GINZA SIX EDITORS
ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。
GINZA SIX で見つける「環境のために今、自分にできること」 Discovering Ways to Help the Environment at GINZA SIX
平工 京子
バブルな80年代からこの仕事をしていますが、お買い物に関しては年齢を重ねるごとに、かなり堅実になってきました。“消費をリードする”のがファッション誌の編集者の仕事だとしたら、私は少々、異質な存在だったかもしれません。が、仕事柄、目は肥えています。あれやこれや買うよりも、少数精鋭主義でこれはと思ったものだけ買って、長く使う主義。結局、そういうものが手元に残っていて、私のワードローブになっています。
その堅実な私のファッション・スタイルが時代にフィットしてきました。と、言うのもファッション産業が長年にわたって環境に悪影響を及ぼしてきた事実が、公に語られるようになってきたから。生産された服は売れ残ると、廃棄されます。その量は毎秒トラック1台分に相当すると言われ、焼却によって出るCO2の量は世界の全排出量の10%を占めています。
そんな中、パリで発表されたディオールのランウェイ速報に目が釘付けになりました。それは、170本の木を森のように並べたもので、この1日限りのセットはショーの後、パリ郊外の何箇所かに植林される、というプロジェクトだったのです。ガーデンや植物をテーマにしたこのコレクションで、アーティスティック ディレクターのマリア・グラッツィア・キウリが、「自分にいまできることは何か」と自問した結果がこのプレゼンテーション。
環境に配慮するのは、これまで一部のオーガニック志向の人たちや、ロハスなライフスタイルの人たちのものというイメージでした。それが大きく変わりつつある。ディオールのこのプロジェクトはそれを象徴する出来事だったと思います。私は感動しました。何か買うなら、ディオールで買いたい。そういう気持ちが芽生えました。
GINZA SIX 中央通り沿い(B1F〜4F)の「House of Dior Ginza(ハウス オブ ディオール ギンザ)」には、いま店頭に2020 クルーズ コレクションが並んでいます。
ディオールのようなラグジュアリー・ブランドは毎シーズン、かならず、ベーシックな服を出していて、私がふだん目を皿のようにして探しているのはそういう服。素材も縫製も上質なので、自分に合ったものと出会えれば、長く着ることができるから。
新作の中から、ネイビーのデイドレス(580,000円 ※以下全て税別価格)を試着させていただきました。
ディオールのアイコンとも言える、ウエストからスカートがぱっと広がるレディライクなシルエット。素材は張りのあるシルクシャンタン。装飾をはぶいたミニマルなデザインでありながら、極上のエレガンスが漂う1点です。「レディ ディオール」のバッグ(370,000円)と、パテントレザーのパンプス(112,000円)を合わせて、オーセンティックに。手前の白いバッグ(390,000円)は「30 モンテーニュ」のもの。
シンプルなので、小物使いで変化をつけて楽しめます。
エスニックなプリントのヘッドバンド(41,500円)、びっしりと刺繍が施された「レディ ディオール」のバッグ(650,000円)、ラスティックなトングサンダル(73,000円)。CDロゴがあしらわれた存在感のあるベルト(225,000円)も、すべてクルーズ コレクションのインスピレーション源の一つである“マラケシュ”を彷沸とさせるもの。
さらにヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌが手掛けるファインジュエリーは、いつも素敵なものがたくさん。
これは、ムッシュ・ディオールが情熱を傾けていた占星術からインスパイアされた「ローズ セレクト」のコレクションから、月の面と太陽の面が裏表になったネックレス(590,000円)。もちろん、長く使えそう。
4Fはライフスタイルのフロア。紅茶好きの私は、優雅なティーセットにいつも魅入られてしまいます。クリスチャン・ディオール自身がデザインしたブラック&ホワイトの「ムッシュ ディオール」コレクション。チェックシリーズは新作のカプセルコレクション。秋冬のウィメンズのコレクションと同じ、50年代のイギリスのテディガールからインスパイアされたもの。
私は食べ物の好みもトラディショナル。趣向を凝らしたプレゼンテーションの美しいものよりも、伝統的な味覚が好きです。GINZA SIX でよく行くのは、B2Fの「The Pie Hole Los Angeles(ザ パイホール ロサンゼルス)」。
ここはLA発のパイ専門店。すべてのパイは、創業者のファミリーに5世代にわたって受け継がれている秘伝のレシピで手作りされています。LAのアートディストリクトにある本店には、ハリウッドのセレブリティが顔を見せることも多いそう。
イートインのコーナーは、ランチタイムになるとすぐいっぱいになってしまいます。テイクアウトのお客さんも多数。私は食事の時間が不規則なので、午後遅い時間のティータイムがランチ代わりになることもしばしば。オーダーの定番は王道のアップルパイ「マムズ アップル クランブル」(480円)。オーガニックコーヒーもこのお店の売りですが、私は紅茶派なのでオーガニックのホットティーをいただきます。
しっかりとした甘さのあるアップルパイは、ちょっと血糖値を上げたい時間帯にはぴったり。ポーションがそれほど大きくないのも、ちょうどよい。ざくざくとしたクランブルの食感と、しっとりしたフィリングのコンビネーションが病みつきになる美味しさ。
甘くないパイが食べたいときは「シェパーズパイ」(420円)をチョイス。牛ひき肉とマッシュポテトの伝統的なホットパイ。ポテトがとろっと優しくて、ほっとします。素朴だけれど、きちんと手をかけて作られている。こういう日常の中の小さな幸せが心を豊かにしてくれます。
最後に向かったのは4Fの「Theory(セオリー)」。デイリーに着る服は、シンプルでミニマルなパンツスタイルが多いので、このブランドのシステマティックなワードローブの考え方には共通点を感じています。
お店に入ってすぐのところには、環境に配慮した“グッドウール”のジャケット(48,000円)とパンツ(28,000円)。100年の歴史を持つイタリアの工場が、最新の省エネルギー技術を採用して織り上げた高級メリノウールを使用したもの。世界的に人気のラインで、これだけカラーバリエーションが揃うのは日本ではGINZA SIXだけ。
その他のアイテムも、世界最高峰の素材を調達しているセオリー。長く着るには素材の良さはとても重要なポイントです。リバーシブルのムートンコート(320,000円)を試着してみました。ノーカラーなので、羽織るように着こなせます。毛足のある方を表にすると、まったく表情が変わりますね。
こちらも気になった、毛足の長いアルパカのニット(39,000円)。ブラウン系のボーダーは他にはない色味です。
お店はとても広く、セオリーの世界観に触れながら、ゆったりとお買い物ができます。
また、このスペースを生かして、働く女性を支援するセオリーの活動“Be Heard”のトーク・イベントを開催しているそう。取材に立ち合ってくださったリテール担当の方が「物を売るだけではない、何かプラスαを提供できる店舗でありたい」とおっしゃったのには、パッションが伝わってきてぐっときました。
ECサイトでお買い物が過不足なくできる今の時代、お店にわざわざ足を運ぶのは、そこでしかできない体験があるから。セオリーのように、GINZA SIXだからこそできる社会貢献の取り組みが、これからどんどん増えていくと素晴らしいと思います。
Text:Kyoko Hiraku Photos:Kanako Noguchi Edit:Yuka Okada
GINZA SIX EDITORS Vol.91
平工 京子
80年代の「流行通信」を皮切りに、モード誌編集者歴35年。1991年からは、フリーのファッションエディターとして「VOGUE JAPAN」「Harper’s BAZAAR」「FIGARO japon」「SPUR」「25ans」「Richesse」などで、記事の企画、構成、撮影ディレクションと執筆を手掛ける。講談社のウェブマガジン「ミモレ」(https://mi-mollet.com/subcategory/fashion)では、ファッション界の社会貢献とサステナビリティの取り組みをテーマに2019年11月から連載をスタート。ブログ「超私的ファッション道」(https://ameblo.jp/kyokohiraku)は毎日更新中。Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中