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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

A Place Where You Find Something Whenever You Go

八木 基之

子供の頃からぶらぶらするのが好きだった。小学生の時は寄り道ばかり、基本、家にまっすぐ帰らない。今でも、会社帰り、ふと思いついて飲みに行ったり、銭湯に寄ったり、映画を観たり……。それだけじゃなく、ひとつ手前の駅で降りて、ぶらぶら歩いて家に帰る。しかも、その間に用もなくコンビニによって立ち読みをしていたりする。要は昔から変わらない。

それにしてもGINZA SIXは、ぶらぶらするのには最高の場所だ。どうやら店舗が並ぶ通路は銀座の路地裏の小径をイメージしているらしい。まっすぐではなくランダムな、あえて折れ曲がったレイアウト。どこに何があるか、少しわかりづらい。でも角を曲がった時、突然目の前に素敵なお店が現れたり、欲しいものを見つけられたりする。それが、なんか楽しい。

ところで僕は建築家の安藤忠雄さんの担当で、今から8年前、イタリア出張の先生を取材で追いかけたことがある。その時、先生はこんなことを言っていた。「機能的すぎるのはいけない。なぜ多くの人がヴェネツィアに何度も足を運ぶのか、それはあの街が迷路みたいだから。いつ行っても新しい発見や、感動があるから人はリピートする」のだと。なるほど、GINZA SIXのよさって、そこなんだと思う。いつ行っても新しい何かに出合える。だから何度も通ってしまうのだ。

今回、まず訪れたのは1階にある「VENINI(ヴェニーニ)」。1921年創業の老舗ヴェネツィアングラスのブランドで、僕がこのヴェニーニを知ったのも、その安藤忠雄さんをイタリアで取材した時だ、先生はミラノサローネでヴェニーニとコラボした照明「VELIERO(ヴェリエロ)」を発表。現在までに4つのプロダクトを手掛けていて、今、この店舗には4作品めの新作のオブジェ「ANDO COSMOS(アンドー コスモス)」が並んでいる。

「ANDO COSMOS」は、先生曰く「建築の原点である立方体と球体を組み合わせた」オブジェ。クリスタル、ブルー、グリーン、レッドの4色のカラーで展開する。価格はクリスタルが3,080,000円、他の3色が2,880,000円(以下全て税別価格)。その圧倒的な存在感は、家に飾ったら、インテリアの主役になること間違いなしだ。クリスタルは世界限定19点、他の3色は30点の販売で、日本には4点入ってきたが、すでに3点は売れてしまったそう。さすがのANDO人気!

他にもヴェニーニには、シャンデリアから花瓶まで、さまざまなプロダクトがある。いずれもヴェネツィアのマエストロが、1個1個吹いて作りあげたもので、カラーリングが絶妙だ。光が透過し反射する様はとにかく美しい。なんでもヴェニーニは色のパレットを100種類以上持っているそう。今度、友人が新築した家に呼ばれているのだが、ヴェニーニの小さい花瓶をお祝いとして持って行こうと思う。さすがにANDO COSMOSは無理だが、花瓶のシリーズは値段も比較的手頃でギフトにぴったりだ。

続いて5階のフロアへ。ここは靴と鞄が充実している。ぶらぶら歩いていると、目に入ったのが「TUMI(トゥミ)」の店舗。個人的にもトゥミのバリスティックナイロンのキャリーケースを10年以上使っている。そろそろ新しいものを、と思っていたところなのでお店に入ってみた。

19 DEGREE ALUMINUMは、アルミ製のキャリーケースのコレクション。その名の通り19度の角度で斜線が表面に施されている。これは、美しいだけでなく、強度を上げるためのもので、機能を重視したトゥミらしいデザインだ。カラーはマットブラックとシルバー、シーズンカラーのアンバーとガンメタルの4色。機内持ち込み用(100,000円/ガンメタルカラーは110,000円)から、短期宿泊のトラベル用(120,000円)、長期宿泊のトラベル用(135,000円)の3種類が揃う。これに買い替えるのもいいかもしれない。

それにしてもトゥミの機能性には、本当に驚かされる。日本限定ホリデーコレクションの3WAYブリーフ(69,000円)はその代表格だ。最近、PCを常に持ち歩いているので、背負えるのは非常に便利。誰が見てもデザイン的にトゥミのビジネスバッグだとひと目でわかるので、ジャケットやスーツに合わせても、制服の高校生みたいに見られないのが嬉しい。とにかくポケットが充実、個人的には折りたたみ傘やペットボトルを収納できる防水加工のポケットが気に入った。

そして、これはいいと思ったのが、トゥミの折りたたみ傘だ。ワンプッシュで開くだけでなく、閉じることも可能。また、強風でも傘がひっくり返ることのないよう、通風孔が設けられていて、さすがトゥミ、気が利いている。黒の折り畳み傘というと、なんだかザ・オッサンなアイテムだが、このトゥミの傘は違う。きちんとした大人の男性が持っていそうで、本当に欲しくなった。Mサイズで10,000円と、失くしたら凹みそうな価格ではあるが…。

次はひと休みしようと地下2階のフーズフロアへ。ここは新業態や都内初出店など、GINZA SIXにしかない店が集結しているらしい。ぶらぶら歩いて、ふと直感的にいいと思ったお店に入る。それが「CAFÉ EXPERTO(カフェ エクスペルト)だ。ここは生産国での品種、栽培、精選から日本での保管、焙煎に至るまで徹底的にこだわったコーヒーショップ。何に惹かれたかというと、それはカウンターの中にいる、宮﨑壮史さんの佇まいだ。間違いなく美味しいコーヒーを淹れてくれそうなオーラに満ちている。

で、その宮﨑さんのおすすめに従って、コロンビア・カトゥーラのベジャビスタ農園で採れたカトゥーラ種のコーヒーをいただくことに。「淹れ方でどのくらい味が変わるか、飲み比べをしてみましょう」と宮﨑さん。ハンドドリップとフレンチプレスの2つの方法で淹れてもらった。それにしても宮﨑さんの所作の気持ちいいこと。ついウットリと見惚れてしまう。丁寧にお湯を注ぐ姿からはコーヒーへの愛情と情熱が伝わってくるのだ。なんでも宮﨑さんはコーヒーを極めるべく、ハワイのコーヒー農園で働いていたこともあるそう。「コーヒー豆にとって実は大切なのは輸送なんです。うちの豆はきちんとした温度管理の元、運んでいるものばかりです」。そのこだわりを聞くと、1杯1,500円という価格にも納得できる。

その味だが、ハンドドリップで淹れたほうは、これがコーヒーか、と思ってしまうほど雑味のまったくない、透明感のある味わい。喉を通ったあと、余韻が鼻を抜け、しばらく長く続く。もう、上品としか形容しようがない。一方、フレンチプレスで淹れたほうは、口に入れた瞬間、パンチのあるフレーバーが口の中に広がる。同じ豆なのに、淹れ方でこんなにも味が違うものになるのかと、コーヒーの奥深さに驚かされた。

最後は、銀座土産を探しにこのフーズフロアをぶらぶらすることに。欲しいものがたくさんあって困ってしまう。それにしてもGINZA SIXをぶらぶらするのは本当に楽しい。気がついたら長居してしまう、GINZA SIXはそんな場所だ。

Text:Motoyuki Yagi Photos:Takao Ota Edit:Yuka Okada

GINZA SIX EDITORS Vol.65

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八木 基之

1972年生まれ。上智大学卒業後、日之出出版に入社。その後、海外をぶらぶらした後、「東京カレンダー」の創刊に携わる。2006年より幻冬舎に入社し、「GOETHE」編集部に所属。2018年よりウェブ版のGOETHE編集長を務める。
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

ヴェニーニ

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トゥミ

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カフェ エクスペルト

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2018.11.28 UP

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