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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

Learning from the Old to Create the New at GINZA SIX

北村 美香

「銀座には、すべてのものが揃っているんだよ」。20年ほど前に取材した某歌舞伎俳優が教えてくれました。「足袋専門店から呉服店まで、毎日のごはんの材料からハイクオリティのレストランまで、なんでもあるでしょう?」 そうなんです、私も取材の帰りに食材を買ったり、友人や家族のためのギフトを選んだり。打ち合わせでカフェへ、観劇やハレの日の食事にも、銀座へ足繁く通っています。東京育ちの私が、いちばん多く足を運んだ街かもしれません。そんな銀座詣でに楽しい場所が新たに加わりました。「GINZA SIX」。銀座という街を凝縮したかのようにバラエティに富んだ240強ものお店が入っています。今日は午後から打ち合せだから、お昼前後にぶらぶらGINZA SIXへ。食のジャーナリストとしては、まずレストランやカフェをチェック。あら、ここは次回の打ち合わせにぴったりかも!

まず入ったのは、4Fの「中村藤?本店」のカフェ。京都・宇治に安政元(1854)年創業した宇治茶専門店です。勝海舟から贈られた『茶煙永日香』を家訓に掲げ、天皇陛下へ御茶を献上。茶道お家元より茶銘をいただき、茶業一筋に歩んできた老舗です。20年ほど前、当時流行し始めた生チョコレートに抹茶を組み合わせた画期的な商品を作ったのが、このお店です。さて、窓際のテーブル席へ。石畳が続くあづま通りを見下ろせます。わずか100mほどの通りには私の好きなお店もあり、銀座の歴史を感じる町並みが続いています。ここを見ながらお茶ができるとは。銀座の穴場です。

テーブルにお茶のセットが置かれています。「本日のお茶でございます」。あら、日替わりでいろいろなお茶をいただけるなんて。今日は中村藤?本店の代表銘柄「中村茶」。煎茶や玉露など7種類のお茶をブレンドしています。そうそう、お茶をブレンドすることをお茶業界では「合組(ごうぐみ)」と呼んでいます。

いまはお昼前。メニューを見ると、京都らしい味があって食べたくなりました。「にしん茶蕎麦」(1,204円 ※以下全て税別価格)。抹茶を練り込んだ茶蕎麦の上に、薄甘くやわらかく炊かれたにしんがのっています。おだしの風味が身体に染みます。添えられた「村上重本店」のお漬物も口直しにいい。うーん。こういう味は京都でしか食べられないのに。聞けば「宇治本店をはじめ他店では秋限定ですが、銀座では通年でお出ししています」。東京で、しかも銀座で、関西風のお蕎麦は稀少です。ここは甘いものが有名ですが、これから私はこれ目当てになりそう。

でもやっぱり目が釘付けになってしまったのが、パフェ。ホイップされた生クリームの上に、屋号「まると」を表す紋が抹茶で美しく描かれています。抹茶シフォンケーキ、抹茶アイスクリーム、白玉だんご、生茶ゼリイ、抹茶ソフトクリームと重ねられた中に、小麦のあられの食感やフランボワーズの酸味、栗の甘露煮と丹波大納言小豆の甘みが加わって、抹茶味のシンフォニーです。甘さがよい塩梅に控えめなので、まろやかなお茶のおいしさが引き立っています。お蕎麦を食べた後なのに、ぺろり。「まるとパフェ[抹茶]」(1,297円)

店内はコの字形のカウンターとテーブル席。おひとり様から親子連れ、グループまで幅広い層のお客様が楽しんでいました。昼は混むので、午前中がおすすめ。

「中村藤?本店」の真骨頂のお茶をぜひ! 甘味、旨味、苦渋味のバランスのよい煎茶、奥行きのある、宇治らしい玉露、やさしい味の焙じ茶など、何でも揃っています。豊富な商品知識と、商品への愛情のこもった説明で対応してくださった店長の日野陽菜さん。その丁寧さはお店の誠意そのもの。

私が20年ほど前に取材した「生ちゃこれーと」(1,200円)。当時から本物の味を追求しており、老舗の底力を感じたのをとても覚えています。クスリとさせてくれるお茶目なネーミングもいいですねー。いまは行列のできる「生茶ゼリイ」をはじめ、抹茶かすていら、渋栗入り抹茶チーズケーキなど、人気の品がたくさん登場しています。

老舗の風格を表した大暖簾をくぐる行為に、テンションが上がります。

「中村藤?本店」のある4Fはファッションとライフスタイルのお店もあります。ぶらぶらしていると、大好きな「ヘレンカミンスキー」が。10数年前、仕事でオーストラリアへ通っていたとき、現地のお店で帽子を買い、いまも愛用しています。創設者のヘレン・マリー・カミンスキーが、焼け付くようなオーストラリアの日差しから自分の子どもたちを守るため、1983年にラフィア・ハットを手作りしたのがはじまりとか。

最近、犬を飼いはじめて、お散歩用の帽子を探していたので、プリム(ツバ)の広めのものが気になります。気に入ったのは「Acheron」(38,000円)。クラシックなフォルムにレザ―のバンド。

「Sisley」(38,000円)は、手編みされた模様が個性的。帽子はすべて天然素材にこだわって作られています。この帽子に使われているのはラフィア。最高のラフィアを求めていってマダガスカル産に辿り着いたそう。年を経て、色が変わっていくのも、本物ならではの味わいです。

いまは今年の春夏のコレクションが勢揃いしている時期。今回並んでいるものは色が豊富で、淡いトーンのものも。このグレージュな色合いは上品です。サンバイザー「Kirsten」(21,000円)はここ数年の人気商品。いちばん欲しくなったのは、下の写真の定番商品「Provence12」(30,000円)。プリムの狭い同じものを持っていますが、くるくると巻いて収納できるので、旅に欠かせないアイテムです。これはプリムの広いもの。プリムを上げたり下げたり自由自在に形を作ることができるのも便利です。

お店で手入れ方法を教えてもらいました。型くずれしたら、スチームを当てれば自分で直せますし、お店でも直してもらえます。内側についているネオプレンバンドは取り替え可能(有料)です。細やかなサービスが帽子の老舗を支えています。

帽子を選んだら、そろそろ地下で手土産を買いましょう。何回も訪れているB2Fのフードエリアです。かりんとうのお店「ぎんざ鏡花水月」が、実は私の大好きな湯島の老舗かりんとう専門店「花月」の新ブランドだということに気付きました。灯台下暗し! 数十年も食べ続けてきたお店のかりんとうが銀座初出店とは。これは買わねばなりません!

新ブランドの商品は3種類。手前から、甘酒を練り込んだ生地に国産きなこをまぶした「あま」。小麦粉に餅米を加えて、サクッと軽い食感に仕上げ、飴掛けした「こはく」(中)。小さくて食べやすいサイズです。黒胡麻をペースト状にして飴に混ぜた「まゆずみ」。どれも従来のかりんとうとは、ひと味違う味と食感です。

GINZA SIX 2周年の限定品・3種詰め合わせ(1,950円)。江戸と現代の銀座が交叉するイラストが目を引きます。なんと3代目の溝口智広社長が描いたとか。私としては、限定品ではなく定番にしてほしい。銀座は手土産の宝庫ですが、こちらのかりんとうも、私の手土産手帖にオン!
2時間ほどGINZA SIXをぶらぶらしましたが、今回の3軒はすべて以前から知っているお店。それぞれ、古い歴史を持っていますが、現状に甘んじることなく、進化されていました。「温故知新」を地でいく老舗ばかりです。まさに「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」2時間。銀座にはすべてのモノ、そしてモノ作りのフィロソフィーがあるんですね。あなたに寄り添ってくれるフィロソフィーをGINZA SIXで探してみてください。

Text:Mika Kitamura Photos:Futoshi Osako Edit:Yuka Okada

GINZA SIX EDITORS Vol.78

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北村 美香

食ジャーナリスト。広告代理店勤務を経て、食ジャーナリストの大本幸子氏に師事。ヨーロッパの三ツ星から韓国の路地裏の食堂、ブータンの農家まで世界24カ国を食べ歩く。「朝日新聞」「婦人公論」「T Japan web」などでコラム連載。「エクラ」「T Japan」「アエラスタイルマガジン」「Numero Tokyo」などで企画編集及び執筆。家庭料理の大切さを伝えたいと、「ウー・ウェンの家庭料理の8つの基本」(文藝春秋)など、レシピブックの企画編集多数。
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

中村藤?本店

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HELEN KAMINSKI

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ぎんざ鏡花水月

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2020.06.04 UP

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