。その後に街を何度も歩きまわり、街のイメージや雰囲気を感じながら撮影しました」 −−撮影を通じて、銀座の街にどのような印象を受けましたか。 「撮っていてまず感じたのは、光の反射がとても美しい街だということ。ガラス張りのウィンドウディスプレイや、波打ったガラス窓などさまざまな意匠のファサードに、通りを歩く人々や建物同士が反射して、複雑な光をつくりだしているのがとても印象的でした。今回のメインビジュアルは、ファサードに映り込む街の空気感や銀座の独特な光の反射が伝わるよう、GINZA SIXの屋上から撮影した複数の写真を交差させてつくっています。派手なネオンや電飾が少なく、街全体の色合いが美しいのも銀座ならでは。特に夕焼けのグラデーションと、夕日が反射した光のきらびやかさは銀座でしか表現できない色合いです」 ーー街並みの奥にひょっこりと東京タワーが見えるのも銀座らしい風景ですね。 「個人的に東京タワーが好きなのもあって(笑)、うまくこの風景を生かしたかった。青やオレンジに輝く銀座の街並みの奥に、東京タワーが差し色として赤く光り、淡い色合いながら力強さがある。まるで浮世絵のような光のレイヤーは、時代を超えても変わらない“銀座の洗練された佇まい”があるからこそ生まれるもので、他の街では再現できないと思います」 《Reflex Kaleidoscopes》2022年 ©Kenta Cobayashi −−今回の展示は、エントランスのグラフィックのほか、エスカレーターの側面ビジュアル、巨大な映像ディスプレイなど多岐に渡りますね。 「なんといっても制作に時間を費やしたのは、1Fエントランスの上部にまでそびえる大型ディスプレイに投影する映像作品《Reflex Kaleidoscopes》(2022年)。これまでも動画作品はつくってきましたが、このサイズ感は初めて。ディスプレイの大きさに負けないよう、曼荼羅(まんだら)のような密度のある映像を目指しました。 これまでの作品は、写真をデジタル加工して1枚の絵として完結するものも多いのですが、もっと人の身体や空間との関わりのなかで生まれる表現を大事にしたいという想いがあるんです。エスカレーターの側面ビジュアル《Intersection of Reflex Colors》(2022年)など、作品が空間にどんどん取り込まれていくのは、今までにない新鮮な感覚でした」 −−エントランスを飾る作品では、GINZA SIXのロゴデザインも手がけているデザイナー原研哉さんとのコラボレーションとなりました。 《Reflex Ginza Panorama》2022年 ©Kenta Cobayashi 「エントランスのイメージ《Reflex Ginza Panorama》(2022年)は、GINZA SIXの屋上から撮影した写真を左右上下に反転したものを重ねて、ストローク(筆致)の画像編集を施しました。原研哉さんが作成された5周年記念のロゴは、円形、水平、斜めの線などの幾何学が印象的で、僕のストロークの有機的な曲線と、ビルや街の直線のコンビネーションを受けてデザインされたのではないかと。工業的で、コンパスと直線で描ける幾何学の組み合わせですが、グリット的な配置からずれていて、そこに上品さを感じました。このロゴにもう一回レスポンスをしたいと思い、最後にギリギリのタイミングで画像編集を入れさせてもらいました。円形や長方形の加工を入れて、より図像的に複雑化させました。都市自体がもともと直線的な幾何学要素をもっているので、幾何学的な編集と相性がいいことを改めて感じました。これが原さんのデザインから非常にインスパイアされた部分ですね」 −−デジタル加工だけではなく、「身体性」も小林さんの作品の大きなテーマになっていますね。 「湘南に拠点を移したきっかけとなったのが、とてつもない新たなダンス表現の研究をされている方との出会いで。今着ているファッションのデザインもされています。その方からたくさんのことを教えていただいているのですが、今までやってきた表現にどうやって身体性を取り入れるか? 自分の身体性をどう育てるか? 身体とデジタル表現の関係性について葛藤するようになりました。今も自分の作品に満足はしていませんが、不満があるからこそ工夫が生まれています」 −−写真と街は切り離し難いもの。小林さんにとって「街を撮る」ことはどのような行為ですか? 「写真の中には物理的な街の光景しか写りませんが、その裏には歴史や文化、データインフラなど不可視な部分がある。画像加工というプロセスで、その街の色や不可視な情報を浮き彫りにしたいという想いで街を撮っています。 それから、“街の光”も街の雰囲気を映し出す重要な要素です。たとえばヨーロッパの都市は石造りの低い建築が多く、光を吸収するイメージ。一方でニューヨークは街自体が発光していて個々の主張が強い。銀座の街の光が青や黄色で包まれているように、街の光を引き出すことで、その街全体の特徴が見えてきます」 −−銀座は、伝統を受け継ぎながら進化する街。“大人の街”というイメージもありますが、これからの若い世代にとって、どのような要素があるとよいと感じますか? 「メタバースや仮想空間が普及し始めると、デジタルで完結する世界を好む人も増えるかもしれません。その一方で、デジタルの世界に没頭したことで、逆に現実世界の面白さに気づく人もいるはず。実は僕もその一人です。現実世界には、バーチャルワールドにはない街の歴史、匂いや色合い、そしてやっぱりその場所をつくっている人たちの生きた空気感がありますよね。生の人間がいて、その人たちの発する情緒があって、それが街の歴史や文化になっていく。それをいまの時代の技術と組み合わせて表現していけば、面白いものになると感じます」 −−では、今後、小林さんが銀座でやってみたいことがあれば教えてください。 「戦前戦後の文化人や文豪が集ったという銀座の歴史に惹かれます。太宰治が銀座のバーに通ったり、和洋折衷のモダンガールが集まったりする一方で、能楽堂や歌舞伎座などの伝統を大切に後世へと伝えている。常に時代の先端的なものと伝統的なものの、かけあわせを担ってきた街なんだなと。今、日本の伝統的な文化をもっと知りたいと思っていて、和装とのコラボレーションをしたり、能楽や歌舞伎について学んで、いつか空間演出に携わることができたらと思っています」 小林健太(こばやし・けんた)|アーティスト、写真家。1992年神奈川県生まれ。東京と湘南を拠点に活動。主な個展に「#smudge」 ANB Tokyo(東京, 2021年)、「Live in Fluctuations」Little Big Man Gallery(ロサンゼルス、20年)など。ダンヒル、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションも話題となった。作品集に『Everything_2』(Newfave、20年)など。 Text: Kentaro Wada(GINGRICH) Photo: Yoichi Onoda Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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《Reflex Ginza》2022年 ©Kenta Cobayashi

自ら撮影した写真に、デジタル上編集によって絵画のようなストローク(筆致)を施し、具象と抽象が複雑に組み合わされた作品をつくる小林さん。今回の新作は、小林さん自身が銀座の街並みを撮影し、編集加工したグラフィックと映像で構成されています。気鋭のアーティストの目に、銀座は果たしてどのように映ったのでしょうか。

−−小林さんはさまざまな都市の風景を題材にした作品を多く制作されています。銀座をモチーフにした作品は今回が初めてですか?

「はい。元々渋谷に住んでいたこともあり、渋谷周辺が活動の中心でした。2017年には湘南に拠点を移したので、正直に言うと銀座はあまり来る機会がなくて……(笑)。“ラグジュアリーなお店が多いな”くらいの印象で、今回のお話をいただくまでは、ほとんど銀座のことを知りませんでした。そこで戦前・戦後の銀座を撮った写真集から銀座の歴史やファッションの流れを知ることから作品制作を始めました。その後に街を何度も歩きまわり、街のイメージや雰囲気を感じながら撮影しました」

−−撮影を通じて、銀座の街にどのような印象を受けましたか。

「撮っていてまず感じたのは、光の反射がとても美しい街だということ。ガラス張りのウィンドウディスプレイや、波打ったガラス窓などさまざまな意匠のファサードに、通りを歩く人々や建物同士が反射して、複雑な光をつくりだしているのがとても印象的でした。今回のメインビジュアルは、ファサードに映り込む街の空気感や銀座の独特な光の反射が伝わるよう、GINZA SIXの屋上から撮影した複数の写真を交差させてつくっています。派手なネオンや電飾が少なく、街全体の色合いが美しいのも銀座ならでは。特に夕焼けのグラデーションと、夕日が反射した光のきらびやかさは銀座でしか表現できない色合いです」

ーー街並みの奥にひょっこりと東京タワーが見えるのも銀座らしい風景ですね。

「個人的に東京タワーが好きなのもあって(笑)、うまくこの風景を生かしたかった。青やオレンジに輝く銀座の街並みの奥に、東京タワーが差し色として赤く光り、淡い色合いながら力強さがある。まるで浮世絵のような光のレイヤーは、時代を超えても変わらない“銀座の洗練された佇まい”があるからこそ生まれるもので、他の街では再現できないと思います」

《Reflex Kaleidoscopes》2022年 ©Kenta Cobayashi

−−今回の展示は、エントランスのグラフィックのほか、エスカレーターの側面ビジュアル、巨大な映像ディスプレイなど多岐に渡りますね。

「なんといっても制作に時間を費やしたのは、1Fエントランスの上部にまでそびえる大型ディスプレイに投影する映像作品《Reflex Kaleidoscopes》(2022年)。これまでも動画作品はつくってきましたが、このサイズ感は初めて。ディスプレイの大きさに負けないよう、曼荼羅(まんだら)のような密度のある映像を目指しました。

これまでの作品は、写真をデジタル加工して1枚の絵として完結するものも多いのですが、もっと人の身体や空間との関わりのなかで生まれる表現を大事にしたいという想いがあるんです。エスカレーターの側面ビジュアル《Intersection of Reflex Colors》(2022年)など、作品が空間にどんどん取り込まれていくのは、今までにない新鮮な感覚でした」

−−エントランスを飾る作品では、GINZA SIXのロゴデザインも手がけているデザイナー原研哉さんとのコラボレーションとなりました。

《Reflex Ginza Panorama》2022年 ©Kenta Cobayashi

「エントランスのイメージ《Reflex Ginza Panorama》(2022年)は、GINZA SIXの屋上から撮影した写真を左右上下に反転したものを重ねて、ストローク(筆致)の画像編集を施しました。原研哉さんが作成された5周年記念のロゴは、円形、水平、斜めの線などの幾何学が印象的で、僕のストロークの有機的な曲線と、ビルや街の直線のコンビネーションを受けてデザインされたのではないかと。工業的で、コンパスと直線で描ける幾何学の組み合わせですが、グリット的な配置からずれていて、そこに上品さを感じました。このロゴにもう一回レスポンスをしたいと思い、最後にギリギリのタイミングで画像編集を入れさせてもらいました。円形や長方形の加工を入れて、より図像的に複雑化させました。都市自体がもともと直線的な幾何学要素をもっているので、幾何学的な編集と相性がいいことを改めて感じました。これが原さんのデザインから非常にインスパイアされた部分ですね」

−−デジタル加工だけではなく、「身体性」も小林さんの作品の大きなテーマになっていますね。

「湘南に拠点を移したきっかけとなったのが、とてつもない新たなダンス表現の研究をされている方との出会いで。今着ているファッションのデザインもされています。その方からたくさんのことを教えていただいているのですが、今までやってきた表現にどうやって身体性を取り入れるか? 自分の身体性をどう育てるか? 身体とデジタル表現の関係性について葛藤するようになりました。今も自分の作品に満足はしていませんが、不満があるからこそ工夫が生まれています」

−−写真と街は切り離し難いもの。小林さんにとって「街を撮る」ことはどのような行為ですか?

「写真の中には物理的な街の光景しか写りませんが、その裏には歴史や文化、データインフラなど不可視な部分がある。画像加工というプロセスで、その街の色や不可視な情報を浮き彫りにしたいという想いで街を撮っています。

それから、“街の光”も街の雰囲気を映し出す重要な要素です。たとえばヨーロッパの都市は石造りの低い建築が多く、光を吸収するイメージ。一方でニューヨークは街自体が発光していて個々の主張が強い。銀座の街の光が青や黄色で包まれているように、街の光を引き出すことで、その街全体の特徴が見えてきます」

−−銀座は、伝統を受け継ぎながら進化する街。“大人の街”というイメージもありますが、これからの若い世代にとって、どのような要素があるとよいと感じますか?

「メタバースや仮想空間が普及し始めると、デジタルで完結する世界を好む人も増えるかもしれません。その一方で、デジタルの世界に没頭したことで、逆に現実世界の面白さに気づく人もいるはず。実は僕もその一人です。現実世界には、バーチャルワールドにはない街の歴史、匂いや色合い、そしてやっぱりその場所をつくっている人たちの生きた空気感がありますよね。生の人間がいて、その人たちの発する情緒があって、それが街の歴史や文化になっていく。それをいまの時代の技術と組み合わせて表現していけば、面白いものになると感じます」

−−では、今後、小林さんが銀座でやってみたいことがあれば教えてください。

「戦前戦後の文化人や文豪が集ったという銀座の歴史に惹かれます。太宰治が銀座のバーに通ったり、和洋折衷のモダンガールが集まったりする一方で、能楽堂や歌舞伎座などの伝統を大切に後世へと伝えている。常に時代の先端的なものと伝統的なものの、かけあわせを担ってきた街なんだなと。今、日本の伝統的な文化をもっと知りたいと思っていて、和装とのコラボレーションをしたり、能楽や歌舞伎について学んで、いつか空間演出に携わることができたらと思っています」

小林健太(こばやし・けんた)|アーティスト、写真家。1992年神奈川県生まれ。東京と湘南を拠点に活動。主な個展に「#smudge」 ANB Tokyo(東京, 2021年)、「Live in Fluctuations」Little Big Man Gallery(ロサンゼルス、20年)など。ダンヒル、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションも話題となった。作品集に『Everything_2』(Newfave、20年)など。

Text: Kentaro Wada(GINGRICH)
Photo: Yoichi Onoda
Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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The 5th anniversary, Art, Ginza, インタビュー
GINZA SIXが、日本の真のラグジュアリーを発信する拠点になる未来。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/126392 Thu, 31 Mar 2022 19:18:56 +0000 no --原さんには以前、GINZA SIXの開業前にもロゴに込めた思いをお話しいただきました(『GSIXというロゴタイプに込めたのは、銀座の持つ軸性』)。改めて当時を振り返って、デザインの足がかりとなったことなどを教えていただけますか。 「僕は仕事場も銀座で、この辺りのことはいわばご近所ごとなんです。お話をいただいてデザインに取りかかってみて感じたひとつが“GINZA"とつけなくてもいいのでは、ということ。どこもかしこも名称や施設名に銀座、銀座とあるので『もういいよ』と(笑)。実はこの街でなら“G”といえば銀座とわかるんですよね。検証段階では"GINZA SIX" "GINZA 6" "G 6"なども試してみたうえで、“GSIX”という表記を提案しました。 テナントを抱える商業施設ですから、“GSIX”という店はありません。著名なブランドがあまた存在する建物のロゴは、それらブランドと横並びになるものではいけない。むしろそれらを受け容れる器として、分母、あるいは大きな軸となるものとしたい。シンプルなフォルムのロゴに決まっていったのはそういう経緯です。 建物のエントランス部分に、ロゴサインを建物の上からくっつけるように設置するのではなく、彫り込んでいただいたのも同じ意図からでした。石に文字が刻印されたローマ時代の建築のような風情。そうすることで、新たに入ってくる各店舗のロゴとは違うレイヤーになります。これによってロゴも建物も、長い時間を経た後も古びずに品格を保ってあり続けられる。そんな思いがありました」 --開業以降これまでの5年の間にも各種印刷物や、イベント時のグラフィック、また周年のロゴなどを通じて、GINZA SIXに関わり続けていただいていますね。 「GSIXのアルファベットを単純化したモノグラムのようなグラフィックパターンはなかなかかわいいでしょう(笑)? セールやクリスマスなどのイベント時に各所を彩っていただいています。周年ごとのグラフィックは、毎回アーティストが変わりますが、GSIXのアイデンティティが土台としてしっかりあれば、いろんなアーティストの個性が際立つ。その土台部分を担ってきたのかなと思っています」 --はじめにお話しいただいた通り、原さんが現在代表取締役を務める日本デザインセンターも銀座にあります。銀座は原さんにとってどんな街でしょうか。 「渋谷などと大きく違うのは新しいものを打ち出すときに、必ずしもパンキッシュでなくていいこと。銀座はむしろ少し抑制されたもので構成されている街だと感じます。街全体に遺伝子としてアール・デコがある。街のシンボルといえる和光の建物、それから7丁目に本社がある資生堂はロゴも化粧品のパッケージデザインも、そして仲條正義さんがデザインした銀座松屋のロゴにもアール・デコを感じます。大正から昭和初期の銀座は、海外から入ってくる“舶来品”がまずやってきて流行し、そこから日本全体へと伝播していく場所でもありました。当時のヨーロッパのデザインの最先端がアール・デコでしたから、それが銀座のデザインの遺伝子として根づいているのでしょう。GSIXのロゴも、実は少しだけアール・デコを意識しているんです。そこを引き継ぐことで、銀座という街の遺伝子を持ったものとして存在できると思うのです」 --GINZA SIXは、従来の銀座の商業施設に比べて20~30代の顧客が多いことで知られています。そういったより若い年齢層の人々に、GINZA SIXを通じて体験してほしいこと、感じてほしいことはありますか? 「日本のラグジュアリーってどんなことだろう? と最近よく考えるのです。ヨーロッパのラグジュアリーは、ごく平たくいうと階級社会の頂点にある人たちのラグジュアリー。民主主義が浸透して一見階級からは解き放たれているようでいて、やっぱり背後にはその階級が根強くある印象です。それから西洋を下敷きにしつつもローカルのエキゾチズムをまとった、植民地的ラグジュアリーもある。 日本のラグジュアリーはそれらとは全く違った、おそらくは過剰なものではないと僕は思います。シャンデリアがぶら下がってきらびやかで……というような分かりやすいものではなく、ミニマルで張り詰めた空間に価値あるものをぽつんと置く、というようなこと。何もしていないようでいて、隅々まで上質さが行き届いているというようなことが、本質的に日本らしいラグジュアリーでしょう。 そういう意味では、GINZA SIXの館内には、日本らしい、突き詰められた簡潔な美学があると思います。昔の和のモチーフを散りばめるとか、障子やふすまを使うとかいった“日本風”とは少し違う美学です。日本人ではなくとも身を置くうちに、そのエッセンスはきちんと伝わりますし、そうと知らなくても何か背筋の伸びるような緊張感や美意識を感じるはずです」 --日本の美学という意味では、最近原さんが手がけられている個人プロジェクト『低空飛行』もそれに近いものがありますか? 宿や美術館、伝統工芸……など日本各地のさまざまなスポットをウェブやポッドキャストで紹介されていますね。 「僕は長くロケや打合せなどで海外への旅が多い日々を送ってきました。帰ってくる度に思うのは日本がとても特殊だということ。明治維新から約150年の間に日本は目覚ましく変貌してきましたが、その途上で本来の日本らしさを取りこぼしてきたところがある。次の150年は、潜在している美しい風土や伝統工芸などを見立てなおして、伝えていくべきでは……と思うんです。まあそこまでしかつめらしいコンセプトをつくって始めたプロジェクトではなくて(笑)、自分でもよく説明できないままにスタートしたのですが、毎月自分で取材に行って、動画と写真を撮っています。これまでに40ヶ所ほど行きましたが、60回くらいまでは続けたいなあと。回を重ねるごとに、日本なりの“ラグジュアリー”とは何か、に対する答えが見えてくるように思います。 たとえばGINZA SIXが、GSIXらしい旅を売ったらどうだろうと思うんですよ。国内外の真の贅を知るお客様たちに、日本のラグジュアリーを紹介していく旅。GINZA SIXがポータルとなって旅ができたらと思います。そういう旅の設計ならば、僕もやってみたい(笑)! そんな風に新しいツーリズムのイメージを膨らませていると、とてもワクワクするんです」 〈プロフィール〉 原研哉(はら・けんや)|1958年生まれ。グラフィックデザイナー。日本デザインセンター代表取締役社長。武蔵野美術大学教授。2002年より無印良品のアートディレクター。松屋銀座、森ビル、蔦屋書店、GINZA SIX、MIKIMOTO、ヤマト運輸のVIデザインなど、活動領域は極めて広い。「JAPAN HOUSE」では総合プロデューサーを務め、日本への興味を喚起する仕事に注力している。著書に『デザインのデザイン』(岩波書店、2003年)、『DESIGNING DESIGN』(Lars Müller Publishers, 2007)、『白』(中央公論新社、2008年)、『日本のデザイン』(岩波新書、2011年)、『白百』(中央公論新社、2018年)など。 https://www.ndc.co.jp/hara/ Text: Sawako Akune(GINGRICH) Photo: Mie Morimoto Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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--原さんには以前、GINZA SIXの開業前にもロゴに込めた思いをお話しいただきました(『GSIXというロゴタイプに込めたのは、銀座の持つ軸性』)。改めて当時を振り返って、デザインの足がかりとなったことなどを教えていただけますか。

「僕は仕事場も銀座で、この辺りのことはいわばご近所ごとなんです。お話をいただいてデザインに取りかかってみて感じたひとつが“GINZA"とつけなくてもいいのでは、ということ。どこもかしこも名称や施設名に銀座、銀座とあるので『もういいよ』と(笑)。実はこの街でなら“G”といえば銀座とわかるんですよね。検証段階では"GINZA SIX" "GINZA 6" "G 6"なども試してみたうえで、“GSIX”という表記を提案しました。

テナントを抱える商業施設ですから、“GSIX”という店はありません。著名なブランドがあまた存在する建物のロゴは、それらブランドと横並びになるものではいけない。むしろそれらを受け容れる器として、分母、あるいは大きな軸となるものとしたい。シンプルなフォルムのロゴに決まっていったのはそういう経緯です。

建物のエントランス部分に、ロゴサインを建物の上からくっつけるように設置するのではなく、彫り込んでいただいたのも同じ意図からでした。石に文字が刻印されたローマ時代の建築のような風情。そうすることで、新たに入ってくる各店舗のロゴとは違うレイヤーになります。これによってロゴも建物も、長い時間を経た後も古びずに品格を保ってあり続けられる。そんな思いがありました」

--開業以降これまでの5年の間にも各種印刷物や、イベント時のグラフィック、また周年のロゴなどを通じて、GINZA SIXに関わり続けていただいていますね。

「GSIXのアルファベットを単純化したモノグラムのようなグラフィックパターンはなかなかかわいいでしょう(笑)? セールやクリスマスなどのイベント時に各所を彩っていただいています。周年ごとのグラフィックは、毎回アーティストが変わりますが、GSIXのアイデンティティが土台としてしっかりあれば、いろんなアーティストの個性が際立つ。その土台部分を担ってきたのかなと思っています」

--はじめにお話しいただいた通り、原さんが現在代表取締役を務める日本デザインセンターも銀座にあります。銀座は原さんにとってどんな街でしょうか。

「渋谷などと大きく違うのは新しいものを打ち出すときに、必ずしもパンキッシュでなくていいこと。銀座はむしろ少し抑制されたもので構成されている街だと感じます。街全体に遺伝子としてアール・デコがある。街のシンボルといえる和光の建物、それから7丁目に本社がある資生堂はロゴも化粧品のパッケージデザインも、そして仲條正義さんがデザインした銀座松屋のロゴにもアール・デコを感じます。大正から昭和初期の銀座は、海外から入ってくる“舶来品”がまずやってきて流行し、そこから日本全体へと伝播していく場所でもありました。当時のヨーロッパのデザインの最先端がアール・デコでしたから、それが銀座のデザインの遺伝子として根づいているのでしょう。GSIXのロゴも、実は少しだけアール・デコを意識しているんです。そこを引き継ぐことで、銀座という街の遺伝子を持ったものとして存在できると思うのです」

--GINZA SIXは、従来の銀座の商業施設に比べて20~30代の顧客が多いことで知られています。そういったより若い年齢層の人々に、GINZA SIXを通じて体験してほしいこと、感じてほしいことはありますか?

「日本のラグジュアリーってどんなことだろう? と最近よく考えるのです。ヨーロッパのラグジュアリーは、ごく平たくいうと階級社会の頂点にある人たちのラグジュアリー。民主主義が浸透して一見階級からは解き放たれているようでいて、やっぱり背後にはその階級が根強くある印象です。それから西洋を下敷きにしつつもローカルのエキゾチズムをまとった、植民地的ラグジュアリーもある。

日本のラグジュアリーはそれらとは全く違った、おそらくは過剰なものではないと僕は思います。シャンデリアがぶら下がってきらびやかで……というような分かりやすいものではなく、ミニマルで張り詰めた空間に価値あるものをぽつんと置く、というようなこと。何もしていないようでいて、隅々まで上質さが行き届いているというようなことが、本質的に日本らしいラグジュアリーでしょう。

そういう意味では、GINZA SIXの館内には、日本らしい、突き詰められた簡潔な美学があると思います。昔の和のモチーフを散りばめるとか、障子やふすまを使うとかいった“日本風”とは少し違う美学です。日本人ではなくとも身を置くうちに、そのエッセンスはきちんと伝わりますし、そうと知らなくても何か背筋の伸びるような緊張感や美意識を感じるはずです」

--日本の美学という意味では、最近原さんが手がけられている個人プロジェクト『低空飛行』もそれに近いものがありますか? 宿や美術館、伝統工芸……など日本各地のさまざまなスポットをウェブやポッドキャストで紹介されていますね。

「僕は長くロケや打合せなどで海外への旅が多い日々を送ってきました。帰ってくる度に思うのは日本がとても特殊だということ。明治維新から約150年の間に日本は目覚ましく変貌してきましたが、その途上で本来の日本らしさを取りこぼしてきたところがある。次の150年は、潜在している美しい風土や伝統工芸などを見立てなおして、伝えていくべきでは……と思うんです。まあそこまでしかつめらしいコンセプトをつくって始めたプロジェクトではなくて(笑)、自分でもよく説明できないままにスタートしたのですが、毎月自分で取材に行って、動画と写真を撮っています。これまでに40ヶ所ほど行きましたが、60回くらいまでは続けたいなあと。回を重ねるごとに、日本なりの“ラグジュアリー”とは何か、に対する答えが見えてくるように思います。

たとえばGINZA SIXが、GSIXらしい旅を売ったらどうだろうと思うんですよ。国内外の真の贅を知るお客様たちに、日本のラグジュアリーを紹介していく旅。GINZA SIXがポータルとなって旅ができたらと思います。そういう旅の設計ならば、僕もやってみたい(笑)! そんな風に新しいツーリズムのイメージを膨らませていると、とてもワクワクするんです」

〈プロフィール〉
原研哉(はら・けんや)|1958年生まれ。グラフィックデザイナー。日本デザインセンター代表取締役社長。武蔵野美術大学教授。2002年より無印良品のアートディレクター。松屋銀座、森ビル、蔦屋書店、GINZA SIX、MIKIMOTO、ヤマト運輸のVIデザインなど、活動領域は極めて広い。「JAPAN HOUSE」では総合プロデューサーを務め、日本への興味を喚起する仕事に注力している。著書に『デザインのデザイン』(岩波書店、2003年)、『DESIGNING DESIGN』(Lars Müller Publishers, 2007)、『白』(中央公論新社、2008年)、『日本のデザイン』(岩波新書、2011年)、『白百』(中央公論新社、2018年)など。
https://www.ndc.co.jp/hara/

Text: Sawako Akune(GINGRICH)
Photo: Mie Morimoto
Produce: Hitoshi Matsuo(EDIT LIFE),Rina Kawabe(EDIT LIFE)

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食いしん坊の魂百まで? 銀座で旅する食の記憶 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124789 Tue, 08 Feb 2022 00:58:28 +0000 no とにかく小さな頃から食べ物への興味が人一倍強かった。不思議なもので、こうした執着というものは、誰かの影響、ということではなく、生まれた時から自然に個人のDNAに組み込まれているとしか思えない。 例えば、私が人生で初めて文字を読んだのは、1歳10ヶ月のとき。和菓子屋の店先の“すあま”だったと母が教えてくれた。またあるとき、四柱推命で自分の名前を調べてみると、命式に“食神”という星が二つもあった。この星が持つ意味は「快楽」と「食通」だというから、まさに天が“食いしん坊”の人生をくれたのだと自分の飽くなき食への探究心に納得した。 こうして、生まれながらの食べることへの並々ならぬ関心は、そのまま職業になり、国内外を旅をしながら食の現場を取材する編集者となって今に至る。そんな食いしん坊の魂に刻まれた美味なる記憶は、何年経っても色鮮やかに蘇るということを先日訪れたGINZA SIXにて改めて知ったのだった。 この日、GINZA SIXを訪れたのは、「家寳 跳龍門」(6F)に行くためだった。2021年9月にオープンしたこちらのお店で腕を振るうのは、袁家寳(えんかぽ)氏。16歳で銀座の「福臨門海鮮酒家」の厨房に入り、長年総料理長に。最後は「福臨門海鮮酒家」から屋号が変わった「家全七福」の日本全店の統括シェフを務めていた人物だ。 「福臨門海鮮酒家」といえば、誰もが知る広東料理の超高級店。2度目に香港を訪れた1995年、思い切り背伸びをして初めて訪れた。そのときに食べたフカヒレが、今までの自分が体験したことのない味だったことを覚えている。銀座の「福臨門海鮮酒家」もまた、銀座の高級広東料理の代名詞、訪れるには敷居が高い憧れの店だった。 そんな店の味を支えていたシェフが新たに店をオープンしたと聞いて、早速予約をしたのだ。 エレベーターで6Fまであがり、一番奥に向かうとエントランスが見えてきた。予約を告げて中に入る。中国格子に仕切られた先に広がるシックな店内にはゆったりとしたソファ席とテーブル席が並んでいる。おすすめはソファ席。他のテーブルのゲストの視線を気にせずに、ゆっくりと食べることができる。窓から銀座の街並みが見えるのもいい。 さて、メニューを開いて、何を食べるかサービスの方と作戦を練る。最初のオーダーが肝心だ。まず目に入ってきたのは、袁家寳シェフの名前がついた「KAPPO脆皮鶏(鶏クリスピーの姿揚げ)」(半羽4,950円・一羽9,900円 ※以下全て税込価格)。思い起こせば香港で感動した料理の一つに鶏肉の丸揚げがあった。皮が薄くてパリッとしているのに、身はしっとりしていて、肉と脂の旨みが濃い。瞼を閉じれば、あのころの香港の喧騒が……。そんなことを思い出しながら、半身を注文。 ほどなくして、テーブルにやってきたつややかな「脆皮鶏」。これこれ!と思いながらひと口パクリ。まさに文字通り、歯に当たるとパリッとハラっと崩れる皮の食感、そして続いてしっとりと吸い付くような肉を噛み締める。脂の旨味がじんわり広がって……。ちなみに、鶏肉は茨城県の香りがあって皮が薄く、脂がのっている品種を選んでいるそう。うーん!これぞ、まさに香港の味だ。 さて、次は何を頼もう。やはりここは、私が30年近く前、当時清水の舞台から飛び降りる気持ちで初めて注文し、衝撃を受けたフカヒレにするしかない。 当時、ひよっこの私は、日本ではフカヒレといえばソバの上にのっている、10cmくらいの小さなフカヒレしか食べたことがなかった。それがだ。香港で出会ったそれは、姿煮ではなく、ソバ状のきらきらとした透明の太い繊維状のものが黄金のスープのなかで輝いていた。これが、フカヒレ!? そう驚いたことを覚えている。そして、たっぷりの上湯とともに食べて、スープの味を楽しむのが、本来のフカヒレなのだと知ったのだった。 目の前に出された、「至高フカヒレ上湯煮込み」(17,600円)は、当時の記憶と同じ黄金色のオーラを放っていた。黄金のスープを一口飲めば、すっきりとした中に複雑な旨味が幾重にも広がる。 ああ、このスープ。フカヒレに染み渡るスープは、驚くほど透明感があり、かつ風味が際立ち、品が良い。使っている材料は、鶏肉、豚肉、金華ハムといたって普通。それなのに、このクリアで旨味があるのに澄んだスープは全然他と違う! おいしさの秘密を聞くと、「大切なのは素材を見極める目にあり」と家寳シェフ。それはスープに限らずすべての料理において大切なことだそう。 高貴なスープをまとったフカヒレの食感を噛みしめる幸せよ。フカヒレをソバのようにたっぷり食べる贅沢に、しばし恍惚となる。 そして、最後の締めは、もちろん「福臨門海鮮酒家」を彷彿とさせる、「干し鮑汁を入れた干しイカと鶏肉の炒飯」(2,600円)。鶏肉や釜焼チャーシュー、戻したスルメイカで炒飯をつくり、最後に鮑の戻し汁を加えて仕上げたものだ。パラッとした米粒の食感は残しながらも、旨味たっぷりの水分をまとってしっとりした独特の食感は、満腹でもスルスルと胃の中に収まっていく。ちなみに「福臨門海鮮酒家」では干しタコを使うが、それを干しスルメでつくるのが家寶流だ。 「干しスルメイカの出汁がよく出て、炒飯に合うと思ったんですよね。スープや、乾物の戻し方や、素材の選び方などの基本は『福臨門海鮮酒家』時代で学んだことを踏襲しながら、自分がやりたかったことや、面白いと思うこともチャレンジしたいですね」と笑顔で話す家寳シェフ。 少しお話をさせていただいて、すっかりそのチャーミングな人柄に惚れてしまった私。とにかく、おいしいものを作りたい!おしいもの食べてほしい!という気持ちがオーラになって溢れている。シェフ、ランチの焼味(シュウメイ)がご飯にのったセットも気になるから、近いうちにまた行きます! さて、30年前の香港旅行の記憶を辿る食事をしたら、もっと前に遡る食の記憶がGINZA SIXにあることを思い出した。その思い出をデザートにしようと向かったのは、「THE GRAND GINZA(ザ・グラン銀座)」(13F)。お目当ては、ここで食べられる銀座マキシム・ド・パリの味を受け継ぐ「苺のミルフィーユ」だ。 実は私、学生時代に渋谷東急本店地下にあった、銀座マキシム・ド・パリのケーキショップでアルバイトをしていた。銀座マキシム・ド・パリが、1966年に誕生して以来、本場フランスの味を楽しむ大人の社交場だった伝説のレストランだとは知らずに働いていたと思う。 当時のバイト先には、手土産にするのだろう、企業の秘書風の人や、サラリーマンが良く買いに来た。このミルフィーユのリッチな美味しさは、店の偉大さを知らないバイトの私でも夢中になった。 学生が買うにはそれなりに高額だった記憶があるが、それでもたまに、奮発して家に買って帰り、家族と食べるのを楽しみにしていた思い出のケーキなのだ。 「THE GRAND GINZA」でも数量限定で販売中の「苺のミルフィーユ」(ハーフサイズ 3,240円・フルサイズ6,480円・ワンカット 1,460円)は、そんな思い出深い当時のマキシムのレシピがベース。カスタードとパイを重ねて、端正な長方形に整えた後、アーモンドで周りを飾って、苺を並べて、生クリームをひと絞り。あの懐かしい憧れのケーキと、ここで再会したことに思わず感涙……しそうに。 銀座のマキシムも、渋谷のケーキショップもなくなってしまったけれど、ここであの味を楽しめる日がくるなんて! 感慨深く一口食べると、記憶の味よりちょっと大人の味になっているような……。 聞けば、こちらのレシピを監修しているのは「銀座マキシム・ド・パリ」初代パティシエ。店のゲストのイメージに合わせて、従来のレシピのカスタードクリームにコアントローを多めに効かせているのだそう。大人になった今、むしろこの味も好みかもしれない。 注文が入ってからパイとクリームを組み立て作るので、気持ちいいくらいのサクサク感がいい。見た目はかなりボリュームがあるけれど、クリームもパイも軽やかなのでペロリと平らげてしまう。合わせるのは苺のフレーバーがする、TWGの「1837ブラックティー」がおすすめ。華やかな香りがミルフィーユともよく合うんだな、これが。 このミルフィーユ、大人気で売り切れることも多いそう。お店に向かう前に電話をして予約をすることを忘れずに。 なんだか食の記憶を辿っていたら、おいしいものを買って実家に帰りたくなった。どうせなら、お土産も私にとって素敵な思い出があるお店で調達しよう。 そう向かったのは、2021年5月に登場した「アルノー・ラエール パリ」(B2F)だ。 こちらのお店との出会いは、2007年、当時担当していた雑誌の取材でパリに行ったときのこと。M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)受章パティシエ、アルノー・ラエールさんの店と聞いて、どんな荘厳なお店なのかと想像をふくらませていた。ところが、モンマルトルにあるショップは、住宅街にある普通のお菓子屋さんといったさりげない佇まいでちょっと拍子抜けしたことを覚えている。 けれど、中に入ってショーケースをみたときに驚いた。細部まで美しく作られたお菓子が放つオーラに圧倒された。特に、お店のスペシャリテでもあるチョコレートケーキ「トゥールーズ=ロートレック」(小1個 760円・ホール 4,560円)に釘付けになった。もちろんGINZA SIXのお店のショーケースでも売られている。ツヤツヤと光る美しいケーキは、食べたら中のチョコレートムースの香りがすばらしく、はっとするほど洗練された味わい。その同じ味が日本でも買えるなんて! この日は、「トゥールーズ=ロートレック」のほかに、見た目もかわいい「ケークフリュイ」(2,100円)を購入。みっしりとドライフルーツとナッツがデコレーションされているケークは、小さくスライスしても食べごたえ十分。日持ちもするし、クリアケースのパッケージが可愛くって手土産にはぴったりだ。 ちなみに、こちらのお店、フランスから空輸されるショコラもおすすめ。特にお気に入りは「コフレフュメ」。燻製したカカオのガナッシュでつくるショコラは、そのままでもいいけれど、ふわりと漂う薫香がウイスキーなどのお酒に合うので男性に差し上げるのにも重宝している。ちなみに、たまに自分用にも買うのだけれど、一粒食べるとクセになってしまうので、食べ過ぎに注意。 お腹もいっぱいになって、家族に渡すおみやげも買って、なんだか幸せな気分でGINZA SIXを出た。 GINZA SIXには新しい刺激もあるし、受け継がれていく美味にも出会える懐が深い場所。香港、パリ、東京、そして学生時代から今現在まで、銀座にいながらにして、時空も距離も飛び越えて旅をした。そんな時間を過ごすなかで、自分のなかに生き続けるキラキラとした食べ物の記憶のカケラと久しぶりに出逢えたのも愛おしかった。 そして、GINZA SIXで思いがけず記憶の旅をたどって改めてわかったことは、1歳の“すあま”を読んだときから歳を重ねた今まで、食に対する貪欲な好奇心はまったく変わっていないということ。 食いしん坊の魂百まで、ということなんだろう。 Text: Misa Yamaji Photos: Michika Mochizuki Edit: Yuka Okada(81)

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とにかく小さな頃から食べ物への興味が人一倍強かった。不思議なもので、こうした執着というものは、誰かの影響、ということではなく、生まれた時から自然に個人のDNAに組み込まれているとしか思えない。

例えば、私が人生で初めて文字を読んだのは、1歳10ヶ月のとき。和菓子屋の店先の“すあま”だったと母が教えてくれた。またあるとき、四柱推命で自分の名前を調べてみると、命式に“食神”という星が二つもあった。この星が持つ意味は「快楽」と「食通」だというから、まさに天が“食いしん坊”の人生をくれたのだと自分の飽くなき食への探究心に納得した。

こうして、生まれながらの食べることへの並々ならぬ関心は、そのまま職業になり、国内外を旅をしながら食の現場を取材する編集者となって今に至る。そんな食いしん坊の魂に刻まれた美味なる記憶は、何年経っても色鮮やかに蘇るということを先日訪れたGINZA SIXにて改めて知ったのだった。

この日、GINZA SIXを訪れたのは、「家寳 跳龍門」(6F)に行くためだった。2021年9月にオープンしたこちらのお店で腕を振るうのは、袁家寳(えんかぽ)氏。16歳で銀座の「福臨門海鮮酒家」の厨房に入り、長年総料理長に。最後は「福臨門海鮮酒家」から屋号が変わった「家全七福」の日本全店の統括シェフを務めていた人物だ。

「福臨門海鮮酒家」といえば、誰もが知る広東料理の超高級店。2度目に香港を訪れた1995年、思い切り背伸びをして初めて訪れた。そのときに食べたフカヒレが、今までの自分が体験したことのない味だったことを覚えている。銀座の「福臨門海鮮酒家」もまた、銀座の高級広東料理の代名詞、訪れるには敷居が高い憧れの店だった。

そんな店の味を支えていたシェフが新たに店をオープンしたと聞いて、早速予約をしたのだ。

エレベーターで6Fまであがり、一番奥に向かうとエントランスが見えてきた。予約を告げて中に入る。中国格子に仕切られた先に広がるシックな店内にはゆったりとしたソファ席とテーブル席が並んでいる。おすすめはソファ席。他のテーブルのゲストの視線を気にせずに、ゆっくりと食べることができる。窓から銀座の街並みが見えるのもいい。

さて、メニューを開いて、何を食べるかサービスの方と作戦を練る。最初のオーダーが肝心だ。まず目に入ってきたのは、袁家寳シェフの名前がついた「KAPPO脆皮鶏(鶏クリスピーの姿揚げ)」(半羽4,950円・一羽9,900円 ※以下全て税込価格)。思い起こせば香港で感動した料理の一つに鶏肉の丸揚げがあった。皮が薄くてパリッとしているのに、身はしっとりしていて、肉と脂の旨みが濃い。瞼を閉じれば、あのころの香港の喧騒が……。そんなことを思い出しながら、半身を注文。

ほどなくして、テーブルにやってきたつややかな「脆皮鶏」。これこれ!と思いながらひと口パクリ。まさに文字通り、歯に当たるとパリッとハラっと崩れる皮の食感、そして続いてしっとりと吸い付くような肉を噛み締める。脂の旨味がじんわり広がって……。ちなみに、鶏肉は茨城県の香りがあって皮が薄く、脂がのっている品種を選んでいるそう。うーん!これぞ、まさに香港の味だ。

さて、次は何を頼もう。やはりここは、私が30年近く前、当時清水の舞台から飛び降りる気持ちで初めて注文し、衝撃を受けたフカヒレにするしかない。

当時、ひよっこの私は、日本ではフカヒレといえばソバの上にのっている、10cmくらいの小さなフカヒレしか食べたことがなかった。それがだ。香港で出会ったそれは、姿煮ではなく、ソバ状のきらきらとした透明の太い繊維状のものが黄金のスープのなかで輝いていた。これが、フカヒレ!?

そう驚いたことを覚えている。そして、たっぷりの上湯とともに食べて、スープの味を楽しむのが、本来のフカヒレなのだと知ったのだった。

目の前に出された、「至高フカヒレ上湯煮込み」(17,600円)は、当時の記憶と同じ黄金色のオーラを放っていた。黄金のスープを一口飲めば、すっきりとした中に複雑な旨味が幾重にも広がる。

ああ、このスープ。フカヒレに染み渡るスープは、驚くほど透明感があり、かつ風味が際立ち、品が良い。使っている材料は、鶏肉、豚肉、金華ハムといたって普通。それなのに、このクリアで旨味があるのに澄んだスープは全然他と違う! おいしさの秘密を聞くと、「大切なのは素材を見極める目にあり」と家寳シェフ。それはスープに限らずすべての料理において大切なことだそう。

高貴なスープをまとったフカヒレの食感を噛みしめる幸せよ。フカヒレをソバのようにたっぷり食べる贅沢に、しばし恍惚となる。

そして、最後の締めは、もちろん「福臨門海鮮酒家」を彷彿とさせる、「干し鮑汁を入れた干しイカと鶏肉の炒飯」(2,600円)。鶏肉や釜焼チャーシュー、戻したスルメイカで炒飯をつくり、最後に鮑の戻し汁を加えて仕上げたものだ。パラッとした米粒の食感は残しながらも、旨味たっぷりの水分をまとってしっとりした独特の食感は、満腹でもスルスルと胃の中に収まっていく。ちなみに「福臨門海鮮酒家」では干しタコを使うが、それを干しスルメでつくるのが家寶流だ。

「干しスルメイカの出汁がよく出て、炒飯に合うと思ったんですよね。スープや、乾物の戻し方や、素材の選び方などの基本は『福臨門海鮮酒家』時代で学んだことを踏襲しながら、自分がやりたかったことや、面白いと思うこともチャレンジしたいですね」と笑顔で話す家寳シェフ。

少しお話をさせていただいて、すっかりそのチャーミングな人柄に惚れてしまった私。とにかく、おいしいものを作りたい!おしいもの食べてほしい!という気持ちがオーラになって溢れている。シェフ、ランチの焼味(シュウメイ)がご飯にのったセットも気になるから、近いうちにまた行きます!

さて、30年前の香港旅行の記憶を辿る食事をしたら、もっと前に遡る食の記憶がGINZA SIXにあることを思い出した。その思い出をデザートにしようと向かったのは、「THE GRAND GINZA(ザ・グラン銀座)」(13F)。お目当ては、ここで食べられる銀座マキシム・ド・パリの味を受け継ぐ「苺のミルフィーユ」だ。

実は私、学生時代に渋谷東急本店地下にあった、銀座マキシム・ド・パリのケーキショップでアルバイトをしていた。銀座マキシム・ド・パリが、1966年に誕生して以来、本場フランスの味を楽しむ大人の社交場だった伝説のレストランだとは知らずに働いていたと思う。

当時のバイト先には、手土産にするのだろう、企業の秘書風の人や、サラリーマンが良く買いに来た。このミルフィーユのリッチな美味しさは、店の偉大さを知らないバイトの私でも夢中になった。

学生が買うにはそれなりに高額だった記憶があるが、それでもたまに、奮発して家に買って帰り、家族と食べるのを楽しみにしていた思い出のケーキなのだ。

「THE GRAND GINZA」でも数量限定で販売中の「苺のミルフィーユ」(ハーフサイズ 3,240円・フルサイズ6,480円・ワンカット 1,460円)は、そんな思い出深い当時のマキシムのレシピがベース。カスタードとパイを重ねて、端正な長方形に整えた後、アーモンドで周りを飾って、苺を並べて、生クリームをひと絞り。あの懐かしい憧れのケーキと、ここで再会したことに思わず感涙……しそうに。

銀座のマキシムも、渋谷のケーキショップもなくなってしまったけれど、ここであの味を楽しめる日がくるなんて! 感慨深く一口食べると、記憶の味よりちょっと大人の味になっているような……。

聞けば、こちらのレシピを監修しているのは「銀座マキシム・ド・パリ」初代パティシエ。店のゲストのイメージに合わせて、従来のレシピのカスタードクリームにコアントローを多めに効かせているのだそう。大人になった今、むしろこの味も好みかもしれない。

注文が入ってからパイとクリームを組み立て作るので、気持ちいいくらいのサクサク感がいい。見た目はかなりボリュームがあるけれど、クリームもパイも軽やかなのでペロリと平らげてしまう。合わせるのは苺のフレーバーがする、TWGの「1837ブラックティー」がおすすめ。華やかな香りがミルフィーユともよく合うんだな、これが。

このミルフィーユ、大人気で売り切れることも多いそう。お店に向かう前に電話をして予約をすることを忘れずに。

なんだか食の記憶を辿っていたら、おいしいものを買って実家に帰りたくなった。どうせなら、お土産も私にとって素敵な思い出があるお店で調達しよう。

そう向かったのは、2021年5月に登場した「アルノー・ラエール パリ」(B2F)だ。

こちらのお店との出会いは、2007年、当時担当していた雑誌の取材でパリに行ったときのこと。M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)受章パティシエ、アルノー・ラエールさんの店と聞いて、どんな荘厳なお店なのかと想像をふくらませていた。ところが、モンマルトルにあるショップは、住宅街にある普通のお菓子屋さんといったさりげない佇まいでちょっと拍子抜けしたことを覚えている。

けれど、中に入ってショーケースをみたときに驚いた。細部まで美しく作られたお菓子が放つオーラに圧倒された。特に、お店のスペシャリテでもあるチョコレートケーキ「トゥールーズ=ロートレック」(小1個 760円・ホール 4,560円)に釘付けになった。もちろんGINZA SIXのお店のショーケースでも売られている。ツヤツヤと光る美しいケーキは、食べたら中のチョコレートムースの香りがすばらしく、はっとするほど洗練された味わい。その同じ味が日本でも買えるなんて!

この日は、「トゥールーズ=ロートレック」のほかに、見た目もかわいい「ケークフリュイ」(2,100円)を購入。みっしりとドライフルーツとナッツがデコレーションされているケークは、小さくスライスしても食べごたえ十分。日持ちもするし、クリアケースのパッケージが可愛くって手土産にはぴったりだ。

ちなみに、こちらのお店、フランスから空輸されるショコラもおすすめ。特にお気に入りは「コフレフュメ」。燻製したカカオのガナッシュでつくるショコラは、そのままでもいいけれど、ふわりと漂う薫香がウイスキーなどのお酒に合うので男性に差し上げるのにも重宝している。ちなみに、たまに自分用にも買うのだけれど、一粒食べるとクセになってしまうので、食べ過ぎに注意。

お腹もいっぱいになって、家族に渡すおみやげも買って、なんだか幸せな気分でGINZA SIXを出た。

GINZA SIXには新しい刺激もあるし、受け継がれていく美味にも出会える懐が深い場所。香港、パリ、東京、そして学生時代から今現在まで、銀座にいながらにして、時空も距離も飛び越えて旅をした。そんな時間を過ごすなかで、自分のなかに生き続けるキラキラとした食べ物の記憶のカケラと久しぶりに出逢えたのも愛おしかった。

そして、GINZA SIXで思いがけず記憶の旅をたどって改めてわかったことは、1歳の“すあま”を読んだときから歳を重ねた今まで、食に対する貪欲な好奇心はまったく変わっていないということ。

食いしん坊の魂百まで、ということなんだろう。

Text: Misa Yamaji Photos: Michika Mochizuki Edit: Yuka Okada(81)

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GINZA SIXに見るゴルフトレンドの変遷 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124790 Fri, 17 Dec 2021 01:00:04 +0000 no わたしが創刊から携わっている女性ゴルフファッション誌『Regina』では、当初「スコアよりウェアです」というコンセプトのもと、ゴルフ場という非日常の空間で魅せるさまざまなゴルフファッションを提案し、この15年の間にトレンドの移り変わりも見てきました。ゴルフにおいては、日常のファッションほどの大きなトレンドの変化はありませんが、ここ数年の間にゴルフトレンドにも大きなターニングポイントがやってきたのではないでしょうか。 ゴルフファッションの流れを一つひとつ辿ってしまうと話が長くなりますが、それまで王道とされてきたポロシャツがモックネックへ、クラシックなシューズがスニーカータイプへと、2017年頃に注目を浴びたアスレジャースタイルがゴルフトレンドに大きな影響をもたらし、シンプルかつスポーティな傾向が強くなりました。さらに、コロナの影響で、「出発→プレー→帰宅」まで同じ服で過ごす人も多くなり、普段使いもできる汎用性の高いデザインが求められています。 非日常のおしゃれと言われ続けてきたゴルフファッションが日常へと変わりつつあることが、わたしとしては少し寂しい感じもしますが、やはりゴルフ女子たるもの、誰よりもおしゃれでありたい! そんなゴルファーの願いを満たしてくれるゴルフウェアを探しに、いざ、GINZA SIXへ。 まずは5Fにある「G/FORE(ジーフォア)」へ。2011年にロサンゼルスで誕生し、カラフルなグローブで注目を集めたラグジュアリーゴルフブランド。2年前にシューズとウェアを日本で本格的に展開し、GINZA SIX店は9月上旬にオープン。クラシックとモダンを融合させた新鮮なデザインは、感度の高い女性ゴルファーたちに大人気。7対3で女性客が多いというのもゴルフブランドでは異例の現象です。 これからの時期はおしゃれを忘れてついつい防寒に走りがち…。こちらのダウンのセットアップは、暖かさはもちろん、スタイルよく見せてくれる美しいシルエットが特徴。シンプルなデザインなので着回し力も高く、冬映えするクリアなホワイトもおしゃれ! 足元を華やかに彩るカラフルなシューズ(34,100円 ※以下全て税込価格)は見た瞬間に一目惚れ! スパイクレスなのでプレーはもちろん、タウンでも使え、多色使いが実はどんな服にも合わせやすい便利な一足。さらに、凹凸のあるマッサージインソールで足裏に心地よい感触が。手を使わず立ったままスッポリ履ける、なんとも優しい仕様ですが、履いてしまえばしっかりホールドしてくれるので、プレー中も安心です。 ツートンカラーのスポーティなワンピース(各53,900円)。シンプルな配色に際立つ3Dロゴやビッグマークは、SNS映えも確実。流行のモックネックでかっこよく着こなせそう! バッグなどの小物も充実。スタッフの方におすすめされた白のボアのカートバッグ(19,300円)は、シンプルで上品なデザインが素敵。収納力が高く、あれこれ持ち物が多くなる冬のゴルフにはベストなサイズです。そして、この日の恰好にもぴったりマッチ! そのまま持って帰りたくなりました…。これなら普段使いもできますね。 「冬の間は、スイングの邪魔にならないダウンベストを着ていたのですが、1~2月はさすがに寒い…。着たままプレーできるダウンブルゾンもいくつかあるけど、やっぱり袖の存在感が気になるんです」。そんな話を聞いて提案してくれたのが、このダウンジャケット(61,600円)。身頃がダウンで、袖部分はストレッチの効いた起毛素材。半信半疑で着用してみたら、その軽い着心地に驚き! 気になる腕のストレスもなく、これなら思い切りスイングできそう。さらに嬉しいのは、スマートなシルエット。「白のダウン=有名タイヤメーカーのキャラクター」というわたしの勝手な想像は杞憂に終わりました。 お次は同じく5Fにある「BRIEFING GOLF(ブリーフィング ゴルフ)」。ブリーフィングと言えば、ミリタリー由来のデザインをタウンユースに落とし込んだ、メンズを中心に展開するラゲッジブランド。その伝統とこだわりをベースに「都会とアウトドアをブリッジする」スタイリッシュなアイテムを提案するゴルフラインです。おしゃれ男子が好むブランドというイメージがありますが、数多くのレディスウェアやバッグも展開され、持っていると一目置かれる特別な存在感が特徴です。 ブリーフィング ゴルフのウェアは、簡単に言うと「シンプル&スタイリッシュ」。それでいて存在感が半端ない! 「BRIEFING」というロゴのパワーがゴルフもおしゃれも上級者という印象を与えます。(もちろん、初心者だってOKです!) わたしが気になったのは、白とキャメルのバイカラーのニット(24,200円)。上質な素材感とツートンカラーのバランスが絶妙におしゃれ。背中の3Dロゴにもさりげないこだわりが感じられます。 機能へのこだわりも見過ごせません。発熱機能素材を備えた暖かパンツ(27,500円)。ゴルフにも普段にも使えるシンプルなパンツが欲しかったので、こちらもチェック。 ショップイチ押しのコーディネートはダークカラーで統一したワントーンコーデ。アウトドア風に仕上げたキレのあるスタイルがかっこいい! 身頃にバランスよく配したファスナーがフリース素材のほっこり感を解消し、メリハリのある着こなしに。裾部分にはシリコンワッペン、バックネックには星条旗モチーフの刺繍など、さりげないアクセントもポイントです。 BRIEFING GOLFと言えば、耐久性や細かいディテールなどこだわりの詰まったキャディバッグ。オールスターたちがずらりと並ぶ、まさに垂涎ものの眺め! いつかドヤ顔で担ぐ日を夢見て…。 3件目は、4Fにある「Chacott BALANCE(チャコット・バランス)」。バレエやダンス用品を扱う老舗ブランドのチャコットが、自分らしく日常を大切にする女性のために心身を整える「バランス・ウェア」を展開。ゴルフブランドではないのですが、わたしたちゴルファーとの親和性が高いこともあり、立ち寄ってみました。明るくて解放的な店内の雰囲気が思わず足を運びたくなります。 ショップに並ぶウェアはヨガやピラティスのレッスンに使える機能性がありながらも、デイスタイルにも活用できるデザイン。試着したリバーシブルベスト&インナーのセット(35,200円)は、4通りの着こなしができるとか。柔らかな着心地と肌触り、優しいライトグレーは、身に着けるだけでリラックス。今、流行りの「ととのう」ってこういうことなんですね。ゴルフウェアとして取り入れれば、余計な力が抜けてスコアアップも期待できそう(!?) こちらは寒い季節におすすめの中綿パンツ(22,000円)。保温性がありながら動いても蒸れにくく、打ちっぱなしにいくときにも便利。シルエットの美しさもさすがチャコット・バランスです。 気づけば、わたしのクロゼットの中はフーディだらけ。そんなフーディ好きのわたしを魅了したのはこちらのセットアップ(トップス21,450円・パンツ14,300円)。カジュアルなイメージが強いアイテムも、チャコット・バランスの手にかかればこんなに可愛らしく。暖かみのあるクリーム色に、太めのリボンが女子心をくすぐります。「ゴルフウェアとして合わせるとしたら…」と頭の中であれこれ考えを巡らせるのも、ショッピングの楽しみのひとつです。 店内の一角に並ぶ「チャコット・コスメティクス」。ステージ用として開発されているので、「映える」、「崩れにくい」、「肌に優しい」とゴルファーにとってはいいことずくめ!ラスティングベースは、SPF50⁺/PA+++なので、UV対策も万全。カラーアイテムも全100色と豊富に揃います。 「普段着ることのない非日常なファッションを楽しんでこそゴルフの醍醐味」。そんな信念を持ち続けてきたわたしが、GINZA SIXを訪れて気づいたこと。コロナ禍で大きく変わったゴルフスタイルの中にも「おしゃれ」はずっと生きている。まもなく50歳を迎えるわたしですが、「今」を受け入れ、順応しながら、おしゃれ心を忘れずに生き生きとゴルフを楽しんでいきたいと思います。 Text: Kaori Matsumura Photos: Asuka Watanabe Edit: Yuka Okada(81)

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わたしが創刊から携わっている女性ゴルフファッション誌『Regina』では、当初「スコアよりウェアです」というコンセプトのもと、ゴルフ場という非日常の空間で魅せるさまざまなゴルフファッションを提案し、この15年の間にトレンドの移り変わりも見てきました。ゴルフにおいては、日常のファッションほどの大きなトレンドの変化はありませんが、ここ数年の間にゴルフトレンドにも大きなターニングポイントがやってきたのではないでしょうか。

ゴルフファッションの流れを一つひとつ辿ってしまうと話が長くなりますが、それまで王道とされてきたポロシャツがモックネックへ、クラシックなシューズがスニーカータイプへと、2017年頃に注目を浴びたアスレジャースタイルがゴルフトレンドに大きな影響をもたらし、シンプルかつスポーティな傾向が強くなりました。さらに、コロナの影響で、「出発→プレー→帰宅」まで同じ服で過ごす人も多くなり、普段使いもできる汎用性の高いデザインが求められています。

非日常のおしゃれと言われ続けてきたゴルフファッションが日常へと変わりつつあることが、わたしとしては少し寂しい感じもしますが、やはりゴルフ女子たるもの、誰よりもおしゃれでありたい! そんなゴルファーの願いを満たしてくれるゴルフウェアを探しに、いざ、GINZA SIXへ。

まずは5Fにある「G/FORE(ジーフォア)」へ。2011年にロサンゼルスで誕生し、カラフルなグローブで注目を集めたラグジュアリーゴルフブランド。2年前にシューズとウェアを日本で本格的に展開し、GINZA SIX店は9月上旬にオープン。クラシックとモダンを融合させた新鮮なデザインは、感度の高い女性ゴルファーたちに大人気。7対3で女性客が多いというのもゴルフブランドでは異例の現象です。

これからの時期はおしゃれを忘れてついつい防寒に走りがち…。こちらのダウンのセットアップは、暖かさはもちろん、スタイルよく見せてくれる美しいシルエットが特徴。シンプルなデザインなので着回し力も高く、冬映えするクリアなホワイトもおしゃれ!

足元を華やかに彩るカラフルなシューズ(34,100円 ※以下全て税込価格)は見た瞬間に一目惚れ! スパイクレスなのでプレーはもちろん、タウンでも使え、多色使いが実はどんな服にも合わせやすい便利な一足。さらに、凹凸のあるマッサージインソールで足裏に心地よい感触が。手を使わず立ったままスッポリ履ける、なんとも優しい仕様ですが、履いてしまえばしっかりホールドしてくれるので、プレー中も安心です。

ツートンカラーのスポーティなワンピース(各53,900円)。シンプルな配色に際立つ3Dロゴやビッグマークは、SNS映えも確実。流行のモックネックでかっこよく着こなせそう!

バッグなどの小物も充実。スタッフの方におすすめされた白のボアのカートバッグ(19,300円)は、シンプルで上品なデザインが素敵。収納力が高く、あれこれ持ち物が多くなる冬のゴルフにはベストなサイズです。そして、この日の恰好にもぴったりマッチ! そのまま持って帰りたくなりました…。これなら普段使いもできますね。

「冬の間は、スイングの邪魔にならないダウンベストを着ていたのですが、1~2月はさすがに寒い…。着たままプレーできるダウンブルゾンもいくつかあるけど、やっぱり袖の存在感が気になるんです」。そんな話を聞いて提案してくれたのが、このダウンジャケット(61,600円)。身頃がダウンで、袖部分はストレッチの効いた起毛素材。半信半疑で着用してみたら、その軽い着心地に驚き! 気になる腕のストレスもなく、これなら思い切りスイングできそう。さらに嬉しいのは、スマートなシルエット。「白のダウン=有名タイヤメーカーのキャラクター」というわたしの勝手な想像は杞憂に終わりました。

お次は同じく5Fにある「BRIEFING GOLF(ブリーフィング ゴルフ)」。ブリーフィングと言えば、ミリタリー由来のデザインをタウンユースに落とし込んだ、メンズを中心に展開するラゲッジブランド。その伝統とこだわりをベースに「都会とアウトドアをブリッジする」スタイリッシュなアイテムを提案するゴルフラインです。おしゃれ男子が好むブランドというイメージがありますが、数多くのレディスウェアやバッグも展開され、持っていると一目置かれる特別な存在感が特徴です。

ブリーフィング ゴルフのウェアは、簡単に言うと「シンプル&スタイリッシュ」。それでいて存在感が半端ない! 「BRIEFING」というロゴのパワーがゴルフもおしゃれも上級者という印象を与えます。(もちろん、初心者だってOKです!) わたしが気になったのは、白とキャメルのバイカラーのニット(24,200円)。上質な素材感とツートンカラーのバランスが絶妙におしゃれ。背中の3Dロゴにもさりげないこだわりが感じられます。

機能へのこだわりも見過ごせません。発熱機能素材を備えた暖かパンツ(27,500円)。ゴルフにも普段にも使えるシンプルなパンツが欲しかったので、こちらもチェック。

ショップイチ押しのコーディネートはダークカラーで統一したワントーンコーデ。アウトドア風に仕上げたキレのあるスタイルがかっこいい! 身頃にバランスよく配したファスナーがフリース素材のほっこり感を解消し、メリハリのある着こなしに。裾部分にはシリコンワッペン、バックネックには星条旗モチーフの刺繍など、さりげないアクセントもポイントです。

BRIEFING GOLFと言えば、耐久性や細かいディテールなどこだわりの詰まったキャディバッグ。オールスターたちがずらりと並ぶ、まさに垂涎ものの眺め! いつかドヤ顔で担ぐ日を夢見て…。

3件目は、4Fにある「Chacott BALANCE(チャコット・バランス)」。バレエやダンス用品を扱う老舗ブランドのチャコットが、自分らしく日常を大切にする女性のために心身を整える「バランス・ウェア」を展開。ゴルフブランドではないのですが、わたしたちゴルファーとの親和性が高いこともあり、立ち寄ってみました。明るくて解放的な店内の雰囲気が思わず足を運びたくなります。

ショップに並ぶウェアはヨガやピラティスのレッスンに使える機能性がありながらも、デイスタイルにも活用できるデザイン。試着したリバーシブルベスト&インナーのセット(35,200円)は、4通りの着こなしができるとか。柔らかな着心地と肌触り、優しいライトグレーは、身に着けるだけでリラックス。今、流行りの「ととのう」ってこういうことなんですね。ゴルフウェアとして取り入れれば、余計な力が抜けてスコアアップも期待できそう(!?)

こちらは寒い季節におすすめの中綿パンツ(22,000円)。保温性がありながら動いても蒸れにくく、打ちっぱなしにいくときにも便利。シルエットの美しさもさすがチャコット・バランスです。

気づけば、わたしのクロゼットの中はフーディだらけ。そんなフーディ好きのわたしを魅了したのはこちらのセットアップ(トップス21,450円・パンツ14,300円)。カジュアルなイメージが強いアイテムも、チャコット・バランスの手にかかればこんなに可愛らしく。暖かみのあるクリーム色に、太めのリボンが女子心をくすぐります。「ゴルフウェアとして合わせるとしたら…」と頭の中であれこれ考えを巡らせるのも、ショッピングの楽しみのひとつです。

店内の一角に並ぶ「チャコット・コスメティクス」。ステージ用として開発されているので、「映える」、「崩れにくい」、「肌に優しい」とゴルファーにとってはいいことずくめ!ラスティングベースは、SPF50⁺/PA+++なので、UV対策も万全。カラーアイテムも全100色と豊富に揃います。

「普段着ることのない非日常なファッションを楽しんでこそゴルフの醍醐味」。そんな信念を持ち続けてきたわたしが、GINZA SIXを訪れて気づいたこと。コロナ禍で大きく変わったゴルフスタイルの中にも「おしゃれ」はずっと生きている。まもなく50歳を迎えるわたしですが、「今」を受け入れ、順応しながら、おしゃれ心を忘れずに生き生きとゴルフを楽しんでいきたいと思います。

Text: Kaori Matsumura Photos: Asuka Watanabe Edit: Yuka Okada(81)

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イタリア、台湾、東京。個人的な旅の記憶をたどる。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124791 Tue, 16 Nov 2021 09:17:42 +0000 no 食について書いている。料理ジャンルは不問、東京の最先端のレストランからローカルの大衆酒場まで。高級も大衆も、酒肴も甘いものも上下左右なく愛し、食べて飲んでは、身を肥やし、記事を書いている。節操なしと思われて致しかたないが、何かこれはというものは、と訊かれれば「イタリアの味」を挙げている。理由はあれこれあるのだけれど、ワインの縁のおかげでこの5年で12州を旅していて、雑誌でイタリア料理人とイタリア料理の連載も続けている。ここまでが前置き。 だから、銀座に「EATALY(イータリー)」がやってくると聞いたときには小躍りした。今年の夏のことだ。マーケットに加えてレストラン3軒にカフェと規模は国内最大級だという。いそいそと足を運んで以来、ちょっとご無沙汰気味だったGINZA SIXに、再び通うようになった。わかりやすい。せっかくだから同時期に開業した2軒の店もチェックすることに。台湾のパイナップルケーキに鰻。好きなものばかりだ。 「イータリー」(6F)で一番よく行くのは「LA PIAZZETTA」だ。11時の開店から23時までの通し営業。イタリア総菜を小皿盛りにしたつまみは30種以上、で1皿500円前後。ありがたい。昼下がりの取材帰りにビール1杯ひっかける。夕刻、食事の前にオリーブをつまみにプロセッコを1杯ひっかける。食後にグラッパとドルチェだけ、なんて大人~な使い方は幸福度がかなり高い。 不規則生活万歳なフリーランスにとって、終日営業の店は宝。昼酒も夜カフェもオッケー、お腹が空いていたらピッツァもあるよ、と包容力抜群で、生ハムとランブルスコなら北へ、魚介のフリットと白ワインなら南へ、と1杯と1皿で妄想イタリア旅時間を過ごせるオマケ付きだ。 「MARKET」の楽しさはいわずもがな。近頃は、町場にも個人経営の食材店やレストランに併設された食材売り場など、イタリアの食材を買える店は増えて、店主の個性がにじむ棚は、それはそれで楽しいのだけれど、オリーブオイルだけで何十種、パスタもしかり、と品揃えでは他の追随を許さない。個人的にうれしいのは、チーズや生ハムなどの量り売り。帰って料理したくないときのおつまみに、人を招くときのプラス一品にと助けられている。 20州から360種を集めたというワインには、なじみ深い生産者のものも多くそろう。ボトルを手に取れば、造り手の顔やぶどう畑の景色、テラスのダイニングテーブルで食べた地方色豊かな料理の数々が頭に浮かび……と、ここでもしばしの間、妄想イタリア旅を楽しむことになる。 アクセスしやすさから、「LA PIAZZETTA」と「MARKET」にばかり行っているが、「LA GRIGLIA」というグリルレストランにも行ってみたいと思っている。できれば、中央通りを見下ろすテラス席を。銀座の店を数百軒取材しているが、低層でも高層でも、外の景色がきれいに見える店は意外と少ないのだが、ここはいい。それに、シンプルに焼いた肉(特に牛肉)と赤ワインは大の好物なのだ。 お次は、台湾発のパイナップルケーキ専門店「SunnyHills ginza(サニーヒルズ ギンザ)」(B2F)。台湾はイタリア同様、ここ数年で繰り返し旅している土地で、中国各地の郷土料理から、屋台飯、スイーツまでぎゅうぎゅうに予定を詰め、食べに食べ歩くのが常だ。お土産の定番は、やはりパイナップルケーキ。 路地裏の個人店からデラックスなものまであれこれ食べたが「サニーヒルズ」のものは、小ぶりで食べやすくて気に入っている。中身のジャムは、果実の甘みがまじりっけなしに凝縮している。生地も日本製小麦粉、グラスフェッドバターなど質のいい素材の味がちゃんと感じるられる上に、ざくっと香ばしい“よく焼き”な味が私好みだ。 店頭では台湾茶とのセットが売っていて、ギフトなどにも重宝している。個人的に「サニーヒルズ」のパイナップルケーキは、酒と合わせてもいいと思っている。例えばパイナップルケーキは樽熟成したラムと、りんごケーキはカルヴァドスと。合わないはずがない。今度試してみようと思う。 台湾茶とのセットを、初めて自分用にも買ってみた。まずはりんごケーキと紅玉紅茶のギフトセット(5,700円 ※以下全て税込価格)を。発酵茶の深い香りと旨味、甘酸っぱさを残したりんごジャムの果実感がなるほどぴたり。また自由に旅ができるようになる日まで、銀座で“台湾欲”をチャージできる場所として頼りにすることになりそうだ。 最後は鰻。日本橋で創業70余年の「鰻 伊勢定」の銀座店「日本橋 鰻 伊勢定 ~蓮~」(13F)である。「銀座にもできたのね」くらいの軽~い気持ちでお邪魔したら、想像以上に素敵な店だった。GINZA SIX内ならではの、すっきりとモダンなしつらえで、カウンターはゆったり、窓も大きい。銀座のランドスケープと東京にしては広めの空が織りなす景色がとてもいい。気分のよさに、シャンパーニュでも、となる。 鰻屋さんでの食事はどうしても、軽いつまみと鰻重でおしまいになることが多いのだけれど、こちらは会席のコースがある。食事とお酒を楽しみながらゆっくり過ごせる。カウンターに立つ料理長の話が、また楽しくて。聞けば、古い料理書を紐解いて、知られざる料理を今によみがえらせることに力を入れているそう。銀座の店で名物になっている「すっぽん卵〆」(4,180円)もそうなのだとか。 わかりやすくいえば、すっぽんの茶碗蒸しなのだけれど、すっぽんを酒だけで炊いてその煮汁をだしとして使うのが大きな特徴なのだという。いわく、「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み的発想」。ふるふるとした口溶けは茶碗蒸しに同じだが、淡く優しい風味とは一線を画す、濃厚で力強い味わい。やはりたっぷりの酒で炊くフカヒレまで載った豪華な一品だ。当然のことながら宿命的に酒に合い、ついつい進んでしまう。 鰻のおいしさは、いわずもがな。GINZA SIX店だけで扱うブランド鰻「伊勢うなぎ」は、三重県と愛知県の境で養殖され、木曽三川のミネラル豊富な水で育てられるということを、今度は接客担当の女性スタッフの方が丁寧に説明してくれた。名水に加え、短い養殖期間も味の決め手に。柔らかく、臭みのない味わいは格別で、蒸し、焼きの技、強すぎないタレがとてもよく合う。 とびきりの鰻重「伊勢」(8,800円・肝吸いと香の物付き)を食べながら、この1,2年、よく「伊勢定」の本店がある日本橋や浅草界隈を歩いたことを思い出した。地方へ、海外へ、自由に出掛けることができなかった時期に、老舗が並ぶ通りを歩くことで、旅心地に浸っていたのだ。「イータリー」をきっかけにした、久々のGINZA SIXパトロールが、図らずも個人的な旅の記憶をたどる時間になった。 Text: Kei Sasaki Photos: Jiro Ohtani Edit: Yuka Okada(81)

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食について書いている。料理ジャンルは不問、東京の最先端のレストランからローカルの大衆酒場まで。高級も大衆も、酒肴も甘いものも上下左右なく愛し、食べて飲んでは、身を肥やし、記事を書いている。節操なしと思われて致しかたないが、何かこれはというものは、と訊かれれば「イタリアの味」を挙げている。理由はあれこれあるのだけれど、ワインの縁のおかげでこの5年で12州を旅していて、雑誌でイタリア料理人とイタリア料理の連載も続けている。ここまでが前置き。

だから、銀座に「EATALY(イータリー)」がやってくると聞いたときには小躍りした。今年の夏のことだ。マーケットに加えてレストラン3軒にカフェと規模は国内最大級だという。いそいそと足を運んで以来、ちょっとご無沙汰気味だったGINZA SIXに、再び通うようになった。わかりやすい。せっかくだから同時期に開業した2軒の店もチェックすることに。台湾のパイナップルケーキに鰻。好きなものばかりだ。

「イータリー」(6F)で一番よく行くのは「LA PIAZZETTA」だ。11時の開店から23時までの通し営業。イタリア総菜を小皿盛りにしたつまみは30種以上、で1皿500円前後。ありがたい。昼下がりの取材帰りにビール1杯ひっかける。夕刻、食事の前にオリーブをつまみにプロセッコを1杯ひっかける。食後にグラッパとドルチェだけ、なんて大人~な使い方は幸福度がかなり高い。

不規則生活万歳なフリーランスにとって、終日営業の店は宝。昼酒も夜カフェもオッケー、お腹が空いていたらピッツァもあるよ、と包容力抜群で、生ハムとランブルスコなら北へ、魚介のフリットと白ワインなら南へ、と1杯と1皿で妄想イタリア旅時間を過ごせるオマケ付きだ。

「MARKET」の楽しさはいわずもがな。近頃は、町場にも個人経営の食材店やレストランに併設された食材売り場など、イタリアの食材を買える店は増えて、店主の個性がにじむ棚は、それはそれで楽しいのだけれど、オリーブオイルだけで何十種、パスタもしかり、と品揃えでは他の追随を許さない。個人的にうれしいのは、チーズや生ハムなどの量り売り。帰って料理したくないときのおつまみに、人を招くときのプラス一品にと助けられている。

20州から360種を集めたというワインには、なじみ深い生産者のものも多くそろう。ボトルを手に取れば、造り手の顔やぶどう畑の景色、テラスのダイニングテーブルで食べた地方色豊かな料理の数々が頭に浮かび……と、ここでもしばしの間、妄想イタリア旅を楽しむことになる。

アクセスしやすさから、「LA PIAZZETTA」と「MARKET」にばかり行っているが、「LA GRIGLIA」というグリルレストランにも行ってみたいと思っている。できれば、中央通りを見下ろすテラス席を。銀座の店を数百軒取材しているが、低層でも高層でも、外の景色がきれいに見える店は意外と少ないのだが、ここはいい。それに、シンプルに焼いた肉(特に牛肉)と赤ワインは大の好物なのだ。

お次は、台湾発のパイナップルケーキ専門店「SunnyHills ginza(サニーヒルズ ギンザ)」(B2F)。台湾はイタリア同様、ここ数年で繰り返し旅している土地で、中国各地の郷土料理から、屋台飯、スイーツまでぎゅうぎゅうに予定を詰め、食べに食べ歩くのが常だ。お土産の定番は、やはりパイナップルケーキ。

路地裏の個人店からデラックスなものまであれこれ食べたが「サニーヒルズ」のものは、小ぶりで食べやすくて気に入っている。中身のジャムは、果実の甘みがまじりっけなしに凝縮している。生地も日本製小麦粉、グラスフェッドバターなど質のいい素材の味がちゃんと感じるられる上に、ざくっと香ばしい“よく焼き”な味が私好みだ。

店頭では台湾茶とのセットが売っていて、ギフトなどにも重宝している。個人的に「サニーヒルズ」のパイナップルケーキは、酒と合わせてもいいと思っている。例えばパイナップルケーキは樽熟成したラムと、りんごケーキはカルヴァドスと。合わないはずがない。今度試してみようと思う。

台湾茶とのセットを、初めて自分用にも買ってみた。まずはりんごケーキと紅玉紅茶のギフトセット(5,700円 ※以下全て税込価格)を。発酵茶の深い香りと旨味、甘酸っぱさを残したりんごジャムの果実感がなるほどぴたり。また自由に旅ができるようになる日まで、銀座で“台湾欲”をチャージできる場所として頼りにすることになりそうだ。

最後は鰻。日本橋で創業70余年の「鰻 伊勢定」の銀座店「日本橋 鰻 伊勢定 ~蓮~」(13F)である。「銀座にもできたのね」くらいの軽~い気持ちでお邪魔したら、想像以上に素敵な店だった。GINZA SIX内ならではの、すっきりとモダンなしつらえで、カウンターはゆったり、窓も大きい。銀座のランドスケープと東京にしては広めの空が織りなす景色がとてもいい。気分のよさに、シャンパーニュでも、となる。

鰻屋さんでの食事はどうしても、軽いつまみと鰻重でおしまいになることが多いのだけれど、こちらは会席のコースがある。食事とお酒を楽しみながらゆっくり過ごせる。カウンターに立つ料理長の話が、また楽しくて。聞けば、古い料理書を紐解いて、知られざる料理を今によみがえらせることに力を入れているそう。銀座の店で名物になっている「すっぽん卵〆」(4,180円)もそうなのだとか。

わかりやすくいえば、すっぽんの茶碗蒸しなのだけれど、すっぽんを酒だけで炊いてその煮汁をだしとして使うのが大きな特徴なのだという。いわく、「牛ほほ肉の赤ワイン煮込み的発想」。ふるふるとした口溶けは茶碗蒸しに同じだが、淡く優しい風味とは一線を画す、濃厚で力強い味わい。やはりたっぷりの酒で炊くフカヒレまで載った豪華な一品だ。当然のことながら宿命的に酒に合い、ついつい進んでしまう。

鰻のおいしさは、いわずもがな。GINZA SIX店だけで扱うブランド鰻「伊勢うなぎ」は、三重県と愛知県の境で養殖され、木曽三川のミネラル豊富な水で育てられるということを、今度は接客担当の女性スタッフの方が丁寧に説明してくれた。名水に加え、短い養殖期間も味の決め手に。柔らかく、臭みのない味わいは格別で、蒸し、焼きの技、強すぎないタレがとてもよく合う。

とびきりの鰻重「伊勢」(8,800円・肝吸いと香の物付き)を食べながら、この1,2年、よく「伊勢定」の本店がある日本橋や浅草界隈を歩いたことを思い出した。地方へ、海外へ、自由に出掛けることができなかった時期に、老舗が並ぶ通りを歩くことで、旅心地に浸っていたのだ。「イータリー」をきっかけにした、久々のGINZA SIXパトロールが、図らずも個人的な旅の記憶をたどる時間になった。

Text: Kei Sasaki Photos: Jiro Ohtani Edit: Yuka Okada(81)

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働く女に柔らかさを授けてくれる館 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124792 Wed, 29 Sep 2021 02:29:21 +0000 no 長年編集者として生きるうちに、いつのころか「言いづらい」がなくなってしまった。物事が企画に沿って進行しているかを常に確認し、何かあれば瞬時に軌道修正。「ちょっと違うかもだけど、どうしよう…」なんて躊躇して、しばらく経ってから「さっきのあれはやっぱりこうでした」では、相手に失礼になってしまう。素晴らしいクリエイターの方々にもずうずうしいお願いを日々繰り返している。 そんなこんなで中身は完全に、ふてぶてしいおばさんだ。だからこそ、せめて見た目だけは、上質で感じのいい服に身を包んで、優しげな風貌で目くらまししたい。という私にとって「GINZA SIX」は最高にありがたい場所。大人を素敵に見せるブランドがずらりと並び、ここに来れば欲しいファッションアイテムが必ず見つかる。 車を地下駐車場に停めて各フロアを練り歩き、目的を達成したら銀座を軽くぶらりとして、また仕事に戻る。祖母と母は銀ぶらが大好きな優雅な人たちで、私は残念ながら優雅には生きられなかったけれど、彼女たちのDNAが自分にも宿っているのだなあと、「GINZA SIX」に来るたびにそんなことを感じる。 行きつけは、4Fにある「ebure(エブール)」だ。 普段は、来ていきなりは足を運ばない。欲しいものが多すぎて、ワードローブが全て「エブール」になってしまうから(実際そうだったシーズンがある)。他いくつかのブランドを見て、欲しいものを見つけてから、最後にここへ来て買い物計画をとりまとめる、という流れ。 多くの経験を重ねてきた女性が心地よさを感じるデザインと上質なクオリティ、というコンセプトで、今年デビュー5周年とは思えないほど、多くの女性の心を鷲掴みにしているエブール。コクーンシルエットのカシミヤコート(286,000円 ※以下全て税込価格)や、驚くほど着痩せして見えるワンピース(61,600円)を試着する。もう、布の手触りからしてうっとり。 その仕立ての良さも、エブールが大人の女性を満足させてくれるポイントだ。試着する際は、ぜひその美しい裏側の処理まで確認して、心躍らせてほしい。スリットを長くもたせる細かい処理も、心憎くて好き。 カジュアルが苦手な人にもおすすめしたいのが、エブールのTシャツ(9,900円)。襟ぐりのリブが細く、袖と身頃がひと続きになっている“キモノ・スリーブ”で、体にしなやかに寄り添い、砕けすぎない抜け感を引き出してくれる。 つかず離れず、質問するとすぐに的確な答えをくれる絶妙な接客や、エブールセレクトの小物の質の高さも、大人の女性に愛されている理由だと思う。 次は、ジュエリーに詳しい編集者仲間が勧めてくれた、初めての「AbHerï(アベリ)」(2F)へ。大人のジュエリー選びって難しい! 長く使える上質なものをと考えるとトレンドよりもベーシックがいいけれど、デザイン性にもこだわりたい。そんなややこしいお題に答えてくれるジュエリーが、ここには揃っている。 東日本橋のアトリエで、職人を兼ねたデザイナーが丁寧に制作。伝統的な技法による繊細な手仕事が施されたリングは、華奢ながら存在感抜群。ルーペを覗き込むと、石留めや側面の彫刻など、もはや芸術品レベルの緻密さに驚愕!(左から、ダイヤモンドチェーンリング“Lyre” 126,500円、ダイヤモンドチェーンリング 572,000円) チェーンリングは指の腹側でサイズ調整ができるから、パートナーへのサプライズギフトにもぴったり。同じデザインの素材違いが選べたり、ピアスとのセット使いも提案されている。 続いて店員さんと相談しながら選んだのがこの3つのリング。 上は、ダイヤモンドリング“silk”(170,500円)。絹糸を巻きつけたアンティークのドーセットボタンをモチーフにし、センターには繊細な花のモチーフを配置。リング部分にも極細のヘアライン加工が施されている。左下は、ダイヤモンドリング“silk”(330,000円)。絹糸を巻きつけたような柔らかい雰囲気と、メレダイヤのステッチ的な縁取りにうっとり。右下は、ダイヤモンドリング“OXYMORON”(297,000円)。彫り模様を施した写真のフェイスと、裏面にある繊細なヘアラインのフェイス、ふたつの表情を楽しめる2wayリング。 ボリュームがあるのに優しげで迫力が出過ぎない、左下のリングがまさに私の理想だ…と後ろ髪を惹かれつつ店を出、最後に立ち寄ったのが「ReFa(リファ)」(B1F)。 今年でブランド誕生12年になるというリファは、仕事で良くお世話になっているブランド。エステティシャンの手技を再現した1本のローラーから始まり、今ではフェイスケアからボディケア、ヘアケア、インナーケアまで、美容機器と化粧品を融合した多様なアイテムが揃っている。 今年はシャワーヘッド(左上・左から、リファファインバブル 18,480円、リファファインバブル S 30,000円)のCMが多く流れているので、気になっている方も多いかもしれないけれど、既に試している私としては、本当に推せます。シャワーヘッドから出てくるウルトラファインバブルやマイクロバブルは、肌に負担をかけずに皮脂や汚れを落とし、体を心地よく温めてくれる効果が実証されているもの。忙しくて毎日は湯船に浸かれないという人にもうれしいし、カートリッジ式ではないので装着するだけで一生使えてしまう。 頭皮マッサージャーのリファグレイス ヘッドスパ(32,780円)は、エステティシャンの力強い手技を独自テクノロジーで再現したという1品。頭皮をぐいぐいとつまみ上げるローラーが、至福のリラックスタイムへと導いてくれる。TVを見ながら10分もあてるだけで、眉間のこわばりも顔のたるみもどこへやら、すっきりと優しげな表情に。1台自宅にあるので、もう1台連れて帰って両手でぐりぐりしたい…! 最近はヘアケアアイテムに力を入れているというリファ。リファビューテック ストレートアイロン(19,800円)は、独自のテクノロジーにより、プロのヘアスタイリストの技術がなくとも髪を傷めず、美しく仕上げるアイロン。熱や圧力による髪のダメージを抑え、表面はしっかりスタイリング、内側には水分を保って柔らかい“レア髪”に仕上げてくれる。何度使っても髪が傷みにくいハイスペックながら、この価格は、かなり良心的な気がします。 GINZA SIX店は定番のローラーやカッサなども、主力商品は全て揃っていて、実際に試すことができる。セルフエステ感覚でつい長居したくなるショップ。 サクッとほしいものをリサーチするだけ…のつもりだったのに、あれこれ試したい欲が止まらずすっかり長居してしまった。ふと鏡を見ると、いつもの戦闘態勢な自分はどこへやら、顔が緩んですっかりアクが抜けたよう。ウィンドウショッピングだけでも働く女に柔らかさを授ける力、「GINZA SIX」には確かにありました。 Text:Mari Otsuka Photo:Michika Mochiduki Edit:Yuka Okada(81)

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長年編集者として生きるうちに、いつのころか「言いづらい」がなくなってしまった。物事が企画に沿って進行しているかを常に確認し、何かあれば瞬時に軌道修正。「ちょっと違うかもだけど、どうしよう…」なんて躊躇して、しばらく経ってから「さっきのあれはやっぱりこうでした」では、相手に失礼になってしまう。素晴らしいクリエイターの方々にもずうずうしいお願いを日々繰り返している。

そんなこんなで中身は完全に、ふてぶてしいおばさんだ。だからこそ、せめて見た目だけは、上質で感じのいい服に身を包んで、優しげな風貌で目くらまししたい。という私にとって「GINZA SIX」は最高にありがたい場所。大人を素敵に見せるブランドがずらりと並び、ここに来れば欲しいファッションアイテムが必ず見つかる。

車を地下駐車場に停めて各フロアを練り歩き、目的を達成したら銀座を軽くぶらりとして、また仕事に戻る。祖母と母は銀ぶらが大好きな優雅な人たちで、私は残念ながら優雅には生きられなかったけれど、彼女たちのDNAが自分にも宿っているのだなあと、「GINZA SIX」に来るたびにそんなことを感じる。

行きつけは、4Fにある「ebure(エブール)」だ。
普段は、来ていきなりは足を運ばない。欲しいものが多すぎて、ワードローブが全て「エブール」になってしまうから(実際そうだったシーズンがある)。他いくつかのブランドを見て、欲しいものを見つけてから、最後にここへ来て買い物計画をとりまとめる、という流れ。

多くの経験を重ねてきた女性が心地よさを感じるデザインと上質なクオリティ、というコンセプトで、今年デビュー5周年とは思えないほど、多くの女性の心を鷲掴みにしているエブール。コクーンシルエットのカシミヤコート(286,000円 ※以下全て税込価格)や、驚くほど着痩せして見えるワンピース(61,600円)を試着する。もう、布の手触りからしてうっとり。

その仕立ての良さも、エブールが大人の女性を満足させてくれるポイントだ。試着する際は、ぜひその美しい裏側の処理まで確認して、心躍らせてほしい。スリットを長くもたせる細かい処理も、心憎くて好き。

カジュアルが苦手な人にもおすすめしたいのが、エブールのTシャツ(9,900円)。襟ぐりのリブが細く、袖と身頃がひと続きになっている“キモノ・スリーブ”で、体にしなやかに寄り添い、砕けすぎない抜け感を引き出してくれる。

つかず離れず、質問するとすぐに的確な答えをくれる絶妙な接客や、エブールセレクトの小物の質の高さも、大人の女性に愛されている理由だと思う。

次は、ジュエリーに詳しい編集者仲間が勧めてくれた、初めての「AbHerï(アベリ)」(2F)へ。大人のジュエリー選びって難しい! 長く使える上質なものをと考えるとトレンドよりもベーシックがいいけれど、デザイン性にもこだわりたい。そんなややこしいお題に答えてくれるジュエリーが、ここには揃っている。

東日本橋のアトリエで、職人を兼ねたデザイナーが丁寧に制作。伝統的な技法による繊細な手仕事が施されたリングは、華奢ながら存在感抜群。ルーペを覗き込むと、石留めや側面の彫刻など、もはや芸術品レベルの緻密さに驚愕!(左から、ダイヤモンドチェーンリング“Lyre” 126,500円、ダイヤモンドチェーンリング 572,000円)

チェーンリングは指の腹側でサイズ調整ができるから、パートナーへのサプライズギフトにもぴったり。同じデザインの素材違いが選べたり、ピアスとのセット使いも提案されている。

続いて店員さんと相談しながら選んだのがこの3つのリング。
上は、ダイヤモンドリング“silk”(170,500円)。絹糸を巻きつけたアンティークのドーセットボタンをモチーフにし、センターには繊細な花のモチーフを配置。リング部分にも極細のヘアライン加工が施されている。左下は、ダイヤモンドリング“silk”(330,000円)。絹糸を巻きつけたような柔らかい雰囲気と、メレダイヤのステッチ的な縁取りにうっとり。右下は、ダイヤモンドリング“OXYMORON”(297,000円)。彫り模様を施した写真のフェイスと、裏面にある繊細なヘアラインのフェイス、ふたつの表情を楽しめる2wayリング。

ボリュームがあるのに優しげで迫力が出過ぎない、左下のリングがまさに私の理想だ…と後ろ髪を惹かれつつ店を出、最後に立ち寄ったのが「ReFa(リファ)」(B1F)。

今年でブランド誕生12年になるというリファは、仕事で良くお世話になっているブランド。エステティシャンの手技を再現した1本のローラーから始まり、今ではフェイスケアからボディケア、ヘアケア、インナーケアまで、美容機器と化粧品を融合した多様なアイテムが揃っている。

今年はシャワーヘッド(左上・左から、リファファインバブル 18,480円、リファファインバブル S 30,000円)のCMが多く流れているので、気になっている方も多いかもしれないけれど、既に試している私としては、本当に推せます。シャワーヘッドから出てくるウルトラファインバブルやマイクロバブルは、肌に負担をかけずに皮脂や汚れを落とし、体を心地よく温めてくれる効果が実証されているもの。忙しくて毎日は湯船に浸かれないという人にもうれしいし、カートリッジ式ではないので装着するだけで一生使えてしまう。

頭皮マッサージャーのリファグレイス ヘッドスパ(32,780円)は、エステティシャンの力強い手技を独自テクノロジーで再現したという1品。頭皮をぐいぐいとつまみ上げるローラーが、至福のリラックスタイムへと導いてくれる。TVを見ながら10分もあてるだけで、眉間のこわばりも顔のたるみもどこへやら、すっきりと優しげな表情に。1台自宅にあるので、もう1台連れて帰って両手でぐりぐりしたい…!

最近はヘアケアアイテムに力を入れているというリファ。リファビューテック ストレートアイロン(19,800円)は、独自のテクノロジーにより、プロのヘアスタイリストの技術がなくとも髪を傷めず、美しく仕上げるアイロン。熱や圧力による髪のダメージを抑え、表面はしっかりスタイリング、内側には水分を保って柔らかい“レア髪”に仕上げてくれる。何度使っても髪が傷みにくいハイスペックながら、この価格は、かなり良心的な気がします。

GINZA SIX店は定番のローラーやカッサなども、主力商品は全て揃っていて、実際に試すことができる。セルフエステ感覚でつい長居したくなるショップ。

サクッとほしいものをリサーチするだけ…のつもりだったのに、あれこれ試したい欲が止まらずすっかり長居してしまった。ふと鏡を見ると、いつもの戦闘態勢な自分はどこへやら、顔が緩んですっかりアクが抜けたよう。ウィンドウショッピングだけでも働く女に柔らかさを授ける力、「GINZA SIX」には確かにありました。

Text:Mari Otsuka Photo:Michika Mochiduki Edit:Yuka Okada(81)

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Beauty, Fashion, ショップ紹介, ぶらエディターズ
GINZA SIX magazine Autumn 2021                                https://admin.ginza6.tokyo/magazine/125363 Fri, 03 Sep 2021 04:00:45 +0000 no 言葉で解き放たれる 話は数カ月前に遡るが、今号のGINZA SIX magazineでも取材に応えてくれたブエノスアイレス生まれのフレグランスブランド「FUEGUIA 1833」の創業者であるジュリアン・ベデルに、Zoomインタビューの機会を得た。 南米気質も相まったどこか開放的な人柄、これまで何度も日本を訪れてきたというジュリアンの経験値も手伝い、とかくかしこまりがちなインタビューというより、それは海の向こうの友人との心地よい雑談にも似た時間でもあった。何より、フレグランスの源となる自然界の植物を相手に生きる彼の一言一言には、長引く外出自粛生活の中で気づかぬうちに縮こまっていた我々の思考を、ふと解き放つものがあった。黒船的な衝撃とまではいかないまでも、また違った地球に根差す人の言葉をきっかけに全身の毛穴が開いていくような感覚と言えば、伝わるだろうか。 そんな体験から思い至ったのが、オーソドックスながら「言葉に耳を傾ける」と据えた、今号のテーマである。どんな企画も、日々の希望も復活も、基本的には予定調和でないフィジカルな体験や交流に紐付くもので、デジタルのやりとりだけでは完結したくない、さいごは人間的なものだと思いたい。そういう意味で、引き続き移動も出会いもままならないなか、GINZA SIXへの期待のあらわれとして、世界が元の日常に戻り始めているだろうあかしとして、対面での取材を受け入れてくださった数々の関係者、編集のあるべき姿としてマスクを欠かさず実を取りに動いてくれたすべてのチームとクリエイター、この一冊を実現させてくださったGINZA SIXにも、敬意を。 なお、表紙と裏表紙のイラストレーションの種明かしとしては、話を「聞く人」と「語る人」の対比を抽象的なアウトラインで描いたことで、そこに読者の方々と今号の多様な登場人物たちの関係を、重ね合わせていただけたらと。 加えてマガジンの体裁も言葉を主題にしたことからジャーナルとしての意味合いが感じられるように、これまでのGINZA SIX magazineとは趣を変え、よりハンディで新聞的ともいえる縦の折り入れに。一方で、ときにページの蛇腹を開くことで写真が立ち上がる一風変わったデザインの遊び心も、愛でていただけることを願って。 GINZA SIX magazine 編集長 岡田有加 2021年9月3日から11月7日まで館内にて配布中 ※無くなり次第終了となります 閲覧はこちらから(PDF) ※軽量版はこちらから(PDF) 《ブランドごとの各コンテンツの一部は下記をクリックの上でご一読できます》 〈PATOU〉The Joy of Rebirth よろこびとともにフレッシュに蘇る 〈FUEGUIA 1833〉Alchemy of Aromas 天然植物、化学、創造性のタッグ 〈HOORSENBUHS〉Everything is Linked トライリンクに込めた人生観 〈SERAPIAN〉Luxury is Forever 顧客との絆が生んだ最高級品 〈UNITED NUDE〉House of Design 靴づくりに挑んだ建築家の冒険 〈LA BOUTIQUE GUERLAIN〉Connecting Past and Present 類稀な素材がつなぐ過去と現在 〈ACQUA DI PARMA〉For the Love of Italy 郷愁が生んだイタリアの香り 〈CLERGERIE〉Experimental Spirit コンフォートとエレガンスの革新 〈GIANVITO ROSSI〉Take a Step Forward 履く人の美しさを引き出す靴 〈DUNHILL GINZA CONCEPT STORE〉Redefining Menswear 伝統と変革で作る新時代の服 〈DEVIALET〉Crystal-Clear Emotion 澄んだサウンドがもたらす感動を 〈PASAND BY NE QUITTEZ PAS〉A Bridge to India ファッションの先にある今のインドを 〈GENTE DI MARE〉The Undiscovered Italy あなたが知らないイタリアの顔 〈恵那栗工房 良平堂〉〈パティスリー GIN NO MORI〉Nature's Blessings 森の恵みを菓子に包む 〈ARTISTIC&CO.〉〈AXXZIA〉〈Gluxury〉〈ReFa〉〈JILL STUART Beauty & PARTY〉〈MARY COHR〉Beauty Shop Hopping 体験を諦めることなく美しくあれ

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言葉で解き放たれる

話は数カ月前に遡るが、今号のGINZA SIX magazineでも取材に応えてくれたブエノスアイレス生まれのフレグランスブランド「FUEGUIA 1833」の創業者であるジュリアン・ベデルに、Zoomインタビューの機会を得た。

南米気質も相まったどこか開放的な人柄、これまで何度も日本を訪れてきたというジュリアンの経験値も手伝い、とかくかしこまりがちなインタビューというより、それは海の向こうの友人との心地よい雑談にも似た時間でもあった。何より、フレグランスの源となる自然界の植物を相手に生きる彼の一言一言には、長引く外出自粛生活の中で気づかぬうちに縮こまっていた我々の思考を、ふと解き放つものがあった。黒船的な衝撃とまではいかないまでも、また違った地球に根差す人の言葉をきっかけに全身の毛穴が開いていくような感覚と言えば、伝わるだろうか。

そんな体験から思い至ったのが、オーソドックスながら「言葉に耳を傾ける」と据えた、今号のテーマである。どんな企画も、日々の希望も復活も、基本的には予定調和でないフィジカルな体験や交流に紐付くもので、デジタルのやりとりだけでは完結したくない、さいごは人間的なものだと思いたい。そういう意味で、引き続き移動も出会いもままならないなか、GINZA SIXへの期待のあらわれとして、世界が元の日常に戻り始めているだろうあかしとして、対面での取材を受け入れてくださった数々の関係者、編集のあるべき姿としてマスクを欠かさず実を取りに動いてくれたすべてのチームとクリエイター、この一冊を実現させてくださったGINZA SIXにも、敬意を。

なお、表紙と裏表紙のイラストレーションの種明かしとしては、話を「聞く人」と「語る人」の対比を抽象的なアウトラインで描いたことで、そこに読者の方々と今号の多様な登場人物たちの関係を、重ね合わせていただけたらと。

加えてマガジンの体裁も言葉を主題にしたことからジャーナルとしての意味合いが感じられるように、これまでのGINZA SIX magazineとは趣を変え、よりハンディで新聞的ともいえる縦の折り入れに。一方で、ときにページの蛇腹を開くことで写真が立ち上がる一風変わったデザインの遊び心も、愛でていただけることを願って。

GINZA SIX magazine 編集長
岡田有加

2021年9月3日から11月7日まで館内にて配布中
※無くなり次第終了となります

閲覧はこちらから(PDF) ※軽量版はこちらから(PDF)

《ブランドごとの各コンテンツの一部は下記をクリックの上でご一読できます》


  • 〈PATOU〉The Joy of Rebirth よろこびとともにフレッシュに蘇る

  • 〈FUEGUIA 1833〉Alchemy of Aromas 天然植物、化学、創造性のタッグ
  • 〈HOORSENBUHS〉Everything is Linked トライリンクに込めた人生観

  • 〈SERAPIAN〉Luxury is Forever 顧客との絆が生んだ最高級品

  • 〈UNITED NUDE〉House of Design 靴づくりに挑んだ建築家の冒険

  • 〈LA BOUTIQUE GUERLAIN〉Connecting Past and Present 類稀な素材がつなぐ過去と現在

  • 〈ACQUA DI PARMA〉For the Love of Italy 郷愁が生んだイタリアの香り

  • 〈CLERGERIE〉Experimental Spirit コンフォートとエレガンスの革新

  • 〈GIANVITO ROSSI〉Take a Step Forward 履く人の美しさを引き出す靴

  • 〈DUNHILL GINZA CONCEPT STORE〉Redefining Menswear 伝統と変革で作る新時代の服

  • 〈DEVIALET〉Crystal-Clear Emotion 澄んだサウンドがもたらす感動を

  • 〈PASAND BY NE QUITTEZ PAS〉A Bridge to India ファッションの先にある今のインドを

  • 〈GENTE DI MARE〉The Undiscovered Italy あなたが知らないイタリアの顔

  • 〈恵那栗工房 良平堂〉〈パティスリー GIN NO MORI〉Nature's Blessings 森の恵みを菓子に包む

  • 〈ARTISTIC&CO.〉〈AXXZIA〉〈Gluxury〉〈ReFa〉〈JILL STUART Beauty & PARTY〉〈MARY COHR〉Beauty Shop Hopping 体験を諦めることなく美しくあれ
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GINZASIXmagazine, コラム
老舗の「今」を知る旅、イン・ザ・GINZA SIX https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124793 Mon, 16 Aug 2021 08:00:08 +0000 no 食事や買い物といえばチェーン店しかない、味気のない新興住宅地で育ったことの裏返しだろうか。大人になった僕は、生活すべてにおいて歴史とか様式美とか、それに裏付けられた味わいってやつを求める、メンドクサイ男になってしまった。 そんな僕にとって、長い歴史を誇る老舗が軒を連ねた銀座とは、侵すべからざる存在である。「煉瓦亭」のオムライスで腹ごしらえをしたら、「カツミ堂」や「三共カメラ」でライカの古いレンズを探して、歩き疲れたら「カフェ・ド・ランブル」でひと休み……ってのが理想の休日。三つ揃いのスーツに中折れ帽をかぶって、鼻歌まじりに並木通りあたりを闊歩しているときの僕は、1920年代の〝モボ〟気分に浸っているので、できればひとりにしておいていただきたい。 でも、決して僕は単なる懐古主義者ではない……と思っている。なぜなら僕の仕事はファッションエディター。明治以降、世界中から最先端かつ最高級の文物を取り入れながら進化し続けてきた銀座という街は、そのフィールドワークに最もふさわしい街でもあるのだ。ずいぶん前置きが長くなってしまったが、僕がなぜ「GINZA SIX」に通うのかといえば、ここには大好きな老舗や、歴史あるブランドの〝今〟が、ジャンルを超えて凝縮されているからなのだと思う。 たとえば、ダンヒル。1893年に英国で創業し、ビスポークスーツ、ドライビンググッズに至るまで、紳士に必要なありとあらゆる品物をそろえた、言わずと知れた名門ブランドである。日本では銀座中央通りにバーバーやテーラー、バーを備えた本店を構え、僕たち日本人に本場のジェントルマンスタイルを伝え続けてくれている。 しかし、こちらが「GINZA SIX」にオープンさせた「ダンヒル GINZA コンセプトストア」(2F)は、ひと味違う。その商品のラインナップは、今まで日本では手に入りにくかった、最新のランウェイコレクションが中心。オーバーサイズのニットやワークパンツ、スニーカーなどなど、今まで僕たちがダンヒルに抱いていたイメージを覆す、ストリートテイストのカジュアルアイテムばかりである。 とはいえ、もちろん名門ダンヒルらしさは健在。一見ラフなジャージーであってもその素材は驚くほど上質だし、シャツにプリントされた幾何学模様は、ブランドのルーツに紐づくクラシックカーの、塗装が剥げた質感からインスパイアされたもの。業界でも屈指の洋服マニアとして知られるクリエイティブ・ディレクター、マーク・ウェストン氏ならではの深い考察が、ひとつひとつに息づいている。また、上質なテーラードウエアの内部には複雑に組み合わせた芯地が使われているのだが、それを大胆にもジャケット(330,000円 ※以下全て税込価格)の表地として使ってしまうあたりには、確信犯的な遊び心も感じさせるのだ。 なかでも個人的に気になったのは、英国紳士御用達のアタッシュケースを、なんと今どきサイズのミニショルダーバッグにアレンジしてしまった、『ロックバッグ』というシロモノ(ブラックのパテッドレザー320,100円・ゴールドのメタル573,100円)。まさにクラシックとモダンのフュージョンともいえるこちらが、ダンヒルの新しいアイコンバッグなのだという。 これならカジュアルな装いにも気軽に取り入れられそうだが、専門の職人が手がけただけあって、つくりは過剰なまでに超本格派! 精巧なケースの設計から真鍮製の金具、そして開閉した時の「パカッ」という手応えに至るまで、本物のアタッシュケースを完璧に再現している。正直いってお値段はカワイくないし、金属製のものにいたっては中にモノを入れられないほどの重量感なのだが、こういうユーモアのセンスを備えた男こそ、現代のジェントルマンだと思うのだ。 さて、『ロックバッグ』に後ろ髪引かれつつ向かった次なる目的地は、「ライカ」の直営店である「Leica Store」(5F)である。何を隠そう、僕はちょっとしたライカの愛好家。フィルム機から最新のデジタルカメラまで、編集者としてはそこそこのコレクションを所有し、仕事でもよく使っている。 紳士諸兄ならご存知だろうが、銀座という街は、クラシックカメラとライカの街でもある。これほどカメラ店が密集して、希少かつ状態のよいレンズやカメラが手に入りやすいエリアは、世界的に見ても唯一無二。コロナ禍以前は、外国人観光客で大繁盛していたものだ。 そんな土地柄ゆえか、「GINZA SIX」と同じ銀座6丁目には、世界で初めてつくられたというライカの直営店がある。ここでは現行アイテムのフルラインナップをそろえるとともに、万全の修理体制を整えており、僕もしょっちゅうお世話になっている。 直営店があるのに、どうして目と鼻の先にある「GINZA SIX」にもLeica Storeをつくったのだろう?と思わなくもなかったが、これが使い勝手がいい。定休日がなく、しかも直営店より営業時間が長いので、仕事が終わったあとやディナーのついでに、ふらっと寄ることができるのだ。 広々とした開放的な空間のせいか、いつもは遠慮しがちな試し撮りも、ここなら気軽にバシバシ試せる。ライカにおける屈指の名作レンズを復刻した『ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.ブラック』(990,000円)や、僕の現在の主力機『ライカ SL2』に着けたいズームレンズ『バリオ・エルマリートSL f2.8/24-70mm ASPH.』(352,000円)など、憧れの高級レンズを次々と試写。 そして、このところ気になっていた、ライカ初のスマホ『LEITZ PHONE 1』(187,920円 ※GINZA SIX店では試写のみで販売はなし)を、初めて手に取る機会にも恵まれた。その凝ったつくりはもちろん、写り具合までも見事に〝ライカ的〟で、編集者としては「こんな写真が世の中に溢れちゃったらどうしよう?」と不安にさせられるほど。僕ももっと腕をあげないといけないなあ! 最近、時計やジーンズ、クルマ、カメラなど様々な分野でヴィンテージ人気が過熱しており、ライカのオールドレンズにも、驚くほどの高値がついている。それらを現行のアイテムと較べてみると、大概のケースで「昔のほうがよかった」と思わされることが多いのだが、ライカだけは別。昔のものと今のもの、それぞれにまた違った魅力があり、このデジタル時代においてもきちんと共存できているのだ。その分、ファンとしてはほしいモノだらけになってしまって非常に困るのだが…。 さて、試着&試写疲れに効く甘いものを求めて、移動したのは地下2階。ここには葉山の人気店マーロウや、言わずと知れた銀座千疋屋など、僕好みの名店が軒を連ねている。しかも「GINZA SIX」限定スイーツも売っていたりするから、油断ができない。そんな中、ふと目に留まったのが、岐阜県恵那市に本店を構える老舗和菓子店、「恵那栗工房 良平堂」の看板である。 実はちょうど昨年の秋、仕事で中山道を旅する機会があったのだが、その際に偶然こちらに立ち寄り、新栗でつくった栗きんとんのキュートなビジュアルと、東京で食べるそれとは全く異なる、豊かで複雑な味に驚かされたのだった。生まれて初めて体感した、木曽〜美濃エリアの〝山の文化〟を象徴するようなこの名店に、支店があったとは知らなかった! 今日は朗らかな名物スタッフの加藤さんに勧められて、干し柿の中に栗きんとんを仕込んだオリジナルの逸品『栗福柿』(1個300円〜)など、何種類かのスイーツを購入。どちらも栗の自然な甘みを活かした風味だから、和菓子が嫌いな方でも美味しく頂けるに違いない。僕はあまり強くないほうだが、シングルモルトに合わせてもいいだろう。 1893年創業のダンヒル、1914年創業のライカ、そして1946年創業の良平堂。ジャンルこそ全く異なるが、今日訪れた3つの老舗ブランドに共通するのは、その歴史に安住せず、新しい商品やサービスに果敢に挑戦する、前向きなスピリットだった。そうして進化し続けたからこそ、現在の地位があるのだろう。 なにかと大変な時期だけれど、僕も前を向いて頑張ろう! と、決意を新たにしたついでに、ライカのレンズでも1本買って帰るか…。えっ、そんな無謀な買い物をしたら奥さんに怒られるんじゃないかって? いや、それは心配ない。だって今日のお土産は、彼女の大好物である良平堂の栗きんとんなのだから。 Text:Eisuke Yamashita Photo:Yuichi Sugita Edit:Yuka Okada(81)

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食事や買い物といえばチェーン店しかない、味気のない新興住宅地で育ったことの裏返しだろうか。大人になった僕は、生活すべてにおいて歴史とか様式美とか、それに裏付けられた味わいってやつを求める、メンドクサイ男になってしまった。

そんな僕にとって、長い歴史を誇る老舗が軒を連ねた銀座とは、侵すべからざる存在である。「煉瓦亭」のオムライスで腹ごしらえをしたら、「カツミ堂」や「三共カメラ」でライカの古いレンズを探して、歩き疲れたら「カフェ・ド・ランブル」でひと休み……ってのが理想の休日。三つ揃いのスーツに中折れ帽をかぶって、鼻歌まじりに並木通りあたりを闊歩しているときの僕は、1920年代の〝モボ〟気分に浸っているので、できればひとりにしておいていただきたい。

でも、決して僕は単なる懐古主義者ではない……と思っている。なぜなら僕の仕事はファッションエディター。明治以降、世界中から最先端かつ最高級の文物を取り入れながら進化し続けてきた銀座という街は、そのフィールドワークに最もふさわしい街でもあるのだ。ずいぶん前置きが長くなってしまったが、僕がなぜ「GINZA SIX」に通うのかといえば、ここには大好きな老舗や、歴史あるブランドの〝今〟が、ジャンルを超えて凝縮されているからなのだと思う。

たとえば、ダンヒル。1893年に英国で創業し、ビスポークスーツ、ドライビンググッズに至るまで、紳士に必要なありとあらゆる品物をそろえた、言わずと知れた名門ブランドである。日本では銀座中央通りにバーバーやテーラー、バーを備えた本店を構え、僕たち日本人に本場のジェントルマンスタイルを伝え続けてくれている。

しかし、こちらが「GINZA SIX」にオープンさせた「ダンヒル GINZA コンセプトストア」(2F)は、ひと味違う。その商品のラインナップは、今まで日本では手に入りにくかった、最新のランウェイコレクションが中心。オーバーサイズのニットやワークパンツ、スニーカーなどなど、今まで僕たちがダンヒルに抱いていたイメージを覆す、ストリートテイストのカジュアルアイテムばかりである。

とはいえ、もちろん名門ダンヒルらしさは健在。一見ラフなジャージーであってもその素材は驚くほど上質だし、シャツにプリントされた幾何学模様は、ブランドのルーツに紐づくクラシックカーの、塗装が剥げた質感からインスパイアされたもの。業界でも屈指の洋服マニアとして知られるクリエイティブ・ディレクター、マーク・ウェストン氏ならではの深い考察が、ひとつひとつに息づいている。また、上質なテーラードウエアの内部には複雑に組み合わせた芯地が使われているのだが、それを大胆にもジャケット(330,000円 ※以下全て税込価格)の表地として使ってしまうあたりには、確信犯的な遊び心も感じさせるのだ。

なかでも個人的に気になったのは、英国紳士御用達のアタッシュケースを、なんと今どきサイズのミニショルダーバッグにアレンジしてしまった、『ロックバッグ』というシロモノ(ブラックのパテッドレザー320,100円・ゴールドのメタル573,100円)。まさにクラシックとモダンのフュージョンともいえるこちらが、ダンヒルの新しいアイコンバッグなのだという。

これならカジュアルな装いにも気軽に取り入れられそうだが、専門の職人が手がけただけあって、つくりは過剰なまでに超本格派! 精巧なケースの設計から真鍮製の金具、そして開閉した時の「パカッ」という手応えに至るまで、本物のアタッシュケースを完璧に再現している。正直いってお値段はカワイくないし、金属製のものにいたっては中にモノを入れられないほどの重量感なのだが、こういうユーモアのセンスを備えた男こそ、現代のジェントルマンだと思うのだ。

さて、『ロックバッグ』に後ろ髪引かれつつ向かった次なる目的地は、「ライカ」の直営店である「Leica Store」(5F)である。何を隠そう、僕はちょっとしたライカの愛好家。フィルム機から最新のデジタルカメラまで、編集者としてはそこそこのコレクションを所有し、仕事でもよく使っている。

紳士諸兄ならご存知だろうが、銀座という街は、クラシックカメラとライカの街でもある。これほどカメラ店が密集して、希少かつ状態のよいレンズやカメラが手に入りやすいエリアは、世界的に見ても唯一無二。コロナ禍以前は、外国人観光客で大繁盛していたものだ。

そんな土地柄ゆえか、「GINZA SIX」と同じ銀座6丁目には、世界で初めてつくられたというライカの直営店がある。ここでは現行アイテムのフルラインナップをそろえるとともに、万全の修理体制を整えており、僕もしょっちゅうお世話になっている。

直営店があるのに、どうして目と鼻の先にある「GINZA SIX」にもLeica Storeをつくったのだろう?と思わなくもなかったが、これが使い勝手がいい。定休日がなく、しかも直営店より営業時間が長いので、仕事が終わったあとやディナーのついでに、ふらっと寄ることができるのだ。

広々とした開放的な空間のせいか、いつもは遠慮しがちな試し撮りも、ここなら気軽にバシバシ試せる。ライカにおける屈指の名作レンズを復刻した『ノクティルックスM f1.2/50mm ASPH.ブラック』(990,000円)や、僕の現在の主力機『ライカ SL2』に着けたいズームレンズ『バリオ・エルマリートSL f2.8/24-70mm ASPH.』(352,000円)など、憧れの高級レンズを次々と試写。

そして、このところ気になっていた、ライカ初のスマホ『LEITZ PHONE 1』(187,920円 ※GINZA SIX店では試写のみで販売はなし)を、初めて手に取る機会にも恵まれた。その凝ったつくりはもちろん、写り具合までも見事に〝ライカ的〟で、編集者としては「こんな写真が世の中に溢れちゃったらどうしよう?」と不安にさせられるほど。僕ももっと腕をあげないといけないなあ!

最近、時計やジーンズ、クルマ、カメラなど様々な分野でヴィンテージ人気が過熱しており、ライカのオールドレンズにも、驚くほどの高値がついている。それらを現行のアイテムと較べてみると、大概のケースで「昔のほうがよかった」と思わされることが多いのだが、ライカだけは別。昔のものと今のもの、それぞれにまた違った魅力があり、このデジタル時代においてもきちんと共存できているのだ。その分、ファンとしてはほしいモノだらけになってしまって非常に困るのだが…。

さて、試着&試写疲れに効く甘いものを求めて、移動したのは地下2階。ここには葉山の人気店マーロウや、言わずと知れた銀座千疋屋など、僕好みの名店が軒を連ねている。しかも「GINZA SIX」限定スイーツも売っていたりするから、油断ができない。そんな中、ふと目に留まったのが、岐阜県恵那市に本店を構える老舗和菓子店、「恵那栗工房 良平堂」の看板である。

実はちょうど昨年の秋、仕事で中山道を旅する機会があったのだが、その際に偶然こちらに立ち寄り、新栗でつくった栗きんとんのキュートなビジュアルと、東京で食べるそれとは全く異なる、豊かで複雑な味に驚かされたのだった。生まれて初めて体感した、木曽〜美濃エリアの〝山の文化〟を象徴するようなこの名店に、支店があったとは知らなかった!

今日は朗らかな名物スタッフの加藤さんに勧められて、干し柿の中に栗きんとんを仕込んだオリジナルの逸品『栗福柿』(1個300円〜)など、何種類かのスイーツを購入。どちらも栗の自然な甘みを活かした風味だから、和菓子が嫌いな方でも美味しく頂けるに違いない。僕はあまり強くないほうだが、シングルモルトに合わせてもいいだろう。

1893年創業のダンヒル、1914年創業のライカ、そして1946年創業の良平堂。ジャンルこそ全く異なるが、今日訪れた3つの老舗ブランドに共通するのは、その歴史に安住せず、新しい商品やサービスに果敢に挑戦する、前向きなスピリットだった。そうして進化し続けたからこそ、現在の地位があるのだろう。

なにかと大変な時期だけれど、僕も前を向いて頑張ろう! と、決意を新たにしたついでに、ライカのレンズでも1本買って帰るか…。えっ、そんな無謀な買い物をしたら奥さんに怒られるんじゃないかって? いや、それは心配ない。だって今日のお土産は、彼女の大好物である良平堂の栗きんとんなのだから。

Text:Eisuke Yamashita Photo:Yuichi Sugita Edit:Yuka Okada(81)

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まいにちの心地良さ。食が開く幸せの扉 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124794 Fri, 09 Jul 2021 03:00:28 +0000 no 「え、それ食べるんですか?」 今までどれほどそんなリアクションをされてきただろう。20数年前にアナウンサーとしてテレビ局に入り、食を中心とした文章を書く仕事に軸足を移した今に至るまで、食べものとの関わりは長い。子供の時分からの食への突出した好奇心が大人になっても抑えられないが故に、なんでもかんでも口にしては、度々人を戸惑わせてしまうのだ。最近「やってしまった」のは、三陸のアワビ養殖場で、アワビの餌を食べた時。他にもタンザニアの小さな街をぶらぶらしていて出会った人に連れて行ってもらったバラック小屋で、自家製のバナナ酒を勧められた時も「お腹を壊すかも」という恐怖心に好奇心が勝って口にした。だって、この機会を逃したら、一生口にできないかもしれない。もし人智を超えた美味だったとしたら、一生の不覚だ。 赤ちゃんが生まれて最初に発達するのは、嗅覚と味覚だ、という。そんな根源的な角度から世の中を見てみる、というとかっこいいが、ただ単に生まれ持っての好奇心と食い意地がハイブリッド化しただけである。 「あなたの食べたものを言ってごらんなさい、あなたがどんな人か当ててみよう」と言ったのはブリア・サヴァランだが、かの美食の巨人に私のこんな雑食ぶりを伝えたら、なんと評されるのだろうか。考えるだに恐ろしい。 さて、そんな食いしん坊ぶりを買っていただき、銀座のお洒落さ・スタイリッシュさのキーワードを全部集めたような場所、「GINZA SIX」の地下2階に新たにオープンしたいくつかの新店舗を巡ってみた。 テーマは名付けて「まいにちの上質」。 これまで約50ヶ国を旅してきたが、各地で私のマニアックな食に対する好奇心を受け止めてくれたのが、市場やスーパーマーケットだ。端から端までをまさに食い入るように眺め(食べ)、いくら時間があっても足りない私がまず足を運んだのが「Bio c' Bon(ビオセボン)」(B2F)。パリに行くたびに食材やお土産を買うのに重宝していたお店が、2016年に日本に上陸。現在は国内26店舗を展開、最近になって全国のどの街からもオンラインでも購入できるようになったというから、あまりに朗報だ。 このGINZA SIX店は「あなたの暮らしにぴったりのものを選りすぐりました」という天の声が聞こえてくるようなセレクション。特にこの銀座の地で、オーガニックの果物、野菜、肉、卵、乳製品がたっぷりと揃うのが嬉しい。昔はオーガニック食材店と言えば、インポートの乾物ばかりだったが、こちらは約800アイテムが国産で、オーガニック認証を取得した商品も数多い。日本のオーガニックも、こんなに選択肢が広くなったのだと思うと、感無量。 それに…なんですか、この立派なホワイトアスパラガスは! メロンは! もう、食材そのものの圧がすごい。植物性飼料を食べて、のびのびと運動しながら育った秋川牧園の鶏肉は、水っぽくなく詰まった身質、しっかりとした赤身の色合いとクリーム色がかった脂肪の色。見るだけでわかります…あなたは…おいしいですね!!!「オーガニックだから」買うのではなくて、おいしそうだから買う、というめくるめく世界が広がっている。特に野菜や果物は、その時期限定のものも多い。気になったら逃さずに、は鉄則だ。 そして、さらには調味料類。「有機麻婆の素」(270円 ※以下全て税込価格)のようなお助け系調味料に至るまで、化学調味料無添加のものばかり。裏をひっくり返して何が入っているのかな? といちいちチェックしなくても、ぽんぽんカゴに入れられる安心感。一般的に添加物の多いともされるスプレッド系は敬遠していたけれど、ここにある「プラントベース・有機スプレッド」(638円)は、オーガニックの菜種油やアーモンドバター、レモンジュースなどを使って作ったもの。乳化剤はひまわりのレシチンなど、すべてが植物性。ここまでこだわってくれているなら、ご存じ数多くのセレブリティもやっているというヴィーガンを、週イチで取り入れる「ゆるヴィーガン」をやってみてもいいかも? 「大人のガチャガチャ」とでも言うべき、量り売りのドライフルーツは、インカベリーや2種類のデーツ、発芽ナッツなど、それなに?と好奇心をくすぐるものばかり。気になるものをかたっぱしから選んでも、少量・食べきりサイズの20グラムから買えるから、毎日のヘルシーなおやつにぴったり。光沢材不使用のアーモンドチョコレートは、ローストの香ばしさと甘さ控えめのチョコレートがマッチした大人の味。 なかには、日本ではなかなか手に入らない珍しい商品も。例えば、パプアニューギニア産のコーヒー(1,620円)。手摘み、または手選りされたピーベリー(一粒に通常2つの豆が入っているところ、一つより果実味が強い)を輸入しているという。パプアニューギニアは、チョコレートの取材で訪れたことがあるけれど、まさにジャングルの秘境。おそらく私と同じく食いっ気あふれるバイヤーさん、お会いしたことはないけど、ありがとう! 続いて足を向けたのは、フカヒレのシルエットを染め抜いた白い暖簾の向こうにカウンター席が並ぶ「自由が丘蔭山楼」(B2F)。フカヒレの老舗「筑紫楼」で料理長を務めた蔭山健一さんが手がける同店が、シグネチャーでもある高級食材のフカヒレを気軽に楽しんでもらえる店を、とフカヒレ麺に特化した店をオープン。肩肘はらずに上質を味わう「お気軽ラグジュアリー」はこれからの時代によりニーズが高まってきそうな予感。 お酒もグラスで気軽に楽しめるので、+748円の「点心とデザートのセット」を頼んで、アルコールはグラスのスパークリングワイン(968円)、〆にフカヒレラーメン、というチョイ飲みにもぴったり。 さて、やってきたフカヒレ麺(3種類あるうちのこちらは特大)は、ドーンと100グラム。丼全体がフカヒレで覆われちゃってます! 丼の水平線まで広がる見渡す限りの一面のフカヒレは「映え感」も抜群。醤油やオイスターソース控えめの明るい色合い、上のフカヒレ部分は「10リットルのスープを作るのに、鶏の手羽先10キロを使ってます」という、もはや「飲む手羽先」とでも言うべき濃厚白湯ベースのあんかけで、オーセンティックな味わいを実現しつつ、下は柚子を効かせたさっぱりとした鶏出汁をひそませるという二層仕立てで軽やかに。麺は小麦の味わいが楽しめてスープがしっかりと絡む、浅草開化楼の中太のちぢれ麺。 軽く混ぜていただくと、濃厚なコラーゲンに包まれたプリプリのフカヒレともっちり麺、あと味にすっきりとした柚子の香りが追いかけてきて、口の中に広がるのは陶然たる癒しの世界。 でも、ちょっと待って。使っているのはヨシキリザメ、100グラムだと専門店では通常1万円くらいするはず。もはや原価割れでは? 特大サイズでも3,608円というお手頃価格の実現はいかに? 聞けば「長年の問屋さんとの信頼関係と、尾びれでなく胸びれを使うこと」とは店長の伊藤達哉さんの弁。実際食べてみての感想は、胸びれの方がやや薄いけれど、逆にほぐしやすいので食べやすく、麺との一体感が感じられるかも。しっかりとコラーゲンチャージし、ほくほくしながらセットデザートのふわとろ杏仁豆腐を食べていると、「実は、持ち帰り専用で他にも6種類杏仁豆腐があって。それも、GINZA SIX店限定なんですよ…」とやはり店長から悪魔のささやき。なんですと?? しかも、それをつくっているのは、なんと銀座のマキシム・ド・パリの元4代目料理長でもあった、もう一人のイトウさんこと伊藤正顕さんだという。銀座のマキシム・ド・パリの初代料理長といえば、フランスで50年以上の三つ星を誇る「トロワグロ」のピエール・トロワグロさん。そんな歴史を受け継いだシェフが生み出す…杏仁…豆腐!? どんなにお腹がいっぱいでも、もちろん逃すわけにはいきません。別腹に緊急出動を要請致しますッ!! 先ほどのセットデザートと比べると、フレンチらしいクリームのコクが感じられるベースに、カラフルなフルーツなどが乗ったGINZA SIX限定杏仁豆腐。日々店頭にも立つ伊藤さんにお話を聞くと、例えばエキゾティックな「ライチ」(842円)の下の紫色のゼリーは、その鮮やかな色付けのために、ほうれん草などから緑色の色素をとる「クロロフィル(青寄せ)」の手法を応用して、紫キャベツから色素を。他にキウイに砂糖とミントでマリネしたトマトとマスカルポーネムースを添えた「キウイフルーツ&マスカルポーネ」(842円)なども、キュートな見た目の裏に、フランス料理のシェフならではの技やアイデアがしっかりと活きている。 てっきり監修だけをされているのかと思ったら「いえ、毎朝ボクがここで手作りしてます、鮮度の良いものを味わって欲しいですから」と伊藤さん。確かに、伊藤さん一押しの「ストロベリー」(842円)も、既製品のピュレではなく、フレッシュなイチゴで作った新鮮な味わい。ゆくゆくは、フレンチと中華を融合したヌーベルシノワのメニュー展開もしていきたいのだとか。楽しみ! そしてラストは「Signifiant Signifié + plus (シニフィアン シニフィエ プラス)」。シニフィアン シニフィエといえば、個人的にも大好きな志賀勝栄さんのパンが楽しめる世田谷区太子堂を本店とする有名店。長時間発酵、高加水で、外側はカリッと、内側はもっちり。気泡がツヤリとした、美しい切り口を見ると、ついついニヤニヤしてしまう。 では、プラスって何? といえば、GINZA SIX店ではパンだけでなく、なんと量り売りのワインも購入できる嬉しさ。そう、ここはパンとワインの幸せなマリアージュを楽しむ店なのだ。 小麦粉と発酵の香り漂うバゲットはもちろん、たっぷりのナッツやドライフルーツ、スパイスなどを練り込んだ志賀さんのパンは、もはやおつまみパンと呼ばせていただきたい。 さらにパンとワインに合うプラスアルファの味を、ということで、季節ごとに変わるショーケースには、今イタリア産のチョコレートが並ぶ。 子どもの頃、フランスではバゲットにチョコレートを挟んだものがオヤツだ、と聞いて、なんてお洒落な、と羨んだものだけれど、あの頃の自分に教えてあげたい。大人になった私は、自分へのご褒美に、赤ワインをたっぷりと生地に練り込んだ「パン オ ヴァン」(ハーフ・2,160円)に、この「ラズベリーと66%ダークチョコレート」(1,080円)を挟み、赤ワインと共に楽しむことだってできるのだ、と。 クグロフやパネトーネのような「お菓子系」だけでなく、人気のパン ド ミ(1,296円)もギフトボックス(275円)に入れてもらえるから、お持たせにも◎。 量り売りワインはイタリア産ワインを中心に月替りで、250ml(770円〜)は、ちょうどワイングラス2杯分。一人で楽しむのもよし、赤と白を買って二人で楽しむのも良さそう。もちろん1ボトル単位でも購入できる。 すなわち、ダイヤモンドのように眩しい輝きということではなく、連なった真珠玉のように、穏やかな幸せがずっと続いていくこと。GINZA SIXで出会ったそんなまいにちの時間にぴったりと寄り添う店の数々は、私の「やってしまい」がちな好奇心を静かに満たしてくれた。 世の中でどんな嵐が吹き荒れようとも、今という時間はすぎていく。だったら、私の今を大切に、慈しんで生きていきたい。晴れた日も、雨の日も、心穏やかなひと時のそばに、ふといてくれるおいしいものたち。私たちは、食べたものでできている。丁寧に作られたものをいただくことは、自分自身を慈しむこと。そうですよね、ブリア・サヴァランさん? Text: Kyoko Nakayama Photos: Kanako Noguchi Edit: Yuka Okada(81)

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「え、それ食べるんですか?」

今までどれほどそんなリアクションをされてきただろう。20数年前にアナウンサーとしてテレビ局に入り、食を中心とした文章を書く仕事に軸足を移した今に至るまで、食べものとの関わりは長い。子供の時分からの食への突出した好奇心が大人になっても抑えられないが故に、なんでもかんでも口にしては、度々人を戸惑わせてしまうのだ。最近「やってしまった」のは、三陸のアワビ養殖場で、アワビの餌を食べた時。他にもタンザニアの小さな街をぶらぶらしていて出会った人に連れて行ってもらったバラック小屋で、自家製のバナナ酒を勧められた時も「お腹を壊すかも」という恐怖心に好奇心が勝って口にした。だって、この機会を逃したら、一生口にできないかもしれない。もし人智を超えた美味だったとしたら、一生の不覚だ。

赤ちゃんが生まれて最初に発達するのは、嗅覚と味覚だ、という。そんな根源的な角度から世の中を見てみる、というとかっこいいが、ただ単に生まれ持っての好奇心と食い意地がハイブリッド化しただけである。

「あなたの食べたものを言ってごらんなさい、あなたがどんな人か当ててみよう」と言ったのはブリア・サヴァランだが、かの美食の巨人に私のこんな雑食ぶりを伝えたら、なんと評されるのだろうか。考えるだに恐ろしい。

さて、そんな食いしん坊ぶりを買っていただき、銀座のお洒落さ・スタイリッシュさのキーワードを全部集めたような場所、「GINZA SIX」の地下2階に新たにオープンしたいくつかの新店舗を巡ってみた。

テーマは名付けて「まいにちの上質」。

これまで約50ヶ国を旅してきたが、各地で私のマニアックな食に対する好奇心を受け止めてくれたのが、市場やスーパーマーケットだ。端から端までをまさに食い入るように眺め(食べ)、いくら時間があっても足りない私がまず足を運んだのが「Bio c' Bon(ビオセボン)」(B2F)。パリに行くたびに食材やお土産を買うのに重宝していたお店が、2016年に日本に上陸。現在は国内26店舗を展開、最近になって全国のどの街からもオンラインでも購入できるようになったというから、あまりに朗報だ。

このGINZA SIX店は「あなたの暮らしにぴったりのものを選りすぐりました」という天の声が聞こえてくるようなセレクション。特にこの銀座の地で、オーガニックの果物、野菜、肉、卵、乳製品がたっぷりと揃うのが嬉しい。昔はオーガニック食材店と言えば、インポートの乾物ばかりだったが、こちらは約800アイテムが国産で、オーガニック認証を取得した商品も数多い。日本のオーガニックも、こんなに選択肢が広くなったのだと思うと、感無量。

それに…なんですか、この立派なホワイトアスパラガスは! メロンは! もう、食材そのものの圧がすごい。植物性飼料を食べて、のびのびと運動しながら育った秋川牧園の鶏肉は、水っぽくなく詰まった身質、しっかりとした赤身の色合いとクリーム色がかった脂肪の色。見るだけでわかります…あなたは…おいしいですね!!!「オーガニックだから」買うのではなくて、おいしそうだから買う、というめくるめく世界が広がっている。特に野菜や果物は、その時期限定のものも多い。気になったら逃さずに、は鉄則だ。

そして、さらには調味料類。「有機麻婆の素」(270円 ※以下全て税込価格)のようなお助け系調味料に至るまで、化学調味料無添加のものばかり。裏をひっくり返して何が入っているのかな? といちいちチェックしなくても、ぽんぽんカゴに入れられる安心感。一般的に添加物の多いともされるスプレッド系は敬遠していたけれど、ここにある「プラントベース・有機スプレッド」(638円)は、オーガニックの菜種油やアーモンドバター、レモンジュースなどを使って作ったもの。乳化剤はひまわりのレシチンなど、すべてが植物性。ここまでこだわってくれているなら、ご存じ数多くのセレブリティもやっているというヴィーガンを、週イチで取り入れる「ゆるヴィーガン」をやってみてもいいかも?

「大人のガチャガチャ」とでも言うべき、量り売りのドライフルーツは、インカベリーや2種類のデーツ、発芽ナッツなど、それなに?と好奇心をくすぐるものばかり。気になるものをかたっぱしから選んでも、少量・食べきりサイズの20グラムから買えるから、毎日のヘルシーなおやつにぴったり。光沢材不使用のアーモンドチョコレートは、ローストの香ばしさと甘さ控えめのチョコレートがマッチした大人の味。

なかには、日本ではなかなか手に入らない珍しい商品も。例えば、パプアニューギニア産のコーヒー(1,620円)。手摘み、または手選りされたピーベリー(一粒に通常2つの豆が入っているところ、一つより果実味が強い)を輸入しているという。パプアニューギニアは、チョコレートの取材で訪れたことがあるけれど、まさにジャングルの秘境。おそらく私と同じく食いっ気あふれるバイヤーさん、お会いしたことはないけど、ありがとう!

続いて足を向けたのは、フカヒレのシルエットを染め抜いた白い暖簾の向こうにカウンター席が並ぶ「自由が丘蔭山楼」(B2F)。フカヒレの老舗「筑紫楼」で料理長を務めた蔭山健一さんが手がける同店が、シグネチャーでもある高級食材のフカヒレを気軽に楽しんでもらえる店を、とフカヒレ麺に特化した店をオープン。肩肘はらずに上質を味わう「お気軽ラグジュアリー」はこれからの時代によりニーズが高まってきそうな予感。

お酒もグラスで気軽に楽しめるので、+748円の「点心とデザートのセット」を頼んで、アルコールはグラスのスパークリングワイン(968円)、〆にフカヒレラーメン、というチョイ飲みにもぴったり。

さて、やってきたフカヒレ麺(3種類あるうちのこちらは特大)は、ドーンと100グラム。丼全体がフカヒレで覆われちゃってます! 丼の水平線まで広がる見渡す限りの一面のフカヒレは「映え感」も抜群。醤油やオイスターソース控えめの明るい色合い、上のフカヒレ部分は「10リットルのスープを作るのに、鶏の手羽先10キロを使ってます」という、もはや「飲む手羽先」とでも言うべき濃厚白湯ベースのあんかけで、オーセンティックな味わいを実現しつつ、下は柚子を効かせたさっぱりとした鶏出汁をひそませるという二層仕立てで軽やかに。麺は小麦の味わいが楽しめてスープがしっかりと絡む、浅草開化楼の中太のちぢれ麺。

軽く混ぜていただくと、濃厚なコラーゲンに包まれたプリプリのフカヒレともっちり麺、あと味にすっきりとした柚子の香りが追いかけてきて、口の中に広がるのは陶然たる癒しの世界。

でも、ちょっと待って。使っているのはヨシキリザメ、100グラムだと専門店では通常1万円くらいするはず。もはや原価割れでは? 特大サイズでも3,608円というお手頃価格の実現はいかに?

聞けば「長年の問屋さんとの信頼関係と、尾びれでなく胸びれを使うこと」とは店長の伊藤達哉さんの弁。実際食べてみての感想は、胸びれの方がやや薄いけれど、逆にほぐしやすいので食べやすく、麺との一体感が感じられるかも。しっかりとコラーゲンチャージし、ほくほくしながらセットデザートのふわとろ杏仁豆腐を食べていると、「実は、持ち帰り専用で他にも6種類杏仁豆腐があって。それも、GINZA SIX店限定なんですよ…」とやはり店長から悪魔のささやき。なんですと??

しかも、それをつくっているのは、なんと銀座のマキシム・ド・パリの元4代目料理長でもあった、もう一人のイトウさんこと伊藤正顕さんだという。銀座のマキシム・ド・パリの初代料理長といえば、フランスで50年以上の三つ星を誇る「トロワグロ」のピエール・トロワグロさん。そんな歴史を受け継いだシェフが生み出す…杏仁…豆腐!?

どんなにお腹がいっぱいでも、もちろん逃すわけにはいきません。別腹に緊急出動を要請致しますッ!!

先ほどのセットデザートと比べると、フレンチらしいクリームのコクが感じられるベースに、カラフルなフルーツなどが乗ったGINZA SIX限定杏仁豆腐。日々店頭にも立つ伊藤さんにお話を聞くと、例えばエキゾティックな「ライチ」(842円)の下の紫色のゼリーは、その鮮やかな色付けのために、ほうれん草などから緑色の色素をとる「クロロフィル(青寄せ)」の手法を応用して、紫キャベツから色素を。他にキウイに砂糖とミントでマリネしたトマトとマスカルポーネムースを添えた「キウイフルーツ&マスカルポーネ」(842円)なども、キュートな見た目の裏に、フランス料理のシェフならではの技やアイデアがしっかりと活きている。

てっきり監修だけをされているのかと思ったら「いえ、毎朝ボクがここで手作りしてます、鮮度の良いものを味わって欲しいですから」と伊藤さん。確かに、伊藤さん一押しの「ストロベリー」(842円)も、既製品のピュレではなく、フレッシュなイチゴで作った新鮮な味わい。ゆくゆくは、フレンチと中華を融合したヌーベルシノワのメニュー展開もしていきたいのだとか。楽しみ!

そしてラストは「Signifiant Signifié + plus (シニフィアン シニフィエ プラス)」。シニフィアン シニフィエといえば、個人的にも大好きな志賀勝栄さんのパンが楽しめる世田谷区太子堂を本店とする有名店。長時間発酵、高加水で、外側はカリッと、内側はもっちり。気泡がツヤリとした、美しい切り口を見ると、ついついニヤニヤしてしまう。

では、プラスって何? といえば、GINZA SIX店ではパンだけでなく、なんと量り売りのワインも購入できる嬉しさ。そう、ここはパンとワインの幸せなマリアージュを楽しむ店なのだ。

小麦粉と発酵の香り漂うバゲットはもちろん、たっぷりのナッツやドライフルーツ、スパイスなどを練り込んだ志賀さんのパンは、もはやおつまみパンと呼ばせていただきたい。

さらにパンとワインに合うプラスアルファの味を、ということで、季節ごとに変わるショーケースには、今イタリア産のチョコレートが並ぶ。

子どもの頃、フランスではバゲットにチョコレートを挟んだものがオヤツだ、と聞いて、なんてお洒落な、と羨んだものだけれど、あの頃の自分に教えてあげたい。大人になった私は、自分へのご褒美に、赤ワインをたっぷりと生地に練り込んだ「パン オ ヴァン」(ハーフ・2,160円)に、この「ラズベリーと66%ダークチョコレート」(1,080円)を挟み、赤ワインと共に楽しむことだってできるのだ、と。

クグロフやパネトーネのような「お菓子系」だけでなく、人気のパン ド ミ(1,296円)もギフトボックス(275円)に入れてもらえるから、お持たせにも◎。

量り売りワインはイタリア産ワインを中心に月替りで、250ml(770円〜)は、ちょうどワイングラス2杯分。一人で楽しむのもよし、赤と白を買って二人で楽しむのも良さそう。もちろん1ボトル単位でも購入できる。

すなわち、ダイヤモンドのように眩しい輝きということではなく、連なった真珠玉のように、穏やかな幸せがずっと続いていくこと。GINZA SIXで出会ったそんなまいにちの時間にぴったりと寄り添う店の数々は、私の「やってしまい」がちな好奇心を静かに満たしてくれた。

世の中でどんな嵐が吹き荒れようとも、今という時間はすぎていく。だったら、私の今を大切に、慈しんで生きていきたい。晴れた日も、雨の日も、心穏やかなひと時のそばに、ふといてくれるおいしいものたち。私たちは、食べたものでできている。丁寧に作られたものをいただくことは、自分自身を慈しむこと。そうですよね、ブリア・サヴァランさん?

Text: Kyoko Nakayama Photos: Kanako Noguchi Edit: Yuka Okada(81)

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それぞれがGINZA SIXで見つける体験の編集 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124795 Fri, 25 Jun 2021 09:00:08 +0000 no 東京の西側…多摩地方出身の自分にとって、都外に実家のある人にどんな形でも「地元の土地柄」があるのは羨ましいことだったし、都心出身の人が持つ(否が応でも)洗練されるやわらかさ、みたいなものもずっと憧れだった。私の出身は都心まで1時間程度でアクセスできる、都内だけれど学校の近所の川でサワガニが採れるような田舎のTHE ベッドタウンで、「なんだか中途半端な場所だなぁ…」と子供の頃から思っていた。つまり、文化に対してビシッとしてもいないし、逆にマイルドヤンキー的なゆるさもそんなにない。微妙…。 そのうえ、私は好きなものが多岐にわたるせいで“推し活”に充てる時間が足りなくて、興味のあるものを手当り次第に編集し、記事に認めて仕事にしてしまうことで、なんとか生きてきたタイプのオタクな人間だ。メディアはラジオ・Web・紙媒体、ジャンルは美容・サステナブルな暮らし・ファッション・アート・音楽…と仕事の主力を絞れずに10代の頃から何かと引き受けてきた。雑誌で推しのコスメについて話した日の午後には、好きな若手ミュージシャンのラジオ番組の原稿を書く。それってものすごく「サブ」な存在であって、どのジャンルのメインライターにはなりづらい。20代はその寄る辺なさみたいなものがとてもコンプレックスだった。 そんな自分にとっては、GINZA SIXのような施設に集まる国内外のクリエイティブが心の友。ひとつの思想に束ね上げられていない新しくて個性的な感性が集まるその世界は、学校が窮屈でしょうがなくてオタクっぽく没入するけれど移り気な自分を解き放ってくれた。 そして今回、GINZ SIXを歩くことになってまず初めに訪れたのは「Gluxury(グラジュリー)」(B1F)。買い物オタクが過ぎて、近年では付いている値札のフォントを見ただけで「どの会社がこの店を経営しているのか」「どのインポーターが買い付けたか」みたいなことがおおよそ想像できてしまう私にも、見たことのない世界の良品が多くてワクワクさせられる。 店内には、ギフト使いにも良さそうな暮らしまわりのアイテムが揃っている。歴史あるインドの紡績技術を活かした〈Micro Cotton〉は、インド綿を100%使ったサステナブルでラグジュアリーなタオルブランド。製品の安全性だけでなく、環境や働く人にも配慮した生産体制を保証する「エコテックス」の一番高い基準のラベルを取得したタオルなどは、そのエピソードも素敵で使っていて気分が良さそう! 高級タオルがそんなに珍しいものでもなくなった昨今、使っていて気持ちいいだけでなく、やっぱり語れる部分があるって大事ですよね。 日本のタオルは毛足が長くてふわふわしているのが高級なイメージだが、それらと違って、パイルの目が短くみっしり詰まっているシリーズ最高級の「プレミアムシリーズ」のバスタオル(16,500円 ※以下全て税込価格)はモコッとした“洋モノ” 感溢れるリッチさ。ギフトの他にも、引っ越しを機にタオルを入れ替えるという人も多いのだとか。真似したい…。 ショップ名の「Gluxury」はGreen + Luxuryを掛け合わせた造語で、ショップには他にも国内外のサステナブルで上質なアイテムが。500年以上の歴史を持つ〈RATHBORNES〉のキャンドル(7,700円)は100%ナチュラルな素材でハンドクラフトされた、蜜蝋をベースにハーブの香りが心を満たしてくれる。パッケージもFSC認証を取得した紙や再生可能なダンボール製。「使う」だけでなくて、その後のことまで心配りがなされているのが嬉しい。 加えてグラジュリーを運営するONODAという会社は、バングラデシュなど海外のインフラを支える事業も行っている。「ただ、いいモノを売るだけではない」という姿勢がとても今の時代にフィットしているし、それがセレクトのセンスに現れているようで、そういうお店の方が買って応援したくなる。並んでいるブランド一つ一つのエピソードを伺うのが楽しいひと時だった。 そしてお次は、B2Fのフーズフロアへ。 店頭に、まるで図鑑のように並べられた焼き菓子は、どんぐりや松など木の実をふんだんに使った山の恵みが主な素材。これらの焼き菓子がギュッと詰められた詰め合わせ缶やパウンドケーキなどを販売する「パティスリー GIN NO MORI」(B2F)は、岐阜県・恵那の人気店「恵那 銀の森」がオープンさせた、本店以外では全国初のフラッグシップショップだ。 シックなネイビーを基調にしたお店の中心にはシルバーの大きな樹がそびえ、その周りには、焼き菓子にもふんだんに使われているどんぐりをモチーフにしたライトが。そして、料理長の「チェス」と副料理長の「ナッツ」という名前の2人(2匹?)のリスがいて…というおとぎ話のような世界観が見た目からも伝わる。森の生き物がたくさんあしらわれたブルーの缶自体にファンも多く、限定パッケージは特に人気なのだそう。 知る人ぞ知るお話として、この「パティスリー GIN NO MORI」を運営している会社の母体が、岐阜県の恵那の森におせちのOEM工場を持つ企業だということ。だから、実はこの焼き菓子の缶詰めにも、おせちのお重詰めの技術が使われていて、形が崩れないように美しく計算して詰められているのだとか…!! どおりで、見た目以上にぎっしりとした重みのはずです。 通販では数ヶ月待ち、お店に行列もできるという人気のクッキーは洗練された雰囲気でお持たせにぴったり。甘い物好きさんが集まる撮影やちょっとしたお茶の時間なら、絶対に歓声が上がりそうなクッキー缶「プティボワ」(180サイズ 5,940円)、ここぞとばかりに購入してしまった。 最後に向かったのは、B1Fのビューティフロア。美容オタク憧れのエステで自分へのご褒美を…。 「MARY COHR(マリコール)」(B1F)は、エステティック発祥の地・フランスで売上ナンバーワンのシェアを誇る大手ブランド。特徴は、ハンドマッサージと独自のマシーンを融合させたその施術内容だ。 私が選んだのは、顔とデコルテを引き上げる「カチオリフト」(80分 22,000円)のコース。 個室でホットベッドに寝そべり、クレンジングから角質ケアで肌をやわらかく整えてもらったら、微かな電流が流れるマシーン「カチオビタルリフト」で顔をリフトアップ。顔の筋肉に直接働きかけて、肌をしっかりと刺激しながら美容成分を肌の奥まで届けてくれる。 このマシーンの施術は痛いわけではないけれど、驚くほどに筋肉を持ち上げられるので最初は「おぉっ…!?」と動揺するものの、ぐいっと肌が上がる感じがどんどん心地よくなってきます。毎日、リンパマッサージを欠かさずやっているものの、施術直後からわかるさらなるリフトアップ感にはとても感動…。 お店にはマリコールのリッチなスキンケアシリーズもフルラインナップ。スキンケアのお買い物だけでももちろんオーケー。私が受けた「カチオリフト」(80分 22,000円)のコースは、定期的に1回ほど受けることでリフトアップをキープするお客様が多いのだとか。銀座のど真ん中で自分のための時間を持てるって、すごく贅沢。 それにしても、施術前のスキンケアチェックで、この湿度の高い時期でも「肌が乾燥気味ですね」と言われてしまい不覚…。月に1回のお手入れにGINZA SIXに訪れるというのは、上階のファッションや雑貨を見ながらの気分転換に最適かもしれない。 こうして、今回3店舗を回って感じたのは、個性的なお店が集まる館の中で自分に合った楽しみ方を開発することの楽しさだ。ここでは私たちのようなエディターに限らずとも、訪れる人が自然とそうして「体験の編集」をしているんだなと感じた。 10代の私をあたたかく迎えてくれた百貨店やセレクトショップのオトナな接客と、20代の働き詰めだった私を癒やしてくれたお買い物体験を思い出す。30代で新たなライフステージを迎えた今、この日感じたおもてなしの多様性とニュースな感性の詰まったGINZA SIXで、まだまだ自分に合った遊び方を探求していきたい。 Text: Kaoru Tateishi Photos: Kozue Hanada Edit: Yuka Okada(81)

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東京の西側…多摩地方出身の自分にとって、都外に実家のある人にどんな形でも「地元の土地柄」があるのは羨ましいことだったし、都心出身の人が持つ(否が応でも)洗練されるやわらかさ、みたいなものもずっと憧れだった。私の出身は都心まで1時間程度でアクセスできる、都内だけれど学校の近所の川でサワガニが採れるような田舎のTHE ベッドタウンで、「なんだか中途半端な場所だなぁ…」と子供の頃から思っていた。つまり、文化に対してビシッとしてもいないし、逆にマイルドヤンキー的なゆるさもそんなにない。微妙…。

そのうえ、私は好きなものが多岐にわたるせいで“推し活”に充てる時間が足りなくて、興味のあるものを手当り次第に編集し、記事に認めて仕事にしてしまうことで、なんとか生きてきたタイプのオタクな人間だ。メディアはラジオ・Web・紙媒体、ジャンルは美容・サステナブルな暮らし・ファッション・アート・音楽…と仕事の主力を絞れずに10代の頃から何かと引き受けてきた。雑誌で推しのコスメについて話した日の午後には、好きな若手ミュージシャンのラジオ番組の原稿を書く。それってものすごく「サブ」な存在であって、どのジャンルのメインライターにはなりづらい。20代はその寄る辺なさみたいなものがとてもコンプレックスだった。

そんな自分にとっては、GINZA SIXのような施設に集まる国内外のクリエイティブが心の友。ひとつの思想に束ね上げられていない新しくて個性的な感性が集まるその世界は、学校が窮屈でしょうがなくてオタクっぽく没入するけれど移り気な自分を解き放ってくれた。

そして今回、GINZ SIXを歩くことになってまず初めに訪れたのは「Gluxury(グラジュリー)」(B1F)。買い物オタクが過ぎて、近年では付いている値札のフォントを見ただけで「どの会社がこの店を経営しているのか」「どのインポーターが買い付けたか」みたいなことがおおよそ想像できてしまう私にも、見たことのない世界の良品が多くてワクワクさせられる。

店内には、ギフト使いにも良さそうな暮らしまわりのアイテムが揃っている。歴史あるインドの紡績技術を活かした〈Micro Cotton〉は、インド綿を100%使ったサステナブルでラグジュアリーなタオルブランド。製品の安全性だけでなく、環境や働く人にも配慮した生産体制を保証する「エコテックス」の一番高い基準のラベルを取得したタオルなどは、そのエピソードも素敵で使っていて気分が良さそう! 高級タオルがそんなに珍しいものでもなくなった昨今、使っていて気持ちいいだけでなく、やっぱり語れる部分があるって大事ですよね。

日本のタオルは毛足が長くてふわふわしているのが高級なイメージだが、それらと違って、パイルの目が短くみっしり詰まっているシリーズ最高級の「プレミアムシリーズ」のバスタオル(16,500円 ※以下全て税込価格)はモコッとした“洋モノ” 感溢れるリッチさ。ギフトの他にも、引っ越しを機にタオルを入れ替えるという人も多いのだとか。真似したい…。

ショップ名の「Gluxury」はGreen + Luxuryを掛け合わせた造語で、ショップには他にも国内外のサステナブルで上質なアイテムが。500年以上の歴史を持つ〈RATHBORNES〉のキャンドル(7,700円)は100%ナチュラルな素材でハンドクラフトされた、蜜蝋をベースにハーブの香りが心を満たしてくれる。パッケージもFSC認証を取得した紙や再生可能なダンボール製。「使う」だけでなくて、その後のことまで心配りがなされているのが嬉しい。

加えてグラジュリーを運営するONODAという会社は、バングラデシュなど海外のインフラを支える事業も行っている。「ただ、いいモノを売るだけではない」という姿勢がとても今の時代にフィットしているし、それがセレクトのセンスに現れているようで、そういうお店の方が買って応援したくなる。並んでいるブランド一つ一つのエピソードを伺うのが楽しいひと時だった。

そしてお次は、B2Fのフーズフロアへ。

店頭に、まるで図鑑のように並べられた焼き菓子は、どんぐりや松など木の実をふんだんに使った山の恵みが主な素材。これらの焼き菓子がギュッと詰められた詰め合わせ缶やパウンドケーキなどを販売する「パティスリー GIN NO MORI」(B2F)は、岐阜県・恵那の人気店「恵那 銀の森」がオープンさせた、本店以外では全国初のフラッグシップショップだ。

シックなネイビーを基調にしたお店の中心にはシルバーの大きな樹がそびえ、その周りには、焼き菓子にもふんだんに使われているどんぐりをモチーフにしたライトが。そして、料理長の「チェス」と副料理長の「ナッツ」という名前の2人(2匹?)のリスがいて…というおとぎ話のような世界観が見た目からも伝わる。森の生き物がたくさんあしらわれたブルーの缶自体にファンも多く、限定パッケージは特に人気なのだそう。

知る人ぞ知るお話として、この「パティスリー GIN NO MORI」を運営している会社の母体が、岐阜県の恵那の森におせちのOEM工場を持つ企業だということ。だから、実はこの焼き菓子の缶詰めにも、おせちのお重詰めの技術が使われていて、形が崩れないように美しく計算して詰められているのだとか…!! どおりで、見た目以上にぎっしりとした重みのはずです。

通販では数ヶ月待ち、お店に行列もできるという人気のクッキーは洗練された雰囲気でお持たせにぴったり。甘い物好きさんが集まる撮影やちょっとしたお茶の時間なら、絶対に歓声が上がりそうなクッキー缶「プティボワ」(180サイズ 5,940円)、ここぞとばかりに購入してしまった。

最後に向かったのは、B1Fのビューティフロア。美容オタク憧れのエステで自分へのご褒美を…。

「MARY COHR(マリコール)」(B1F)は、エステティック発祥の地・フランスで売上ナンバーワンのシェアを誇る大手ブランド。特徴は、ハンドマッサージと独自のマシーンを融合させたその施術内容だ。

私が選んだのは、顔とデコルテを引き上げる「カチオリフト」(80分 22,000円)のコース。
個室でホットベッドに寝そべり、クレンジングから角質ケアで肌をやわらかく整えてもらったら、微かな電流が流れるマシーン「カチオビタルリフト」で顔をリフトアップ。顔の筋肉に直接働きかけて、肌をしっかりと刺激しながら美容成分を肌の奥まで届けてくれる。

このマシーンの施術は痛いわけではないけれど、驚くほどに筋肉を持ち上げられるので最初は「おぉっ…!?」と動揺するものの、ぐいっと肌が上がる感じがどんどん心地よくなってきます。毎日、リンパマッサージを欠かさずやっているものの、施術直後からわかるさらなるリフトアップ感にはとても感動…。

お店にはマリコールのリッチなスキンケアシリーズもフルラインナップ。スキンケアのお買い物だけでももちろんオーケー。私が受けた「カチオリフト」(80分 22,000円)のコースは、定期的に1回ほど受けることでリフトアップをキープするお客様が多いのだとか。銀座のど真ん中で自分のための時間を持てるって、すごく贅沢。

それにしても、施術前のスキンケアチェックで、この湿度の高い時期でも「肌が乾燥気味ですね」と言われてしまい不覚…。月に1回のお手入れにGINZA SIXに訪れるというのは、上階のファッションや雑貨を見ながらの気分転換に最適かもしれない。

こうして、今回3店舗を回って感じたのは、個性的なお店が集まる館の中で自分に合った楽しみ方を開発することの楽しさだ。ここでは私たちのようなエディターに限らずとも、訪れる人が自然とそうして「体験の編集」をしているんだなと感じた。

10代の私をあたたかく迎えてくれた百貨店やセレクトショップのオトナな接客と、20代の働き詰めだった私を癒やしてくれたお買い物体験を思い出す。30代で新たなライフステージを迎えた今、この日感じたおもてなしの多様性とニュースな感性の詰まったGINZA SIXで、まだまだ自分に合った遊び方を探求していきたい。

Text: Kaoru Tateishi Photos: Kozue Hanada Edit: Yuka Okada(81)

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Beauty, Food, Gift, ショップ紹介, ぶらエディターズ
「手紙」や「乗り物」のように。遠くの国の人と対話できるもの https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124796 Wed, 16 Jun 2021 07:59:27 +0000 no 自由に外に出ることがままならなくなった2020年の3月頃から、海外の作り手から服を取り寄せることが増えた。夜な夜な(たいてい、「もう服でも買って元気出そ」となるのは深夜なのだ)Instagramをスクロールしては、インディペンデントで素晴らしい服を作る人たちを探したり、海外のセレクトショップのECサイトを巡回したり。前々からしょっちゅう海外に行っていたわけではないのだけれど、それでも「外に出られない、出てはいけない」というプレッシャーまじりの閉塞感から、遠い場所に暮らす人々の生き方を少しでも濃く感じたくなったし、その人たちが見ている風景に触れたくなった。その思いは日ごとに募り、とりつかれたように服を買って、労働のお金はほぼ服に消えた。だけどあの行為は、わたしが生き延びるためにたしかに必要だったのだと思う。 海をこえて届いた服たちには「Thank you for your big support♡」といった手書きのメッセージカードが添えられていることが多かった。作っている人の体温がじんわり伝わり、握手しているような気にも、ハグしているような気にもなったものだ。服をまとえばおのずと未知の作り手の人柄が思われたし、暮らす街に少しだけ足を踏み入れられた気がして、服は、手紙のようにも、乗り物のようにも姿を変えた。 服には、暑さや寒さから身を守ってくれる機能的な面と、アイデンティティや立場を表現する社会的な面が存在する。そしてもうひとつ、あると思う。終わりの見えないこの状況と向き合いながら、それでもなんとか楽しく生きていきたいと願うひとりの人間としてわたしは、服とは人と人をつなぐものでもあると信じたい。そんな気持ちをたずさえながら、今回の企画では、遠くの国の人々や文化、流れる時間に思いを馳せられるGINZA SIXのお店を巡ってみた。 まず、南米パタゴニアにルーツを持つジュリアン・ベデル氏が、アルゼンチンのブエノスアイレスで創業したフレグランスブランド「FUEGUIA 1833 Ginza(フエギア イチハチサンサン ギンザ)」(3F)。ブエノスアイレスと聞いて浮かぶのは、レスリー・チャンとトニー・​レオンが恋人役を演じたウォン・カーウァイ監督の映画『ブエノスアイレス』。神秘をたたえた雄大なイグアスの滝や、土地に根付くタンゴバーの音色を思い出してうっとりしていたら、どうやらジュリアンは建築家や詩人などを擁する芸術一家の生まれで、本人は弦楽器製作者としても活躍していたそう。映画が思い浮かんだのもなにかの……まさかジュリアンの……?導きなのかもしれない。 そんなジュリアンがなぜいきなりフレグランスの世界に転身したのか気になるところだが、この日、アテンドしてくださったスタッフの方曰く、彼には「世界には本物が欠けている」という思いがあったらしい。人口香料をまったく使用せず、1つのフレグランスにつき100種類もの植物を自ら調香し、アルゼンチンの歴史や芸術、音楽、自然などのインスピレーションを縦横無尽に編み上げるサステナブルで創造的なフレグランス作りに行き着いたその行動力にあやかりたいなと思った。 店頭に整然とディスプレイされているパフュームコレクションは現在99種類、全てサイズも3種が用意されていて、ひとつひとつの名前が本当に素敵だった。例えば叙景的かつロマンを駆り立てられるネーミングが印象的な「VALLE DE LA LUNA(月の谷)」(23,100円/30ml ※以下全て税込価格)は、アルゼンチン・ボリビア・チリに実在する地名に由来する(ちなみにこのフレグランスは、アイリスの根を切って完全暗所で3年間保管した、非常に高価な原料を使用して生まれたもの。人工的なアイリスを使用するブランドは多々あるが、ジュリアンは「アイリスの美しさは、ほかの原料と合わせたときにアイリス以外の香りを素晴らしく表現できることにある」とナチュラルなアイリスにこだわっているのだとか)。ほかにも、「ELOGIO DE LA SOMBRA(闇を讃える)」(18,700円/30ml)、「DUNAS DE UN CUERPO(肉体の砂丘)」(19,800円/30ml)といった人間の内省や欲望を感じさせるものなど、どのネーミングも俳句に用いられる「二物衝撃」のように、出会うはずのなかったもの同士が結びつくことで成立する魔法の世界が浮かび上がる。なにより、「ジュリアン、楽しんで名づけたんだろうな」と受け取る側もわくわくしながら、自分はどの物語に身を投じたいだろう?と、フレグランスを新しい視点で選ぶことができるのは発見だった。 GINZA SIX店で先行発売されていた倒木の木箱に入った「Le Cave Vintage」(各50,000円代〜)もすごかった。通常アルコールを使っているフレグランスはいつか香りが飛んでしまうものだけれど、このヴィンテージパルファンのコレクションは、蒸留の手法を取り入れることで「孫の代までも」香りが持続する。それを聞いて、自分の大切な誰かがいなくなっても、あるいは自分がこの世界から去ってしまっても、その人が愛した香りが永遠に残るとしたら、それはなんて心強いことなんだろう、と想像したりした。「FUEGUIA 1833」には、そういう力がある。ジュリアンが作った世界を受け取ると、自らの記憶に潜り、忘れかけていた大事なことを思い出して、少し泣きたくなってしまう。 店内には、日本にも縁の深い故シャルロット・ペリアン氏がデザインしたジュリアンお気に入りの低い座面の椅子があるかと思えば、日本の茶室や柱のモチーフが各所にちりばめられ、ほのぐらい照明は香りに集中するための工夫のたまものだ。それらの演出がいやみなく効いた親密で居心地のよい空間は、懐かしい自分を思い出し、新たな世界へと冒険することを手助けする。そんな多層的で幸せな時空間が存在していた。 次は、イタリアのフィレンツェに移動してみる。1921年にグッチオ・グッチが創設し、2015年にアレッサンドロ・ミケーレ氏がクリエイティブ・ディレクターに就任したことでも話題になった「GUCCI(グッチ)」。その時計とジュエリーの専門店が「GUCCI Watch & Jewelry(グッチ ウォッチ & ジュエリー)」(2F)だ。 GINZA SIXの店舗はこの春オープンしたばかりだそうで、2019年にパリ・ヴァンドーム広場にオープンしたジュエリーのショップをイメージした最新のつくりになっている。 GUCCIといえば、創設者のイニシャルを用いたダブルGロゴの印象が強いけれど、それ以外にもブランドにインスピレーションを与えた場所を紹介する「Gucci Places」として中目黒のカセットテープ専門店「waltz」をセレクトしたり、映像作家のペトラ・コリンズとのコラボレーションで、ハンガリーをルーツにする作家が少女時代に過ごした農村での日常の風景が幻想的な夢の世界へとつらなっていく映像作品を発表したりなど、独自の個性を持つショップやアーティストとの取り組みに個人的に惹かれていたこともあり、今回訪れてみることに。 とはいえ、わたしはファッションジュエリーへの好奇心はまだ目覚めのとき。煌めく店内に足を踏み入れ、ほぼすべての商品がショーケースに大切に格納されている様子を見て、「自分で来たいとは言ったものの……」とはじめはちょっぴり緊張した。だけどケースをよくよくのぞきこんでみると、あれ。つっこみどころがあるというか、チャーミングで大胆なデザインをあしらったものも多い。ライオンヘッドと呼ばれる獅子のモチーフ。ダイヤモンドの目を持った、「ふふん」と満足そうな表情の猫。小さなハートやダイヤの模様が文字盤にちりばめられたトランプみたいな時計。親しみやすくも、繊細な煌めきを放つ宝物。 わたしは猫を飼っているのだけれど、それを知ったお店のスタッフの方が「お好きなんじゃないですか?」と提案してくれたのは、表側がオニキスのジェムストーンで裏側に立体の猫が隠れているキャットヘッドの指輪(249,700円)。 「猫をかぶる」の逆じゃん……!と衝撃を受け、思わず「猫をかぶる」はイタリア語でなんていうんだろう?と自分なりに調べたら、"fare la gatta morta"(死んだメス猫のふりをする)が近いみたい。イタリア語が詳しい人に語源を聞いてみたいと思った。 ちなみに時計のコレクションにもフェイスに猫をあしらったデザイン(125,400円)があって、人気があるという「グリップ」シリーズではカタカナで「グッチ」とある日本限定のもの(253,000円)も。 「年を重ねたイタリアの女性が、シミやしわがある首に個性的なファインジュエリーをつけている姿はすごくかっこいい」といつか先輩の編集者が言っていたのが印象に残っていて、帰ってからGUCCIについて調べてみると、ミケーレの祖母もジュエリーのコレクターだったそう。いつかわたしも今よりもっと年を重ねた日に、GUCCIを堂々と身につけてフィレンツェやパリや世界中の街を歩いてみたいと思った。 最後に訪れたのは1914年にジャン・パトゥ氏が自らの名を冠してパリで創業し、2018年9月に「パトゥ」に改名、ギョーム・アンリ氏をアーティスティック・ディレクターとして迎え入れた新生「Patou(パトゥ)」(3F)。 創業当時は、コルセットのないドレスや丈の短いスカート、街中で着用できるスポーツラインなど、制約の多い衣服から女性を解き放つことを掲げ、古い慣習を打破したいと願う女性の味方となっていたブランドだったそうで、背骨が通っていながらも自由の風を感じるGINZA SIXの店は、この春、世界最大規模の売り場面積を誇る店舗としてオープンした。 繊細で洗練されたレース、ロマンティックで爽やかなマリンルック、真実の口のモチーフがついたバッグ。勢揃いしたPatouの服やアクセサリーたちを前に「叶うならば、これ、全部欲しいです……」と脳がふわふわしながらマキシ丈の赤い小花柄のコットンポプリン製のマキシドレス(126,500円)を試着することに。軽い!着崩れない!スカートをつまんでくるりと一回転したくなるぐらい気分があがる!というときめきスイッチが何度もおされてしまったし、パリを拠点に活動した映画監督のアニエス・ヴァルダの作品に登場しそうな「フリルストラップ セーラーハット」(49,500円)は、現代ではあまり見ない形だけれど、思わず手がのびてしまい、かぶったとたんにおかしみと美しさの絶妙な塩梅が快感でにこにこしてしまった。 ブランドを引き継いだギョームが、「日常の中の非日常」や「取るに足らない何か」といった要素を愛しているというのも納得。背筋を伸ばしてくれるエレガントな佇まいでありながら、まるで空想や夢からアイデアを拝借したみたいに不思議な魅力がつまったアイテムたちは、大人が夢を見ることへと梯子を架け、そこに行き着いた人々を歓迎してくれる包容力がある。 どんなふうに、どういう理由で服を着るかは、ひとりひとりの自由だ。そんな中でわたしは、ともすれば世界との接点が失われた環境に慣れてしまいそうな今、それでも遠くや近くにたしかに生きる他者との対話を制限されたわけではないのだと自分をふるいたたせたい。服をまといながら、その先にあるものと対話していきたいと思っている。 Text: Yume Nomura(me and you) Photo: Mariko Kobayashi Edit: Yuka Okada(81)

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自由に外に出ることがままならなくなった2020年の3月頃から、海外の作り手から服を取り寄せることが増えた。夜な夜な(たいてい、「もう服でも買って元気出そ」となるのは深夜なのだ)Instagramをスクロールしては、インディペンデントで素晴らしい服を作る人たちを探したり、海外のセレクトショップのECサイトを巡回したり。前々からしょっちゅう海外に行っていたわけではないのだけれど、それでも「外に出られない、出てはいけない」というプレッシャーまじりの閉塞感から、遠い場所に暮らす人々の生き方を少しでも濃く感じたくなったし、その人たちが見ている風景に触れたくなった。その思いは日ごとに募り、とりつかれたように服を買って、労働のお金はほぼ服に消えた。だけどあの行為は、わたしが生き延びるためにたしかに必要だったのだと思う。

海をこえて届いた服たちには「Thank you for your big support♡」といった手書きのメッセージカードが添えられていることが多かった。作っている人の体温がじんわり伝わり、握手しているような気にも、ハグしているような気にもなったものだ。服をまとえばおのずと未知の作り手の人柄が思われたし、暮らす街に少しだけ足を踏み入れられた気がして、服は、手紙のようにも、乗り物のようにも姿を変えた。

服には、暑さや寒さから身を守ってくれる機能的な面と、アイデンティティや立場を表現する社会的な面が存在する。そしてもうひとつ、あると思う。終わりの見えないこの状況と向き合いながら、それでもなんとか楽しく生きていきたいと願うひとりの人間としてわたしは、服とは人と人をつなぐものでもあると信じたい。そんな気持ちをたずさえながら、今回の企画では、遠くの国の人々や文化、流れる時間に思いを馳せられるGINZA SIXのお店を巡ってみた。

まず、南米パタゴニアにルーツを持つジュリアン・ベデル氏が、アルゼンチンのブエノスアイレスで創業したフレグランスブランド「FUEGUIA 1833 Ginza(フエギア イチハチサンサン ギンザ)」(3F)。ブエノスアイレスと聞いて浮かぶのは、レスリー・チャンとトニー・​レオンが恋人役を演じたウォン・カーウァイ監督の映画『ブエノスアイレス』。神秘をたたえた雄大なイグアスの滝や、土地に根付くタンゴバーの音色を思い出してうっとりしていたら、どうやらジュリアンは建築家や詩人などを擁する芸術一家の生まれで、本人は弦楽器製作者としても活躍していたそう。映画が思い浮かんだのもなにかの……まさかジュリアンの……?導きなのかもしれない。

そんなジュリアンがなぜいきなりフレグランスの世界に転身したのか気になるところだが、この日、アテンドしてくださったスタッフの方曰く、彼には「世界には本物が欠けている」という思いがあったらしい。人口香料をまったく使用せず、1つのフレグランスにつき100種類もの植物を自ら調香し、アルゼンチンの歴史や芸術、音楽、自然などのインスピレーションを縦横無尽に編み上げるサステナブルで創造的なフレグランス作りに行き着いたその行動力にあやかりたいなと思った。

店頭に整然とディスプレイされているパフュームコレクションは現在99種類、全てサイズも3種が用意されていて、ひとつひとつの名前が本当に素敵だった。例えば叙景的かつロマンを駆り立てられるネーミングが印象的な「VALLE DE LA LUNA(月の谷)」(23,100円/30ml ※以下全て税込価格)は、アルゼンチン・ボリビア・チリに実在する地名に由来する(ちなみにこのフレグランスは、アイリスの根を切って完全暗所で3年間保管した、非常に高価な原料を使用して生まれたもの。人工的なアイリスを使用するブランドは多々あるが、ジュリアンは「アイリスの美しさは、ほかの原料と合わせたときにアイリス以外の香りを素晴らしく表現できることにある」とナチュラルなアイリスにこだわっているのだとか)。ほかにも、「ELOGIO DE LA SOMBRA(闇を讃える)」(18,700円/30ml)、「DUNAS DE UN CUERPO(肉体の砂丘)」(19,800円/30ml)といった人間の内省や欲望を感じさせるものなど、どのネーミングも俳句に用いられる「二物衝撃」のように、出会うはずのなかったもの同士が結びつくことで成立する魔法の世界が浮かび上がる。なにより、「ジュリアン、楽しんで名づけたんだろうな」と受け取る側もわくわくしながら、自分はどの物語に身を投じたいだろう?と、フレグランスを新しい視点で選ぶことができるのは発見だった。

GINZA SIX店で先行発売されていた倒木の木箱に入った「Le Cave Vintage」(各50,000円代〜)もすごかった。通常アルコールを使っているフレグランスはいつか香りが飛んでしまうものだけれど、このヴィンテージパルファンのコレクションは、蒸留の手法を取り入れることで「孫の代までも」香りが持続する。それを聞いて、自分の大切な誰かがいなくなっても、あるいは自分がこの世界から去ってしまっても、その人が愛した香りが永遠に残るとしたら、それはなんて心強いことなんだろう、と想像したりした。「FUEGUIA 1833」には、そういう力がある。ジュリアンが作った世界を受け取ると、自らの記憶に潜り、忘れかけていた大事なことを思い出して、少し泣きたくなってしまう。

店内には、日本にも縁の深い故シャルロット・ペリアン氏がデザインしたジュリアンお気に入りの低い座面の椅子があるかと思えば、日本の茶室や柱のモチーフが各所にちりばめられ、ほのぐらい照明は香りに集中するための工夫のたまものだ。それらの演出がいやみなく効いた親密で居心地のよい空間は、懐かしい自分を思い出し、新たな世界へと冒険することを手助けする。そんな多層的で幸せな時空間が存在していた。

次は、イタリアのフィレンツェに移動してみる。1921年にグッチオ・グッチが創設し、2015年にアレッサンドロ・ミケーレ氏がクリエイティブ・ディレクターに就任したことでも話題になった「GUCCI(グッチ)」。その時計とジュエリーの専門店が「GUCCI Watch & Jewelry(グッチ ウォッチ & ジュエリー)」(2F)だ。

GINZA SIXの店舗はこの春オープンしたばかりだそうで、2019年にパリ・ヴァンドーム広場にオープンしたジュエリーのショップをイメージした最新のつくりになっている。

GUCCIといえば、創設者のイニシャルを用いたダブルGロゴの印象が強いけれど、それ以外にもブランドにインスピレーションを与えた場所を紹介する「Gucci Places」として中目黒のカセットテープ専門店「waltz」をセレクトしたり、映像作家のペトラ・コリンズとのコラボレーションで、ハンガリーをルーツにする作家が少女時代に過ごした農村での日常の風景が幻想的な夢の世界へとつらなっていく映像作品を発表したりなど、独自の個性を持つショップやアーティストとの取り組みに個人的に惹かれていたこともあり、今回訪れてみることに。

とはいえ、わたしはファッションジュエリーへの好奇心はまだ目覚めのとき。煌めく店内に足を踏み入れ、ほぼすべての商品がショーケースに大切に格納されている様子を見て、「自分で来たいとは言ったものの……」とはじめはちょっぴり緊張した。だけどケースをよくよくのぞきこんでみると、あれ。つっこみどころがあるというか、チャーミングで大胆なデザインをあしらったものも多い。ライオンヘッドと呼ばれる獅子のモチーフ。ダイヤモンドの目を持った、「ふふん」と満足そうな表情の猫。小さなハートやダイヤの模様が文字盤にちりばめられたトランプみたいな時計。親しみやすくも、繊細な煌めきを放つ宝物。

わたしは猫を飼っているのだけれど、それを知ったお店のスタッフの方が「お好きなんじゃないですか?」と提案してくれたのは、表側がオニキスのジェムストーンで裏側に立体の猫が隠れているキャットヘッドの指輪(249,700円)。

「猫をかぶる」の逆じゃん……!と衝撃を受け、思わず「猫をかぶる」はイタリア語でなんていうんだろう?と自分なりに調べたら、"fare la gatta morta"(死んだメス猫のふりをする)が近いみたい。イタリア語が詳しい人に語源を聞いてみたいと思った。

ちなみに時計のコレクションにもフェイスに猫をあしらったデザイン(125,400円)があって、人気があるという「グリップ」シリーズではカタカナで「グッチ」とある日本限定のもの(253,000円)も。

「年を重ねたイタリアの女性が、シミやしわがある首に個性的なファインジュエリーをつけている姿はすごくかっこいい」といつか先輩の編集者が言っていたのが印象に残っていて、帰ってからGUCCIについて調べてみると、ミケーレの祖母もジュエリーのコレクターだったそう。いつかわたしも今よりもっと年を重ねた日に、GUCCIを堂々と身につけてフィレンツェやパリや世界中の街を歩いてみたいと思った。

最後に訪れたのは1914年にジャン・パトゥ氏が自らの名を冠してパリで創業し、2018年9月に「パトゥ」に改名、ギョーム・アンリ氏をアーティスティック・ディレクターとして迎え入れた新生「Patou(パトゥ)」(3F)。

創業当時は、コルセットのないドレスや丈の短いスカート、街中で着用できるスポーツラインなど、制約の多い衣服から女性を解き放つことを掲げ、古い慣習を打破したいと願う女性の味方となっていたブランドだったそうで、背骨が通っていながらも自由の風を感じるGINZA SIXの店は、この春、世界最大規模の売り場面積を誇る店舗としてオープンした。

繊細で洗練されたレース、ロマンティックで爽やかなマリンルック、真実の口のモチーフがついたバッグ。勢揃いしたPatouの服やアクセサリーたちを前に「叶うならば、これ、全部欲しいです……」と脳がふわふわしながらマキシ丈の赤い小花柄のコットンポプリン製のマキシドレス(126,500円)を試着することに。軽い!着崩れない!スカートをつまんでくるりと一回転したくなるぐらい気分があがる!というときめきスイッチが何度もおされてしまったし、パリを拠点に活動した映画監督のアニエス・ヴァルダの作品に登場しそうな「フリルストラップ セーラーハット」(49,500円)は、現代ではあまり見ない形だけれど、思わず手がのびてしまい、かぶったとたんにおかしみと美しさの絶妙な塩梅が快感でにこにこしてしまった。

ブランドを引き継いだギョームが、「日常の中の非日常」や「取るに足らない何か」といった要素を愛しているというのも納得。背筋を伸ばしてくれるエレガントな佇まいでありながら、まるで空想や夢からアイデアを拝借したみたいに不思議な魅力がつまったアイテムたちは、大人が夢を見ることへと梯子を架け、そこに行き着いた人々を歓迎してくれる包容力がある。

どんなふうに、どういう理由で服を着るかは、ひとりひとりの自由だ。そんな中でわたしは、ともすれば世界との接点が失われた環境に慣れてしまいそうな今、それでも遠くや近くにたしかに生きる他者との対話を制限されたわけではないのだと自分をふるいたたせたい。服をまといながら、その先にあるものと対話していきたいと思っている。

Text: Yume Nomura(me and you) Photo: Mariko Kobayashi Edit: Yuka Okada(81)

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銀座で開く新しいおしゃれの扉 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124797 Sat, 15 May 2021 01:00:39 +0000 no 人生のピークを60歳と定めている私にとって、40代はまだまだひよっこ。イタリアンマダムのような日に焼けたゴージャスな肌に、ゴールドのチェーンネックレスを何重にも巻き、スジ足と言われる引き締まった脚でヒールを履きこなす。シワや白髪、デコルテのそばかす(シミ?)さえも勲章のようにまとい、大人の色気を自信満々に放つ。若輩者は太刀打ちできないような迫力のある存在感と大人な文化はまだ日本には根付いてはいない。 小手先のおしゃれだけじゃない、本当に手に入れたいのはその先にある何か。装うことに対するフィロソフィーは、生き方やライフスタイルと決して切り離すことはできない。またその逆も然り。もちろん一足飛びにはその境地にたどり着けるわけもないが、目標とする60歳までに幸いまだ時間はある。 10年後自分はどんな女性像を手に入れたいだろうか? そんなことを妄想したい日はヒントを探しに大人のためのワンダーランドGINZA SIXがちょうどいい。今日はイタリアブランド縛りで気になる店を巡ることにする。 まず訪れたのは、南イタリアの陽気なムードと地中海をイメージした内装で個性を放つ「Gente di Mare(ジェンテ ディ マーレ)」(4F)。イタリアブランドといえばクラシカルなイメージが強いが、こちらは今どきなイタリアンカジュアルブランドが勢揃いする、日本人にも着こなしやすいセレクトショップ。以前はメンズが中心だったが、今年の2月にユニセックスな店舗へとリニューアルを遂げた。ゆったりとした店内には、ファッションはもちろん雑貨やアクセサリー、インテリア小物などがディスプレイされ、トータルで楽しめるようになっている。 新しく加わったというレディースコーナーへ。アスペジやチルコロ、デュノなど人気ブランドが充実していて、大人の夏スタイルに使いやすそうなアイテムが豊富だ。 若い頃はストリート誌の編集部に勤め、その後フリーになってからもカジュアル畑を歩いてきた私にとって、年齢を重ねたからといって必ずしもコンサバティブなスタイルへ移行するわけではない。それでもただのカジュアルスタイルでは顔も体もついて行かないと感じている40代にとって、こうした洗練された大人のカジュアルブランドとの出会いはとても貴重だ。おしゃれの幅が一気に広がる気がしてうれしい。 チルコロで定番人気だというストレッチコットンジャケット(59,400円 ※以下全て税込価格)をはおらせていただく。これまでロング丈のボクシーなメンズ風ジャケットばかり着ていた私にとって、このコンパクトさと軽い着心地はかなり新鮮。やはりイタリアンマダムはジャケットでさえも女らしさを意識したシルエットで、カーヴィに着こなすのだと再認識。かっちり真面目になりすぎず、ストレスフリーな着心地もいい。リモート会議など上半身だけできちんと感を表現することが多い昨今、自宅でも快適に取り入れられそうだ。 店内には洋服はもちろん小物類もイタリアブランドが充実している。シンプルなデザインとカラーリングでどんな服にも合わせやすいと人気上昇中のスニーカーブランド「フィリップモデル」(59,400円〜)も多数セレクト。スポーツブランドのカジュアルさとは一線を画すたたずまいは、大人のこなれ感を演出してくれそう。6月23日からはGINZA SIXの3階でPOP UPも開催される予定だそうだ。 海のそばで暮らしている私にとって、ストール(25,300円)などのビーチで映える布類は何枚あっても困らない。遊び心や可愛げのある色柄と巻きやすく軽い質感のものは、首や頭に巻いて日よけ対策に、またカゴバッグに入れてアクセントにするなど大活躍だ。自宅で洗えてすぐ乾くのも夏にちょうどいい。 私物のバングルとも馴染みすぎてこのまま付けて帰ってしまいそうなバッファローホーンの細バングルは「ランドシヌール」のもので一本1,430円というリーズナブルさ。多連付けしても迫力が出過ぎず、手持ちのバングルや時計とも組み合わせやすそう。繊細な色みがしゃれた印象に見せてくれる。薬指につけたリング(3,850円)もビッグサイズながら焼けた肌に馴染み、上品なカジュアルさを演出してくれる。 他にもカラフルな絵付けが楽しいフィレンツェのキッチン雑貨やカプリ島の高級フレグランス「カルトゥージア」なども購入可能。ぐるりと店内を見て回るだけでも異国情緒を満喫できるよう考えられている。プレゼントを探す時にもチェックしたい。 続いて、実用性が必要な靴の場合、どんなおしゃれで履きたくとも年齢とともに諦めてしまうデザインがある一方で、女としての矜持を感じるイタリアンマダムたちの足元に少しでも近づきたいと思い、やはり今年の2月に満を持してオープンした「Gianvito Rossi(ジャンヴィト ロッシ)」(2F)を訪れることに。 シューズ界のマエストロを父に持つジャンヴィト ロッシ氏がデザイナーを務める人気ブランドだが、オンリーショップを構えるのは都内ではここだけ。これまでセレクトショップやデパートの靴売り場でコレクションの一部を購入できたが、独自の世界観を体感できるこちらはジャンヴィトファンならずとも絶対に見逃せないスポットである。 エレガントで女らしく、それでいて今どきなエッジを効かせたデザインや、緻密に計算されたハンドメイドならではの履き心地のよさが両立するジャンヴィト ロッシの靴は「走れるパンプス」として名高く、女性誌で特集されることも多い。ペタンコ靴ばかりですっかりふくらはぎの筋肉が退化してしまった私も、こちらのパンプスなら履けるのではと試着させていただくことに。 着用したのはブランドを代表するヒール高8.5cmのパンプス(86,900円)。体重を支えるスティレットヒールのほっそりした美しい見た目に反し、安定感抜群で全くグラつかない。高いヒールで歩く時特有の余計な力がかからず、ヒールを履いている緊張感がほとんどない。「走れる」という評価にも納得だ。 イタリアの石畳の上をパンプスで歩くのは東京のアスファルトのそれよりも何倍も大変だと思うが、妙齢のマダムたちが現役感たっぷりに闊歩できるのは、長い歴史を持つイタリアのクラフツマンシップが若い世代のデザイナーズブランドにもしっかりと継承されているからだろう。 着用したのはスウェード素材のダークオリーブ。辛口ながらニュアンスを含んだ絶妙な色合いにうっとり。甘くないのにセンシュアル。大人のいい女度をアップしてくれること間違いなしだ。 スウェード以外にスムースレザー、パテントと3種類のレザーに15色以上のカラーバリエーションが揃う。色出しの美しさにしばし目を奪われる。一足に決めるには数日かかりそうだ。 とはいえ仕事柄デイリーに履く靴は楽ちんであることがファーストプライオリティである私は、安心感のあるフラット靴も何足か試させていただいた。フラットでもきれいに見えるフォルムは、会ったことのないジャンヴィトさんにブラボーとお伝えしたくなるほど。こちらは人気の「プレキシィ」のフラットタイプ(88,000円)。 牛革と透明なPVCを組み合わせたデザインは、肌の抜け感があり、フラット靴にありがちな野暮ったさは皆無。ポインテッドトゥなのもスマートだ。改良を重ねたというこのPVCは足への当たりがとても柔らかく、レザー以外の素材にも妥協がないのはさすがで、高級ブランドへの信頼感がさらに高まる。気温の上昇とともに柔らかくなるから、素足で履く真夏はさらに快適にフィットするだろう。 カジュアルなストラップサンダル(83,600円)もジャンヴィト ロッシの手にかかればしゃれ感倍増だ。夏の鉄板カラー・メタリックシルバーは白よりも汚れが目立たず、モダンで華やかながら合わせる服をえらばない万能色。足首周りのストラップはゴムになっているので着脱にストレスがなく、せっかちな私にとってはうれしい限り。 ナッパレザーを編んだストラップが特徴的なデザインとポップな色が可愛すぎる新作「トロピア」もディスプレイ。まさに大人の遊び心が満載! さらに、日本ではまだ広く知られてはいないが、本質を見極めることや自分だけの個性を重要視するイタリアンマダムたちに人気のバッグブランドがあるとお聞きし、1928年創業のミラノの老舗「SERAPIAN(セラピアン)」(3F)にも立ち寄ってみた。鮮やかな内装にあしらわれた「モザイコ」ウォールの圧倒的な美しさにしばし目を奪われる。 こちらの店舗では日本で唯一セラピアンのビスポークサービスが受けられ、何百通りものラムレザーのコンビネーションから好みのバッグをフルオーダーすることができるという。初回の打ち合わせはイタリアの職人とZOOMで繋いで行うそうで、なんだかとってもワクワクする。完成まで約4か月かかるが、特別な逸品を手にする贅沢はそのくらいの時間の経過がちょうどよい。 ちなみに私が座っているこちらの椅子にもモザイコ柄があしらわれていて、さりげなくラグジュアリーさが漂う店内。イタリアでは車の内装をフルオーダーする強者もいるそうで、一体どれくらいの月日と金額がかかるかなど、庶民には想像もできない。 このモザイコ柄だが、近くで見れば見るほどその繊細さに驚かされる。細かな切れ目の中に短冊状の細長いレザーを一本ずつ編み込んでいくのだが、たわみや緩みが出てはいけないし、力が入りすぎると土台のレザーに亀裂が入ってしまいそう。 ミラノの工房では4人の熟練したクラフツマンがいて、既製品の中にも彼らのちょっとした遊び心や個性が加えられることもあるそうだ。つまり既製品でも世界にたったひとつの逸品を手にするラッキーな人がいるということ! 現在特に人気なのがコンパクトなフォルムの中にモザイコ柄を堪能できるモダンな「ぺトラ」。マチがしっかりあり小さめサイズながら身の回りのものをきちんと収納できるのもいい。取り外しができるショルダーストラップがついているので、アクティブなムードでも楽しむことができる。 ワントーンのモザイコ柄も美しいことこの上なし。これだけ上質なレザーと職人技が組み合わせされば相当お高くなるのでは、と身構えてしまったが、こちらは147,000円とうれしい価格設定。本物の上質さを知るマダムたちに支持されているのも納得だ。私もさっそく“欲しいバッグリスト”に追加した。 リュクスなムードの小物類も豊富にラインナップ。ちょうどお財布を探していた私はピンクやオレンジの色鮮やかなモザイコ柄のコンパクト財布が気になってしょうがない。 コロナがきっかけで生まれたマスクケース(各15,400円)はプレゼントとしても人気だという。飲食中にこんなしゃれたマスクケースがさっと出てきたら思わず惚れてしまいそうだが、自分だと大量の領収書を入れてパンパンに膨らませている様子が目に浮かび思わず苦笑する。本物のエレガンスにはまだまだ遠い道のりだ。 これまで好きだったものが全く似合わなくなる「おしゃれ迷子」になる人がアラフォー世代には多いというが、それは経験値を重ねて自分をよく知っていると思うからこそ、陥りがちなことではないかと思う。「年を取ったから似合わない」のではなく、「次の世代にステージが上がった」時、どんな自分になっていたいかをイメージすることが重要で、それは新しいおしゃれの扉を開くきっかけにもなる。そんな妄想をするのにGINZA SIXほど刺激を与えてくれる場所はないように思う。理想の10年後を探す旅はまだまだ続く。 Text: Asami Tsubota Photo: Makiko Obuchi Edit: Yuka Okada(81)

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人生のピークを60歳と定めている私にとって、40代はまだまだひよっこ。イタリアンマダムのような日に焼けたゴージャスな肌に、ゴールドのチェーンネックレスを何重にも巻き、スジ足と言われる引き締まった脚でヒールを履きこなす。シワや白髪、デコルテのそばかす(シミ?)さえも勲章のようにまとい、大人の色気を自信満々に放つ。若輩者は太刀打ちできないような迫力のある存在感と大人な文化はまだ日本には根付いてはいない。

小手先のおしゃれだけじゃない、本当に手に入れたいのはその先にある何か。装うことに対するフィロソフィーは、生き方やライフスタイルと決して切り離すことはできない。またその逆も然り。もちろん一足飛びにはその境地にたどり着けるわけもないが、目標とする60歳までに幸いまだ時間はある。

10年後自分はどんな女性像を手に入れたいだろうか? そんなことを妄想したい日はヒントを探しに大人のためのワンダーランドGINZA SIXがちょうどいい。今日はイタリアブランド縛りで気になる店を巡ることにする。

まず訪れたのは、南イタリアの陽気なムードと地中海をイメージした内装で個性を放つ「Gente di Mare(ジェンテ ディ マーレ)」(4F)。イタリアブランドといえばクラシカルなイメージが強いが、こちらは今どきなイタリアンカジュアルブランドが勢揃いする、日本人にも着こなしやすいセレクトショップ。以前はメンズが中心だったが、今年の2月にユニセックスな店舗へとリニューアルを遂げた。ゆったりとした店内には、ファッションはもちろん雑貨やアクセサリー、インテリア小物などがディスプレイされ、トータルで楽しめるようになっている。

新しく加わったというレディースコーナーへ。アスペジやチルコロ、デュノなど人気ブランドが充実していて、大人の夏スタイルに使いやすそうなアイテムが豊富だ。

若い頃はストリート誌の編集部に勤め、その後フリーになってからもカジュアル畑を歩いてきた私にとって、年齢を重ねたからといって必ずしもコンサバティブなスタイルへ移行するわけではない。それでもただのカジュアルスタイルでは顔も体もついて行かないと感じている40代にとって、こうした洗練された大人のカジュアルブランドとの出会いはとても貴重だ。おしゃれの幅が一気に広がる気がしてうれしい。

チルコロで定番人気だというストレッチコットンジャケット(59,400円 ※以下全て税込価格)をはおらせていただく。これまでロング丈のボクシーなメンズ風ジャケットばかり着ていた私にとって、このコンパクトさと軽い着心地はかなり新鮮。やはりイタリアンマダムはジャケットでさえも女らしさを意識したシルエットで、カーヴィに着こなすのだと再認識。かっちり真面目になりすぎず、ストレスフリーな着心地もいい。リモート会議など上半身だけできちんと感を表現することが多い昨今、自宅でも快適に取り入れられそうだ。

店内には洋服はもちろん小物類もイタリアブランドが充実している。シンプルなデザインとカラーリングでどんな服にも合わせやすいと人気上昇中のスニーカーブランド「フィリップモデル」(59,400円〜)も多数セレクト。スポーツブランドのカジュアルさとは一線を画すたたずまいは、大人のこなれ感を演出してくれそう。6月23日からはGINZA SIXの3階でPOP UPも開催される予定だそうだ。

海のそばで暮らしている私にとって、ストール(25,300円)などのビーチで映える布類は何枚あっても困らない。遊び心や可愛げのある色柄と巻きやすく軽い質感のものは、首や頭に巻いて日よけ対策に、またカゴバッグに入れてアクセントにするなど大活躍だ。自宅で洗えてすぐ乾くのも夏にちょうどいい。

私物のバングルとも馴染みすぎてこのまま付けて帰ってしまいそうなバッファローホーンの細バングルは「ランドシヌール」のもので一本1,430円というリーズナブルさ。多連付けしても迫力が出過ぎず、手持ちのバングルや時計とも組み合わせやすそう。繊細な色みがしゃれた印象に見せてくれる。薬指につけたリング(3,850円)もビッグサイズながら焼けた肌に馴染み、上品なカジュアルさを演出してくれる。

他にもカラフルな絵付けが楽しいフィレンツェのキッチン雑貨やカプリ島の高級フレグランス「カルトゥージア」なども購入可能。ぐるりと店内を見て回るだけでも異国情緒を満喫できるよう考えられている。プレゼントを探す時にもチェックしたい。

続いて、実用性が必要な靴の場合、どんなおしゃれで履きたくとも年齢とともに諦めてしまうデザインがある一方で、女としての矜持を感じるイタリアンマダムたちの足元に少しでも近づきたいと思い、やはり今年の2月に満を持してオープンした「Gianvito Rossi(ジャンヴィト ロッシ)」(2F)を訪れることに。

シューズ界のマエストロを父に持つジャンヴィト ロッシ氏がデザイナーを務める人気ブランドだが、オンリーショップを構えるのは都内ではここだけ。これまでセレクトショップやデパートの靴売り場でコレクションの一部を購入できたが、独自の世界観を体感できるこちらはジャンヴィトファンならずとも絶対に見逃せないスポットである。

エレガントで女らしく、それでいて今どきなエッジを効かせたデザインや、緻密に計算されたハンドメイドならではの履き心地のよさが両立するジャンヴィト ロッシの靴は「走れるパンプス」として名高く、女性誌で特集されることも多い。ペタンコ靴ばかりですっかりふくらはぎの筋肉が退化してしまった私も、こちらのパンプスなら履けるのではと試着させていただくことに。

着用したのはブランドを代表するヒール高8.5cmのパンプス(86,900円)。体重を支えるスティレットヒールのほっそりした美しい見た目に反し、安定感抜群で全くグラつかない。高いヒールで歩く時特有の余計な力がかからず、ヒールを履いている緊張感がほとんどない。「走れる」という評価にも納得だ。

イタリアの石畳の上をパンプスで歩くのは東京のアスファルトのそれよりも何倍も大変だと思うが、妙齢のマダムたちが現役感たっぷりに闊歩できるのは、長い歴史を持つイタリアのクラフツマンシップが若い世代のデザイナーズブランドにもしっかりと継承されているからだろう。

着用したのはスウェード素材のダークオリーブ。辛口ながらニュアンスを含んだ絶妙な色合いにうっとり。甘くないのにセンシュアル。大人のいい女度をアップしてくれること間違いなしだ。

スウェード以外にスムースレザー、パテントと3種類のレザーに15色以上のカラーバリエーションが揃う。色出しの美しさにしばし目を奪われる。一足に決めるには数日かかりそうだ。

とはいえ仕事柄デイリーに履く靴は楽ちんであることがファーストプライオリティである私は、安心感のあるフラット靴も何足か試させていただいた。フラットでもきれいに見えるフォルムは、会ったことのないジャンヴィトさんにブラボーとお伝えしたくなるほど。こちらは人気の「プレキシィ」のフラットタイプ(88,000円)。

牛革と透明なPVCを組み合わせたデザインは、肌の抜け感があり、フラット靴にありがちな野暮ったさは皆無。ポインテッドトゥなのもスマートだ。改良を重ねたというこのPVCは足への当たりがとても柔らかく、レザー以外の素材にも妥協がないのはさすがで、高級ブランドへの信頼感がさらに高まる。気温の上昇とともに柔らかくなるから、素足で履く真夏はさらに快適にフィットするだろう。

カジュアルなストラップサンダル(83,600円)もジャンヴィト ロッシの手にかかればしゃれ感倍増だ。夏の鉄板カラー・メタリックシルバーは白よりも汚れが目立たず、モダンで華やかながら合わせる服をえらばない万能色。足首周りのストラップはゴムになっているので着脱にストレスがなく、せっかちな私にとってはうれしい限り。

ナッパレザーを編んだストラップが特徴的なデザインとポップな色が可愛すぎる新作「トロピア」もディスプレイ。まさに大人の遊び心が満載!

さらに、日本ではまだ広く知られてはいないが、本質を見極めることや自分だけの個性を重要視するイタリアンマダムたちに人気のバッグブランドがあるとお聞きし、1928年創業のミラノの老舗「SERAPIAN(セラピアン)」(3F)にも立ち寄ってみた。鮮やかな内装にあしらわれた「モザイコ」ウォールの圧倒的な美しさにしばし目を奪われる。

こちらの店舗では日本で唯一セラピアンのビスポークサービスが受けられ、何百通りものラムレザーのコンビネーションから好みのバッグをフルオーダーすることができるという。初回の打ち合わせはイタリアの職人とZOOMで繋いで行うそうで、なんだかとってもワクワクする。完成まで約4か月かかるが、特別な逸品を手にする贅沢はそのくらいの時間の経過がちょうどよい。

ちなみに私が座っているこちらの椅子にもモザイコ柄があしらわれていて、さりげなくラグジュアリーさが漂う店内。イタリアでは車の内装をフルオーダーする強者もいるそうで、一体どれくらいの月日と金額がかかるかなど、庶民には想像もできない。

このモザイコ柄だが、近くで見れば見るほどその繊細さに驚かされる。細かな切れ目の中に短冊状の細長いレザーを一本ずつ編み込んでいくのだが、たわみや緩みが出てはいけないし、力が入りすぎると土台のレザーに亀裂が入ってしまいそう。

ミラノの工房では4人の熟練したクラフツマンがいて、既製品の中にも彼らのちょっとした遊び心や個性が加えられることもあるそうだ。つまり既製品でも世界にたったひとつの逸品を手にするラッキーな人がいるということ!

現在特に人気なのがコンパクトなフォルムの中にモザイコ柄を堪能できるモダンな「ぺトラ」。マチがしっかりあり小さめサイズながら身の回りのものをきちんと収納できるのもいい。取り外しができるショルダーストラップがついているので、アクティブなムードでも楽しむことができる。

ワントーンのモザイコ柄も美しいことこの上なし。これだけ上質なレザーと職人技が組み合わせされば相当お高くなるのでは、と身構えてしまったが、こちらは147,000円とうれしい価格設定。本物の上質さを知るマダムたちに支持されているのも納得だ。私もさっそく“欲しいバッグリスト”に追加した。

リュクスなムードの小物類も豊富にラインナップ。ちょうどお財布を探していた私はピンクやオレンジの色鮮やかなモザイコ柄のコンパクト財布が気になってしょうがない。

コロナがきっかけで生まれたマスクケース(各15,400円)はプレゼントとしても人気だという。飲食中にこんなしゃれたマスクケースがさっと出てきたら思わず惚れてしまいそうだが、自分だと大量の領収書を入れてパンパンに膨らませている様子が目に浮かび思わず苦笑する。本物のエレガンスにはまだまだ遠い道のりだ。

これまで好きだったものが全く似合わなくなる「おしゃれ迷子」になる人がアラフォー世代には多いというが、それは経験値を重ねて自分をよく知っていると思うからこそ、陥りがちなことではないかと思う。「年を取ったから似合わない」のではなく、「次の世代にステージが上がった」時、どんな自分になっていたいかをイメージすることが重要で、それは新しいおしゃれの扉を開くきっかけにもなる。そんな妄想をするのにGINZA SIXほど刺激を与えてくれる場所はないように思う。理想の10年後を探す旅はまだまだ続く。

Text: Asami Tsubota Photo: Makiko Obuchi Edit: Yuka Okada(81)

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出会いの季節、「はじめまして」の3軒へ https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124798 Thu, 22 Apr 2021 02:44:42 +0000 no これまで何度「はじめまして」と言ったかわからない。憧れていた雑誌の世界に6年前、何の経験もないまま飛び込んで以来、会社やチームに属さず1人、フリーランスで働いていると、「はじめまして」で始まる現場はとても多くて(取材相手にしても、仕事仲間にしても)、たぶん何百回と言ってきただろうけれども、一向に慣れない。というか、言う度に緊張する。でも、新たな出合いがもたらす世界はいつも想像以上のおもしろさが広がっていて心が弾む。あらためて「はじめまして」っていい言葉だなと思いつつ、今回は新たにGINZA SIXに仲間入りした3軒を訪ねてみることにした。 初めに向かったのはGINZA SIX4周年の大規模リニューアルの口火を切って2月末にオープンした「Pasand by ne Quittez pas(パサンド バイ ヌキテパ)」(4F)。旅をライフワークにする神真美さんが世界各国で出合ったものから着想し、インドの手仕事を通じてデイリーウェアに集約したファッションブランド「ne Quittez pas」がキュレーションしたライフスタイルブランドショップだ。ヒンドゥー語で“お気に入り”を意味する「Pasand」が示すように、異国の忘れられない風景や色、音、光といったさまざまなお気に入りを、ファッションだけでなく、インテリア雑貨やアートなど暮らしにまつわるアイテムを通して提案。銀座のど真ん中でエキゾチックな世界観を体感できる。 生産の拠点をインドに置く「ne Quittez pas」の洋服は、織り、編み、刺繍といった手仕事の妙が光る。金を薄く打ち伸ばした薄片で繊細な模様を描く、箔押し技術もその一つ。「Gold Flower Panel Dress」(24,200円 ※以下全て税込価格)はアラベスク柄を箔プリントで表現したもので、ここまで細かい箔押しを全面にあしらうのは熟練した職人でないとできないそうだ。涼しげなミントカラーのインド綿にキラキラきらめくゴールド、気分がアガる。 気になるものがありすぎて目移りしながらも、かわいいワンピース「Silk Stripe Crossover Gown」(41,600円)を試着させてもらった。シルクのワンピースは柔らかで軽いのに、保温性があって一枚で着ても肌寒くない。胸下からフレアに広がっているので脚を長く見せてくれるのもありがたい。着ていて楽なのに、きちんとして見えるって最高だと思う。カシュクールタイプだから、前を開いた状態で着ればガウンにもなる。急な来客時もパジャマの上にこれをサッと羽織ればEverything’ s gonna be alright. 店内にはビーズ刺繍のパーティバッグ(ハンドルがブレスレットみたいになっていてすごくかわいい)、カラフルなジュエリーボックスなどのファッション雑貨もたくさんある。インドのシルクサリーの生地で作ったオリジナルのカンフーシューズ(6,000円)は軽くてストレスフリーな履き心地でルームシューズにしてもいいし、持ち運びもしやすいからスタジオ撮影のときに持参するのも良さそうだ。 一方、ショップ右の青いフカフカの絨毯が敷かれた一角にはジュエリーブランド「UPALA(ウパラ)」のコーナーも。インドのマハラニ王妃が身につけていた華麗なジュエリーから着想を得てモダンにリデザインしていて、天然石と18Kのイエローゴールドを使用。インドの職人が一つずつ手作りで仕上げている。ブルークォーツやピンクトルマリン、アメジストにペリドット……カラフルで表情が一つずつ違う美しい天然石は見ているだけで心が潤う。 気になるブレスレットやリングをアレもコレも、と着けさせていただいたら、手がもうパラダイス状態。存在感抜群のムーンストーンのリング(242,000円)や形の異なる天然石をフクリン留めで一周つなげたエタニティリング(99,000円)がハッピーな気持ちにさせてくれる。Gem Stoneのブレスレット(5,000円)はジュエリー好きの女性へのギフトとしてもよろこばれそうだ。 そういうわけで手元の寄りを機嫌よく眺めていたら、想像以上に肌の粗が目立っていて、顔のコンディションまで気になってきたので(苦笑)、3月にオープンした新店舗「AXXZIA(アクシージア)」(B1F)へ向かった。こちらはアジア発のスキンケアブランドで、GINZA SIX店がブランド初の直営店舗。 「アクシージア」は目もとケアに特化したシリーズ「アクシージア ビューティアイズ」が有名。“エステのアイケアを自宅でも”をコンセプトにした、美容液をたっぷり含んだ贅沢な「ビューティアイズ エッセンスシート プレミアム」(8,580円)は、洋梨のようなみずみずしさ! 綿花の種のうぶ毛を使った極薄シートがしっかりと目もとにピタッと密着してくれるおかげで、つけている間、液だれしないという(すごい!)。 上まぶたから頬の三角ゾーンまでまるっとフィットする形状で、目のまわりのくすみやまぶたのハリなどに効果的。マスク生活になって、目の印象が大事になったから、スペシャルケアちゃんとしないと!と気合も入る。 さらに目もとケア美顔器「メイト フォー アイズ」(18,480円)なるものも。角質層まで美容液をしっかり浸透させてくれる低周波と、表情筋を優しく温めてくれるラジオ波の2つの機能を搭載。マスクの上から美顔器を当てることで、目もとまわりに必要な美容成分をしっかりと届けてくれる。 実際に手もとでラジオ波をあてていただいたが、たしかにじんわり温かい。持ちやすいペン型タイプというのもいい。目もとだけじゃなくて口もとやフェイスライン、ほうれい線まわりまで顔全体にも使えるそうで、一家に一台美顔器を選ぶなら、もうこの一択では!? 店内ではカウンセリングコーナーもあり、目もとや肌の悩みにも丁寧に応えてくれる。 カウンターで紹介してもらった新商品のリキッドルーセント 3D(5,280円)はなんと塗った瞬間、リキッドからパウダーに変わるというもので、肌がサラッサラ、べたつかない。仕上げのお粉が不要で、パウダーファンデーションにありがちな粉浮きもしないから、マスクにもつきにくい。マスクにべったりファンデーションがつくのが嫌なので基本ノーファンデを貫いていたが、これならファンデ復活したい! そして最後は、2月に登場した京都発オーガニックナッツ・グラノーラ専門店の「Cocolo Kitchen KYOTO(ココロキッチン キョウト)」(B2F)へ。何を隠そう、というか全然隠してないけど、私の手土産の定番はナッツだ。常温保存ができて、日持ちするし、重くない。そして、咀嚼欲求の高い人も満足させてくれる食感。しかも、こちらは有機栽培のナッツに京都らしいフレーバーを掛け合わせたユニークなメニューがたくさんある。 ニッキが香る「八ツ橋ナッツ」、宇治の最高級有機抹茶を使用した「抹茶ナッツ」、九重味噌の無添加白味噌を使った「白味噌ナッツ」、私もふだんから愛飲している小川珈琲のコーヒー豆を使用した「珈琲ナッツ」など、頬張るだけでもう口の中が京都。おいでやす。 人気No.1は、京都・祇園で300年続く「原了郭」の黒七味ナッツ(1,290円)。 1箱購入し、家でゆっくり食べようと思ったが、原稿を1本書く前にあっという間完食してしまった。ピリッとほどよい辛さがクセになって、やめられないとまらない。ちなみに、私は地方などに出かけた際によく現地のお土産を買い損ねるので、行き先が京都なら、これからはここで調達しようと心に決めた。 「食べ物は冒険できない」という人も安心してほしい。コロナにマケズ、店頭では丁寧に1点ずつパウチした試食用ナッツも用意されている。ちなみにこちらでは東京店限定フレーバーとして、GINZA SIXのお膝元である銀座が誇る老舗インド料理店「ナイルレストラン」とコラボしたカレー味のナッツも! 逆に京都の友人にプレゼントするのも良さそうだ。 オリジナルのグラノーラもチェック。「チャイスぺシャル」(1,190円)、自然な甘さの「プレミアムメープル」(1,290円)、アイスのトッピングにも合う「クラシックココア」(1,190円)など、これまた気になるものが目白押し。 「全部買って帰りたい」と思いつつ、この日は「京都柚子味噌」(1,190円)と「スパイシーソルト」(1,190円)をセレクトした。スタッフの方からは「スパイシーソルトはクリームチーズと合わせてもおいしいですし。塩味が効いているから、サラダやカルパッチョに振りかけてもいいですよ」と教えてもらった。 「かわいいワンピースを着て目元マスクで潤っておいしいナッツを頬張れば最高のおうち時間になるのでは」とニヤニヤ。素敵なモノとの出会いは「ただいま」の後の時間も底上げしてくれる。この日、たくさんの「はじまめまして」を交わしたGINZA SIXには心弾むような世界が広がっていた。 Text: Mariko Uramoto Photos: Kaoru Yamada Edit: Yuka Okada(81)

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これまで何度「はじめまして」と言ったかわからない。憧れていた雑誌の世界に6年前、何の経験もないまま飛び込んで以来、会社やチームに属さず1人、フリーランスで働いていると、「はじめまして」で始まる現場はとても多くて(取材相手にしても、仕事仲間にしても)、たぶん何百回と言ってきただろうけれども、一向に慣れない。というか、言う度に緊張する。でも、新たな出合いがもたらす世界はいつも想像以上のおもしろさが広がっていて心が弾む。あらためて「はじめまして」っていい言葉だなと思いつつ、今回は新たにGINZA SIXに仲間入りした3軒を訪ねてみることにした。

初めに向かったのはGINZA SIX4周年の大規模リニューアルの口火を切って2月末にオープンした「Pasand by ne Quittez pas(パサンド バイ ヌキテパ)」(4F)。旅をライフワークにする神真美さんが世界各国で出合ったものから着想し、インドの手仕事を通じてデイリーウェアに集約したファッションブランド「ne Quittez pas」がキュレーションしたライフスタイルブランドショップだ。ヒンドゥー語で“お気に入り”を意味する「Pasand」が示すように、異国の忘れられない風景や色、音、光といったさまざまなお気に入りを、ファッションだけでなく、インテリア雑貨やアートなど暮らしにまつわるアイテムを通して提案。銀座のど真ん中でエキゾチックな世界観を体感できる。

生産の拠点をインドに置く「ne Quittez pas」の洋服は、織り、編み、刺繍といった手仕事の妙が光る。金を薄く打ち伸ばした薄片で繊細な模様を描く、箔押し技術もその一つ。「Gold Flower Panel Dress」(24,200円 ※以下全て税込価格)はアラベスク柄を箔プリントで表現したもので、ここまで細かい箔押しを全面にあしらうのは熟練した職人でないとできないそうだ。涼しげなミントカラーのインド綿にキラキラきらめくゴールド、気分がアガる。

気になるものがありすぎて目移りしながらも、かわいいワンピース「Silk Stripe Crossover Gown」(41,600円)を試着させてもらった。シルクのワンピースは柔らかで軽いのに、保温性があって一枚で着ても肌寒くない。胸下からフレアに広がっているので脚を長く見せてくれるのもありがたい。着ていて楽なのに、きちんとして見えるって最高だと思う。カシュクールタイプだから、前を開いた状態で着ればガウンにもなる。急な来客時もパジャマの上にこれをサッと羽織ればEverything’ s gonna be alright.

店内にはビーズ刺繍のパーティバッグ(ハンドルがブレスレットみたいになっていてすごくかわいい)、カラフルなジュエリーボックスなどのファッション雑貨もたくさんある。インドのシルクサリーの生地で作ったオリジナルのカンフーシューズ(6,000円)は軽くてストレスフリーな履き心地でルームシューズにしてもいいし、持ち運びもしやすいからスタジオ撮影のときに持参するのも良さそうだ。

一方、ショップ右の青いフカフカの絨毯が敷かれた一角にはジュエリーブランド「UPALA(ウパラ)」のコーナーも。インドのマハラニ王妃が身につけていた華麗なジュエリーから着想を得てモダンにリデザインしていて、天然石と18Kのイエローゴールドを使用。インドの職人が一つずつ手作りで仕上げている。ブルークォーツやピンクトルマリン、アメジストにペリドット……カラフルで表情が一つずつ違う美しい天然石は見ているだけで心が潤う。

気になるブレスレットやリングをアレもコレも、と着けさせていただいたら、手がもうパラダイス状態。存在感抜群のムーンストーンのリング(242,000円)や形の異なる天然石をフクリン留めで一周つなげたエタニティリング(99,000円)がハッピーな気持ちにさせてくれる。Gem Stoneのブレスレット(5,000円)はジュエリー好きの女性へのギフトとしてもよろこばれそうだ。

そういうわけで手元の寄りを機嫌よく眺めていたら、想像以上に肌の粗が目立っていて、顔のコンディションまで気になってきたので(苦笑)、3月にオープンした新店舗「AXXZIA(アクシージア)」(B1F)へ向かった。こちらはアジア発のスキンケアブランドで、GINZA SIX店がブランド初の直営店舗。

「アクシージア」は目もとケアに特化したシリーズ「アクシージア ビューティアイズ」が有名。“エステのアイケアを自宅でも”をコンセプトにした、美容液をたっぷり含んだ贅沢な「ビューティアイズ エッセンスシート プレミアム」(8,580円)は、洋梨のようなみずみずしさ! 綿花の種のうぶ毛を使った極薄シートがしっかりと目もとにピタッと密着してくれるおかげで、つけている間、液だれしないという(すごい!)。

上まぶたから頬の三角ゾーンまでまるっとフィットする形状で、目のまわりのくすみやまぶたのハリなどに効果的。マスク生活になって、目の印象が大事になったから、スペシャルケアちゃんとしないと!と気合も入る。

さらに目もとケア美顔器「メイト フォー アイズ」(18,480円)なるものも。角質層まで美容液をしっかり浸透させてくれる低周波と、表情筋を優しく温めてくれるラジオ波の2つの機能を搭載。マスクの上から美顔器を当てることで、目もとまわりに必要な美容成分をしっかりと届けてくれる。

実際に手もとでラジオ波をあてていただいたが、たしかにじんわり温かい。持ちやすいペン型タイプというのもいい。目もとだけじゃなくて口もとやフェイスライン、ほうれい線まわりまで顔全体にも使えるそうで、一家に一台美顔器を選ぶなら、もうこの一択では!?

店内ではカウンセリングコーナーもあり、目もとや肌の悩みにも丁寧に応えてくれる。

カウンターで紹介してもらった新商品のリキッドルーセント 3D(5,280円)はなんと塗った瞬間、リキッドからパウダーに変わるというもので、肌がサラッサラ、べたつかない。仕上げのお粉が不要で、パウダーファンデーションにありがちな粉浮きもしないから、マスクにもつきにくい。マスクにべったりファンデーションがつくのが嫌なので基本ノーファンデを貫いていたが、これならファンデ復活したい!

そして最後は、2月に登場した京都発オーガニックナッツ・グラノーラ専門店の「Cocolo Kitchen KYOTO(ココロキッチン キョウト)」(B2F)へ。何を隠そう、というか全然隠してないけど、私の手土産の定番はナッツだ。常温保存ができて、日持ちするし、重くない。そして、咀嚼欲求の高い人も満足させてくれる食感。しかも、こちらは有機栽培のナッツに京都らしいフレーバーを掛け合わせたユニークなメニューがたくさんある。

ニッキが香る「八ツ橋ナッツ」、宇治の最高級有機抹茶を使用した「抹茶ナッツ」、九重味噌の無添加白味噌を使った「白味噌ナッツ」、私もふだんから愛飲している小川珈琲のコーヒー豆を使用した「珈琲ナッツ」など、頬張るだけでもう口の中が京都。おいでやす。

人気No.1は、京都・祇園で300年続く「原了郭」の黒七味ナッツ(1,290円)。

1箱購入し、家でゆっくり食べようと思ったが、原稿を1本書く前にあっという間完食してしまった。ピリッとほどよい辛さがクセになって、やめられないとまらない。ちなみに、私は地方などに出かけた際によく現地のお土産を買い損ねるので、行き先が京都なら、これからはここで調達しようと心に決めた。

「食べ物は冒険できない」という人も安心してほしい。コロナにマケズ、店頭では丁寧に1点ずつパウチした試食用ナッツも用意されている。ちなみにこちらでは東京店限定フレーバーとして、GINZA SIXのお膝元である銀座が誇る老舗インド料理店「ナイルレストラン」とコラボしたカレー味のナッツも! 逆に京都の友人にプレゼントするのも良さそうだ。

オリジナルのグラノーラもチェック。「チャイスぺシャル」(1,190円)、自然な甘さの「プレミアムメープル」(1,290円)、アイスのトッピングにも合う「クラシックココア」(1,190円)など、これまた気になるものが目白押し。

「全部買って帰りたい」と思いつつ、この日は「京都柚子味噌」(1,190円)と「スパイシーソルト」(1,190円)をセレクトした。スタッフの方からは「スパイシーソルトはクリームチーズと合わせてもおいしいですし。塩味が効いているから、サラダやカルパッチョに振りかけてもいいですよ」と教えてもらった。

「かわいいワンピースを着て目元マスクで潤っておいしいナッツを頬張れば最高のおうち時間になるのでは」とニヤニヤ。素敵なモノとの出会いは「ただいま」の後の時間も底上げしてくれる。この日、たくさんの「はじまめまして」を交わしたGINZA SIXには心弾むような世界が広がっていた。

Text: Mariko Uramoto Photos: Kaoru Yamada Edit: Yuka Okada(81)

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ルーティンを抜け出して、自分のご機嫌をとりに行く https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124799 Mon, 08 Mar 2021 11:01:12 +0000 no 自分の人生が、こんなにも騒々しくなるとは思っていなかった───。私の仕事は美容雑誌「VOCE」の編集長だ。そして、まだ幼い子が2人いる。早朝にやっこら起きてから一日、「自分一人の時間」というものがトイレ以外に、ほとんどない。きっと私と同世代の方たちは、多かれ少なかれ頼られる存在になってしまって、自分のことは後回しになりがちではないだろうか。目減りしていく体力気力、そして少しずつ輪郭をゆるめていく容姿に片目をつぶってみないようにしているかもしれない。そんな毎日をパンクせずに過ごすためにはちょっと工夫が必要だ。 だから私は、月に一度、ルーティンな日々から脱走してみる。可能だったら携帯をオフにして、誰にも行先は告げずに、ひたすら自分のご機嫌をとる。好きでやっている仕事も、家庭での役割も愛し続けるためのひと工夫。 今日の逃亡先は落ち着きある大人空間、GINZA SIXだ。 かれこれ40年以上の付き合いになるのだから、自分のご機嫌ポイントは心得ている。真っ先に向かったのは、昨年12月末にオープンしたばかりというB2Fの「ホテルショコラ」(ネーミングからして魅かれる)。 なにせ、香水よりもカカオの香りで深呼吸するタイプで、チョコレートは常備。ブラックコーヒーとの組み合わせは最高だと思っているし、温かなチョコレートドリンクほど気持ちを和ませてくれるものはない。そんな私にとって、ここはまさにワンダーランド! お店の方によれば「ホテルショコラはイギリスのブランドですが、彼らは毎日何度もお茶をする。そのたびに甘いチョコレートを口にするので、糖分を摂りすぎないよう、砂糖の量をぐっとおさえているのが特長です」とのこと。なるほど、成分欄の冒頭には、砂糖ではなくカカオソリッドとある。 ホテルショコラを代表するというバトン型チョコレートをいただいてみた。出てきた感想は「今まで食べてきたチョコレートより深い!」。香りもコクも奥行きがあって上品、でも満足な甘さもある。撮影の手土産にも喜ばれそう。 そして、いまも本気で買おうと思っているのがこちら、「ベルべタイザー」なるチョコレートドリンクメーカー(¥10,000 ※以下全て税込価格)。イギリスの家電ブランド「デュアリット」(スタイリッシュなトースターが有名ですね)がホテルショコラのために開発した「完璧なチョコレートドリンク」を実現する専用機器だという。 店頭で販売しているミントフレーバーのホットチョコレート(¥500)を片手に、頭がぐるぐる。「このホットチョコレートを2分半で作れちゃうって」「洗うのも簡単らしいよ」「でも、あのキッチンのどこに置くのよ」。個包装のサシェはカカオのパーセンテージのグラデーションとミントやジンジャーなどのフレーバーがあってそそられる。この時点で、「自分ご機嫌指数」は早くもマックスに。 ちなみにホテルショコラのカカオは不当な就労のもとに生産されたものではない。それだけではなく、通常なら廃棄されるカカオシェルやカカオポットを使ってコスメまで作り出している。パッケージも堆肥化・リユース可能な資材に変えていっているという。その姿勢も含めて、ホテルショコラは私のステディブランドとなった。 日々の小さなストレスとなるのが、その時の気分とカラダにフィットしていない下着を身に着けていること。女性にとって下着は、心にも作用するとても大切なものだ。4Fまで足をのばすと、サンクチュアリのようなエントランスで迎えてくれる「WACOAL MAISON(ワコールメゾン)」にたどり着く。 上質なランジェリーを選びに来た、といいたいところだが、一番のお目当てはワコール独自の3Dボディスキャンで「自分のカラダと向き合う」こと。ここでは、デジタル計測によって自分のカラダを360度3Dで計測してくれる「3Dスマート&トライ」という無料サービスを受けられる。紙の下着に着替え、広めの証明写真機のようなボックスの中でバーを握ること5秒間。画面には見たことのない3Dでアウトラインを映し出された私がいた。現実。いかなる時も、現実から目を背けては何も解決しないのだ。 AIに丸裸にされた後は、ヒトの出番。スタッフの方がタブレットに映し出された輪切りのボディ(厚みや幅がわかる)などでプロポーションの傾向を解説、18箇所の細かい計測データをもとに、今の私に最適な下着を提案してもらえる。自己判断で、適正サイズより小さめのブラを選んでいる人が多いのだとか。計測データと生活スタイルや好みをあわせて示された下着には、自分では選ばないゴージャスなものもあって、なんだか恐縮してしまう。「ご自分では派手に思えても、身に着けていただくと、肌がきれいに見えたり意外と似合っていたりするものなんです」。店内をパトロールして目に留まったのは、リチャード・アヴェドンの写真集と上に置かれた繊細なレース。幾重にも重ねられ、金糸を織り込んだおとぎ話のようなレースに、遠く置き忘れていた女ゴコロが呼び戻される。やはり、ランジェリーの力は偉大! 計測、カウンセリング後には、自分のカラダの現実を数字で記録した子細なデータシートをプレゼントしてくれる。これがあれば病院のカルテのように履歴が残るので、以後計測せずともピッタリのランジェリーを選んでもらえる。渡されたクリアファイルは、花の模様で上手に数字が見えないよう工夫されていた。細部の細部まで女子でいさせてくれる空間なのだ。 最後に、ライブラリー風につくられた男性用コーナーもあるので、パートナーと選びに来てもお互いリラックスして過ごせる、ということも記しておこう。 チョコレートとレースで高揚した気持ちを引きずりながら訪れたのは、日々愛用している化粧品ブランド「コスメデコルテ」の旗艦店であるB1Fの「Maison DECORTÉ(メゾンデコルテ)」。 美容誌に携わっていると、コスメデコルテというブランドの実力とホスピタリティがよくわかる。一流メーカーならではの長期にわたる研究が生み出す最先端技術を、日常的に「無理なく使い続けられる形」でユーザーに届けるという、一見相反する使命を同時にやってのける。そして、コスメデコルテが支持される理由は、「使い心地が気持ちいいから、香りがすきだから」という理由で、使い続けてしまう商品構成にある(実際、私は今まさにシリーズでコスメデコルテを使っている)。続けられるから、当然効果も出やすいというわけ。ここでは贅沢にも、コスメデコルテの最高峰ライン「AQミリオリティ」のアイテムをつかったフェイシャルトリートメント(60分・¥22,000〜)が受けられる。 まずは、インテリアデザインの巨匠マルセル・ワンダースが手がけた空間でカウンセリング。 シミ、シワ、たるみ、あとクマも! 年相応に肌悩みが多すぎて「全部盛りでお願いします!」という無茶ぶりオーダーにも笑顔で「はい、おまかせください」。 3つあるトリートメントルームはそれぞれに異なるコンセプトでつくられている。専用にアレンジされた空間、香り、音楽で、トリートメントの効果を最大化するという。この日、私が通されたのは水面を連想させる「Calm」という部屋。この暗さ、温度、光の揺らめき。誰にも追われないシェルターにかくまわれたような時間。 スチーマーで肌をほぐしながら丁寧にクレンジングしたあと、天然ダイヤモンドをセットした美容機器で吸引しながら角質ケアしてもらうと、角質と蓄積汚れがグレーの輪っかになって吸い取られていた。セルフケアでは行き届かない角質ケアが、やっぱり必要だと実感。そこからのハンドケアで驚いたのは、施術してくださる手の温かさ。顔まで温泉につかっているようで、みるみる巡りがよくなっていく。日々、自分の手でスキンケアするのも大切な時間だけれど、やはり「人に手をかけてもらう」ことの贅沢さは格別だ。 今回選んだのは90分のトリートメント(¥33,000・初回の方は限定で¥24,750)。施術を終えて、私はファンデーションを塗らなかった。正しく光を反射できるようになった肌はツヤと血色がよみがえり、そのままで出かけたくなるような仕上がりだったのだ。あぁ、私の肌はまだこんなにイキイキしている。自然と背筋が伸び、口角もあがる。自分の納得いく肌であること。肌の可能性を信じられること。それは、意外なほど自分のエネルギーになるものだ。やっぱり美容っていいなぁ。こうして巡り巡って、結局脳ミソは仕事に戻っていく。 でも、これでいい、と思う。くたびれて、ちょっと逃げ出して、またくたびれにいく。そんなメビウスの輪のような日々が、意外と気に入っているから。 Text: Tomoko Endo Photos: Michika Mochizuki Edit: Yuka Okada(81)

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自分の人生が、こんなにも騒々しくなるとは思っていなかった───。私の仕事は美容雑誌「VOCE」の編集長だ。そして、まだ幼い子が2人いる。早朝にやっこら起きてから一日、「自分一人の時間」というものがトイレ以外に、ほとんどない。きっと私と同世代の方たちは、多かれ少なかれ頼られる存在になってしまって、自分のことは後回しになりがちではないだろうか。目減りしていく体力気力、そして少しずつ輪郭をゆるめていく容姿に片目をつぶってみないようにしているかもしれない。そんな毎日をパンクせずに過ごすためにはちょっと工夫が必要だ。
だから私は、月に一度、ルーティンな日々から脱走してみる。可能だったら携帯をオフにして、誰にも行先は告げずに、ひたすら自分のご機嫌をとる。好きでやっている仕事も、家庭での役割も愛し続けるためのひと工夫。

今日の逃亡先は落ち着きある大人空間、GINZA SIXだ。

かれこれ40年以上の付き合いになるのだから、自分のご機嫌ポイントは心得ている。真っ先に向かったのは、昨年12月末にオープンしたばかりというB2Fの「ホテルショコラ」(ネーミングからして魅かれる)。

なにせ、香水よりもカカオの香りで深呼吸するタイプで、チョコレートは常備。ブラックコーヒーとの組み合わせは最高だと思っているし、温かなチョコレートドリンクほど気持ちを和ませてくれるものはない。そんな私にとって、ここはまさにワンダーランド! お店の方によれば「ホテルショコラはイギリスのブランドですが、彼らは毎日何度もお茶をする。そのたびに甘いチョコレートを口にするので、糖分を摂りすぎないよう、砂糖の量をぐっとおさえているのが特長です」とのこと。なるほど、成分欄の冒頭には、砂糖ではなくカカオソリッドとある。

ホテルショコラを代表するというバトン型チョコレートをいただいてみた。出てきた感想は「今まで食べてきたチョコレートより深い!」。香りもコクも奥行きがあって上品、でも満足な甘さもある。撮影の手土産にも喜ばれそう。

そして、いまも本気で買おうと思っているのがこちら、「ベルべタイザー」なるチョコレートドリンクメーカー(¥10,000 ※以下全て税込価格)。イギリスの家電ブランド「デュアリット」(スタイリッシュなトースターが有名ですね)がホテルショコラのために開発した「完璧なチョコレートドリンク」を実現する専用機器だという。

店頭で販売しているミントフレーバーのホットチョコレート(¥500)を片手に、頭がぐるぐる。「このホットチョコレートを2分半で作れちゃうって」「洗うのも簡単らしいよ」「でも、あのキッチンのどこに置くのよ」。個包装のサシェはカカオのパーセンテージのグラデーションとミントやジンジャーなどのフレーバーがあってそそられる。この時点で、「自分ご機嫌指数」は早くもマックスに。

ちなみにホテルショコラのカカオは不当な就労のもとに生産されたものではない。それだけではなく、通常なら廃棄されるカカオシェルやカカオポットを使ってコスメまで作り出している。パッケージも堆肥化・リユース可能な資材に変えていっているという。その姿勢も含めて、ホテルショコラは私のステディブランドとなった。

日々の小さなストレスとなるのが、その時の気分とカラダにフィットしていない下着を身に着けていること。女性にとって下着は、心にも作用するとても大切なものだ。4Fまで足をのばすと、サンクチュアリのようなエントランスで迎えてくれる「WACOAL MAISON(ワコールメゾン)」にたどり着く。

上質なランジェリーを選びに来た、といいたいところだが、一番のお目当てはワコール独自の3Dボディスキャンで「自分のカラダと向き合う」こと。ここでは、デジタル計測によって自分のカラダを360度3Dで計測してくれる「3Dスマート&トライ」という無料サービスを受けられる。紙の下着に着替え、広めの証明写真機のようなボックスの中でバーを握ること5秒間。画面には見たことのない3Dでアウトラインを映し出された私がいた。現実。いかなる時も、現実から目を背けては何も解決しないのだ。

AIに丸裸にされた後は、ヒトの出番。スタッフの方がタブレットに映し出された輪切りのボディ(厚みや幅がわかる)などでプロポーションの傾向を解説、18箇所の細かい計測データをもとに、今の私に最適な下着を提案してもらえる。自己判断で、適正サイズより小さめのブラを選んでいる人が多いのだとか。計測データと生活スタイルや好みをあわせて示された下着には、自分では選ばないゴージャスなものもあって、なんだか恐縮してしまう。「ご自分では派手に思えても、身に着けていただくと、肌がきれいに見えたり意外と似合っていたりするものなんです」。店内をパトロールして目に留まったのは、リチャード・アヴェドンの写真集と上に置かれた繊細なレース。幾重にも重ねられ、金糸を織り込んだおとぎ話のようなレースに、遠く置き忘れていた女ゴコロが呼び戻される。やはり、ランジェリーの力は偉大!

計測、カウンセリング後には、自分のカラダの現実を数字で記録した子細なデータシートをプレゼントしてくれる。これがあれば病院のカルテのように履歴が残るので、以後計測せずともピッタリのランジェリーを選んでもらえる。渡されたクリアファイルは、花の模様で上手に数字が見えないよう工夫されていた。細部の細部まで女子でいさせてくれる空間なのだ。

最後に、ライブラリー風につくられた男性用コーナーもあるので、パートナーと選びに来てもお互いリラックスして過ごせる、ということも記しておこう。

チョコレートとレースで高揚した気持ちを引きずりながら訪れたのは、日々愛用している化粧品ブランド「コスメデコルテ」の旗艦店であるB1Fの「Maison DECORTÉ(メゾンデコルテ)」。

美容誌に携わっていると、コスメデコルテというブランドの実力とホスピタリティがよくわかる。一流メーカーならではの長期にわたる研究が生み出す最先端技術を、日常的に「無理なく使い続けられる形」でユーザーに届けるという、一見相反する使命を同時にやってのける。そして、コスメデコルテが支持される理由は、「使い心地が気持ちいいから、香りがすきだから」という理由で、使い続けてしまう商品構成にある(実際、私は今まさにシリーズでコスメデコルテを使っている)。続けられるから、当然効果も出やすいというわけ。ここでは贅沢にも、コスメデコルテの最高峰ライン「AQミリオリティ」のアイテムをつかったフェイシャルトリートメント(60分・¥22,000〜)が受けられる。

まずは、インテリアデザインの巨匠マルセル・ワンダースが手がけた空間でカウンセリング。
シミ、シワ、たるみ、あとクマも! 年相応に肌悩みが多すぎて「全部盛りでお願いします!」という無茶ぶりオーダーにも笑顔で「はい、おまかせください」。

3つあるトリートメントルームはそれぞれに異なるコンセプトでつくられている。専用にアレンジされた空間、香り、音楽で、トリートメントの効果を最大化するという。この日、私が通されたのは水面を連想させる「Calm」という部屋。この暗さ、温度、光の揺らめき。誰にも追われないシェルターにかくまわれたような時間。

スチーマーで肌をほぐしながら丁寧にクレンジングしたあと、天然ダイヤモンドをセットした美容機器で吸引しながら角質ケアしてもらうと、角質と蓄積汚れがグレーの輪っかになって吸い取られていた。セルフケアでは行き届かない角質ケアが、やっぱり必要だと実感。そこからのハンドケアで驚いたのは、施術してくださる手の温かさ。顔まで温泉につかっているようで、みるみる巡りがよくなっていく。日々、自分の手でスキンケアするのも大切な時間だけれど、やはり「人に手をかけてもらう」ことの贅沢さは格別だ。

今回選んだのは90分のトリートメント(¥33,000・初回の方は限定で¥24,750)。施術を終えて、私はファンデーションを塗らなかった。正しく光を反射できるようになった肌はツヤと血色がよみがえり、そのままで出かけたくなるような仕上がりだったのだ。あぁ、私の肌はまだこんなにイキイキしている。自然と背筋が伸び、口角もあがる。自分の納得いく肌であること。肌の可能性を信じられること。それは、意外なほど自分のエネルギーになるものだ。やっぱり美容っていいなぁ。こうして巡り巡って、結局脳ミソは仕事に戻っていく。

でも、これでいい、と思う。くたびれて、ちょっと逃げ出して、またくたびれにいく。そんなメビウスの輪のような日々が、意外と気に入っているから。

Text: Tomoko Endo Photos: Michika Mochizuki Edit: Yuka Okada(81)

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GINZA SIXで見つけたわたしの移住プロジェクト「TINY HOUSE」 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124800 Fri, 15 Jan 2021 03:40:15 +0000 no 長い会社員人生に終止符を打ち、プロデューサー兼編集長としてサステナブルな情報を届けるデジタルメディア『ELEMINIST』を立ち上げるなど、フリーランスとして活動しはじめた2020年。個人オフィス探しをしていた矢先、リモートワークがニューノーマル(新しい日常)になり、自宅に仕事スペースを作りました。 朝のコーヒータイムをゆっくり楽しんだあと、ダイニングでパソコンを開いて仕事モードに切り替える生活。満員電車に揺られる通勤生活から解放されたことで時間の余裕は生まれましたが、次第に私生活との境目が曖昧に。ワークライフバランスの調整に苦労した一年でした。 東京と地方の二拠点生活をはじめる知人が日に日に増え、パラダイムシフトが起きていると実感しています。「いずれ都内にも畑付きのリノベーション物件が出てくるのでは?」と期待しつつ、すぐに移住しようとは考えてはいません。ただ、災害や気候危機に備えた暮らしの準備はしておきたいもの。 これからのスタイルに合ったサステナブルな暮らしを探しに「GINZA SIX」へ。まずはわたしの心の辞書ともいえる、6Fの「銀座 蔦屋書店」に向かいます。 潜在意識の中にあるイメージを言語化することが一番難しい。わたしの場合、本屋さんで今追い求める言葉を拾い集めて顕在化させることが多いです。この日も、なにか目当ての本があるわけではなく、書棚のタイトルをとにかく眺める。 不思議と興味のあるテーマのコーナーで足が止まります。「小屋に暮らす」「自然と生きる」などのタイトルが並んだ自然共生型の建築コーナー。さすが蔦屋書店さんの編集力。この日もほしい本が手に入りました。 出会ったのは、『Small ECO Houses – Living Green in Style』という世界中の小さなエコハウスをまとめた建築本(最後の一冊だったこともあり、参考商品扱いにて)。 大自然と住まいの境界線をなくした開放的な居住空間を森の中に建てられたら、どんなにすてきでしょう。モノに囲まれることが裕福とされてきた価値観から、ミニマルな暮らしへの変容が表現された一冊です。 「もし自分が移住するなら、こんな“TINY HOUSE(小さな家)”がいいな」。そんな言葉が浮かんできました。 “土”を題材にした『Spectator vol.47 土のがっこう』(1,000円 ※以下全て税抜価格)も購入。蔦屋書店でインスピレーションを受け、5Fにあるアウトドアブランド「Snow Peak Mobile」に足を運ぶことにしました。 店内に入ると、目の前に飛び込んできた模型の前で数秒間立ち止まってしまいました。心の中で「This is what I want!!(わたしの求めていたものはこれ!)」と叫んでしまうほどの衝撃が走ります。 これは、日本が誇る世界的建築デザイナー隈研吾氏と「スノーピーク」が共同開発した「住箱(ジュウバコ)」(4,000,000円〜)というモバイルハウスの模型。短時間のうちに、“TINY HOUSE”での暮らしが現実味を帯びてくる。 二拠点生活の場合、どちらの住居にも日用品や生活雑貨などを揃える必要があるけど、自宅をトレーラーにカスタマイズすれば、この一台でコンプリート。シティからローカルへ、働きながら移動して暮らすということも可能です。 気候危機のまっただなかに生きるわたしたちにとって、もっともエシカルでミニマルな暮らしかもしれません。 「ならば、家具も野外と室内のどちらでも使用できるべきね」と座ってみた「Take!チェア ロング」(19,800円)の包み込まれるフィット感! 全製品の永久保証対応をしている「スノーピーク」では、穴が空いていても破損していても、可能な限り修理を受け付けています。木や植物のように長い年月をかけて未来をつなげていく。そんな暮らしに寄り添うストアです。 次に訪れたのは、2021年2月28日までの期間限定で、2Fにあるプレミアムデザインオーディオのショップ「モノとオト SIT BACK & RELAX」。前々から気になっていたスピーカーを物色しに行きます。 スウェーデンのオーディオブランド「TRANSPARENT(トランスペアレント)」はアート作品のようなデザインが印象的ですが、その透明性は見た目だけではありません。 短期間で寿命を迎える多くの電化製品のなかで、「トランスペアレント」の製品は各パーツをモジュール化。修理や部品交換・アップグレードが簡単にできる設計を実現しています。そのうえ、不要になった場合にもごみに出さずリサイクルできる。そんなサーキュラーエコノミー型のサステナブルなスピーカーとして注目を集めています。 これは、GINZA SIX限定の「THE UPCRAFTED COLLECTION」という職人とコラボしたシリーズ。右は陶芸家のHortense Montarnalによる陶器の「STONEWARE SPEAKER」(180,000円)、左は木工職人Calle Hanssonによる無垢のアッシュ材を使った「WOOD SPEAKER」(170,000円)。 いずれも生産ロスを防ぐため、一つひとつ職人の手によって作られ、注文から約3カ月で手元に届くMADE TO ORDER。「どんな音楽を聴こうか?」と待ちわびる時間が、愛でる気持ちを高めてくれそうです。 「日頃から聴き慣れている音楽で比較してみてください」と、快く視聴させてくれたのは、この日、たまたま接客に立っていた本社の営業部長である松野康晴さん。スピーカーの電源を入れれば、スマートフォンをbluetoothでペアリングするだけのシンプルな機能です。これなら機械音痴なわたしでもすぐに使えそう。 ウッド、陶器、それぞれのスピーカーサウンドに耳をすませてみました。なじみある曲がどことなくやさしい音色に感じます。 あまりにも感動しているところに、松野さんが再生紙で作られたパッケージをバックヤードからお持ちくださいました。 ふたを開けると、白い綿手袋が出てくるという演出に心を掴まれます。クリエイティビティとサステナビリティに遊び心が掛け合わさる。いや、ホスピタリティーもですね。 箱の角には職人による手書きのシリアルナンバーが記されています。そこを指差して、「箱のロゴに対して、逆に書いちゃっているところがにくいね」と松野さん。その微笑みと人柄に触れ、コロナ禍でなければハグしたい気持ちでいっぱいに(笑)。 エシカル消費とは、“何を買うか?”と同じくらい“誰から買うか?”が大事。 モノを愛情あふれるコトバで紡ぐ松野さんの接客に感銘を受けました。販売員さんに頼ることなくショッピングできる時代ですが、サステナビリティにおいては聞かなければわからないことが多くある。 SDGsの目標12にある「つくる責任、つかう責任」の間には「つたわる責任」がある。それがわたしの考えるエシカルメソッド。すっかり「モノとオト」のファンになりました。 「住箱に置くなら陶器か、いや、ウッドの経年変化も見てみたい」。“TINY HOUSE” プロジェクトのお買い物リストに追加です。ガラス越しに「また迎えにくるから待っていておくれ」と呟きながら、最後はB2Fにある「BLUE BOTTLE COFFEE(ブルーボトルコーヒー)」へ。 「ブルーボトルコーヒー」は、一部の農家と直接契約を結ぶことでサステナブルな珈琲豆を調達しています。どれをオーダーしてもエシカルなので、メニューの中から必死に厳選する苦労もありません。 店内には、リサイクル素材でつくられたエコバッグやタンブラーなどライフスタイル雑貨がズラリ。わたしのようなこだわり屋さんへのギフト選びにもおすすめです。 洗って繰り返し使える「ホリデーエコカップ」(2,000円)は、土の中で分解可能なバンブーパウダーなどを原料に作られています。持続可能な管理体制で育つ竹林から収穫しているサステナブルなプロダクトです。 持参したマイカップをお渡しして「オーツミルクカフェラテ」(570円)、アニマルウェルフェアな平飼いたまごにソイミルクを使った「アーモンドパウンドケーキ」(400円)をオーダーしました。 ひと息ついたらエネルギーも満タンに! 「さて、お次はどの土地に住箱を設置しようか?」と、第2ラウンドを周りたいところではありますが、次回の楽しみにとっておきます(笑)。もし「ブルーボトルコーヒー」で地図を開いている人がいたら、それはわたしかもしれません。そのときはいつでも声をかけてください。エシカルトークで盛り上がりましょう。 Text: Minami Fukamoto Photos: Yoshihiro Tsuruoka Edit: Yuka Okada(81)

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長い会社員人生に終止符を打ち、プロデューサー兼編集長としてサステナブルな情報を届けるデジタルメディア『ELEMINIST』を立ち上げるなど、フリーランスとして活動しはじめた2020年。個人オフィス探しをしていた矢先、リモートワークがニューノーマル(新しい日常)になり、自宅に仕事スペースを作りました。

朝のコーヒータイムをゆっくり楽しんだあと、ダイニングでパソコンを開いて仕事モードに切り替える生活。満員電車に揺られる通勤生活から解放されたことで時間の余裕は生まれましたが、次第に私生活との境目が曖昧に。ワークライフバランスの調整に苦労した一年でした。

東京と地方の二拠点生活をはじめる知人が日に日に増え、パラダイムシフトが起きていると実感しています。「いずれ都内にも畑付きのリノベーション物件が出てくるのでは?」と期待しつつ、すぐに移住しようとは考えてはいません。ただ、災害や気候危機に備えた暮らしの準備はしておきたいもの。

これからのスタイルに合ったサステナブルな暮らしを探しに「GINZA SIX」へ。まずはわたしの心の辞書ともいえる、6Fの「銀座 蔦屋書店」に向かいます。

潜在意識の中にあるイメージを言語化することが一番難しい。わたしの場合、本屋さんで今追い求める言葉を拾い集めて顕在化させることが多いです。この日も、なにか目当ての本があるわけではなく、書棚のタイトルをとにかく眺める。

不思議と興味のあるテーマのコーナーで足が止まります。「小屋に暮らす」「自然と生きる」などのタイトルが並んだ自然共生型の建築コーナー。さすが蔦屋書店さんの編集力。この日もほしい本が手に入りました。

出会ったのは、『Small ECO Houses – Living Green in Style』という世界中の小さなエコハウスをまとめた建築本(最後の一冊だったこともあり、参考商品扱いにて)。

大自然と住まいの境界線をなくした開放的な居住空間を森の中に建てられたら、どんなにすてきでしょう。モノに囲まれることが裕福とされてきた価値観から、ミニマルな暮らしへの変容が表現された一冊です。

「もし自分が移住するなら、こんな“TINY HOUSE(小さな家)”がいいな」。そんな言葉が浮かんできました。

“土”を題材にした『Spectator vol.47 土のがっこう』(1,000円 ※以下全て税抜価格)も購入。蔦屋書店でインスピレーションを受け、5Fにあるアウトドアブランド「Snow Peak Mobile」に足を運ぶことにしました。

店内に入ると、目の前に飛び込んできた模型の前で数秒間立ち止まってしまいました。心の中で「This is what I want!!(わたしの求めていたものはこれ!)」と叫んでしまうほどの衝撃が走ります。

これは、日本が誇る世界的建築デザイナー隈研吾氏と「スノーピーク」が共同開発した「住箱(ジュウバコ)」(4,000,000円〜)というモバイルハウスの模型。短時間のうちに、“TINY HOUSE”での暮らしが現実味を帯びてくる。

二拠点生活の場合、どちらの住居にも日用品や生活雑貨などを揃える必要があるけど、自宅をトレーラーにカスタマイズすれば、この一台でコンプリート。シティからローカルへ、働きながら移動して暮らすということも可能です。

気候危機のまっただなかに生きるわたしたちにとって、もっともエシカルでミニマルな暮らしかもしれません。

「ならば、家具も野外と室内のどちらでも使用できるべきね」と座ってみた「Take!チェア ロング」(19,800円)の包み込まれるフィット感!

全製品の永久保証対応をしている「スノーピーク」では、穴が空いていても破損していても、可能な限り修理を受け付けています。木や植物のように長い年月をかけて未来をつなげていく。そんな暮らしに寄り添うストアです。

次に訪れたのは、2021年2月28日までの期間限定で、2Fにあるプレミアムデザインオーディオのショップ「モノとオト SIT BACK & RELAX」。前々から気になっていたスピーカーを物色しに行きます。

スウェーデンのオーディオブランド「TRANSPARENT(トランスペアレント)」はアート作品のようなデザインが印象的ですが、その透明性は見た目だけではありません。

短期間で寿命を迎える多くの電化製品のなかで、「トランスペアレント」の製品は各パーツをモジュール化。修理や部品交換・アップグレードが簡単にできる設計を実現しています。そのうえ、不要になった場合にもごみに出さずリサイクルできる。そんなサーキュラーエコノミー型のサステナブルなスピーカーとして注目を集めています。

これは、GINZA SIX限定の「THE UPCRAFTED COLLECTION」という職人とコラボしたシリーズ。右は陶芸家のHortense Montarnalによる陶器の「STONEWARE SPEAKER」(180,000円)、左は木工職人Calle Hanssonによる無垢のアッシュ材を使った「WOOD SPEAKER」(170,000円)。

いずれも生産ロスを防ぐため、一つひとつ職人の手によって作られ、注文から約3カ月で手元に届くMADE TO ORDER。「どんな音楽を聴こうか?」と待ちわびる時間が、愛でる気持ちを高めてくれそうです。

「日頃から聴き慣れている音楽で比較してみてください」と、快く視聴させてくれたのは、この日、たまたま接客に立っていた本社の営業部長である松野康晴さん。スピーカーの電源を入れれば、スマートフォンをbluetoothでペアリングするだけのシンプルな機能です。これなら機械音痴なわたしでもすぐに使えそう。

ウッド、陶器、それぞれのスピーカーサウンドに耳をすませてみました。なじみある曲がどことなくやさしい音色に感じます。

あまりにも感動しているところに、松野さんが再生紙で作られたパッケージをバックヤードからお持ちくださいました。

ふたを開けると、白い綿手袋が出てくるという演出に心を掴まれます。クリエイティビティとサステナビリティに遊び心が掛け合わさる。いや、ホスピタリティーもですね。

箱の角には職人による手書きのシリアルナンバーが記されています。そこを指差して、「箱のロゴに対して、逆に書いちゃっているところがにくいね」と松野さん。その微笑みと人柄に触れ、コロナ禍でなければハグしたい気持ちでいっぱいに(笑)。

エシカル消費とは、“何を買うか?”と同じくらい“誰から買うか?”が大事。

モノを愛情あふれるコトバで紡ぐ松野さんの接客に感銘を受けました。販売員さんに頼ることなくショッピングできる時代ですが、サステナビリティにおいては聞かなければわからないことが多くある。

SDGsの目標12にある「つくる責任、つかう責任」の間には「つたわる責任」がある。それがわたしの考えるエシカルメソッド。すっかり「モノとオト」のファンになりました。

「住箱に置くなら陶器か、いや、ウッドの経年変化も見てみたい」。“TINY HOUSE” プロジェクトのお買い物リストに追加です。ガラス越しに「また迎えにくるから待っていておくれ」と呟きながら、最後はB2Fにある「BLUE BOTTLE COFFEE(ブルーボトルコーヒー)」へ。

「ブルーボトルコーヒー」は、一部の農家と直接契約を結ぶことでサステナブルな珈琲豆を調達しています。どれをオーダーしてもエシカルなので、メニューの中から必死に厳選する苦労もありません。

店内には、リサイクル素材でつくられたエコバッグやタンブラーなどライフスタイル雑貨がズラリ。わたしのようなこだわり屋さんへのギフト選びにもおすすめです。

洗って繰り返し使える「ホリデーエコカップ」(2,000円)は、土の中で分解可能なバンブーパウダーなどを原料に作られています。持続可能な管理体制で育つ竹林から収穫しているサステナブルなプロダクトです。

持参したマイカップをお渡しして「オーツミルクカフェラテ」(570円)、アニマルウェルフェアな平飼いたまごにソイミルクを使った「アーモンドパウンドケーキ」(400円)をオーダーしました。

ひと息ついたらエネルギーも満タンに! 「さて、お次はどの土地に住箱を設置しようか?」と、第2ラウンドを周りたいところではありますが、次回の楽しみにとっておきます(笑)。もし「ブルーボトルコーヒー」で地図を開いている人がいたら、それはわたしかもしれません。そのときはいつでも声をかけてください。エシカルトークで盛り上がりましょう。

Text: Minami Fukamoto Photos: Yoshihiro Tsuruoka Edit: Yuka Okada(81)

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GINZA SIXで、“香り”をめぐる旅をする https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124801 Mon, 28 Dec 2020 10:27:29 +0000 no 外出自粛が続く中、家にいる時間が必然的に長くなり、気は滅入るばかり。そんな中、僕が見つけた一つの楽しみが“香り”でした。香水のエレガントな香り、古本のどこか懐かしい香り、洗剤や柔軟剤の優しい香り、スパイスカレーの刺激的な香り、ワインやウイスキーの美味しい香り。自宅にいても、日々いろんな香りを発見することで、陰鬱な自粛生活に細やかな楽しみを見出していました。 そして、香りへの関心はその後もますます加速するばかり。もっといろんな香りを知りたい、買ってみたい、食べてみたい、楽しみたい。それもどうせ外に出られるのなら最高峰の街の、最高峰の商業施設で。というわけで今回、ここGINZA SIXでさまざまな"香り"をめぐる旅に出てみました。 まず向かったのは2Fにある「Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)」。言わずと知れたロンドン発のライフスタイル・ブランドです。1994年にロンドンで誕生し、コロンをはじめ、バス&ボディやホームコレクション等を通して香りに包まれたシンプルで洗練された、豊かなライフスタイルを提案し続けています。僕は「Jo Malone London」の独創的な香りが好きで、キャンドルを愛用していますが、今回の狙いは香水。どんな香りとの出会いがあるのだろう。胸が高まります。 店舗内の「テイスティングバー」では、スタッフさんが一つ一つの香りを丁寧に説明してくれました。ベストセラーの「イングリッシュ ぺアー & フリージア」はその名の通り、みずみずしい洋梨とフリージアの香り。他にも「ウッド セージ & シー ソルト」や「ポピー & バーリー」など、この組み合わせでこんな香りになるのか!という驚きの連続でした。 どれもこれも素敵な香りで悩みつつも、「ダーク アンバー & ジンジャー リリー」のコロン(100ml ¥21,500 / 50ml ¥15,000 ※以下全て税抜価格)を購入。日本伝統の香道からインスパイアを受けたシリーズで、伽羅のリラックスした香りが特徴です。トップノート、ハートノート、ラストノートとで香りの表情が異なるところもまた魅力の一つ。今回はこちらの一本しか購入しませんでしたが、「Jo Malone London」のアイテムは“セント ペアリング”と言って、“香りの重ねづけ”がOK。今度はハンドクリームあたりを狙ってみようと思います。 ショッパーはお馴染みのクリーム色のボックスにブラックリボン。あらためて考えると黒のリボンをショッパーに採用するって攻めてるなぁと思ったり。いい香りを片手に忍ばせお次は6Fの「銀座 蔦屋書店」へと向かいます。 「銀座 蔦屋書店」は僕が大好きな本屋です。好きなポイントは多々あれど、ヴィンテージのアートブックや写真集を扱っているのもその理由の一つ。今日はここで古本特有のあの香りを楽しみつつ、香りにまつわる本も探していこうと思います。 まずはヴィンテージブックのエリアへ。この本棚にはお店の中でも一番貴重なタイトルが並んでいます。ガラスの扉戸を開くと、どこか懐かしみのある香りがふわっと漂ってきました。並んでいるのはヨーゼフ・ボイスの『Coyote』にピカソの『A Los Tros』、『松本俊介素描』…どれもいつかは手に入れたい素晴らしい本ばかり。装丁やタイトルを眺めるだけでも幸せな気持ちになります。 とりわけ気になったのは大竹伸朗さんが1994年に求龍堂より出版された『カスバの男 モロッコ日記』の特装版(145,000円)。内容はもちろんのこと、その丁寧かつ飛ばしまくっている装丁があまりにもカッコよかったです(権利の関係できちんと見せられないのが残念)。編集は全盛期の『POPEYE』『BRUTUS』で活躍し『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(筑摩書房)で木村伊兵衛写真賞を受賞した都築響一さん。僕も紙を扱う編集者の端くれとして、いつかこんな素晴らしい本を作ってみたいと思いました。 ファッション雑誌のコーナーでは、僕が制作している雑誌『VOSTOK』も発見!バックナンバーがすべて揃っている上、とても丁寧なキャプション付きで感動しました。「銀座 蔦屋書店」のみなさんにはただただ感謝です。自費出版で雑誌を作っていると、紙媒体はこういう書店や書店員さんの存在に本当に助けられているなと実感します。海外のファッション誌の真似事じゃない、日本人にしか出来ないオリジナリティのあるファッション誌を作ろうと思って始めた『VOSTOK』。毎号これでもかというぐらい心血を注いでいるので、こうして完成して並べられているのを見るとやはり感無量です。ちなみに表紙は左から奥山由之さん、髙橋恭司さん、細倉真弓さんに撮影して頂きました。 ファッション雑誌エリアの斜向かいに、香りにまつわる本を揃えた一角がありました。香草やホールスパイスの図鑑から、歴代のメゾンが発表した名作香水のカタログまで、幅広い香りの本がズラリ。さすがのラインナップです。今回はその中から資生堂の調香師であった中村祥二さんの著書『調香師の手帖』と、南仏グラースの調香師38人の解説による『調香師が語る香料植物の図鑑』の2冊を購入。どちらもとても面白く、長い付き合いになりそうです。 香りをまとい、香りを学んだあとは、香りを食べる! ということで最後に訪れたのは、同じく6Fのインド料理専門店「TAMARIND(タマリンド)」。実はナンやタンドールなど一般的に知られているインド料理は北インド料理のこと。このお店は1986年創業の神保町にある北インド料理の名店「マンダラ」がルーツで、インドへの渡航歴50回近くを数えるオーナーが都内では珍しく、北インド料理と南インド料理のいずれも堪能できる店としてオープン。エントランスには早くもスパイスの良い香りが漂っています。 日本のインド料理店ではネパールの料理人が少なくないですが、ここでは北と南インド人5人が常駐。そのことからもお店の本気度が伺えます。オープンキッチンのような状態で、めずらしい調理器具や調理方法を直に見られるのも嬉しいポイント。 早速3品が到着!「プローン・アムリットサリー」(980円)というスパイスの効いた海老のフリットに、ヒンディ語でハンカチを意味する「ルマリロティ」(440円)という名のまさにハンカチのように折りたたんだ料理人のテクニックも味わえるパン、そして南インドの沿岸地方の「マラバール風のフィッシュカレー」(1,580円)です。 「プローン・アムリットサリー」は一口食べるたびに、海老も旨味と一緒に様々なスパイスの味や香りが口いっぱいに広がります。フィッシュカレーもフレッシュなココナッツがよく効いていて絶品。「ルマリロティ」も通常のナンより味がしっかりついていて最高でした。 最後に遅れて登場したのは「レヴァドーサ」(1,580円)というレンズ豆が入ったクリスピークレープ。すごい大きさとビジュアルです。生地にはお店の名前の由来である南インドの果実タマリンドのスパイスをはじめ、いろんなスパイスの風味を感じることが出来ました。香りも味もはじめての連続。「タマリンド」でしか味わえない料理の数々…‥近いうち絶対に再訪しようと思います。 ロンドンが産んださまざまな香りを堪能し、美しいヴィンテージブックに触れ、香りにまつわる本を買い、本格的なスパイスを効かせたインド料理に舌鼓を打つ。わずか3店舗ながらも、ここGINZA SIXで新たな”香り“を知り、楽しむことが出来ました。でも、GINZA SIXには、コーヒーサロン「GRAND CRU CAFÉ GINZA」に、ワインショップ「エノテカ」、抹茶の「辻利」に「diptyque」と、新たな“香り”と出会えるお店がまだまだたくさんあるようです。次はどのお店でどんな香りと出会えるのだろう。“香り”をめぐる旅路はまだまだ続きそうです。 Text: Sohei Oshiro Photos: Mitsutaka Omoteguchi Edit: Yuka Okada(81)

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外出自粛が続く中、家にいる時間が必然的に長くなり、気は滅入るばかり。そんな中、僕が見つけた一つの楽しみが“香り”でした。香水のエレガントな香り、古本のどこか懐かしい香り、洗剤や柔軟剤の優しい香り、スパイスカレーの刺激的な香り、ワインやウイスキーの美味しい香り。自宅にいても、日々いろんな香りを発見することで、陰鬱な自粛生活に細やかな楽しみを見出していました。
そして、香りへの関心はその後もますます加速するばかり。もっといろんな香りを知りたい、買ってみたい、食べてみたい、楽しみたい。それもどうせ外に出られるのなら最高峰の街の、最高峰の商業施設で。というわけで今回、ここGINZA SIXでさまざまな"香り"をめぐる旅に出てみました。

まず向かったのは2Fにある「Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)」。言わずと知れたロンドン発のライフスタイル・ブランドです。1994年にロンドンで誕生し、コロンをはじめ、バス&ボディやホームコレクション等を通して香りに包まれたシンプルで洗練された、豊かなライフスタイルを提案し続けています。僕は「Jo Malone London」の独創的な香りが好きで、キャンドルを愛用していますが、今回の狙いは香水。どんな香りとの出会いがあるのだろう。胸が高まります。

店舗内の「テイスティングバー」では、スタッフさんが一つ一つの香りを丁寧に説明してくれました。ベストセラーの「イングリッシュ ぺアー & フリージア」はその名の通り、みずみずしい洋梨とフリージアの香り。他にも「ウッド セージ & シー ソルト」や「ポピー & バーリー」など、この組み合わせでこんな香りになるのか!という驚きの連続でした。

どれもこれも素敵な香りで悩みつつも、「ダーク アンバー & ジンジャー リリー」のコロン(100ml ¥21,500 / 50ml ¥15,000 ※以下全て税抜価格)を購入。日本伝統の香道からインスパイアを受けたシリーズで、伽羅のリラックスした香りが特徴です。トップノート、ハートノート、ラストノートとで香りの表情が異なるところもまた魅力の一つ。今回はこちらの一本しか購入しませんでしたが、「Jo Malone London」のアイテムは“セント ペアリング”と言って、“香りの重ねづけ”がOK。今度はハンドクリームあたりを狙ってみようと思います。

ショッパーはお馴染みのクリーム色のボックスにブラックリボン。あらためて考えると黒のリボンをショッパーに採用するって攻めてるなぁと思ったり。いい香りを片手に忍ばせお次は6Fの「銀座 蔦屋書店」へと向かいます。

「銀座 蔦屋書店」は僕が大好きな本屋です。好きなポイントは多々あれど、ヴィンテージのアートブックや写真集を扱っているのもその理由の一つ。今日はここで古本特有のあの香りを楽しみつつ、香りにまつわる本も探していこうと思います。

まずはヴィンテージブックのエリアへ。この本棚にはお店の中でも一番貴重なタイトルが並んでいます。ガラスの扉戸を開くと、どこか懐かしみのある香りがふわっと漂ってきました。並んでいるのはヨーゼフ・ボイスの『Coyote』にピカソの『A Los Tros』、『松本俊介素描』…どれもいつかは手に入れたい素晴らしい本ばかり。装丁やタイトルを眺めるだけでも幸せな気持ちになります。

とりわけ気になったのは大竹伸朗さんが1994年に求龍堂より出版された『カスバの男 モロッコ日記』の特装版(145,000円)。内容はもちろんのこと、その丁寧かつ飛ばしまくっている装丁があまりにもカッコよかったです(権利の関係できちんと見せられないのが残念)。編集は全盛期の『POPEYE』『BRUTUS』で活躍し『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(筑摩書房)で木村伊兵衛写真賞を受賞した都築響一さん。僕も紙を扱う編集者の端くれとして、いつかこんな素晴らしい本を作ってみたいと思いました。

ファッション雑誌のコーナーでは、僕が制作している雑誌『VOSTOK』も発見!バックナンバーがすべて揃っている上、とても丁寧なキャプション付きで感動しました。「銀座 蔦屋書店」のみなさんにはただただ感謝です。自費出版で雑誌を作っていると、紙媒体はこういう書店や書店員さんの存在に本当に助けられているなと実感します。海外のファッション誌の真似事じゃない、日本人にしか出来ないオリジナリティのあるファッション誌を作ろうと思って始めた『VOSTOK』。毎号これでもかというぐらい心血を注いでいるので、こうして完成して並べられているのを見るとやはり感無量です。ちなみに表紙は左から奥山由之さん、髙橋恭司さん、細倉真弓さんに撮影して頂きました。

ファッション雑誌エリアの斜向かいに、香りにまつわる本を揃えた一角がありました。香草やホールスパイスの図鑑から、歴代のメゾンが発表した名作香水のカタログまで、幅広い香りの本がズラリ。さすがのラインナップです。今回はその中から資生堂の調香師であった中村祥二さんの著書『調香師の手帖』と、南仏グラースの調香師38人の解説による『調香師が語る香料植物の図鑑』の2冊を購入。どちらもとても面白く、長い付き合いになりそうです。

香りをまとい、香りを学んだあとは、香りを食べる! ということで最後に訪れたのは、同じく6Fのインド料理専門店「TAMARIND(タマリンド)」。実はナンやタンドールなど一般的に知られているインド料理は北インド料理のこと。このお店は1986年創業の神保町にある北インド料理の名店「マンダラ」がルーツで、インドへの渡航歴50回近くを数えるオーナーが都内では珍しく、北インド料理と南インド料理のいずれも堪能できる店としてオープン。エントランスには早くもスパイスの良い香りが漂っています。

日本のインド料理店ではネパールの料理人が少なくないですが、ここでは北と南インド人5人が常駐。そのことからもお店の本気度が伺えます。オープンキッチンのような状態で、めずらしい調理器具や調理方法を直に見られるのも嬉しいポイント。

早速3品が到着!「プローン・アムリットサリー」(980円)というスパイスの効いた海老のフリットに、ヒンディ語でハンカチを意味する「ルマリロティ」(440円)という名のまさにハンカチのように折りたたんだ料理人のテクニックも味わえるパン、そして南インドの沿岸地方の「マラバール風のフィッシュカレー」(1,580円)です。

「プローン・アムリットサリー」は一口食べるたびに、海老も旨味と一緒に様々なスパイスの味や香りが口いっぱいに広がります。フィッシュカレーもフレッシュなココナッツがよく効いていて絶品。「ルマリロティ」も通常のナンより味がしっかりついていて最高でした。

最後に遅れて登場したのは「レヴァドーサ」(1,580円)というレンズ豆が入ったクリスピークレープ。すごい大きさとビジュアルです。生地にはお店の名前の由来である南インドの果実タマリンドのスパイスをはじめ、いろんなスパイスの風味を感じることが出来ました。香りも味もはじめての連続。「タマリンド」でしか味わえない料理の数々…‥近いうち絶対に再訪しようと思います。

ロンドンが産んださまざまな香りを堪能し、美しいヴィンテージブックに触れ、香りにまつわる本を買い、本格的なスパイスを効かせたインド料理に舌鼓を打つ。わずか3店舗ながらも、ここGINZA SIXで新たな”香り“を知り、楽しむことが出来ました。でも、GINZA SIXには、コーヒーサロン「GRAND CRU CAFÉ GINZA」に、ワインショップ「エノテカ」、抹茶の「辻利」に「diptyque」と、新たな“香り”と出会えるお店がまだまだたくさんあるようです。次はどのお店でどんな香りと出会えるのだろう。“香り”をめぐる旅路はまだまだ続きそうです。

Text: Sohei Oshiro Photos: Mitsutaka Omoteguchi Edit: Yuka Okada(81)

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リモートワークに打ち込むための、心のスイッチを探して。 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124802 Mon, 14 Dec 2020 06:34:33 +0000 no フリーランスの編集者として働いている私にはオフィスがない。昼間は取材や撮影で出歩き、夕方以降は複数の編集部を行ったり来たり、あとは主に自宅で作業をしている。「家で仕事できるなんてすごいね」なんてよく言われたものだけれど、好む好まざるにかかわらずそうせざるを得なかった。雨の日も風の日も、やる気に満ち溢れた日も二日酔いでしんどい日も働かざる者食うべからずなフリーランスなので、何年もかけて自分なりの「快適!リモートワーク術」を身につけてきたつもりだ。 2020年、奇しくも多くの人がそれぞれ「快適!リモートワーク術」を探す年となった。仕事の内容や家族構成、家の間取りによってその答えは異なるけれど、やはりポイントとなるのは、日常と仕事が地続きのなかで“どう気持ちを切り替えるか”というところだと思う。GINZA SIXは、そんな「やる気スイッチ」(もう、これ古いですか……?)を探しに行くにはうってつけな場所だ。まず建物が立派だし。いつもの“パーカーにスニーカー”みたいな格好ではなくて、ちょっと綺麗な洋服に着替えてメイクもちゃんとして、「いざ、お出かけ!」という気持ちで踏み込みたくなる。では、いざ。 銀座の雑踏からエントランスを抜け、めくるめくGINZA SIXのお買い物の世界へ。エスカレーターでフロアを移動しているときから高揚感がある。ずっと自宅にいると、こういう“切り替えの時間”がないから、どうしてものんべんだらりとしてしまうような気がする。 向かった先は、4Fの「CIBONE CASE」。国内外のクリエイターの作品やインテリア、デザインプロダクトが並ぶ。生活感が染み付いた部屋でも、何かひとつの“物”をきっかけにムードが変わるものだ。 クリスマスシーズン真っ只中、デコレーションが施されて華やかな店内で、〈Mt.Hari〉のツリーボトルカバー(15,000円 ※以下全て税抜価格)に目を奪われてしまった。日本のお針子アーティストが、裁縫箱のなかの針山のようなインテリアアイテムを提案しているブランドだそう。一つとして同じ柄のものはなく、ふかふかで、展示されているようにワインボトルに被せるとかわいらしい。「クリスマスに飲みたいワインにこれを被せて、当日を待つのも素敵だなぁ」なんて、早くも脱線して危ない。仕事に役立つものを探さなくては。 視線を足元に落とすと、〈Hender Scheme〉のレザースリッパ(12,000円)が。これは気持ちを切り替えるのにぴったり! リモートワーク成功の第一歩は、「朝起きたら、顔を洗って着替えること」だと思っているのだが(人として当たり前なのでドヤ顔で言うことじゃないんですけど)、せっかく着替えても、足元が裸足やルームソックスではいまいち気持ちが引き締まらない。革靴の底に使っているのと同じレザーをソールに採用し、トラッドシューズのようなタッセルと白いステッチが効いているこのレザースリッパならば、外履きとの間くらいのテンションで過ごすことができる。 机についたら、傍らには自分が気に入っているマグカップや湯のみを置いておきたい。個人的な嗜好でいうと、コーヒーはもちろん日本茶も好き(緑茶のカテキンは、二日酔いの予防や改善に効果があると聞いて)で、日本茶ならばぜひ〈上出長右衛門窯〉の湯のみ(各7,000円)で飲みたい。伝統的な絵柄である“笛吹”が、ラジカセを担いでいたり、スケボーに乗っていたり、レコードを回していたり…、「これはあの人みたいだな」なんて親近感が湧いて、視界に入るとふっと心が緩むのだ。 「CIBONE CASE」は日本の作家による器の品揃えも豊かで、手作りの作品のためひとつとして同じものがない。この日手に取ったのは小野象平さんの作品(9,000円)。陶芸家・小野哲平さんを父に持ち、釉薬の原料から自ら作る作家で、この器もハッとするようなブルーの釉薬が美しい。リモートワークをしていても楽しみなのはランチタイム。仕事中のランチは極力ワンプレートで済ませたいと思うと、この器は大きさも深さも丁度良い塩梅だ。例えウーバーイーツに頼ってしまうときでも、これに盛りつければちょっと良いランチをした気持ちになるに違いない。 他にもイタリアで生まれた香りに関する実験的なプロジェクト〈LABORATORIO OLFATTIVO〉のディフューザー(8,900円)や、広島を拠点に活動する〈叢〉の多肉植物(35,000円)など、部屋のムードを底上げして居心地良い空間を作るのに一役買ってくれる物が「CIBONE CASE」ではたくさん見つかる。 本当ならば仕事部屋が持てる家に引っ越したり、仕事用の机や椅子を揃えたり、大きく環境を変えたくても誰もがすぐそうできるわけではない。でもスリッパや湯飲み、ディフューザーを変えるだけで、スイッチは切り替えられる。大切なのは、何を変えると気持ちが切り替わりやすいか自分のツボを知っておくことだと思う。 例えば、“音”もその「やる気スイッチ」のひとつかもしれない。少なくとも私にとってはかなり重要で、朝目が覚めてメールを返し終えるくらいまではラジオ、込み入った作業をしたり原稿を書くときにはインストゥルメンタル、ゴリゴリ頑張って仕事を進めないといけないときは高めのBPMで……と自分を鼓舞するためにSpotifyをフル稼働させている。次は音の環境向上を狙って、2021年2月28日まで期間限定だという2Fのプレミアムオーディオのセレクトショップ「モノとオト SIT BACK & RELAX」へと足を運んだ。 店内には、Bluetooth搭載の高音質でデザイン性にも優れたオーディオが並ぶ。スウェーデンのオーディオブランド「TRANSPARENT」のスピーカーは、各パーツがモジュール化されていることで取り外して交換できるようになっていて、サスティナビリティを実現しているのだそう。存在感のある黒いボディの「STEEL SPEAKER」(300,000円)もシックだし、強化ガラスでできた透明なタイプ「TRANSPARENT SPEAKER」(138,800円)はアートピースのようだ。 こちらはスイスのオーディオブランド「GENEVA」のもの(18,500円/24,800円)。コンパクトカメラほどの小さなサイズで、直線的でシンプルなデザインと、伸びたアンテナがどこかクラシックな印象。机の上においても邪魔にならないし、キッチンなどに置いておくのにも使い勝手が良さそう。小さいながら迫力あるサウンドで、フル充電から20時間の連続再生が可能だとか。非常用としても、持っておいて損はない。 「どれも素敵だけれど、どれが良いかさっぱり……」と頭を抱えていたら、スタッフの方があれこれ丁寧に教えてくれた。「自分たちが惚れ込んだ海外のオーディオブランドのみを正規輸入販売し、自社の取り扱い商品や面白いと思った商品をキュレーションして販売しています」ということで、もともとは同名のオンラインストアとして2017年に営業をスタート。2020年9月6日に、GINZA SIXに初のリアル店舗を出店したばかりだそうだ。 「やっぱり良い音は良い機材で聞きたい」と思い始めると、ヘッドフォンも気になるし、「Marshall」のポータブルスピーカー(59,800円)も気になってきた。あぁ、これを持ってキャンプに出かけたい……。来年は、音楽フェスに遊びに行けるのかしら……。なんてまたまた脱線し始めたので、気を引き締めて6Fの「銀座 蔦屋書店」へ。 バーン!と目の前に現れたのは大きな熊手。アーティスト・天野タケルさんと「清水屋 芸術部」のコラボレーションなんだとか。「清水屋」は大正14年に創業した埼玉三芳の老舗で、「前向きな解釈と想像力で熊手のさらなる魅力を創造する」という思いで芸術部を発足したのだそう。細々としたフリーランスながら「いつかはちゃんとした熊手がほしいな」と思っていた私は陰ながらインスタグラムなどでチェックしていたので、実物が見られて感激……。欲しい……。 大きな熊手を買えるほど商売繁盛したら良いな、なんて思うと、さすがにそろそろ家に帰って仕事に戻らなければいけない気持ちになってきた。GINZA SIXに「やる気スイッチ」をしっかりと押されたみたいだ。 帰路につく前に、「GINZA SIX ART CONTAINER」をチェック。館内8箇所のコンテナに、「新しい待ち合わせ」をコンセプトにした作品が展示されている。私が気になっていたのは、2Fにあるアーティスト・WAKUさんの作品。内側を真っ黒に塗られたコンテナの中でぼうっと光るネオン管を見つめていると一瞬時間を忘れそうになるけれど、時間を忘れている場合ではない。コンセプトボードのQRコードを読み取ると現在地を共有できるようになっているので、「次はプライベートで訪れて、ここで待ち合わせしよう」と思った。そのためにも、はやく帰ってリモートワークもっと頑張ります。 ART CONTAINER 情報はこちら Text: Rio Hirai Photos: Megumi Edit: Yuka Okada(81)

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フリーランスの編集者として働いている私にはオフィスがない。昼間は取材や撮影で出歩き、夕方以降は複数の編集部を行ったり来たり、あとは主に自宅で作業をしている。「家で仕事できるなんてすごいね」なんてよく言われたものだけれど、好む好まざるにかかわらずそうせざるを得なかった。雨の日も風の日も、やる気に満ち溢れた日も二日酔いでしんどい日も働かざる者食うべからずなフリーランスなので、何年もかけて自分なりの「快適!リモートワーク術」を身につけてきたつもりだ。

2020年、奇しくも多くの人がそれぞれ「快適!リモートワーク術」を探す年となった。仕事の内容や家族構成、家の間取りによってその答えは異なるけれど、やはりポイントとなるのは、日常と仕事が地続きのなかで“どう気持ちを切り替えるか”というところだと思う。GINZA SIXは、そんな「やる気スイッチ」(もう、これ古いですか……?)を探しに行くにはうってつけな場所だ。まず建物が立派だし。いつもの“パーカーにスニーカー”みたいな格好ではなくて、ちょっと綺麗な洋服に着替えてメイクもちゃんとして、「いざ、お出かけ!」という気持ちで踏み込みたくなる。では、いざ。

銀座の雑踏からエントランスを抜け、めくるめくGINZA SIXのお買い物の世界へ。エスカレーターでフロアを移動しているときから高揚感がある。ずっと自宅にいると、こういう“切り替えの時間”がないから、どうしてものんべんだらりとしてしまうような気がする。

向かった先は、4Fの「CIBONE CASE」。国内外のクリエイターの作品やインテリア、デザインプロダクトが並ぶ。生活感が染み付いた部屋でも、何かひとつの“物”をきっかけにムードが変わるものだ。

クリスマスシーズン真っ只中、デコレーションが施されて華やかな店内で、〈Mt.Hari〉のツリーボトルカバー(15,000円 ※以下全て税抜価格)に目を奪われてしまった。日本のお針子アーティストが、裁縫箱のなかの針山のようなインテリアアイテムを提案しているブランドだそう。一つとして同じ柄のものはなく、ふかふかで、展示されているようにワインボトルに被せるとかわいらしい。「クリスマスに飲みたいワインにこれを被せて、当日を待つのも素敵だなぁ」なんて、早くも脱線して危ない。仕事に役立つものを探さなくては。

視線を足元に落とすと、〈Hender Scheme〉のレザースリッパ(12,000円)が。これは気持ちを切り替えるのにぴったり! リモートワーク成功の第一歩は、「朝起きたら、顔を洗って着替えること」だと思っているのだが(人として当たり前なのでドヤ顔で言うことじゃないんですけど)、せっかく着替えても、足元が裸足やルームソックスではいまいち気持ちが引き締まらない。革靴の底に使っているのと同じレザーをソールに採用し、トラッドシューズのようなタッセルと白いステッチが効いているこのレザースリッパならば、外履きとの間くらいのテンションで過ごすことができる。

机についたら、傍らには自分が気に入っているマグカップや湯のみを置いておきたい。個人的な嗜好でいうと、コーヒーはもちろん日本茶も好き(緑茶のカテキンは、二日酔いの予防や改善に効果があると聞いて)で、日本茶ならばぜひ〈上出長右衛門窯〉の湯のみ(各7,000円)で飲みたい。伝統的な絵柄である“笛吹”が、ラジカセを担いでいたり、スケボーに乗っていたり、レコードを回していたり…、「これはあの人みたいだな」なんて親近感が湧いて、視界に入るとふっと心が緩むのだ。

「CIBONE CASE」は日本の作家による器の品揃えも豊かで、手作りの作品のためひとつとして同じものがない。この日手に取ったのは小野象平さんの作品(9,000円)。陶芸家・小野哲平さんを父に持ち、釉薬の原料から自ら作る作家で、この器もハッとするようなブルーの釉薬が美しい。リモートワークをしていても楽しみなのはランチタイム。仕事中のランチは極力ワンプレートで済ませたいと思うと、この器は大きさも深さも丁度良い塩梅だ。例えウーバーイーツに頼ってしまうときでも、これに盛りつければちょっと良いランチをした気持ちになるに違いない。

他にもイタリアで生まれた香りに関する実験的なプロジェクト〈LABORATORIO OLFATTIVO〉のディフューザー(8,900円)や、広島を拠点に活動する〈叢〉の多肉植物(35,000円)など、部屋のムードを底上げして居心地良い空間を作るのに一役買ってくれる物が「CIBONE CASE」ではたくさん見つかる。

本当ならば仕事部屋が持てる家に引っ越したり、仕事用の机や椅子を揃えたり、大きく環境を変えたくても誰もがすぐそうできるわけではない。でもスリッパや湯飲み、ディフューザーを変えるだけで、スイッチは切り替えられる。大切なのは、何を変えると気持ちが切り替わりやすいか自分のツボを知っておくことだと思う。

例えば、“音”もその「やる気スイッチ」のひとつかもしれない。少なくとも私にとってはかなり重要で、朝目が覚めてメールを返し終えるくらいまではラジオ、込み入った作業をしたり原稿を書くときにはインストゥルメンタル、ゴリゴリ頑張って仕事を進めないといけないときは高めのBPMで……と自分を鼓舞するためにSpotifyをフル稼働させている。次は音の環境向上を狙って、2021年2月28日まで期間限定だという2Fのプレミアムオーディオのセレクトショップ「モノとオト SIT BACK & RELAX」へと足を運んだ。

店内には、Bluetooth搭載の高音質でデザイン性にも優れたオーディオが並ぶ。スウェーデンのオーディオブランド「TRANSPARENT」のスピーカーは、各パーツがモジュール化されていることで取り外して交換できるようになっていて、サスティナビリティを実現しているのだそう。存在感のある黒いボディの「STEEL SPEAKER」(300,000円)もシックだし、強化ガラスでできた透明なタイプ「TRANSPARENT SPEAKER」(138,800円)はアートピースのようだ。

こちらはスイスのオーディオブランド「GENEVA」のもの(18,500円/24,800円)。コンパクトカメラほどの小さなサイズで、直線的でシンプルなデザインと、伸びたアンテナがどこかクラシックな印象。机の上においても邪魔にならないし、キッチンなどに置いておくのにも使い勝手が良さそう。小さいながら迫力あるサウンドで、フル充電から20時間の連続再生が可能だとか。非常用としても、持っておいて損はない。

「どれも素敵だけれど、どれが良いかさっぱり……」と頭を抱えていたら、スタッフの方があれこれ丁寧に教えてくれた。「自分たちが惚れ込んだ海外のオーディオブランドのみを正規輸入販売し、自社の取り扱い商品や面白いと思った商品をキュレーションして販売しています」ということで、もともとは同名のオンラインストアとして2017年に営業をスタート。2020年9月6日に、GINZA SIXに初のリアル店舗を出店したばかりだそうだ。

「やっぱり良い音は良い機材で聞きたい」と思い始めると、ヘッドフォンも気になるし、「Marshall」のポータブルスピーカー(59,800円)も気になってきた。あぁ、これを持ってキャンプに出かけたい……。来年は、音楽フェスに遊びに行けるのかしら……。なんてまたまた脱線し始めたので、気を引き締めて6Fの「銀座 蔦屋書店」へ。

バーン!と目の前に現れたのは大きな熊手。アーティスト・天野タケルさんと「清水屋 芸術部」のコラボレーションなんだとか。「清水屋」は大正14年に創業した埼玉三芳の老舗で、「前向きな解釈と想像力で熊手のさらなる魅力を創造する」という思いで芸術部を発足したのだそう。細々としたフリーランスながら「いつかはちゃんとした熊手がほしいな」と思っていた私は陰ながらインスタグラムなどでチェックしていたので、実物が見られて感激……。欲しい……。

大きな熊手を買えるほど商売繁盛したら良いな、なんて思うと、さすがにそろそろ家に帰って仕事に戻らなければいけない気持ちになってきた。GINZA SIXに「やる気スイッチ」をしっかりと押されたみたいだ。

帰路につく前に、「GINZA SIX ART CONTAINER」をチェック。館内8箇所のコンテナに、「新しい待ち合わせ」をコンセプトにした作品が展示されている。私が気になっていたのは、2Fにあるアーティスト・WAKUさんの作品。内側を真っ黒に塗られたコンテナの中でぼうっと光るネオン管を見つめていると一瞬時間を忘れそうになるけれど、時間を忘れている場合ではない。コンセプトボードのQRコードを読み取ると現在地を共有できるようになっているので、「次はプライベートで訪れて、ここで待ち合わせしよう」と思った。そのためにも、はやく帰ってリモートワークもっと頑張ります。

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Text: Rio Hirai Photos: Megumi Edit: Yuka Okada(81)

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ドラマ「フレンズ」再考〜90’sフレーバーを散りばめて https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124803 Tue, 24 Nov 2020 02:27:30 +0000 no 世は空前の90年代ブーム。いやまあ、空前は言い過ぎでも、どこかで“90’sムードで着こなして”とか“90年代的スポーツMIX”みたいなワードを見かけたことがあるかと。ファッションは巡るというが、90年代の着こなしは今のシーンを代表するもののひとつ。で、その90年代を代表するドラマといえば「フレンズ」で決まり。こちらは正真正銘の空前の一大ブームを巻き起こし、全米視聴者数ランキングにおいて、1994年にスタートした最初のシーズンから2004年の最終シーズンまで、常に年間トップ10に入っていたそう。 舞台はニューヨーク。大人と呼ぶにはまだ早い、かといって年齢的には社会人としての務めも果たさなければならない、そんな年頃の男女6人が、恋愛に友情に(時折仕事に)ゆるーく奮闘する。ヒットの理由として個人的には、シットバックアンドリラックスして見られるゆるさと、モラトリアム的な欲求を解消してくれる点、そして徐々に大人になっていく過程を”あるある〜”と共感させてくれるところにあると思う。その後、ファッションが視聴者を引きつけるようになるまでには、ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の登場を待たなければならなかった。 とはいえ、である。とにかく、フレンズの登場人物が着こなすファッションはめちゃくちゃかわいい。めちゃくちゃ今っぽい。王道の90’s。もちろん「フレンズ」ファッションが今っぽく見えるのは、ファッション業界全体のマーケティングのひとつとして、いわばこちらが洗脳された結果ではあるのだが、そんなの関係ねえ。かわいいものはかわいいのだ。 と、前置きが長くなったが、今回はトレンドドンズバの90’s「フレンズ」ファッションをGINZA SIXで探してみようと思う。 まず向かったのは、ニューヨークコレクションの雄である3Fの「rag & bone(ラグ アンド ボーン)」。デニムから始まったブランドらしく、肩肘張らないカジュアルウエアが得意。都会的で、気取ってないけど洒落て見える、つまり着ているだけでこなれ感を演出できる希少なブランドだ。各ブランド右にならえの状態だったビッグシルエットの潮流にも、スパイスとして取り入れるくらいのスタンスを貫き、実にクールだった。 誇張ではなく、ラックのすべてが実に旬で今っぽい。しかも「フレンズ」のメインキャラクターであるレイチェルやモニカの着こなしを思わせるようなアイテムが揃っている。外せないのは、クロップド丈のカットソーやニット類だ。おへそが出るくらいギリギリの短丈トップスにハイウエストのデニムを合わせるのが気分(というか90年代っぽい)。洗いがかかったブルーウォッシュであれば、なおエフォートレス。上部を鮮やかなブルーで切り替えたボーダーのニット(37,000円 ※以下全て税抜価格)はコンパクトなシルエットで、ヘルシーな魅力を引き出してくれる。 ぱっと見はダメージジーンズに見えるパンツ(28,000円)は、実はスウェット(!)。精巧な転写プリント技術を駆使したアイテムだが、これも今にぴったりなアクティブ感を演出してくれる。はき心地もラクそうだし。上からばさっとマニッシュなコートを羽織れば、あなたもレイチェルだ。 裾を切りっぱなしにしたブーツカットジーンズ(28,000円)も、ラフな抜け感があっていい。そう、90年代のファッションを言葉にすれば“力が抜けている”“気取りのない”などがしっくりくる。これはニューノーマルな生活様式のもと、着心地やリラックス感が重要視されたことで、そのムードはますます顕著なものになっていると思う。 隣のメンズフロアでは、アウターに注目。迷いなく手に取ったのはブラックのMA-1(75,000円)。元来ミリタリーアイテムゆえ、丸みを帯びたシルエットのものが主流だが、こちらは程よくタイトなシルエットに、ややかっちりとしたショルダーで、すっきりと着用できる。「ビッグシルエット、飽きました」なんて一歩先ゆくお洒落さんには特におすすめしたい。実はクリエイティブ・ディレクターのマーカス・ウェインライトはテイラード文化が根付く英国出身。どこか保守的なエレガンスが漂うのもうなずける。 襟ボア付きのワークジャケット(75,000円)は両A面のリバーシブル仕様。ネイビーの方でシックに見せるもよし、パキッとしたオレンジのナイロンで遊んでもよしだ。 同じニューヨークコレクションつながりで、次は4Fの「HELMUT LANG(ヘルムート ラング)」へ。デザイナーのヘルムート・ラングは元々ヨーロッパで活動していたが、1997年に拠点をニューヨークに移し(奇しくも「フレンズ」フィーバー真っ只中)、同年セカンドラインである「ヘルムート ラング ジーンズ」を発表。このコレクションラインがめちゃくちゃかっこよかった。カジュアルアイテムをミニマルに見せるという型破りなアプローチ。アイボリーのジャケットに、同色のバギーデニムを合わせるなど、今でこそ当たり前になった街着としてのワントーンスタイルの源流はここにあるのではないかと、過去のコレクションルックを眺めながら思う。 現在の「ヘルムート ラング」も、当時に通じる洗練された空気感を持っている。ここでいう洗練とは、前述したように“堅苦しくないけど洒落ている”というもの。店内を見回しても、やっぱりトップスは短丈のアイテムが多い。店員さんに伺うと、今年はブランドとしてもプッシュしているそう。ピックアップしたシームレスジャージのキャミソール(15,000円)はタートルネックセーターや、シャツワンピースの上に重ねれば手軽にレディなムードを高めることができる。ボトムスはやっぱりブルーウォッシュのデニム(54,000円)がかわいい。 メンズのアイテムでは、グレーのレザーブルゾン(130,000円)に目が止まる。というのも、ロスやチャンドラーといったフレンズにおけるメンズキャラクターの秋冬スタイルで、レザーブルゾン×ニット×デニムの登場率は7割強に上るからだ(自分調べ)。シルエットのみならず、襟やポケットのフラップ、袖口などは直線的に仕上げてあって、ミニマルさを後押しする。探すとなかなかないパステルグレーの色も親しみがあっていい。インナーのニット(47,000円)は、モノトーンをベースにカラフルな糸がミックスされたミドルゲージのもの。スリーブの中央に切れ目があって、曲げるとそこから肘が見えるという往年のディテールを採用している。昔からのファンにはたまらない逸品だ。ボトムスはペインターパンツっぽいデザインのワンウォッシュデニム(35,000円)をチョイス。腰履きすれば、よりハマる。生気の抜けた表情も当時のランウェイを歩いたモデルに敬意を表している(ということにしておく)。 90’sファッションにどっぷり浸って、すっかり「フレンズ」気分。ちなみに、ドラマの中では「セントラル パーク」というカフェが登場し、ここがみんなの溜まり場となる。物語の代名詞の一つだ。GINZA SIXにもたくさんのカフェがある。さて、締めの一杯はどこにしよう。ドラマのカフェはデイリーに使えるカジュアルな雰囲気。「フレンズ」気分で寛げるカフェもたくさんあるけど、いい機会だしラグジュアリーに遊んでみたい。というわけで、空気が変わるといわれる13Fの「GRAND CRU CAFÉ GINZA(グラン クリュ カフェ ギンザ)」へ。 ここは、コーヒーハンターの異名を持つJosé. 川島良彰さんの40年以上にわたる知識や経験を尽くして生まれたお店。農園、樹の選別、精選、焙煎、保管方法や包装形態など、畑から銀座までの全工程に、José. 川島さんのこだわりが詰まっている。店内の雰囲気もめちゃくちゃお洒落。壁一面が高級感のあるレザーで覆われている。いわゆるベジタブルタンニンでなめされた柔らかい手触りのレザーだから、艶っぽくなく、レトロなシャンデリアと相まって、ラグジュアリーだけど落ち着ける、そんな空間になっている。 ビジター利用もできるが基本的には会員制。バーみたいにコーヒー豆をキープして利用する。焙煎豆100グラム入りボトルを1本単位で購入、そのボトルからコーヒーを淹れてもらうシステム(最大6杯)。大体1本1万円からで、高いものだと10万円超えのボトルもあるという。身分に照らすと完全に背伸び。でも、話の種にもなるし、普段は味わえないような特別な体験ができる。ボトルキープは2週間可能で、再来店時の追加料金はかからず、サロンを利用できる。 さっきからさらっとボトルと書いているが、豆が実際にボトルに入っているのだ(!)。特別に卸してもらったというシャンパンボトルの、その開封時から“儀式”は始まっていて、エバンジェリストの長谷川宗佑さんが開栓したての豆のフレーバーを嗅がせてくれる。シャンパンのようにポンとコルクを抜くと、フレッシュな香りが広がって、思わず笑みが。 選んだのは、コロンビアのランチェリア農園で栽培されたもの(1本10,000円)。市場にはなかなか出回らないという、もはや幻となってしまった純正の「ティピカ」種を特別に出していただいた。丁寧にドリップしてもらって…いやいや、サーブされるカップ&ソーサーの美しさよ。こちらは国内外に多くのコレクターを持つ「オールドノリタケ」のアンティークもの。お客さんの雰囲気に合わせて選んでいるというが、僕のものは黄金の龍が白磁を舞い、赤と緑の輝石が随所に散りばめられていて、もはやアート。口にはこぶ前からテンションが上がる。 そして、一口すすると…これが至極上品。チョコレートのような甘みがあって、後から軽やかな苦みが顔を覗かせる、そんな感じ。窓際のカウンターからは東銀座の街並みが見下ろせ、この風景を眺めながら飲むコーヒーは格別だった。ここで写真を撮ると、誰もが気取った感じになるのは間違いない。思わず遠い目をしてカッコつけてしまった。 コーヒーの香りに後ろ髪引かれながら、帰途へ。と、帰る途中で、不思議なコンテナを見つけた。中にはアーティストの玉山拓郎さんによるミニマルでコンセプチュアルなアートが。解説を見ればアートコンテナといって、8人のアーティスト&クリエーターが、様々なサイズのコンテナで“新しい待ち合わせ”をテーマに作品を作り、これが来年の2月23日まで、館内のいろんなところに設置されているという。「18時、〇〇さんの作品の前で」とだけメッセージを打って、スマホをしまい、ケータイがなかった頃の待ち合わせを試してみても面白い。待っている間は、コンテナを彩るアートとにらめっこだ。 今回は、極私的な目線で長々と紹介させていただいた。が、ぶっちゃけ、今はファッションのことなんて考えられない、という方も少なくないと思う。お洒落して出かけていく機会も少なくなった。だから、無理矢理お洒落する必要もないと思う。今はそういう時期。でも、洋服たちは待っている。思い出して欲しい、生地に、仕立てに、シルエットに心惹かれ、店員さんや友人とあーでもこーでもない言いながら試行錯誤を重ねて買った服に、袖を通した瞬間を。お気に入りの服を着た自分がビルのガラスに映って、思わず気分が上がった瞬間を。 服には力がある。決しておおげさではなく、そう信じている。服が持つパワーを享受しに、来れる方は今週末にでも、そうでない方は気が進む時に。そして改めて、目一杯おめかしして銀座の街を歩いてみてほしい。お気に入りの服を着た自分がビルのガラスに映る、そしてそのビルがGINZA SIXであったなら―書き手として、これ以上うれしいことはない。 ART CONTAINER 情報はこちら Text: Ryuta Morishita Photos: Takanori Hayashi Edit: Yuka Okada(81)

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世は空前の90年代ブーム。いやまあ、空前は言い過ぎでも、どこかで“90’sムードで着こなして”とか“90年代的スポーツMIX”みたいなワードを見かけたことがあるかと。ファッションは巡るというが、90年代の着こなしは今のシーンを代表するもののひとつ。で、その90年代を代表するドラマといえば「フレンズ」で決まり。こちらは正真正銘の空前の一大ブームを巻き起こし、全米視聴者数ランキングにおいて、1994年にスタートした最初のシーズンから2004年の最終シーズンまで、常に年間トップ10に入っていたそう。

舞台はニューヨーク。大人と呼ぶにはまだ早い、かといって年齢的には社会人としての務めも果たさなければならない、そんな年頃の男女6人が、恋愛に友情に(時折仕事に)ゆるーく奮闘する。ヒットの理由として個人的には、シットバックアンドリラックスして見られるゆるさと、モラトリアム的な欲求を解消してくれる点、そして徐々に大人になっていく過程を”あるある〜”と共感させてくれるところにあると思う。その後、ファッションが視聴者を引きつけるようになるまでには、ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の登場を待たなければならなかった。

とはいえ、である。とにかく、フレンズの登場人物が着こなすファッションはめちゃくちゃかわいい。めちゃくちゃ今っぽい。王道の90’s。もちろん「フレンズ」ファッションが今っぽく見えるのは、ファッション業界全体のマーケティングのひとつとして、いわばこちらが洗脳された結果ではあるのだが、そんなの関係ねえ。かわいいものはかわいいのだ。

と、前置きが長くなったが、今回はトレンドドンズバの90’s「フレンズ」ファッションをGINZA SIXで探してみようと思う。

まず向かったのは、ニューヨークコレクションの雄である3Fの「rag & bone(ラグ アンド ボーン)」。デニムから始まったブランドらしく、肩肘張らないカジュアルウエアが得意。都会的で、気取ってないけど洒落て見える、つまり着ているだけでこなれ感を演出できる希少なブランドだ。各ブランド右にならえの状態だったビッグシルエットの潮流にも、スパイスとして取り入れるくらいのスタンスを貫き、実にクールだった。

誇張ではなく、ラックのすべてが実に旬で今っぽい。しかも「フレンズ」のメインキャラクターであるレイチェルやモニカの着こなしを思わせるようなアイテムが揃っている。外せないのは、クロップド丈のカットソーやニット類だ。おへそが出るくらいギリギリの短丈トップスにハイウエストのデニムを合わせるのが気分(というか90年代っぽい)。洗いがかかったブルーウォッシュであれば、なおエフォートレス。上部を鮮やかなブルーで切り替えたボーダーのニット(37,000円 ※以下全て税抜価格)はコンパクトなシルエットで、ヘルシーな魅力を引き出してくれる。

ぱっと見はダメージジーンズに見えるパンツ(28,000円)は、実はスウェット(!)。精巧な転写プリント技術を駆使したアイテムだが、これも今にぴったりなアクティブ感を演出してくれる。はき心地もラクそうだし。上からばさっとマニッシュなコートを羽織れば、あなたもレイチェルだ。

裾を切りっぱなしにしたブーツカットジーンズ(28,000円)も、ラフな抜け感があっていい。そう、90年代のファッションを言葉にすれば“力が抜けている”“気取りのない”などがしっくりくる。これはニューノーマルな生活様式のもと、着心地やリラックス感が重要視されたことで、そのムードはますます顕著なものになっていると思う。

隣のメンズフロアでは、アウターに注目。迷いなく手に取ったのはブラックのMA-1(75,000円)。元来ミリタリーアイテムゆえ、丸みを帯びたシルエットのものが主流だが、こちらは程よくタイトなシルエットに、ややかっちりとしたショルダーで、すっきりと着用できる。「ビッグシルエット、飽きました」なんて一歩先ゆくお洒落さんには特におすすめしたい。実はクリエイティブ・ディレクターのマーカス・ウェインライトはテイラード文化が根付く英国出身。どこか保守的なエレガンスが漂うのもうなずける。

襟ボア付きのワークジャケット(75,000円)は両A面のリバーシブル仕様。ネイビーの方でシックに見せるもよし、パキッとしたオレンジのナイロンで遊んでもよしだ。

同じニューヨークコレクションつながりで、次は4Fの「HELMUT LANG(ヘルムート ラング)」へ。デザイナーのヘルムート・ラングは元々ヨーロッパで活動していたが、1997年に拠点をニューヨークに移し(奇しくも「フレンズ」フィーバー真っ只中)、同年セカンドラインである「ヘルムート ラング ジーンズ」を発表。このコレクションラインがめちゃくちゃかっこよかった。カジュアルアイテムをミニマルに見せるという型破りなアプローチ。アイボリーのジャケットに、同色のバギーデニムを合わせるなど、今でこそ当たり前になった街着としてのワントーンスタイルの源流はここにあるのではないかと、過去のコレクションルックを眺めながら思う。

現在の「ヘルムート ラング」も、当時に通じる洗練された空気感を持っている。ここでいう洗練とは、前述したように“堅苦しくないけど洒落ている”というもの。店内を見回しても、やっぱりトップスは短丈のアイテムが多い。店員さんに伺うと、今年はブランドとしてもプッシュしているそう。ピックアップしたシームレスジャージのキャミソール(15,000円)はタートルネックセーターや、シャツワンピースの上に重ねれば手軽にレディなムードを高めることができる。ボトムスはやっぱりブルーウォッシュのデニム(54,000円)がかわいい。

メンズのアイテムでは、グレーのレザーブルゾン(130,000円)に目が止まる。というのも、ロスやチャンドラーといったフレンズにおけるメンズキャラクターの秋冬スタイルで、レザーブルゾン×ニット×デニムの登場率は7割強に上るからだ(自分調べ)。シルエットのみならず、襟やポケットのフラップ、袖口などは直線的に仕上げてあって、ミニマルさを後押しする。探すとなかなかないパステルグレーの色も親しみがあっていい。インナーのニット(47,000円)は、モノトーンをベースにカラフルな糸がミックスされたミドルゲージのもの。スリーブの中央に切れ目があって、曲げるとそこから肘が見えるという往年のディテールを採用している。昔からのファンにはたまらない逸品だ。ボトムスはペインターパンツっぽいデザインのワンウォッシュデニム(35,000円)をチョイス。腰履きすれば、よりハマる。生気の抜けた表情も当時のランウェイを歩いたモデルに敬意を表している(ということにしておく)。

90’sファッションにどっぷり浸って、すっかり「フレンズ」気分。ちなみに、ドラマの中では「セントラル パーク」というカフェが登場し、ここがみんなの溜まり場となる。物語の代名詞の一つだ。GINZA SIXにもたくさんのカフェがある。さて、締めの一杯はどこにしよう。ドラマのカフェはデイリーに使えるカジュアルな雰囲気。「フレンズ」気分で寛げるカフェもたくさんあるけど、いい機会だしラグジュアリーに遊んでみたい。というわけで、空気が変わるといわれる13Fの「GRAND CRU CAFÉ GINZA(グラン クリュ カフェ ギンザ)」へ。

ここは、コーヒーハンターの異名を持つJosé. 川島良彰さんの40年以上にわたる知識や経験を尽くして生まれたお店。農園、樹の選別、精選、焙煎、保管方法や包装形態など、畑から銀座までの全工程に、José. 川島さんのこだわりが詰まっている。店内の雰囲気もめちゃくちゃお洒落。壁一面が高級感のあるレザーで覆われている。いわゆるベジタブルタンニンでなめされた柔らかい手触りのレザーだから、艶っぽくなく、レトロなシャンデリアと相まって、ラグジュアリーだけど落ち着ける、そんな空間になっている。

ビジター利用もできるが基本的には会員制。バーみたいにコーヒー豆をキープして利用する。焙煎豆100グラム入りボトルを1本単位で購入、そのボトルからコーヒーを淹れてもらうシステム(最大6杯)。大体1本1万円からで、高いものだと10万円超えのボトルもあるという。身分に照らすと完全に背伸び。でも、話の種にもなるし、普段は味わえないような特別な体験ができる。ボトルキープは2週間可能で、再来店時の追加料金はかからず、サロンを利用できる。

さっきからさらっとボトルと書いているが、豆が実際にボトルに入っているのだ(!)。特別に卸してもらったというシャンパンボトルの、その開封時から“儀式”は始まっていて、エバンジェリストの長谷川宗佑さんが開栓したての豆のフレーバーを嗅がせてくれる。シャンパンのようにポンとコルクを抜くと、フレッシュな香りが広がって、思わず笑みが。

選んだのは、コロンビアのランチェリア農園で栽培されたもの(1本10,000円)。市場にはなかなか出回らないという、もはや幻となってしまった純正の「ティピカ」種を特別に出していただいた。丁寧にドリップしてもらって…いやいや、サーブされるカップ&ソーサーの美しさよ。こちらは国内外に多くのコレクターを持つ「オールドノリタケ」のアンティークもの。お客さんの雰囲気に合わせて選んでいるというが、僕のものは黄金の龍が白磁を舞い、赤と緑の輝石が随所に散りばめられていて、もはやアート。口にはこぶ前からテンションが上がる。

そして、一口すすると…これが至極上品。チョコレートのような甘みがあって、後から軽やかな苦みが顔を覗かせる、そんな感じ。窓際のカウンターからは東銀座の街並みが見下ろせ、この風景を眺めながら飲むコーヒーは格別だった。ここで写真を撮ると、誰もが気取った感じになるのは間違いない。思わず遠い目をしてカッコつけてしまった。

コーヒーの香りに後ろ髪引かれながら、帰途へ。と、帰る途中で、不思議なコンテナを見つけた。中にはアーティストの玉山拓郎さんによるミニマルでコンセプチュアルなアートが。解説を見ればアートコンテナといって、8人のアーティスト&クリエーターが、様々なサイズのコンテナで“新しい待ち合わせ”をテーマに作品を作り、これが来年の2月23日まで、館内のいろんなところに設置されているという。「18時、〇〇さんの作品の前で」とだけメッセージを打って、スマホをしまい、ケータイがなかった頃の待ち合わせを試してみても面白い。待っている間は、コンテナを彩るアートとにらめっこだ。

今回は、極私的な目線で長々と紹介させていただいた。が、ぶっちゃけ、今はファッションのことなんて考えられない、という方も少なくないと思う。お洒落して出かけていく機会も少なくなった。だから、無理矢理お洒落する必要もないと思う。今はそういう時期。でも、洋服たちは待っている。思い出して欲しい、生地に、仕立てに、シルエットに心惹かれ、店員さんや友人とあーでもこーでもない言いながら試行錯誤を重ねて買った服に、袖を通した瞬間を。お気に入りの服を着た自分がビルのガラスに映って、思わず気分が上がった瞬間を。

服には力がある。決しておおげさではなく、そう信じている。服が持つパワーを享受しに、来れる方は今週末にでも、そうでない方は気が進む時に。そして改めて、目一杯おめかしして銀座の街を歩いてみてほしい。お気に入りの服を着た自分がビルのガラスに映る、そしてそのビルがGINZA SIXであったなら―書き手として、これ以上うれしいことはない。

ART CONTAINER
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Text: Ryuta Morishita Photos: Takanori Hayashi Edit: Yuka Okada(81)

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銀座でおいしい旅をする https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124804 Tue, 08 Sep 2020 07:17:58 +0000 no 旅に出たい。おこもりの春を経て、夏らしいこともできないまま、あっという間に秋の気配。そろそろどこかに出かけたい…とソワソワしてしまうのも仕方ない。旅の醍醐味はやっぱり、その土地ならではの景色や人、味との出会いだ。とりわけ、食いしん坊の私にとって旅の目的は1にも2にも3にも「食」。そこでしか食べられないおいしいものを求めて、その土地へ行くことだってしょっちゅうなのだ。 なかなか旅ができない今、私の「旅」欲と、「食いしん坊」欲を一気に満たしてくれる場所が銀座にある。GINZA SIXのB2F。北は北海道、南は福岡県まで、全国各地のおいしいものがそろう。食いしん坊編集者としていわゆる「デパ地下」事情をいろいろ見てきたけれど、これほど心ときめくラインナップはほかにない。お弁当からスイーツ、ドリンクまで、気のきいた、かつセンスがいい手土産が買えるのはもちろん、自分のためのご褒美品、家時間が楽しくなるおいしいものがそろいすぎていて、ここに来たら決まって散財してしまう。ああ、なんて罪な場所…。 というわけで、今回は「おいしい旅」をテーマにGINZA SIXのB2Fを駆け巡った。この旅がもう、楽しすぎて! このプラン、あと6案は立てることができると断言する。 まず、最初に訪れたのは、「10FACTORY」。みかん色の美しいグラデーションに、テンション爆上がり。愛媛県・松山市に本店があるこちらは、日本一の柑橘王国・愛媛県のみかん産業をもりあげるべく誕生したブランドで、ジュースからジャム、ゼリー、ドライフルーツやはちみつなどラインナップが豊富。 ジュースが並ぶ棚を穴があくほど見つめた後は、ゼリーコーナーへ。まるでゼリーの花が咲き乱れたようなお花畑(私にはそう見えた)にうっとり。本当は全種類、購入したいところをぐっとこらえているのが、真剣な表情からうかがえる。 「愛媛県・松山を旅した気分になれるジュースを選ぶなら?」とスタッフの方を質問攻めにしながら選んだ3本。右から、伊予柑、甘平、果試28号。愛媛を代表する品種「伊予柑」(500円 ※以下全て税抜価格)は甘さと酸味のバランスが完璧、ザ・みかんの味。続く「甘平」(704円)は、極上の甘さが特徴。育てるのが難しく、希少な愛媛県オリジナル品種だそう。最後に飲んだ「果試28号」(704円)も愛媛県オリジナル品種。桃のような風味漂うトロピカルな甘みがたまりません! 気分はすでに愛媛なう。 さて、旅といったら駅弁。キューピーが何か持っている…? 駅弁といったら「荻野屋」の「峠の釜めし」! 群馬県や長野県方面に出かけた際、見かけたらいつも条件反射で買ってしまう。(キューピーが持っていたのは「峠の釜めし」でした) 銀座という場所で、まさか「峠の釜めし」が買えるなんて…。ずっしりと重いのは、ぎっしりと入ったおかずとご飯はもちろん、容器が立派な益子焼の土鍋だから。旅の記念にと、毎回捨てずに持ち帰るため、家にはこの空き釜がたくさんある。自宅で直接火にかけて、ご飯が炊けて便利。オレンジ色の包装紙をそっとあけ、釜のふたを開けた瞬間、栗や鶏肉、うずらや杏が美しく並ぶ姿は、何度見ても高揚する。 1958年、信越本線の横川駅開業と同時に誕生した名物駅弁「峠の釜めし」(1,019円)。当時、保温性が高い土鍋に入った駅弁は画期的だったとか。最近では、環境に配慮した紙の容器も登場。サトウキビのしぼりかすを使った非木材パルプ製。55年以上愛されるロングセラーも、こうやって時代とともに変化する。これぞ、老舗。 続いて旅したのは、北海道。北海道土産の定番といえば「白い恋人」ですが、こちらはその「白い恋人」でおなじみの「石屋製菓」が展開するお店、その名も「ISHIYA GINZA」。北海道を感じられるお菓子をテーマに、道外でしか買えない商品が話題に。北海道民が東京土産にこちらのお菓子をおねだりすることもあるらしく、素敵な逆輸入現象が起きているらしい。 キャラメル、北海道チーズ、北海道ワインなど、北海道産の素材にこだわった6種の味わいのチョコレートを、色とりどりのラング・ド・シャでサンドした「サク」が一番人気。まさに「白い恋人」のDNAを受け継いだお菓子だが、何よりときめくのは、この美しい箱! 各フレーバーや北海道の草花がモチーフとなった柄がタイルのように敷き詰められたカラフルな箱は上品で、プレゼントにも最適。といいつつ、あまりに素敵なので自分用にと我を忘れて箱を積み上げる私。ワインと一緒に「サク」を楽しんだ後は、この箱、なんに使おうか…? もう、ワクワクがとまらない。 おっとここで、シルバーとブルーにきらめく箱を発見! こちらは新登場の「ザク」(1,000円)。こだわりのチョコレートを、ラング・ド・シャでくるりと巻き上げた逸品。 チョコレートをベストな状態で持ち運びしたい。そんな食いしん坊の願望をしかと受け止める、すばらしいアイテムが誕生。そう、保冷バッグ(700円)。6種の「サク」が入ったアソートのパッケージに使われている水色の愛らしい柄のバッグに、北海道気分満載のお菓子を詰め込んでルンルン、ご満悦のこの笑顔。ちなみにこの水色のバッグの柄は、6種それぞれのフレーバーモチーフの絵柄が入っている。 お次は、秋の味覚を味わいに岐阜県へ。ここ「恵那栗工房 良平堂」は1946年創業、岐阜県恵那市に1店舗だけある栗菓子の専門店で、2021年1月31日まで現在期間限定で出店中。ちなみに、岐阜県南東部の恵那地方(中津川市・恵那市)は栗の名産地。 ホックホクで豊かな甘みの恵那栗(えなくり)を使ったお菓子では栗きんとんが有名だが、その栗きんとんとともに代表菓子なのが「栗福餅」(390円)。鮮やかなオレンジ色の長野県・市田の干し柿の中に栗きんとんが入っていて、ねっとりホクホクの食感はクセになる。柿の皮をむいて干し、切れ目を入れて種を出して栗きんとんを詰める。そのすべてが熟練の職人による手作業だというから驚き! 2013年から伊勢神宮に奉納している銘菓とのこと。そんなエピソードとともに、目上の方や年配の方への手土産にこれ、使おう。 ほかにも、どこを切っても栗いっぱいの栗ようかんや栗どらやき、スイートポテトならぬ栗の和ぽてとなど、さまざまな栗のお菓子が。まさに栗をめぐる旅in岐阜。 愛媛県・松山でみかんジュース、群馬県・横川で釜めし、岐阜県・恵那で栗のお菓子、北海道・札幌でチョコレート菓子を。それぞれの土地の風土に根ざした「おいしいもの」を集めて、すっかり旅気分。 東京・銀座のど真ん中、緑豊かな屋上「GINZA SIX ガーデン」で、旅の戦利品をいただきます! というわけで、「銀座でおいしい旅をする」の第1回(?)は無事、終了。ゆっくりじっくり、その土地の味をかみしめながら、食いしん坊の旅はまだ続く。次は、どこへ行こう? Text: Miho Tanaka Photos: Jun Hasegawa Edit: Yuka Okada(81)

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旅に出たい。おこもりの春を経て、夏らしいこともできないまま、あっという間に秋の気配。そろそろどこかに出かけたい…とソワソワしてしまうのも仕方ない。旅の醍醐味はやっぱり、その土地ならではの景色や人、味との出会いだ。とりわけ、食いしん坊の私にとって旅の目的は1にも2にも3にも「食」。そこでしか食べられないおいしいものを求めて、その土地へ行くことだってしょっちゅうなのだ。

なかなか旅ができない今、私の「旅」欲と、「食いしん坊」欲を一気に満たしてくれる場所が銀座にある。GINZA SIXのB2F。北は北海道、南は福岡県まで、全国各地のおいしいものがそろう。食いしん坊編集者としていわゆる「デパ地下」事情をいろいろ見てきたけれど、これほど心ときめくラインナップはほかにない。お弁当からスイーツ、ドリンクまで、気のきいた、かつセンスがいい手土産が買えるのはもちろん、自分のためのご褒美品、家時間が楽しくなるおいしいものがそろいすぎていて、ここに来たら決まって散財してしまう。ああ、なんて罪な場所…。

というわけで、今回は「おいしい旅」をテーマにGINZA SIXのB2Fを駆け巡った。この旅がもう、楽しすぎて! このプラン、あと6案は立てることができると断言する。

まず、最初に訪れたのは、「10FACTORY」。みかん色の美しいグラデーションに、テンション爆上がり。愛媛県・松山市に本店があるこちらは、日本一の柑橘王国・愛媛県のみかん産業をもりあげるべく誕生したブランドで、ジュースからジャム、ゼリー、ドライフルーツやはちみつなどラインナップが豊富。

ジュースが並ぶ棚を穴があくほど見つめた後は、ゼリーコーナーへ。まるでゼリーの花が咲き乱れたようなお花畑(私にはそう見えた)にうっとり。本当は全種類、購入したいところをぐっとこらえているのが、真剣な表情からうかがえる。

「愛媛県・松山を旅した気分になれるジュースを選ぶなら?」とスタッフの方を質問攻めにしながら選んだ3本。右から、伊予柑、甘平、果試28号。愛媛を代表する品種「伊予柑」(500円 ※以下全て税抜価格)は甘さと酸味のバランスが完璧、ザ・みかんの味。続く「甘平」(704円)は、極上の甘さが特徴。育てるのが難しく、希少な愛媛県オリジナル品種だそう。最後に飲んだ「果試28号」(704円)も愛媛県オリジナル品種。桃のような風味漂うトロピカルな甘みがたまりません! 気分はすでに愛媛なう。

さて、旅といったら駅弁。キューピーが何か持っている…?

駅弁といったら「荻野屋」の「峠の釜めし」! 群馬県や長野県方面に出かけた際、見かけたらいつも条件反射で買ってしまう。(キューピーが持っていたのは「峠の釜めし」でした)

銀座という場所で、まさか「峠の釜めし」が買えるなんて…。ずっしりと重いのは、ぎっしりと入ったおかずとご飯はもちろん、容器が立派な益子焼の土鍋だから。旅の記念にと、毎回捨てずに持ち帰るため、家にはこの空き釜がたくさんある。自宅で直接火にかけて、ご飯が炊けて便利。オレンジ色の包装紙をそっとあけ、釜のふたを開けた瞬間、栗や鶏肉、うずらや杏が美しく並ぶ姿は、何度見ても高揚する。

1958年、信越本線の横川駅開業と同時に誕生した名物駅弁「峠の釜めし」(1,019円)。当時、保温性が高い土鍋に入った駅弁は画期的だったとか。最近では、環境に配慮した紙の容器も登場。サトウキビのしぼりかすを使った非木材パルプ製。55年以上愛されるロングセラーも、こうやって時代とともに変化する。これぞ、老舗。

続いて旅したのは、北海道。北海道土産の定番といえば「白い恋人」ですが、こちらはその「白い恋人」でおなじみの「石屋製菓」が展開するお店、その名も「ISHIYA GINZA」。北海道を感じられるお菓子をテーマに、道外でしか買えない商品が話題に。北海道民が東京土産にこちらのお菓子をおねだりすることもあるらしく、素敵な逆輸入現象が起きているらしい。

キャラメル、北海道チーズ、北海道ワインなど、北海道産の素材にこだわった6種の味わいのチョコレートを、色とりどりのラング・ド・シャでサンドした「サク」が一番人気。まさに「白い恋人」のDNAを受け継いだお菓子だが、何よりときめくのは、この美しい箱! 各フレーバーや北海道の草花がモチーフとなった柄がタイルのように敷き詰められたカラフルな箱は上品で、プレゼントにも最適。といいつつ、あまりに素敵なので自分用にと我を忘れて箱を積み上げる私。ワインと一緒に「サク」を楽しんだ後は、この箱、なんに使おうか…? もう、ワクワクがとまらない。

おっとここで、シルバーとブルーにきらめく箱を発見! こちらは新登場の「ザク」(1,000円)。こだわりのチョコレートを、ラング・ド・シャでくるりと巻き上げた逸品。

チョコレートをベストな状態で持ち運びしたい。そんな食いしん坊の願望をしかと受け止める、すばらしいアイテムが誕生。そう、保冷バッグ(700円)。6種の「サク」が入ったアソートのパッケージに使われている水色の愛らしい柄のバッグに、北海道気分満載のお菓子を詰め込んでルンルン、ご満悦のこの笑顔。ちなみにこの水色のバッグの柄は、6種それぞれのフレーバーモチーフの絵柄が入っている。

お次は、秋の味覚を味わいに岐阜県へ。ここ「恵那栗工房 良平堂」は1946年創業、岐阜県恵那市に1店舗だけある栗菓子の専門店で、2021年1月31日まで現在期間限定で出店中。ちなみに、岐阜県南東部の恵那地方(中津川市・恵那市)は栗の名産地。

ホックホクで豊かな甘みの恵那栗(えなくり)を使ったお菓子では栗きんとんが有名だが、その栗きんとんとともに代表菓子なのが「栗福餅」(390円)。鮮やかなオレンジ色の長野県・市田の干し柿の中に栗きんとんが入っていて、ねっとりホクホクの食感はクセになる。柿の皮をむいて干し、切れ目を入れて種を出して栗きんとんを詰める。そのすべてが熟練の職人による手作業だというから驚き! 2013年から伊勢神宮に奉納している銘菓とのこと。そんなエピソードとともに、目上の方や年配の方への手土産にこれ、使おう。

ほかにも、どこを切っても栗いっぱいの栗ようかんや栗どらやき、スイートポテトならぬ栗の和ぽてとなど、さまざまな栗のお菓子が。まさに栗をめぐる旅in岐阜。

愛媛県・松山でみかんジュース、群馬県・横川で釜めし、岐阜県・恵那で栗のお菓子、北海道・札幌でチョコレート菓子を。それぞれの土地の風土に根ざした「おいしいもの」を集めて、すっかり旅気分。

東京・銀座のど真ん中、緑豊かな屋上「GINZA SIX ガーデン」で、旅の戦利品をいただきます!

というわけで、「銀座でおいしい旅をする」の第1回(?)は無事、終了。ゆっくりじっくり、その土地の味をかみしめながら、食いしん坊の旅はまだ続く。次は、どこへ行こう?

Text: Miho Tanaka Photos: Jun Hasegawa Edit: Yuka Okada(81)

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ニューノーマルと銀座 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124805 Fri, 31 Jul 2020 11:46:50 +0000 no 銀座に通うようになって23年経った。とはいっても(マガジンハウスは)三十間堀川の向こう、三原橋を渡った木挽町なんですけどね。45歳の自分にとって23年目の銀座は、つまり年齢の半分はこの街に通っているということで、なんだかやっと少しは「銀座は私にとって縁のある街です」って言っていいような気がしてるんだけどやっぱりまだ早いのかもしれない。マガジンハウスの中で『Hanako』はさらに銀座という街に関わりの深い雑誌で、32年間で実に80回近く、銀座特集を作っている。月刊化した今でも年2回ペースだ。だからHanakoに異動したことで銀座の街の方々とお知り合いになることができ、お祭りにも参加させてもらったり。そうか、やっぱり本当はもう少し大きな声で「銀座は俺の街です」って言えるかな、あーでもまだまだ言えないなあ。それほどに銀座は特別な、特別な街。 今回、この取材を受けるにあたって私が訪れたいと願ったのは、3軒のニューオープン店だった。銀座の一等地に店を出すというのは本当に特別なことだ。でも、彼らが思い描いていた銀座の姿はコロナ禍の今、ここにないかもしれない。かなり不安かもしれない。おい銀座大丈夫かよ、ってみなさん思っているはず。だからこそ、銀座で働き銀座の魅力を紹介し続けているひとりの編集者として、その3軒の方々とぜひお逢いして楽しく話をしてみたい、と思ったのだ。 1軒目に向かったのは、13Fの「熊本あか牛しゃぶしゃぶ 甲梅」。〝GINZA SIXの離れ〟こと13Fは素敵な店が揃うフロア。ここでは阿蘇で育ったあか牛「甲誠牛」でしゃぶしゃぶを食べさせてくれる。阿蘇は日本の中でも指折りの大好きな場所。あの雄大な自然の中で育ったあか牛を銀座で堪能できるとあって、期待が高まる。 本日頂くのは「凛」のコース(18,000円 ※以下全て税抜価格)。まず出てきたのは前菜四種。左上から時計回りに、ごどうふ、あか牛の煮込み、たぐり湯葉、あか牛の低温調理。 中でも佐賀の郷土食・ごどうふが滋味深い。豆乳と吉野の本葛を練り合わせた自家製の豆腐。「練り合わせるのが大変で。結構手間がかかってるんです」とは、女将の上田さん。 続いて出てきた肉寿司は、毎回使われる部位は変わるということだが今回はザブトン。マルドンの塩と炙りウニをパウダーにしたものをお好みで。さすが13Fだ! そしていよいよ、しゃぶしゃぶの登場。今日のコースでは、三角バラ、タン、特上カルビ、ザブトン、リブロース、サーロイン、イチボ、ミスジが頂ける。お肉は注文が入ってからスライスしてくれる。 肉の前ではなぜニヤけるのだろう。昔、『BRUTUS』在籍時に肉特集を作った時に「うまい肉はソーシャルだ」という見出しを書いたなあ。肉の周りに人は集まる。「Meet around Meat」だと(いま振り返ると少し恥ずかしい)。女将と話がはずむはずむ。肉好きですものね、そうですよね。 そして何を隠そう(隠してないけど)私はごまだれ原理主義。ごまだれにはだいぶうるさい。正直、肉よりごまだれのほうが気になる。が、追って出てきたごまだれを見て驚愕することとなる。なんなんだこのごまだれは。映えるごまだれ! 団子状に出てきた自家製の練りごまを、自分の好みで崩しながらマイごまだれを作っていく。それにしても風味のなんと素晴らしいこと…。このごまだけをつまみに日本酒いける。いやいかせてもらいたい。 利尻産の昆布出汁に徳島の「しいたけ侍」を入れることで深い味わいを増した鍋で、弱火でゆっくりとしゃぶしゃぶ。沸騰させるのはご法度、旨みが逃げてしまうからだ。しゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶ。ゆったり、たっぷり、のんびり。 阿蘇の話に銀座の話。女将の話も楽しく、すっかり腰を落ち着けてしまった。こんな状況でもあるので、今回のような使い勝手の良い個室があると近しい人とゆっくり食事ができるので、選択肢の幅も広がる。今度はプライベートで寄らせていただきますと再訪の約束をして、地下へ。 B2Fに降りて立ち寄ったのはイタリア・トリノ最古のカフェ「Bicerin(ビチェリン)」。1763年創業の伝説のカフェだ。イタリアの老舗カフェといえばミラノはモンテナポレオーネにある1817年創業の「Café Cova Milano(カフェ コヴァ ミラノ)」も有名だが、実はその2軒ともがGINZA SIXに入っているのだから恐れ入る。銀ブラもここに極まれり、か。 アフターしゃぶしゃぶのドルチェ気分でシグネチャードリンクのビチェリン(1,000円)を頼む。トリノの方言で〝小さなグラス〟を意味するこのチョコレートドリンク、ホットチョコレート・エスプレッソ・生クリームの美しい層を崩さずそのまま傾けて飲む。レシピも温度も厳格に決まっているとのことで、ヘミングウェイも愛したという。余談だがヘミングウェイと池波正太郎、伊丹十三リコメンドはおおよその男性編集者に対してはキラーワードだ。ふふふ。 粋に、ビチェリンをかき混ぜずひとり嗜んでいると、ふと、隣にキティちゃんが座っていることに気づく。うぬ、キティちゃん? なぜ??? 実はこのキティちゃん、トリノに行った時にビチェリンの美味しさに感動し、現在修行中なんだとか。そして店内のソーシャルディスタンシングに協力すべく真ん中の席に座っているのだそうだ。キティちゃんとは同い年なんで親近感があるんだよなあ。男性誌気分から女性誌気分へ気持ちもすっかり逆戻り。キティちゃん、今度はコラボメニュー、頂いてみるね! あっという間にそろそろ編集部に戻る時間、部員のみんなにお土産でも買って帰ろうと、やはりB2Fの「芭蕉堂(BASHODO)」を訪れてみる。こちらは明治元年、つまり1868年創業。お餅屋さんとして長らく商売を続け、80年ほど前からわらび餅の製造に取り組んでいる。 店の片隅には実演販売のスペースが。聞けば、今の社長が北海道から沖縄まで全国各地の百貨店で催事を行い、この実演販売で人気を博したのだとか。ぷにぷにのわらび餅に、抹茶をさらさらさら…、そしてさくっ、さくっとカットしていく。いや、ASMR的にはさくっ、じゃないな。でもとにかくわらび餅をカットする時のあの感じ、ぞくぞくする心地よいあの感じ! …と気がついたら思わずかぶりつきで眺めてしまっていました。お店の方、すみません。ぷにぷにの秘密を聞けば、扱いが難しい銅釜で直火炊きにして作っていて、とにかく炊きたての柔らかい状態を食べてもらいたい、とのこと。 ショーウィンドウを眺めていたらこんな商品も。わらび餅を使ったぷるぷる(ぷにぷにとぷるぷるは違いますよね。日本語奥深い)の皮でこし餡や白餡のほか、ほうじ茶ラテ餡やマンゴー餡などを包んだ「わらび餅饅頭」(1個232円〜)。女性部員たちにウケがよさそう、こちらもわらび餅と一緒にいただきます。 寸外(ってホワイトボードに書いたら、これってどういう意味ですかと若いスタッフに言われました。おじさん用語なのかしら)のおみやげの割にはついいろいろと購入してしまう。まあ、わらび餅は飲み物ですから、若者たちよ。3時のおやつの時間には間に合うかな。 それにしても、毎日通っている街なので、GINZA SIXができた時の衝撃は覚えている。見た目がモニュメンタルでシンボリックな建物というのが銀座には和光しかないなあと個人的には思っていた中で、〝銀座ルール〟をわきまえながらもピカピカのニューカマーとして現れたGINZA SIX。1F部分に銀座らしい路面店の連続性を持たせたりだとか、フロア内部の通路のジグザクした路地を感じる部分だとか、銀座をリスペクトし銀座をアップデートする今までこの街になかった存在感の放ち方に、ああこれは銀座に長く遺っていくべくして建てられたのだなあ、と感じた。僕がおじいさんになる頃には、若い人にとって和光もGINZA SIXもフラットに、銀座に昔からあるカッコいい建物だよね、と感じる時代に、きっとなっているだろう。なっていてほしい。 そんな銀座の街から、人が減って久しい。ニューノーマルってなんだろう。商業施設も雑誌も、不要不急と杓子定規に言えばその通り。ノンエッシェンシャルな仕事だ。でも、ニューノーマルは絶えず上書きされていく。私たちの人生にはエンタテインメントが絶対に必要だから、それを信じて先行きの見えない時代の風を細やかに読みながら、じりじりと前に進んでいくしかない。 そしてこんなタイミングでGINZA SIXにやって来たこの3軒のことを心から応援したい。大都市の魅力が下がり地方の魅力が上がる、そんな言葉も耳にするが、銀座の魅力が下がることはないと感じている。それは、銀座がただ大都市だから魅力的なのではなく、街の規模にも関わらず店を営む人々の顔が、その振る舞いが見える稀有な街だからだ。あの料理が食べたい、あの空間に身を置きたい、あの人の顔が見たい。ただ貪欲に消費を楽しむだけではなく、心豊かな時間を過ごしたいから、私たちは街に身を置く。銀座はそんな街だし、GINZA SIXもこれからもそうあり続けて欲しいと願っている。 Text: Ro Tajima Photos: Yuichi Sugita Edit: Yuka Okada(81) ©1976, 2020 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. L611995

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銀座に通うようになって23年経った。とはいっても(マガジンハウスは)三十間堀川の向こう、三原橋を渡った木挽町なんですけどね。45歳の自分にとって23年目の銀座は、つまり年齢の半分はこの街に通っているということで、なんだかやっと少しは「銀座は私にとって縁のある街です」って言っていいような気がしてるんだけどやっぱりまだ早いのかもしれない。マガジンハウスの中で『Hanako』はさらに銀座という街に関わりの深い雑誌で、32年間で実に80回近く、銀座特集を作っている。月刊化した今でも年2回ペースだ。だからHanakoに異動したことで銀座の街の方々とお知り合いになることができ、お祭りにも参加させてもらったり。そうか、やっぱり本当はもう少し大きな声で「銀座は俺の街です」って言えるかな、あーでもまだまだ言えないなあ。それほどに銀座は特別な、特別な街。

今回、この取材を受けるにあたって私が訪れたいと願ったのは、3軒のニューオープン店だった。銀座の一等地に店を出すというのは本当に特別なことだ。でも、彼らが思い描いていた銀座の姿はコロナ禍の今、ここにないかもしれない。かなり不安かもしれない。おい銀座大丈夫かよ、ってみなさん思っているはず。だからこそ、銀座で働き銀座の魅力を紹介し続けているひとりの編集者として、その3軒の方々とぜひお逢いして楽しく話をしてみたい、と思ったのだ。

1軒目に向かったのは、13Fの「熊本あか牛しゃぶしゃぶ 甲梅」。〝GINZA SIXの離れ〟こと13Fは素敵な店が揃うフロア。ここでは阿蘇で育ったあか牛「甲誠牛」でしゃぶしゃぶを食べさせてくれる。阿蘇は日本の中でも指折りの大好きな場所。あの雄大な自然の中で育ったあか牛を銀座で堪能できるとあって、期待が高まる。

本日頂くのは「凛」のコース(18,000円 ※以下全て税抜価格)。まず出てきたのは前菜四種。左上から時計回りに、ごどうふ、あか牛の煮込み、たぐり湯葉、あか牛の低温調理。

中でも佐賀の郷土食・ごどうふが滋味深い。豆乳と吉野の本葛を練り合わせた自家製の豆腐。「練り合わせるのが大変で。結構手間がかかってるんです」とは、女将の上田さん。

続いて出てきた肉寿司は、毎回使われる部位は変わるということだが今回はザブトン。マルドンの塩と炙りウニをパウダーにしたものをお好みで。さすが13Fだ!

そしていよいよ、しゃぶしゃぶの登場。今日のコースでは、三角バラ、タン、特上カルビ、ザブトン、リブロース、サーロイン、イチボ、ミスジが頂ける。お肉は注文が入ってからスライスしてくれる。

肉の前ではなぜニヤけるのだろう。昔、『BRUTUS』在籍時に肉特集を作った時に「うまい肉はソーシャルだ」という見出しを書いたなあ。肉の周りに人は集まる。「Meet around Meat」だと(いま振り返ると少し恥ずかしい)。女将と話がはずむはずむ。肉好きですものね、そうですよね。

そして何を隠そう(隠してないけど)私はごまだれ原理主義。ごまだれにはだいぶうるさい。正直、肉よりごまだれのほうが気になる。が、追って出てきたごまだれを見て驚愕することとなる。なんなんだこのごまだれは。映えるごまだれ!

団子状に出てきた自家製の練りごまを、自分の好みで崩しながらマイごまだれを作っていく。それにしても風味のなんと素晴らしいこと…。このごまだけをつまみに日本酒いける。いやいかせてもらいたい。

利尻産の昆布出汁に徳島の「しいたけ侍」を入れることで深い味わいを増した鍋で、弱火でゆっくりとしゃぶしゃぶ。沸騰させるのはご法度、旨みが逃げてしまうからだ。しゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶ。ゆったり、たっぷり、のんびり。

阿蘇の話に銀座の話。女将の話も楽しく、すっかり腰を落ち着けてしまった。こんな状況でもあるので、今回のような使い勝手の良い個室があると近しい人とゆっくり食事ができるので、選択肢の幅も広がる。今度はプライベートで寄らせていただきますと再訪の約束をして、地下へ。

B2Fに降りて立ち寄ったのはイタリア・トリノ最古のカフェ「Bicerin(ビチェリン)」。1763年創業の伝説のカフェだ。イタリアの老舗カフェといえばミラノはモンテナポレオーネにある1817年創業の「Café Cova Milano(カフェ コヴァ ミラノ)」も有名だが、実はその2軒ともがGINZA SIXに入っているのだから恐れ入る。銀ブラもここに極まれり、か。

アフターしゃぶしゃぶのドルチェ気分でシグネチャードリンクのビチェリン(1,000円)を頼む。トリノの方言で〝小さなグラス〟を意味するこのチョコレートドリンク、ホットチョコレート・エスプレッソ・生クリームの美しい層を崩さずそのまま傾けて飲む。レシピも温度も厳格に決まっているとのことで、ヘミングウェイも愛したという。余談だがヘミングウェイと池波正太郎、伊丹十三リコメンドはおおよその男性編集者に対してはキラーワードだ。ふふふ。

粋に、ビチェリンをかき混ぜずひとり嗜んでいると、ふと、隣にキティちゃんが座っていることに気づく。うぬ、キティちゃん? なぜ???

実はこのキティちゃん、トリノに行った時にビチェリンの美味しさに感動し、現在修行中なんだとか。そして店内のソーシャルディスタンシングに協力すべく真ん中の席に座っているのだそうだ。キティちゃんとは同い年なんで親近感があるんだよなあ。男性誌気分から女性誌気分へ気持ちもすっかり逆戻り。キティちゃん、今度はコラボメニュー、頂いてみるね!

あっという間にそろそろ編集部に戻る時間、部員のみんなにお土産でも買って帰ろうと、やはりB2Fの「芭蕉堂(BASHODO)」を訪れてみる。こちらは明治元年、つまり1868年創業。お餅屋さんとして長らく商売を続け、80年ほど前からわらび餅の製造に取り組んでいる。

店の片隅には実演販売のスペースが。聞けば、今の社長が北海道から沖縄まで全国各地の百貨店で催事を行い、この実演販売で人気を博したのだとか。ぷにぷにのわらび餅に、抹茶をさらさらさら…、そしてさくっ、さくっとカットしていく。いや、ASMR的にはさくっ、じゃないな。でもとにかくわらび餅をカットする時のあの感じ、ぞくぞくする心地よいあの感じ!

…と気がついたら思わずかぶりつきで眺めてしまっていました。お店の方、すみません。ぷにぷにの秘密を聞けば、扱いが難しい銅釜で直火炊きにして作っていて、とにかく炊きたての柔らかい状態を食べてもらいたい、とのこと。

ショーウィンドウを眺めていたらこんな商品も。わらび餅を使ったぷるぷる(ぷにぷにとぷるぷるは違いますよね。日本語奥深い)の皮でこし餡や白餡のほか、ほうじ茶ラテ餡やマンゴー餡などを包んだ「わらび餅饅頭」(1個232円〜)。女性部員たちにウケがよさそう、こちらもわらび餅と一緒にいただきます。

寸外(ってホワイトボードに書いたら、これってどういう意味ですかと若いスタッフに言われました。おじさん用語なのかしら)のおみやげの割にはついいろいろと購入してしまう。まあ、わらび餅は飲み物ですから、若者たちよ。3時のおやつの時間には間に合うかな。

それにしても、毎日通っている街なので、GINZA SIXができた時の衝撃は覚えている。見た目がモニュメンタルでシンボリックな建物というのが銀座には和光しかないなあと個人的には思っていた中で、〝銀座ルール〟をわきまえながらもピカピカのニューカマーとして現れたGINZA SIX。1F部分に銀座らしい路面店の連続性を持たせたりだとか、フロア内部の通路のジグザクした路地を感じる部分だとか、銀座をリスペクトし銀座をアップデートする今までこの街になかった存在感の放ち方に、ああこれは銀座に長く遺っていくべくして建てられたのだなあ、と感じた。僕がおじいさんになる頃には、若い人にとって和光もGINZA SIXもフラットに、銀座に昔からあるカッコいい建物だよね、と感じる時代に、きっとなっているだろう。なっていてほしい。

そんな銀座の街から、人が減って久しい。ニューノーマルってなんだろう。商業施設も雑誌も、不要不急と杓子定規に言えばその通り。ノンエッシェンシャルな仕事だ。でも、ニューノーマルは絶えず上書きされていく。私たちの人生にはエンタテインメントが絶対に必要だから、それを信じて先行きの見えない時代の風を細やかに読みながら、じりじりと前に進んでいくしかない。

そしてこんなタイミングでGINZA SIXにやって来たこの3軒のことを心から応援したい。大都市の魅力が下がり地方の魅力が上がる、そんな言葉も耳にするが、銀座の魅力が下がることはないと感じている。それは、銀座がただ大都市だから魅力的なのではなく、街の規模にも関わらず店を営む人々の顔が、その振る舞いが見える稀有な街だからだ。あの料理が食べたい、あの空間に身を置きたい、あの人の顔が見たい。ただ貪欲に消費を楽しむだけではなく、心豊かな時間を過ごしたいから、私たちは街に身を置く。銀座はそんな街だし、GINZA SIXもこれからもそうあり続けて欲しいと願っている。

Text: Ro Tajima Photos: Yuichi Sugita Edit: Yuka Okada(81)
©1976, 2020 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. L611995

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Food, ショップ紹介, ぶらエディターズ
FINDING LOST ART 失われたアートを取り戻そう! https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124806 Mon, 27 Jul 2020 03:38:02 +0000 no ぼくはショッピングが好きじゃない。あてもなくぶらぶらと見て回ったり、ウインドウを眺めたり、“偶然の出会い”を求めて歩くなんて、大の苦手。前もって欲しいものを調査して、それにめがけて突進する。“ぶらぶら”はせずに、“きびきび”──それがぼくの買物道である。 ただそんなこだわりも、ショッピングが目的ではなく手段になれば、話は別だ。歳を重ねて物欲は少し落ち着いたけれど、“あんな紳士になりたい”とか“こんな生き方をしたい”といった願望はたまに出現する。そんなときショッピングはミッションに変わる。 最近は自粛期間が長いから、家での生活を豊かにしたいという気持ちが芽生えた。そこで、このGINZA SIXでのショッピングのテーマを「FINDING LOST ART 失われたアートを取り戻そう!」に決めた。インディー・ジョーンズやララ・クロフトのように命をかけた冒険ではないけれど、生活に潜むアートを掘り起こす。これが今回のぼくのミッションだ。 GINZA SIXでは3つのミッションを遂行する。1つ目は「手紙を書くことを嗜む」。 編集者の仕事をしていると、手紙を書く機会が多い。お礼状と、ときにお詫び状。必要に迫られて書くケースがほとんど。しかしまれに、ぼくにも手紙や葉書が届くことがある。「俳優◯◯さんを掲載してくれてありがとう」とか「歌手○○さんのファンです。特集してください」といった内容である。そんな愛の言葉を並べられると、それが自分に向けられたものでないとわかっていても、心を動かされる。手紙とはそんな不思議な作用がある。 いまや2割以上の人が過去1年間に1度も手紙を書いたことがないらしい。そんな失われた芸術を取り戻すため、まずは一級品のレターセットを探すことから始めたい。 訪れたのは4Fのセレクトショップ「ヴァルカナイズ・ロンドン」にある英国ブランド、スマイソン。英国王室のお墨付きであるロイヤルワラントを3つ獲得した由緒正しき老舗である。ストアマネージャーの紅林直利さんが案内してくれた。 「スマイソンの代名詞といえば、便せんや封筒に使われる「ナイルブルー」の色。創業者のフランク・スマイソンがエジプトを旅したときに感銘を受けたナイル川から考案されたものです。創業地から名付けられた「ボンドストリートブルー」のペールブルーも人気ですよ」と紅林さん。 ブランドカラーであるこの2色の便せんと封筒は、高貴なブルーが美しく目を引く。封筒(25枚セット3,000円 ※以下全て税抜価格)は二重封筒になっていて、便せん(50枚セット4,000円)は一枚一枚透かしが入っている。丁寧に手作業で仕上げられているのがわかる。過度なデザインを削ぎ落としたミニマルなデザインは、英国らしい控えめな知性と気品を感じさせる。こんな上質なステーショナリーがあれば、手紙を書く行為も紳士的な嗜みとして愉しめそう。 同じセクションに見つけたカードセットの種類も豊富で、ブラックとゴールドの刻印で蜂のモチーフを施したカード(5,000円)は上品な遊び心が気に入った。 ちなみにぼくが愛用しているスマイソンは、フェザーウェイト(羽根の軽さ)と呼ばれる極薄の紙でできたポケットサイズの手帳。ちょうど手のひらに入る大きさで、机がない現場や屋外で取材するときが多いので使い勝手がいい。使い込まれたボロボロの黒い手帳にペン先を躍らせていると、まるで探偵が聞き込み調査をしてるみたいと言われる。 2つ目のミッションは、「アートのある暮らしを始める」。外出の機会がめっきり減ったいま、家で過ごす時間をもっと豊かにしたい。そのためにはアートが必要だ! ということで、6Fの「銀座 蔦屋書店」の一角にやってきた。「ここはドイツの出版社であるタッシェンのアートエディションコーナーです。ここでは書籍に作品が付随したアートエディションを中心に、大型の本やインテリア、美術にもふさわしい本がたくさん揃いますよ。展示されている作品は購入することもできます」と写真コンシェルジュの番場文章さん。ぱっとみただけでも、アイ・ウェイウェイ、デイヴィッド・ホックニー、デイヴィッド・ベイリーといった超有名なアーティストの作品が飾ってある。サザビーズかクリスティーズのようなオークションハウスでないと手に入らないと思っていたからビックリ。 タッシェンといえば、10年前に発売されたヘルムート・ニュートンの「SUMO」ブックが衝撃的だった。それまで美しいコーヒーテーブルブックを出してきたブティック出版社が、縦横70x50cm、厚さ8cm、重さ30kgの超特大な“相撲”サイズの写真集を出したのである。すべてにニュートン自身によるサインとエディションナンバーが入り、専用メタルスタンドも巨匠フィリップ・スタルクがてがけた。タッシェンはアート界と出版界の常識を壊してきた。 「SUMO」シリーズの最新作、デイヴィッド・ホックニーの「David Hockney. My Window」(280,000円)も展示されていた。ヨークシャーの自宅の窓から見える景色をiPhoneやiPadを使って描いた野心作だ。1000部限定サイン入り。82歳になったいまも精力的なホックニーに脱帽である。 同じく82歳の写真家、デイヴィッド・ベイリーの作品も負けていない。まっさきに目に入ったのが、ファー・コートをかぶったミック・ジャガー。1964年にベイリーの処女作である写真集『Box of Pin-Ups』のために撮影されたアイコニックなポートレイトだ。6年ほど前、『GQ』の企画でベイリーの特集をしたとき、ベイリーはこの写真についてこう語っている。 「ミックはこれをいちばん好きな写真に選んでくれた。20年ほど前に『アメリカン・フォト』誌が企画して、大物シンガーたちに彼らのいちばん好きな写真を尋ねたんだ。そのときにミックの選んだのがこれだった。表紙になったよ。私がどう思ったかって? 何も思わなかったね。だってミックに写真の何がわかるんだい?」 フォトグラファーがミュージシャンよりもロックでかっこよかった60年代のロンドン。そんな時代に親交を深めたふたりの関係性がわかるエピソードだ。 アンディ・ウォーホールやジーン・シュリンプトンといった著名人の写真にも値札がついている。シリアルナンバー入りで本人のサイン入り。なんとも希少だ。家に帰ってじっくりお財布とにらめっこして検討しよう。 さて最後のミッションは、「アートに毎日ふれる」。ホックニーの写真を家に飾らなくても、アートを日常的に愉しむことはできる。 訪れたのは、B1Fの「ディプティック」。お馴染みフレグランスキャンドルで有名なパリのフレグランス・メゾンだ。お目当ては、フランス人現代美術家のジャン=ミシェル・オトニエルがディプティックとコラボして作ったという“香り”のアートだ。 オトニエルといえば、手吹きのガラス玉をネックレスのようにつないだ立体作品で知られるアーティストだ。六本木ヒルズの毛利庭園に設置されたハート型の彫刻をみたことのある人もいるだろう。 オトニエルがもうひとつ、長年題材にしてきたテーマがバラだ。なかでも2019年にルーブル美術館のピラミッド建設30周年を記念し制作した「ルーブルのバラ」を今回、フレグランスとキャンドルのデザインに採用した。 オトニエルが調香師と完成させたフレグランス(21,300円)をストアマネージャーの土橋麻美さんが吹きかけてくれた。華やかなローズの香りに、スパイシーノートをかけ合わせた香りがぶわっと広がる。ブラックペッパーを筆頭に、アンブレッドシード、アキガラウッドなど、刺激的でドラマティックな香りが続く。一方、キャンドル(8,900円)はもう少しなだらかで柔らかい香りになるそう。 煙草を吸う人がライターに火を付ける瞬間からアドレナリンが分泌されるように、その行為自体が高揚感をもたらすことがある。ぼくの場合はキャンドルに火をつけたり、お香を焚いたりするときがそうだ。自宅での時間が長く、変化の起伏が乏しい日々だからこそ、そうやって心のスイッチを切り替えたい。 もうひとつ偶然目に留まったのが、なんとも美しいガラス瓶のディスペンサー。中身はハンドウォッシュとハンドローションということで、試させてもらった。オレンジ色のハンドウォッシュは2種類(ともに6,900円)あってつぶつぶが入ったほうは、クラッシュしたオリーブ種子でできたスクラブ入りで手の角質や汚れを落としてくれる。マッサージを受けているように心地良い。白濁色のハンドローション(7,100円)もしっとり潤うけれどベタつかない。度重なる手洗いや消毒で手の乾燥や荒れも気になるこの頃。日用使いのアイテムが美しいとぼくらの日常も気分があがる。 こうしてぼくのGINZA SIXをめぐるミッションは完了した。「失われたアートを取り戻す」とまではいかなかったけれど、紳士の嗜みとして、そしてインテリア、日常のシーンで、アートを取り入れるヒントがたくさんみつかった。GINZA SIXは“ぶらぶら”が苦手なぼくでも、“偶然の出会い”に出会える場所だ。ミッション・コンプリート! Text: Keita Takada Photos: Hiroyuki Takenouchi  Edit: Yuka Okada(81)

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ぼくはショッピングが好きじゃない。あてもなくぶらぶらと見て回ったり、ウインドウを眺めたり、“偶然の出会い”を求めて歩くなんて、大の苦手。前もって欲しいものを調査して、それにめがけて突進する。“ぶらぶら”はせずに、“きびきび”──それがぼくの買物道である。

ただそんなこだわりも、ショッピングが目的ではなく手段になれば、話は別だ。歳を重ねて物欲は少し落ち着いたけれど、“あんな紳士になりたい”とか“こんな生き方をしたい”といった願望はたまに出現する。そんなときショッピングはミッションに変わる。

最近は自粛期間が長いから、家での生活を豊かにしたいという気持ちが芽生えた。そこで、このGINZA SIXでのショッピングのテーマを「FINDING LOST ART 失われたアートを取り戻そう!」に決めた。インディー・ジョーンズやララ・クロフトのように命をかけた冒険ではないけれど、生活に潜むアートを掘り起こす。これが今回のぼくのミッションだ。

GINZA SIXでは3つのミッションを遂行する。1つ目は「手紙を書くことを嗜む」。

編集者の仕事をしていると、手紙を書く機会が多い。お礼状と、ときにお詫び状。必要に迫られて書くケースがほとんど。しかしまれに、ぼくにも手紙や葉書が届くことがある。「俳優◯◯さんを掲載してくれてありがとう」とか「歌手○○さんのファンです。特集してください」といった内容である。そんな愛の言葉を並べられると、それが自分に向けられたものでないとわかっていても、心を動かされる。手紙とはそんな不思議な作用がある。

いまや2割以上の人が過去1年間に1度も手紙を書いたことがないらしい。そんな失われた芸術を取り戻すため、まずは一級品のレターセットを探すことから始めたい。

訪れたのは4Fのセレクトショップ「ヴァルカナイズ・ロンドン」にある英国ブランド、スマイソン。英国王室のお墨付きであるロイヤルワラントを3つ獲得した由緒正しき老舗である。ストアマネージャーの紅林直利さんが案内してくれた。

「スマイソンの代名詞といえば、便せんや封筒に使われる「ナイルブルー」の色。創業者のフランク・スマイソンがエジプトを旅したときに感銘を受けたナイル川から考案されたものです。創業地から名付けられた「ボンドストリートブルー」のペールブルーも人気ですよ」と紅林さん。

ブランドカラーであるこの2色の便せんと封筒は、高貴なブルーが美しく目を引く。封筒(25枚セット3,000円 ※以下全て税抜価格)は二重封筒になっていて、便せん(50枚セット4,000円)は一枚一枚透かしが入っている。丁寧に手作業で仕上げられているのがわかる。過度なデザインを削ぎ落としたミニマルなデザインは、英国らしい控えめな知性と気品を感じさせる。こんな上質なステーショナリーがあれば、手紙を書く行為も紳士的な嗜みとして愉しめそう。

同じセクションに見つけたカードセットの種類も豊富で、ブラックとゴールドの刻印で蜂のモチーフを施したカード(5,000円)は上品な遊び心が気に入った。

ちなみにぼくが愛用しているスマイソンは、フェザーウェイト(羽根の軽さ)と呼ばれる極薄の紙でできたポケットサイズの手帳。ちょうど手のひらに入る大きさで、机がない現場や屋外で取材するときが多いので使い勝手がいい。使い込まれたボロボロの黒い手帳にペン先を躍らせていると、まるで探偵が聞き込み調査をしてるみたいと言われる。

2つ目のミッションは、「アートのある暮らしを始める」。外出の機会がめっきり減ったいま、家で過ごす時間をもっと豊かにしたい。そのためにはアートが必要だ!

ということで、6Fの「銀座 蔦屋書店」の一角にやってきた。「ここはドイツの出版社であるタッシェンのアートエディションコーナーです。ここでは書籍に作品が付随したアートエディションを中心に、大型の本やインテリア、美術にもふさわしい本がたくさん揃いますよ。展示されている作品は購入することもできます」と写真コンシェルジュの番場文章さん。ぱっとみただけでも、アイ・ウェイウェイ、デイヴィッド・ホックニー、デイヴィッド・ベイリーといった超有名なアーティストの作品が飾ってある。サザビーズかクリスティーズのようなオークションハウスでないと手に入らないと思っていたからビックリ。

タッシェンといえば、10年前に発売されたヘルムート・ニュートンの「SUMO」ブックが衝撃的だった。それまで美しいコーヒーテーブルブックを出してきたブティック出版社が、縦横70x50cm、厚さ8cm、重さ30kgの超特大な“相撲”サイズの写真集を出したのである。すべてにニュートン自身によるサインとエディションナンバーが入り、専用メタルスタンドも巨匠フィリップ・スタルクがてがけた。タッシェンはアート界と出版界の常識を壊してきた。

「SUMO」シリーズの最新作、デイヴィッド・ホックニーの「David Hockney. My Window」(280,000円)も展示されていた。ヨークシャーの自宅の窓から見える景色をiPhoneやiPadを使って描いた野心作だ。1000部限定サイン入り。82歳になったいまも精力的なホックニーに脱帽である。

同じく82歳の写真家、デイヴィッド・ベイリーの作品も負けていない。まっさきに目に入ったのが、ファー・コートをかぶったミック・ジャガー。1964年にベイリーの処女作である写真集『Box of Pin-Ups』のために撮影されたアイコニックなポートレイトだ。6年ほど前、『GQ』の企画でベイリーの特集をしたとき、ベイリーはこの写真についてこう語っている。

「ミックはこれをいちばん好きな写真に選んでくれた。20年ほど前に『アメリカン・フォト』誌が企画して、大物シンガーたちに彼らのいちばん好きな写真を尋ねたんだ。そのときにミックの選んだのがこれだった。表紙になったよ。私がどう思ったかって? 何も思わなかったね。だってミックに写真の何がわかるんだい?」

フォトグラファーがミュージシャンよりもロックでかっこよかった60年代のロンドン。そんな時代に親交を深めたふたりの関係性がわかるエピソードだ。

アンディ・ウォーホールやジーン・シュリンプトンといった著名人の写真にも値札がついている。シリアルナンバー入りで本人のサイン入り。なんとも希少だ。家に帰ってじっくりお財布とにらめっこして検討しよう。

さて最後のミッションは、「アートに毎日ふれる」。ホックニーの写真を家に飾らなくても、アートを日常的に愉しむことはできる。

訪れたのは、B1Fの「ディプティック」。お馴染みフレグランスキャンドルで有名なパリのフレグランス・メゾンだ。お目当ては、フランス人現代美術家のジャン=ミシェル・オトニエルがディプティックとコラボして作ったという“香り”のアートだ。

オトニエルといえば、手吹きのガラス玉をネックレスのようにつないだ立体作品で知られるアーティストだ。六本木ヒルズの毛利庭園に設置されたハート型の彫刻をみたことのある人もいるだろう。

オトニエルがもうひとつ、長年題材にしてきたテーマがバラだ。なかでも2019年にルーブル美術館のピラミッド建設30周年を記念し制作した「ルーブルのバラ」を今回、フレグランスとキャンドルのデザインに採用した。

オトニエルが調香師と完成させたフレグランス(21,300円)をストアマネージャーの土橋麻美さんが吹きかけてくれた。華やかなローズの香りに、スパイシーノートをかけ合わせた香りがぶわっと広がる。ブラックペッパーを筆頭に、アンブレッドシード、アキガラウッドなど、刺激的でドラマティックな香りが続く。一方、キャンドル(8,900円)はもう少しなだらかで柔らかい香りになるそう。

煙草を吸う人がライターに火を付ける瞬間からアドレナリンが分泌されるように、その行為自体が高揚感をもたらすことがある。ぼくの場合はキャンドルに火をつけたり、お香を焚いたりするときがそうだ。自宅での時間が長く、変化の起伏が乏しい日々だからこそ、そうやって心のスイッチを切り替えたい。

もうひとつ偶然目に留まったのが、なんとも美しいガラス瓶のディスペンサー。中身はハンドウォッシュとハンドローションということで、試させてもらった。オレンジ色のハンドウォッシュは2種類(ともに6,900円)あってつぶつぶが入ったほうは、クラッシュしたオリーブ種子でできたスクラブ入りで手の角質や汚れを落としてくれる。マッサージを受けているように心地良い。白濁色のハンドローション(7,100円)もしっとり潤うけれどベタつかない。度重なる手洗いや消毒で手の乾燥や荒れも気になるこの頃。日用使いのアイテムが美しいとぼくらの日常も気分があがる。

こうしてぼくのGINZA SIXをめぐるミッションは完了した。「失われたアートを取り戻す」とまではいかなかったけれど、紳士の嗜みとして、そしてインテリア、日常のシーンで、アートを取り入れるヒントがたくさんみつかった。GINZA SIXは“ぶらぶら”が苦手なぼくでも、“偶然の出会い”に出会える場所だ。ミッション・コンプリート!

Text: Keita Takada Photos: Hiroyuki Takenouchi  Edit: Yuka Okada(81)

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Art, Beauty, Lifestyle, ショップ紹介, ぶらエディターズ
感覚を目覚めさせてくれるアートを巡る https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124807 Wed, 08 Jul 2020 01:15:03 +0000 no GINZA SIXの中央吹き抜けで現在紹介されている《Prismatic Cloud》を最初に目にしたのは、東京が寒空に包まれていた2月末のこと。アートとデザインの領域で世界的な活躍を続ける吉岡徳仁さんらしいインスタレーションに魅了されてしまい、あちこちから鑑賞してみたくなった。2Fから5Fまで、エスカレーターで何度も上ったり下ったりしながら作品を目にしていると、飛行機の離着陸時に窓越しに空を眺めるのと同じ、心が弾む思いがした。 輝く雲をさらに目にしたいと思いながら、この春は静かに過ぎていった。再訪がかなったのは、夏至を間近に控えた金曜の朝。あいにくの雨だったけれど、迎えてくれた浮遊するアートに私の心はふわりと軽くなっていった。そう、これこそが吉岡作品のマジック……。これまでにも虹のようなスペクトルを放つプリズムの彫刻や「虹の教会」など、光の作品を手がけてきた吉岡さん。 吉岡さんは言う。「美しい自然のかたちを模すのではないんです。心がゆさぶられる自然のエネルギーそのものを、表してみたい」。繊細であると同時に力強さを秘めている自然。時に想像を超える光景に圧倒されてしまうこともある。穏やかなだけではないけれど、だからこそ感じとることのできる一筋の光に私たちの心は大いに動かされ、感覚を呼びさまされる。 角度によっては虹色の輝きも目にすることができる今回の作品は、水や氷の粒子の集合によって雲が形成されるように、一万本に及ぶプリズムロッドで形づくられている。この「光の彫刻」について、吉岡さんはこうも語ってくれた。「光とは生命そのものを象徴的に示す存在です。一人ひとりの輝きが集まることで、世界は明るさに包まれるのではないだろうかと、そんなことも作品制作の際には考えていました」 太陽の光や月の光など、光を表現の素材として、それぞれの記憶や経験、その時どきの心と重なりあうことが大切にされている吉岡作品。吉岡さんは現在、地下鉄 銀座駅の地下通路に長期的に設置されるパブリックアートの制作も進めていて、こちらも光の表現となる。《Prismatic Cloud》と共に目にできる今秋が待ち遠しい。 常に変化し留まることのない自然の醍醐味を、もうひとつのアートで楽しんでみよう。 植物学者でアーティストのパトリック・ブランによる《Living Canyon》は、3フロア分、11メートルの垂直庭園。太陽の光が注がれる崖の頂から深い谷底までの表現となっていて、作品設置から3年が過ぎたいま、植物は伸びやかに育っている。遠くから鑑賞した後、ここでも階段を上ったり下ったりしながら、その細部に目を向けてみた。植物は日本に植生する固有種を含むおよそ75種類。見たことのない形の葉やひゅっと伸びた茎、ころんとして触れてみたくなる球根など、光に包まれた銀座の渓谷は、なんとも豊かな表情だ。 自然に向けられた心によって生み出されるアートとの出会いをさらに味わってみたく、次は「ヴァン クリーフ アンド アーペル」へ。B1Fから2Fまでの階段部分にはメゾンのアーカイブからのデザイン画も展示されるなど、メゾンの精神が凝縮された心地よい空間で、GINZA SIX店に多数揃えられたハイジュエリーを紹介いただいた。 精緻につくられた花びらの角度が光を反射する「フリヴォル」(ネックレス 1,380,000円・イヤリング 1,476,000円 ※以下全て税抜価格、イヤリングは限定店舗にて販売)は、まさに煌めきをまとった花々。また、蓮の花の巧みな描写に加えて2通りの楽しみが用意されている「ロータス アントレ レ ドア リング」(3,468,000円)。造形の魅力はもちろんのこと、自然界の生命力の表現としても魅力溢れるアートだ。 さらには、妖精が集う森を舞台とするシェイクスピアの戯曲『真夏の夜の夢』にインスピレーションを得て誕生した、ヴァン クリーフ アンド アーペルの人気コレクションから「フォリ デ プレ」(ブレスレット 12,120,000円・イヤリング 6,840,000円)。ダイヤモンドとカラーサファイヤによる繊細で豊かな色彩と精緻なセッティングなど、「黄金の手」と称されるメゾンの伝承の技、サヴォアフェールがあってこそ咲き続ける花々の輝き。 ジュエラーの詩心とクリエイティヴィティは、ウォッチでも余すところなく表現されている。「ミッドナイト ポン デ ザムルー」(23,496,000円)はメゾンを代表する、詩情を紡ぐ時の経過を感じるためのウォッチ。この時計に登場するのは、「愛の橋」で待ち合わせをする恋人たちだ。アンブレラを手にした女性が時針で、左側からゆっくり進んでいく。分針の男性は右側から中央へ。12時に出会えた二人は、月明かりのなかで抱擁し口づけを交わし……。二人の心を伝えるかのようなダイヤモンドの煌めきにも心を奪われてしまう。 「まずストーリーがあり、そのために機構の開発がなされています」と店長の竹内淳さん。16世紀から伝えられてきたグリザイユ エナメル技法で文字盤に描かれたパリの夜景では、リモージュホワイトの重なりがもたらす黒、グレー、白の陰影も美しく、見入ってしまう。物語を現実のものとして見せてくれる創造の力に、心からの拍手を贈りたい。 記憶に深く刻まれた風景は、その場の香りとも切り離せない。そして香りや味は、さまざまな景色を思いおこさせてくれる。さて、次は、レストランフロア13Fの「ミクソロジー サロン」へ。驚かされるほど自由な発想が活かされているミクソロジーカクテルの世界。オーナーバーテンダーで世界的に活躍する南雲主于三さんは以前、「ミクソロジーカクテルは総合芸術」と述べていらした。 ここ銀座店では、日本茶をベースとするカクテルが豊富に用意されている。玉露、抹茶、煎茶をはじめ、茶葉の産地、成分、製法、品質、淹れ方による香り、味の違いの探究から生みだされるお茶のカクテルから、この日いただいたのはアルコールを含まない「モクテル」を。カクテルバーテンダーの伊藤学さんのお話をうかがううちに、アルコールを用いるものとは異なるなんとも奥深い開発の過程を知った。長い長い旅のようだ。 その旅は始まりの瞬間から重要であることも知る。「鮮烈で突きぬけるような『お茶感』を表現するにはまず、お茶の厳選に決して妥協しないことです」。茶葉の抽出方法の研究もしかり。さらには一煎目、二煎目、三煎目で味の異なるお茶のブレンディングなど、無限の可能性を一つひとつ探っていく挑戦は、ラボと呼ぶ場で日々なされている。そうして完成されたなかから、つくってくださったのは「青焙じレモネード」(1,400円)。 八女の緑茶の深みと、パイナップルやレモンなど香りも軽快なフルーツの味わい。グラスに添えてくださったのは瑞々しいもみじの葉。茶釜をはじめとするお茶道具や織部の皿も目にできる銀座の「茶室」から、初夏の風景が広がっていく思いがした。 続く一杯は、フルーティな味わいが特色の台湾の高山烏龍茶である梨山茶と、南国のフルーツでつくってくださった「梨山烏龍茶とパッションフルーツのカクテル」(1,400円)。瑞々しくもしっかりとした香りや酸味を味わいながらいただくと、続いてお茶の繊細さが広がり、はっとする。またもや驚かされてしまった。色の重なりから新たな色が生まれ出るように、音と音が重なって思いもかけない旋律が奏でられるように、お茶とフルーツの特色が響きあっている。 「ミクソロジーとは、意外な組み合わせと発見に満ちた世界。味と香りの立体感を絵画や映像さながら視覚的に感じてもらえるよう、研究を重ねています」と伊藤さん。私たちの感覚を目ざめさせてくれるアートの真髄が、ここにもある。 自然界の光に目を向ける吉岡徳仁さんの作品に誘われるようにして、GINZA SIXを巡ったこの日、自然との関わりも大切に、創造の世界を探る表現者たちの作品に出会うことができた。身につけることができる、あるいは、さまざまな景色が心に浮かんでくる、一篇の詩のようなアートにも。 それらの余韻を胸に通りにでてみると、雨は上がり、青空が広がっていた。通りを包む夏の空気が心地よかった。 《 Prismatic Cloud 》吉岡徳仁 情報はこちら 《 Living Canyon 》パトリック・ブラン 情報はこちら Text: Noriko Kawakami Photos: Sohei Oya Edit: Yuka Okada(81)

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GINZA SIXの中央吹き抜けで現在紹介されている《Prismatic Cloud》を最初に目にしたのは、東京が寒空に包まれていた2月末のこと。アートとデザインの領域で世界的な活躍を続ける吉岡徳仁さんらしいインスタレーションに魅了されてしまい、あちこちから鑑賞してみたくなった。2Fから5Fまで、エスカレーターで何度も上ったり下ったりしながら作品を目にしていると、飛行機の離着陸時に窓越しに空を眺めるのと同じ、心が弾む思いがした。

輝く雲をさらに目にしたいと思いながら、この春は静かに過ぎていった。再訪がかなったのは、夏至を間近に控えた金曜の朝。あいにくの雨だったけれど、迎えてくれた浮遊するアートに私の心はふわりと軽くなっていった。そう、これこそが吉岡作品のマジック……。これまでにも虹のようなスペクトルを放つプリズムの彫刻や「虹の教会」など、光の作品を手がけてきた吉岡さん。

吉岡さんは言う。「美しい自然のかたちを模すのではないんです。心がゆさぶられる自然のエネルギーそのものを、表してみたい」。繊細であると同時に力強さを秘めている自然。時に想像を超える光景に圧倒されてしまうこともある。穏やかなだけではないけれど、だからこそ感じとることのできる一筋の光に私たちの心は大いに動かされ、感覚を呼びさまされる。

角度によっては虹色の輝きも目にすることができる今回の作品は、水や氷の粒子の集合によって雲が形成されるように、一万本に及ぶプリズムロッドで形づくられている。この「光の彫刻」について、吉岡さんはこうも語ってくれた。「光とは生命そのものを象徴的に示す存在です。一人ひとりの輝きが集まることで、世界は明るさに包まれるのではないだろうかと、そんなことも作品制作の際には考えていました」

太陽の光や月の光など、光を表現の素材として、それぞれの記憶や経験、その時どきの心と重なりあうことが大切にされている吉岡作品。吉岡さんは現在、地下鉄 銀座駅の地下通路に長期的に設置されるパブリックアートの制作も進めていて、こちらも光の表現となる。《Prismatic Cloud》と共に目にできる今秋が待ち遠しい。

常に変化し留まることのない自然の醍醐味を、もうひとつのアートで楽しんでみよう。

植物学者でアーティストのパトリック・ブランによる《Living Canyon》は、3フロア分、11メートルの垂直庭園。太陽の光が注がれる崖の頂から深い谷底までの表現となっていて、作品設置から3年が過ぎたいま、植物は伸びやかに育っている。遠くから鑑賞した後、ここでも階段を上ったり下ったりしながら、その細部に目を向けてみた。植物は日本に植生する固有種を含むおよそ75種類。見たことのない形の葉やひゅっと伸びた茎、ころんとして触れてみたくなる球根など、光に包まれた銀座の渓谷は、なんとも豊かな表情だ。

自然に向けられた心によって生み出されるアートとの出会いをさらに味わってみたく、次は「ヴァン クリーフ アンド アーペル」へ。B1Fから2Fまでの階段部分にはメゾンのアーカイブからのデザイン画も展示されるなど、メゾンの精神が凝縮された心地よい空間で、GINZA SIX店に多数揃えられたハイジュエリーを紹介いただいた。

精緻につくられた花びらの角度が光を反射する「フリヴォル」(ネックレス 1,380,000円・イヤリング 1,476,000円 ※以下全て税抜価格、イヤリングは限定店舗にて販売)は、まさに煌めきをまとった花々。また、蓮の花の巧みな描写に加えて2通りの楽しみが用意されている「ロータス アントレ レ ドア リング」(3,468,000円)。造形の魅力はもちろんのこと、自然界の生命力の表現としても魅力溢れるアートだ。

さらには、妖精が集う森を舞台とするシェイクスピアの戯曲『真夏の夜の夢』にインスピレーションを得て誕生した、ヴァン クリーフ アンド アーペルの人気コレクションから「フォリ デ プレ」(ブレスレット 12,120,000円・イヤリング 6,840,000円)。ダイヤモンドとカラーサファイヤによる繊細で豊かな色彩と精緻なセッティングなど、「黄金の手」と称されるメゾンの伝承の技、サヴォアフェールがあってこそ咲き続ける花々の輝き。

ジュエラーの詩心とクリエイティヴィティは、ウォッチでも余すところなく表現されている。「ミッドナイト ポン デ ザムルー」(23,496,000円)はメゾンを代表する、詩情を紡ぐ時の経過を感じるためのウォッチ。この時計に登場するのは、「愛の橋」で待ち合わせをする恋人たちだ。アンブレラを手にした女性が時針で、左側からゆっくり進んでいく。分針の男性は右側から中央へ。12時に出会えた二人は、月明かりのなかで抱擁し口づけを交わし……。二人の心を伝えるかのようなダイヤモンドの煌めきにも心を奪われてしまう。

「まずストーリーがあり、そのために機構の開発がなされています」と店長の竹内淳さん。16世紀から伝えられてきたグリザイユ エナメル技法で文字盤に描かれたパリの夜景では、リモージュホワイトの重なりがもたらす黒、グレー、白の陰影も美しく、見入ってしまう。物語を現実のものとして見せてくれる創造の力に、心からの拍手を贈りたい。

記憶に深く刻まれた風景は、その場の香りとも切り離せない。そして香りや味は、さまざまな景色を思いおこさせてくれる。さて、次は、レストランフロア13Fの「ミクソロジー サロン」へ。驚かされるほど自由な発想が活かされているミクソロジーカクテルの世界。オーナーバーテンダーで世界的に活躍する南雲主于三さんは以前、「ミクソロジーカクテルは総合芸術」と述べていらした。

ここ銀座店では、日本茶をベースとするカクテルが豊富に用意されている。玉露、抹茶、煎茶をはじめ、茶葉の産地、成分、製法、品質、淹れ方による香り、味の違いの探究から生みだされるお茶のカクテルから、この日いただいたのはアルコールを含まない「モクテル」を。カクテルバーテンダーの伊藤学さんのお話をうかがううちに、アルコールを用いるものとは異なるなんとも奥深い開発の過程を知った。長い長い旅のようだ。

その旅は始まりの瞬間から重要であることも知る。「鮮烈で突きぬけるような『お茶感』を表現するにはまず、お茶の厳選に決して妥協しないことです」。茶葉の抽出方法の研究もしかり。さらには一煎目、二煎目、三煎目で味の異なるお茶のブレンディングなど、無限の可能性を一つひとつ探っていく挑戦は、ラボと呼ぶ場で日々なされている。そうして完成されたなかから、つくってくださったのは「青焙じレモネード」(1,400円)。

八女の緑茶の深みと、パイナップルやレモンなど香りも軽快なフルーツの味わい。グラスに添えてくださったのは瑞々しいもみじの葉。茶釜をはじめとするお茶道具や織部の皿も目にできる銀座の「茶室」から、初夏の風景が広がっていく思いがした。

続く一杯は、フルーティな味わいが特色の台湾の高山烏龍茶である梨山茶と、南国のフルーツでつくってくださった「梨山烏龍茶とパッションフルーツのカクテル」(1,400円)。瑞々しくもしっかりとした香りや酸味を味わいながらいただくと、続いてお茶の繊細さが広がり、はっとする。またもや驚かされてしまった。色の重なりから新たな色が生まれ出るように、音と音が重なって思いもかけない旋律が奏でられるように、お茶とフルーツの特色が響きあっている。

「ミクソロジーとは、意外な組み合わせと発見に満ちた世界。味と香りの立体感を絵画や映像さながら視覚的に感じてもらえるよう、研究を重ねています」と伊藤さん。私たちの感覚を目ざめさせてくれるアートの真髄が、ここにもある。

自然界の光に目を向ける吉岡徳仁さんの作品に誘われるようにして、GINZA SIXを巡ったこの日、自然との関わりも大切に、創造の世界を探る表現者たちの作品に出会うことができた。身につけることができる、あるいは、さまざまな景色が心に浮かんでくる、一篇の詩のようなアートにも。
それらの余韻を胸に通りにでてみると、雨は上がり、青空が広がっていた。通りを包む夏の空気が心地よかった。

《 Prismatic Cloud 》吉岡徳仁
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《 Living Canyon 》パトリック・ブラン
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Text: Noriko Kawakami Photos: Sohei Oya Edit: Yuka Okada(81)

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Gonna soak up the sun ── カラフルハントで太陽を浴びる準備 https://admin.ginza6.tokyo/magazine/124808 Wed, 24 Jun 2020 01:32:42 +0000 no 子供の頃、銀座は休日に家族でデパートやディナーに出かける場所で、堂々と道路を歩ける歩行者天国がとても楽しかった思い出があります。大人になった今も家族との大切な集まりといえば銀座。休日は自分の家族と訪れる特別な場所、平日は展示会などで来ることの多い日常の銀座、といった感じです。 そんな私の銀座レパートリーに、2017年から仲間入りしたのがGINZA SIX。家族との食事はもちろん、ブランドの品揃えや書籍をチェックしたり、アポイントの合間にカフェでちょっとした仕事を片付けるために立ち寄っています。 さて、緊急事態宣言も解除され、最初のショッピングは物欲、美意識、感度を満たしてくれるGINZA SIXへGO。STAY HOME中に悶々としながら思っていたことは「とにかく太陽を浴びたい!」ということ。自粛中に季節も移り変わり、5月の陽気な気候も存分に楽しめず、梅雨に突入してしまい、もはや慢性的な太陽ロス。暑いかもしれないけれど外を歩きたい、夏に映えるカラフルなワードローブを調達し、エネルギーチャージをしようではありませんか。 まずは服です。服がないと私の場合はお出かけしたいというモチベーションが上がりません。いざ、夏を楽しむおニューな服を探しに4Fの「スタイリング/」をチェック。こちらはご存知、人気スタイリストの白幡啓さんが手がけるファッションブランドとバイイングアイテムで構成されるセレクトショップで、3月19日にGINZA SIXにオープンしたばかり。基本的にシンプルで合わせやすく、ちょっとボーイッシュ、そしてスタイリストの白幡さんならではのツイストが効いたデザインが魅力です。入り口ではマニッシュなパンツスーツがお出迎え。 久しぶりのショッピング、楽しい! 「スタイリング/」の服はすぐ着たい、全部買っておきたいと思うアイテムがいっぱいで目移りしてしまいます。ラックにはシグネチャーともいえるカシュクールタイプのロングワンピースが多様な色柄、素材で登場しています。Tシャツやインナーに着るボディなどは、さすがのこだわり生地やシルエットで、持っていると大活躍必至です。 オリジナルデザインに混ざって、個性的なワードローブが差し込まれています。そう、こちらには白幡さんセレクトのビンテージクローズもラインナップ。プリントのシルキーなチャイナジャケット(52,000円 ※以下全て税抜価格)がかわいい!コンディションもとても良く、大人がチョイスできるセレクションが嬉しいですね。 カラフル&アーティなアクセサリーも目に飛び込んできます。こちらもヴィンテージものやセレクトアイテムがミックスされた品揃え。ちょっとデコラティブでアイキャッチーなイヤリングは今シーズン必須。単品コーディネートで寂しくなりがちな夏のスタイルにひとつ加えるだけで旬の着こなしが完成するはず。 このバッグ(4,000円)も「スタイリング/」のオリジナルで、ゴールドが夏らしさ満点! 実はこのバッグ、特殊な紙で出来ていて、とても軽いんです。使い込むうちにシワが出てやわらかく、アジが出てくるんだとか。ポシェットのようなミニバッグの日には、これと2個持ちしたらいいのかも。 まるで撮影スタジオのようなストロボが置いてある店内奥。ここのラックにかかっている中央の赤と白のプリントドレス(43,000円)を購入! 70年代のヴィンテージだそうで、着ると気分がアップしたので連れて帰ることにしました。かわいい夏のワードローブをゲットできて大満足です。 夏のファッションに欠かせない重要なアイテムといえばジュエリー。特に年を重ねるほど、本物を身につけたくなるのです。これからはラグジュアリーなジュエリーだけを買うんだ! と意気込んで、ファッション撮影でも使用させていただくことが多い1Fの「ピアジェ ブティック」へ。エントランスからまっすぐ進むとたどり着くアクセシブルなブティックは、ブルーとホワイトとゴールドを基調とした明るい店内で、入りやすい雰囲気です。 深海のブルーを思わせる“ピアジェブルー”を基調に、ウィンドウのディスプレイは水色のアーティなパネルが夏の涼しげなムードを演出。仕事でのスティルライフ(物)撮影のインスピレーションになりそう。ウィンドウにはピアジェのシグネチャーモデルのひとつでもある、PIAGET ROSE(ピアジェ ローズ)コレクションが陳列。線で形どった立体的なバラのフォルムが印象的なんですよね。私は大ぶりのリングが欲しいな。 そして今回絶対にチェックしたいと思っていたお目当てがこちらのペンダント(432,000円)。Piaget Sunlight(ピアジェ サンライト)というコレクション名で、グリーンマラカイトを取り囲むようにセットされた三角形のモチーフとダイヤモンドのきらめきは、まさに太陽のエネルギーを感じるデザイン。マラカイトは樹木のように入った節目がひとつひとつ異なり、ふたつとして同じものはないそう。そんな特別感もまた魅力です。 実はSTAY HOME中に夏のお買い物計画を立てるべく、オンラインで密かにチェックしており、晴れて店頭で試着できて感激。 あえてカジュアルなTシャツスタイルに、きらっとラグジュアリーなペンダントをつけることが大人の醍醐味だと思います。そしてやはり、実際手にとって身につけてみることは大切、お店の方のお話も伺えて、ますますこの商品に愛着が湧いてしまうのでした。「待っててね」(笑)。 ピアジェはカラーストーンのラインナップが豊富。赤いカーネリアン、ブルーのラピスラズリ、そしてこちらのターコイズも。ターコイズ色のベルトのウォッチとターコイズのチェーンブレスレットを手首でからませたらおしゃれ! 夏のジュエリー使いこそ、カラーストーンからエネルギーをチャージしなくては。 といいつつも、やはりダイヤモンドを散りばめた、キラキラ系ジュエリーも気になります。球体のモチーフにリングが回転するアイコニックな「ポセション」のイヤリング(848,000円)は、程よいサイズのフープデザインで、大人の普段使いジュエリーとして手に入れたいアイテムのひとつです。 太陽を浴びる季節といえば、お肌のメンテナンスにも気が抜けません。1851年、ニューヨークでアポセカリーとして創業し、天然由来成分を配合したスキンケア製品においてまさに先駆者的存在の「キールズ」をチェックするためにB1Fへ。日本に上陸する前は、ハワイやアメリカを旅するたびに、友達とたくさんのキールズ製品を調達するのがお約束。ラベンダーやローズの香りのボディーローション、リップバームは個人的なマストバイでした。 保湿、美白、キメ&皮脂対策、エイジングケアなど、その人が求めるケア用品が揃っているだけあって、大充実のラインナップ。まさにこの時期は、日焼け後の保湿がしっかりできるスペシャルケアに的を絞って、お店のスタッフにいろいろ聞きながら吟味したいと思います。 おすすめはカレンデュラという花を使ったシリーズとのこと。太陽をさんさんと浴びたようなきれいなオレンジ色に、訳もなくそそられてしまいます。カレンデュラは“皮膚のガードマン”とも呼ばれているそうで、キールズでは、広大な敷地面積を持つエジプトの農園から花びらを採取しているのだとか。 みずみずしいゼリーのようなエッセンス ジェルマスク(4,900円)には手積みのカレンデュラの花びらがたくさん閉じ込められているそう。アロエベラ液汁も配合されており、心を鎮めてくれそう。リラックスするやさしい香りにも癒されます。これ、買います! さらに気になったのが、オイル コンセントレート マスク(5,200円)。アマゾンで採取できる3種類のオイルを配合している高級シートマスクは、ここぞという日の前夜に使用したい、保湿アイテムの切り札に。手の甲にカットしたマスクを乗せてもらったのですが、ものすごい密着感で、乾いた肌がごくごくとオイル成分を吸い込んでいくような感触。 さんざんいろいろなプロダクトを試すことができて得した気分。製品を買うと、自分に合いそうなサンプルをプレゼントしてくれるのですが、サンプルを入れるペーパーバッグに書かれたイラスト&メッセージのかわいいこと! お店のスタッフが1袋ずつ手描きしているそうで、 自粛後ということもあり、妙にハートに染みるのでした。 ぐるぐると館内を歩き回っていると、何か冷たいものをキュッと注入して、リフレッシュしたくなります。そうするとデパ地下へ降りていって、フルーツ屋さんがやっているフレッシュジュースをゴクゴク飲む、というのが至福のひとときなのですが、これからは4Fの「ジョウタロウ サイトウ カフェ」もレパートリーのひとつに。ブティックの「ジョウタロウ サイトウ」には、日本を代表するキモノデザイナー、斉藤上太郎氏が手がける着物、和装小物が並んでいます。東京で行われているファッションウィーク中にランウェイショーも行っており、例えばデニムのような洋服感覚のアバンギャルドな着物も展開、一味違ったおしゃれな和装の世界に浸れます。手持ちの浴衣に合わせたい、カラフルな色柄の帯をチェックしつつ、ブティックに併設されたカフェへ。 こちらが、知る人ぞ知るグラスデザート(1,500円)。まるでジュエリーのような色彩のフルーツは季節ごとに変わり、今の時期はマンゴーが楽しめます。太陽をいっぱいに浴びて熟したひと口サイズのマンゴーがフローズン状態で入っており、さらにはグアバやパイナップルの果肉も一緒にゴロゴロ! スプーンを入れる瞬間はとても緊張してしまいます。なにしろあまりにも芸術的なので、崩してしまうのがもったいない。こちらはストローでチューっとするのではなく、フローズンフルーツをすくっていただくデザートです。 冷たくてほんのり甘くて超ジューシー! そしてなんという清涼感! ゴロゴロのフルーツに混ざっているゼリーがさらに、口当たりとのどごしを滑らかにしています。3種類のフルーツを交互に食べられるので、もう一口、もう一口、とスプーンを口に運ぶ手が止まりません。食べ応えがあるので、空腹も程よく満たされ、館内をもうひとラウンドできそうです。 「グラスデザート」がいただけるカフェスペースは、落ち着いた和モダンな雰囲気。格子柄に見える壁は木工細工で、シートは西陣織でしつらえられています。ショッピングの合間はもちろんですが、銀座で展示会まわりをしている合間にちょっとひと息ついたり、仕事をする空間としても重宝すること必至です。 帰りにはオリジナルのアイスバー(500円〜)をお土産に。京都の染工房の一角に設けられたアイスバーファクトリーで、一つ一つ手作りされている、まるでアートのようなひんやりスイーツは、さっぱり〜濃厚フレーバーが20種類以上。オリジナルデザインのボックス入りのギフトとしても喜ばれているそう。 これで太陽チャージの準備は整いました。さらに今回実感したことは、オンラインで手軽に購入できるショッピングはとても便利だけれど、実際にお店に足を運んでスタッフと話をしたり、試着をしながら買い物をすることがショッピングの醍醐味なんだということ。こんな時代だからこそ、コミュニケーションを楽しむ場所のひとつとしてもGINZA SIXを利用したいです。 Text: Atsuko Kobayashi Photos: Kanako Noguchi Edit: Yuka Okada(81)

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子供の頃、銀座は休日に家族でデパートやディナーに出かける場所で、堂々と道路を歩ける歩行者天国がとても楽しかった思い出があります。大人になった今も家族との大切な集まりといえば銀座。休日は自分の家族と訪れる特別な場所、平日は展示会などで来ることの多い日常の銀座、といった感じです。

そんな私の銀座レパートリーに、2017年から仲間入りしたのがGINZA SIX。家族との食事はもちろん、ブランドの品揃えや書籍をチェックしたり、アポイントの合間にカフェでちょっとした仕事を片付けるために立ち寄っています。

さて、緊急事態宣言も解除され、最初のショッピングは物欲、美意識、感度を満たしてくれるGINZA SIXへGO。STAY HOME中に悶々としながら思っていたことは「とにかく太陽を浴びたい!」ということ。自粛中に季節も移り変わり、5月の陽気な気候も存分に楽しめず、梅雨に突入してしまい、もはや慢性的な太陽ロス。暑いかもしれないけれど外を歩きたい、夏に映えるカラフルなワードローブを調達し、エネルギーチャージをしようではありませんか。

まずは服です。服がないと私の場合はお出かけしたいというモチベーションが上がりません。いざ、夏を楽しむおニューな服を探しに4Fの「スタイリング/」をチェック。こちらはご存知、人気スタイリストの白幡啓さんが手がけるファッションブランドとバイイングアイテムで構成されるセレクトショップで、3月19日にGINZA SIXにオープンしたばかり。基本的にシンプルで合わせやすく、ちょっとボーイッシュ、そしてスタイリストの白幡さんならではのツイストが効いたデザインが魅力です。入り口ではマニッシュなパンツスーツがお出迎え。

久しぶりのショッピング、楽しい! 「スタイリング/」の服はすぐ着たい、全部買っておきたいと思うアイテムがいっぱいで目移りしてしまいます。ラックにはシグネチャーともいえるカシュクールタイプのロングワンピースが多様な色柄、素材で登場しています。Tシャツやインナーに着るボディなどは、さすがのこだわり生地やシルエットで、持っていると大活躍必至です。

オリジナルデザインに混ざって、個性的なワードローブが差し込まれています。そう、こちらには白幡さんセレクトのビンテージクローズもラインナップ。プリントのシルキーなチャイナジャケット(52,000円 ※以下全て税抜価格)がかわいい!コンディションもとても良く、大人がチョイスできるセレクションが嬉しいですね。

カラフル&アーティなアクセサリーも目に飛び込んできます。こちらもヴィンテージものやセレクトアイテムがミックスされた品揃え。ちょっとデコラティブでアイキャッチーなイヤリングは今シーズン必須。単品コーディネートで寂しくなりがちな夏のスタイルにひとつ加えるだけで旬の着こなしが完成するはず。

このバッグ(4,000円)も「スタイリング/」のオリジナルで、ゴールドが夏らしさ満点! 実はこのバッグ、特殊な紙で出来ていて、とても軽いんです。使い込むうちにシワが出てやわらかく、アジが出てくるんだとか。ポシェットのようなミニバッグの日には、これと2個持ちしたらいいのかも。

まるで撮影スタジオのようなストロボが置いてある店内奥。ここのラックにかかっている中央の赤と白のプリントドレス(43,000円)を購入! 70年代のヴィンテージだそうで、着ると気分がアップしたので連れて帰ることにしました。かわいい夏のワードローブをゲットできて大満足です。

夏のファッションに欠かせない重要なアイテムといえばジュエリー。特に年を重ねるほど、本物を身につけたくなるのです。これからはラグジュアリーなジュエリーだけを買うんだ! と意気込んで、ファッション撮影でも使用させていただくことが多い1Fの「ピアジェ ブティック」へ。エントランスからまっすぐ進むとたどり着くアクセシブルなブティックは、ブルーとホワイトとゴールドを基調とした明るい店内で、入りやすい雰囲気です。

深海のブルーを思わせる“ピアジェブルー”を基調に、ウィンドウのディスプレイは水色のアーティなパネルが夏の涼しげなムードを演出。仕事でのスティルライフ(物)撮影のインスピレーションになりそう。ウィンドウにはピアジェのシグネチャーモデルのひとつでもある、PIAGET ROSE(ピアジェ ローズ)コレクションが陳列。線で形どった立体的なバラのフォルムが印象的なんですよね。私は大ぶりのリングが欲しいな。

そして今回絶対にチェックしたいと思っていたお目当てがこちらのペンダント(432,000円)。Piaget Sunlight(ピアジェ サンライト)というコレクション名で、グリーンマラカイトを取り囲むようにセットされた三角形のモチーフとダイヤモンドのきらめきは、まさに太陽のエネルギーを感じるデザイン。マラカイトは樹木のように入った節目がひとつひとつ異なり、ふたつとして同じものはないそう。そんな特別感もまた魅力です。

実はSTAY HOME中に夏のお買い物計画を立てるべく、オンラインで密かにチェックしており、晴れて店頭で試着できて感激。 あえてカジュアルなTシャツスタイルに、きらっとラグジュアリーなペンダントをつけることが大人の醍醐味だと思います。そしてやはり、実際手にとって身につけてみることは大切、お店の方のお話も伺えて、ますますこの商品に愛着が湧いてしまうのでした。「待っててね」(笑)。

ピアジェはカラーストーンのラインナップが豊富。赤いカーネリアン、ブルーのラピスラズリ、そしてこちらのターコイズも。ターコイズ色のベルトのウォッチとターコイズのチェーンブレスレットを手首でからませたらおしゃれ! 夏のジュエリー使いこそ、カラーストーンからエネルギーをチャージしなくては。

といいつつも、やはりダイヤモンドを散りばめた、キラキラ系ジュエリーも気になります。球体のモチーフにリングが回転するアイコニックな「ポセション」のイヤリング(848,000円)は、程よいサイズのフープデザインで、大人の普段使いジュエリーとして手に入れたいアイテムのひとつです。

太陽を浴びる季節といえば、お肌のメンテナンスにも気が抜けません。1851年、ニューヨークでアポセカリーとして創業し、天然由来成分を配合したスキンケア製品においてまさに先駆者的存在の「キールズ」をチェックするためにB1Fへ。日本に上陸する前は、ハワイやアメリカを旅するたびに、友達とたくさんのキールズ製品を調達するのがお約束。ラベンダーやローズの香りのボディーローション、リップバームは個人的なマストバイでした。

保湿、美白、キメ&皮脂対策、エイジングケアなど、その人が求めるケア用品が揃っているだけあって、大充実のラインナップ。まさにこの時期は、日焼け後の保湿がしっかりできるスペシャルケアに的を絞って、お店のスタッフにいろいろ聞きながら吟味したいと思います。

おすすめはカレンデュラという花を使ったシリーズとのこと。太陽をさんさんと浴びたようなきれいなオレンジ色に、訳もなくそそられてしまいます。カレンデュラは“皮膚のガードマン”とも呼ばれているそうで、キールズでは、広大な敷地面積を持つエジプトの農園から花びらを採取しているのだとか。

みずみずしいゼリーのようなエッセンス ジェルマスク(4,900円)には手積みのカレンデュラの花びらがたくさん閉じ込められているそう。アロエベラ液汁も配合されており、心を鎮めてくれそう。リラックスするやさしい香りにも癒されます。これ、買います!

さらに気になったのが、オイル コンセントレート マスク(5,200円)。アマゾンで採取できる3種類のオイルを配合している高級シートマスクは、ここぞという日の前夜に使用したい、保湿アイテムの切り札に。手の甲にカットしたマスクを乗せてもらったのですが、ものすごい密着感で、乾いた肌がごくごくとオイル成分を吸い込んでいくような感触。

さんざんいろいろなプロダクトを試すことができて得した気分。製品を買うと、自分に合いそうなサンプルをプレゼントしてくれるのですが、サンプルを入れるペーパーバッグに書かれたイラスト&メッセージのかわいいこと! お店のスタッフが1袋ずつ手描きしているそうで、 自粛後ということもあり、妙にハートに染みるのでした。

ぐるぐると館内を歩き回っていると、何か冷たいものをキュッと注入して、リフレッシュしたくなります。そうするとデパ地下へ降りていって、フルーツ屋さんがやっているフレッシュジュースをゴクゴク飲む、というのが至福のひとときなのですが、これからは4Fの「ジョウタロウ サイトウ カフェ」もレパートリーのひとつに。ブティックの「ジョウタロウ サイトウ」には、日本を代表するキモノデザイナー、斉藤上太郎氏が手がける着物、和装小物が並んでいます。東京で行われているファッションウィーク中にランウェイショーも行っており、例えばデニムのような洋服感覚のアバンギャルドな着物も展開、一味違ったおしゃれな和装の世界に浸れます。手持ちの浴衣に合わせたい、カラフルな色柄の帯をチェックしつつ、ブティックに併設されたカフェへ。

こちらが、知る人ぞ知るグラスデザート(1,500円)。まるでジュエリーのような色彩のフルーツは季節ごとに変わり、今の時期はマンゴーが楽しめます。太陽をいっぱいに浴びて熟したひと口サイズのマンゴーがフローズン状態で入っており、さらにはグアバやパイナップルの果肉も一緒にゴロゴロ!

スプーンを入れる瞬間はとても緊張してしまいます。なにしろあまりにも芸術的なので、崩してしまうのがもったいない。こちらはストローでチューっとするのではなく、フローズンフルーツをすくっていただくデザートです。

冷たくてほんのり甘くて超ジューシー! そしてなんという清涼感! ゴロゴロのフルーツに混ざっているゼリーがさらに、口当たりとのどごしを滑らかにしています。3種類のフルーツを交互に食べられるので、もう一口、もう一口、とスプーンを口に運ぶ手が止まりません。食べ応えがあるので、空腹も程よく満たされ、館内をもうひとラウンドできそうです。

「グラスデザート」がいただけるカフェスペースは、落ち着いた和モダンな雰囲気。格子柄に見える壁は木工細工で、シートは西陣織でしつらえられています。ショッピングの合間はもちろんですが、銀座で展示会まわりをしている合間にちょっとひと息ついたり、仕事をする空間としても重宝すること必至です。

帰りにはオリジナルのアイスバー(500円〜)をお土産に。京都の染工房の一角に設けられたアイスバーファクトリーで、一つ一つ手作りされている、まるでアートのようなひんやりスイーツは、さっぱり〜濃厚フレーバーが20種類以上。オリジナルデザインのボックス入りのギフトとしても喜ばれているそう。

これで太陽チャージの準備は整いました。さらに今回実感したことは、オンラインで手軽に購入できるショッピングはとても便利だけれど、実際にお店に足を運んでスタッフと話をしたり、試着をしながら買い物をすることがショッピングの醍醐味なんだということ。こんな時代だからこそ、コミュニケーションを楽しむ場所のひとつとしてもGINZA SIXを利用したいです。

Text: Atsuko Kobayashi Photos: Kanako Noguchi Edit: Yuka Okada(81)

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