GINZA SIX EDITORS
ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。
一流の大人に似合う“ギンザな装い”を探して Finding Ginza Attire for First-Class Adults
金森 陽
銀座は、ファッションという言葉より「装い」という表現がしっくりくる。一流の人が集い一流のモノが集まる街は、品格ある、整った服装を表す言葉が似合うと思う。だから銀座のハレな装いにはスーツ、ただしいわゆるビジネスっぽいそれではなく、ちょっと遊びのある着こなしが絶好だ。弊誌『MEN’S EX』においても、休日のきちんと&ハレな装いには、スーツや靴、小物で少し遊びを利かせることを提案している。そんな、大人の余裕を感じさせる装いを探しに、GINZA SIXをぶらり。
まず伺ったのは、弊誌でもよくスーツを掲載させていただく『リングヂャケット マイスター』。1954年に生まれた大阪のファクトリー発祥で、多くのブランドや有名ショップのOEMも手掛ける実力派だ。その丁寧な作りは海外でも評価され、アジア、ニューヨークのショップでも展開されている。もしも“スーツは着心地の悪い服”と思っている方がいるなら、是非一度こちらの一着に袖を通してみてほしい。首から肩にかけての柔らかな着心地を体感すると、スーツの見方が間違いなく変わる。そんなブランドだ。
銀座らしい一着を紹介していただいた。こんなベージュのスーツをビジネスで着ることはなかなか難しいだろうが、休日の銀座はもちろん、賑わう街で着ているところを想像してみてほしい。本当に小粋じゃなかろうか。パターン(型)は、最上級ラインである「RING JACKET MEISTER 206」シリーズの「No.271H」。殺し襟(平面の生地をアイロンワークで立体的に仕上げる)や袖付けのハンドステッチが、柔らかな着心地と上質感に拍車をかける。
試着してみると、やはり“襟ののぼり”が素晴らしい。首に吸い付いてくる。サイズが合わないスーツは論外だが、硬い着心地の既製スーツは動くと襟が抜ける(シャツとの間にスキ間ができる)ことがままある。こちらにそんな心配は皆無だ。
同店にはパターン(型)が6種類あり、肩から胸が大きな私もピタリとハマるモデルを揃える。ちなみにこの日私が着用していたストライプスーツも、リングヂャケット製だ。
いいモノ探しのワクワクが高まってきたところで、スーツスタイルに欠かせないネクタイを探しに『ドレイクス』へ。ここは英国に残る数少ないネクタイとシャツのファクトリーブランドとして有名で、アジア初出店となったのが同店だ。
太い畝のある生地でストライプ柄に奥行きを感じさせる「スーパーレップ」、ガシッとした厚手の生地が力強い「50オンスロイヤルツイル」、ニットタイのようなメッシュ調織地で軽やかな「グレナディン」と、三種類の織地がとくに有名。個人的には、華やかさと渋さを上手く両立させる色柄表現が素晴らしい点も好きだ。
どうやらここ銀座店では、日本で唯一、過去のアーカイブ生地から、大剣幅、長さ、芯地もセレクトしてオーダーできるそうだ。実は日本で売られているタイは海外、国内ブランドを問わず、日本人の平均的なネックサイズに合わせた長さに設定されているものが多い。それだけに首が細い方や太い方は、長さが余ったり足りなかったりして困ることもあるのではなかろうか。そういったサイズの悩みもオーダーなら解決する。写真のようにサンプルを見ながら芯地の硬さや大剣幅をチェック。
どういうわけかネクタイが大好きで、気に入った柄は巻くかどうかわからないのにすぐ買ってしまう。前職である『Begin』編集長在任中はカジュアルスタイルが基本だったのに、4年あまりで買い集めたタイが40本強あった(取材の後日数えてみた)。もちろん巻いてないタイもたくさんあり、ちょっと買いすぎたと反省中。でもこのビンテージライクな柄、とても気に入ったので、オーダーを検討中。
そんなドレイクスをショップインショップとし、服から小物まで多くの英国ブランドを取り扱う『ブリティッシュメイド』で、スーツスタイルの基本、英国靴を物色。こちらで扱う「ジョセフ チーニー」は、1886年にノーサンプトンで創業した腕利きのブランドだ。ハイグレードラインのインペリアルコレクションの美しさに惚れ惚れしつつ、目を奪われたのがパーソナルオーダーサービス“1 of 1”の文字。
日本で唯一パーソナルオーダーを常設しているのも同店の特徴。アッパーの色をセレクトできて、フルブローグとセミブローグに関してはパーツごとにコンビネーションすることもでき、さらに特製ボックスにシューツリーなどケアキットがついて靴の内側の小窓に自分の名前を入れてくれるという。
しかもオーダー可能な6モデルのうち、既製品で展開のない2アイレットのプレーントウと外羽根のストレートチップまでオーダーできるとか! 名前入れ、付属キット、限定型など、パーソナルオーダーならではの特別感が嬉しすぎる。正統ながら遊びを利かせたい大人にうってつけのサービスだろう。
ところで、取材当日の天気予報は雪。その対策に登山靴がルーツであるパラブーツのダブルモンクシューズ「ウィリアム」を履いていた。このほかにも4足、計5足を所有する、好きな靴ブランドである『パラブーツ 銀座店』を最後に訪問。
発見したのは、大人気モデル「シャンボード」の銀座店限定モデル。型はグリーンのブランドタブを排してノルヴェイジャン製法をグッドイヤーウェルト製法に変更し、ドレス感を意識したモデル。揉み革のように柔らかな風合いのある、ライトブラウンのシボ革アッパーは、「ああ、さすがフレンチブランドだな」という趣深い仕上がりだった。
今回訪問したどのお店にもあった、装いに趣を感じさせる“ギンザシックス限定”アイテム。ギンザの装いに似合うワクワクする逸品がまだまだありそうで、他のショップも覗いてみたくなった。
Text:Yo Kanamori Photos:Takeshi Wakabayashi Edit:Yuka Okada
GINZA SIX EDITORS Vol.29
金森 陽
『MEN’S EX』編集長。2001年に世界文化社に入社。2013年より『Begin』編集集長を経て、2017年10月より現職。Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中