UNCOVERING YOURSELF 自分を脱ぐランジェリーの時
新しい景色を見たくなる春。まずは裸の心を解き放つことから始めてはどうだろう。次へのステージへと果敢に向かっていく、話題のドラマのミレニアル世代3人のように。
社会的な視点と清々しい友情に多世代が共感
『コスモポリタン』元編集長の半生をベースにしたドラマとして、Netflixなどで人気の『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち(原題「The Bold Type」)』。主人公はミレニアル世代のジェーン・スローン、キャット・エディソン、サットン・ブレイディーの3人、舞台はニューヨークの人気女性誌『スカーレット』編集部……と聞くと、ありがちなキラキラガールズドラマと捉えがちだが、それとは一線を画す社会的な視点と秀逸な脚本がこのドラマの真骨頂。#MeToo問題、LGBTQ、人種差別、貧富の差など、現代社会が抱える問題を掘り下げて軽快な演出で見せ、それらに直面する主人公たちが悩みつつ自らを乗り越え、新たなステージへと向かう姿は、世代を超えた人々が共感できる。生い立ちも経済的な環境も異なる親友3人が支え合いつながる友情は、清々しくて頼もしい。
そしてこのドラマは三者三様のランジェリーファッションも興味深い。将来を有望視されるライターのジェーンは、洋服同様トレンド感あるランジェリーを着こなし、彼との時間に刺激を与えるため自ら挑発的な装いで仕掛けることも。自分の年収を1週間で稼ぐ15歳年上のエリートの恋人とも常に対等であることを望み、「仕事に掛ける」と言い切るスタイリストアシスタントのサットンは、ブラジャーとショーツの色柄をあえて揃えないミックス&マッチがお気に入り。SNS部門のリーダーでクィアであることを公表するキャットは、スポーティーなシングルカラーのセットをスタイリッシュに着こなす。
数ある名シーンの中で特に印象的なのは、3人が白昼のセントラルパークでトップレスになる場面。
〈ボンテージ風ランジェリーで彼を誘うジェーン、恋人と一緒でも仕事の連絡を優先させるサットン、初めて女性と朝を迎えたキャット〉
これは、ジェーンに乳がんの危険を高める遺伝子変異があることが判明した後の出来事。その辛い現実を受け入れつつも、振り回されたり縛られたりすることなく、前向きに生きていくことを決意したジェーンと、それを支えるキャットとサットンが、ともに一歩踏み出すための儀式。ブラジャーを外して恐怖や心配に縛られそうになる「自分を脱ぐ」、つまり解放する意志を表現している。
そうしてドラマの中の3人はブラジャーを外して自分を脱いだけれど、逆に下着を身に着けることで「自分を脱ぐ」こと、新しい自分を発見したり今まで知らなかった感情と出合ったりできるのもランジェリーの力ではないだろうか。たとえば、ワコールが多彩なブランドを取り揃えGINZA SIXに展開するコンセプトショップ「WACOAL MAISON(ワコールメゾン)」で話題沸騰の総レースメンズボクサー。
レース=女性のものという概念を覆す繊細なアイテムは、美意識の多様性に訴え、纏うことで過去に感じたことのない高揚感に出合えるだろう。その逆に、「Yue(ユエ)」のミニマムなブラジャーとショーツは装飾を削ぎ落としているにも関わらず、そこには儚さと優雅さが宿り、身に着けた姿を鏡に移せば美しいものに包まれた幸福感が込み上げる。
それらは、下着を着けることで気付く、自分さえ知らなかった新しい自分、新たな感情との出合いだ。
ランジェリーは人の目に触れないもの。だからこそ、誰にも見せることのない本当の自分を表現できるし、密かな冒険に挑戦することだってできる。
「ランジェリーショップは採寸して下着を買うところ」「下着は毎日着ける日用品」と思っている人にこそ「ワコールメゾン」に足を踏み入れて欲しい。そこには「服の下に着ける下着」を超えた心の奥の琴線に触れるランジェリー、「自分を脱ぐ」ランジェリーとの出合いとがきっと待っている。
美しさの定義、ファッションの常識、既成概念やルーティン、そんなあれこれをアップデートできる今春の「ワコールメゾン」。これまでの「自分を脱ぐ」ために纏うランジェリーを見つけに出かけてみては?
Text: Yoshie Kawahara
Illustration: Shinji Abe
Photos: Kengo Shimizu(products)
Edit: Yuka Okada(81)