The Future Is Up to You
ショッピングで変える私たちの新しい未来
“善因善果”とは、良い行いは必ず良い結果を生み出すという仏教由来の言葉。自分のチョイスが未来への果報となるのなら、こんなに素敵なことはない。
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ラグジュアリーウオッチが
持続可能な未来への時を華やかに刻む
精巧なマニファクチュールや贅沢なマテリアルで、アートピースのようなきらめきを放つラグジュアリーウオッチ。近年はその唯一無二な価値に、社会貢献活動やサステナブルな原料調達といった“信頼”のステイタスを加味したモデルが登場。魅力と存在感がよりいっそう増してきている。
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“透明性”が誠実さの証となる
初のトレーサブルウオッチと
光起電発電でサステナブルに
アップデートした名品ウオッチ
ノブレス・オブリージュ(=位高ければ、徳高きを要す)とは、財力・権力・地位をもつものはそれ相応の社会的責任や義務を果たすべきという意味で、古くから欧米社会に浸透している道徳観のこと。ファッションにおけるラグジュアリーブランドもしかり。SDGsにいち早く取り組み、労働環境の改善や原料調達の透明性の確保といった、身近な課題の解決に着手。地球環境の保全活動や多様性の尊重までをも網羅する姿勢が、持続可能な社会に向けて数歩先の指針を示すお手本のような存在となっている。
その代表的なモデルとして今回ピックアップしたのが、ラグジュアリーウオッチの雄がリリースした2アイテム。社会的・環境的な影響を最適化する目標を掲げ、早くからサステナビリティな取り組みをスタートさせていた「ブライトリング」は、昨年、満を持してブランド初となるトレーサビリティウオッチを発売。 “スーパークロノマット オートマチック 38 オリジン”は、小規模鉱山から採掘されたゴールドとラボグロウウンダイヤモンドを使用。その来歴をブロックチェーンで裏打ちされたNFTで詳細に記録することで、顧客の手に渡るまでの透明性を確保する徹底ぶりが注目を集めている。人気のモデルに新たな信頼が加わることで、際立つ存在感がさらに増すことは確実だ。
「カルティエ」では、1917年の誕生以来、モダンなフォルムがパリのエスプリを体現してきたアイコニックな名品“タンク ”に、光起電発電 ソーラービート™ムーブメントを搭載したモデルが登場。型抜きされたローマ数字のインデックスを透過した自然光や人工光によって、ダイヤル下の光電池を充電する斬新な仕組みが採用されており、また、カーフスキンストラップと同様の耐久性を持ちながら植物由来素材を使用したストラップをアタッチすることで、環境負荷の軽減にも大いに貢献している。
どちらもエレガンスとサステナビリティが共存した逸品で、SDGs達成への道筋が加わることで、新たなラグジュアリーの価値が創造されている。希望の未来への時を刻むにふさわしい“新名品”がここに。
<New Opening!>
3月に国内12店舗目となる「ブライトリング ブティック トウキョウ」がGINZA SIXの5Fにオープン。製品のパッケージに、ペットボトルをアップサイクルした折りたたみ式のボックスを採用するなど、サステナブルな取り組みも随所に見られる。
<Parisian Elegance>
「カルティエ ブティック」は、フランス人デザイナー、ブルーノ・モワナーによる、様々なマテリアルを巧みに組み合わせたエレガントなファサードが魅惑的。つがいの白鳥が描かれたアートウォールには日本の職人の伝統的な技術が採用されている。
●写真/左: ウオッチ “スーパークロノマット オートマチック 38 オリジン”〈ダイヤモンド、18Kレッドゴールドケース、ラバーストラップ、自動巻き、直径38mm〉¥2,689,500/ブライトリング ブティック トウキョウ(5F) 右: ウオッチ “タンク マスト”〈スティールケース、ノンレザーストラップ、ソーラービート™、29.5×22mm〉¥429,000/カルティエ ブティック(2F)
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天然資源を有効活用し
廃棄物の再利用で新しい価値を付加
大自然の恵みを存分に活用し、優れた道具やアイテムを生み出してきた人類がこれからの未来へ継承すべきは、それらの資源をより有効活用し、再利用すること。持続可能な栽培・収穫や、製造工程で出る廃棄物の再活用など、様々な取り組みで新たな意義が加わったアイテムをご覧あれ!
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アイコン素材だからこそ再生可能な方法で採取
エレガンスとサステナブルの哲学が共存
限りある資源を有効に用いることはもちろん、再生可能な方法で調達することも、自然環境を保護するための重要な要素のひとつ。「ヘレンカミンスキー」のアイコンである上質なラフィアは、原産地のマダガスカルで元の木を傷つけない持続可能な方法で丁寧に収穫されたものを使用している。ラフィアの成長と生産サイクルを見据えた細やかな配慮が、原産地からきちんと行き届いているというわけだ。
さらに、高品質でタイムレスなデザインと修理対応が製品のライフサイクルを延命するため、お気に入りで長く愛用すればこそ環境への負荷が低減されるのもいい。ヘレンカミンスキーのラフィアのハットとバッグは、より良い選択への気づきを、さりげなく導いてくれる。
<Empowering Women>
ラフィアのアイテムを丁寧に編み上げるのは、女性を中心としたスリランカの職人たち。彼女たちは新たなスキルを得ることで、経済的な自立を獲得している。
●写真/ハット “イーストン” ¥39,600、バッグ “マリアンナ S ” ¥46,200/ヘレンカミンスキー(4F)
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いただいた「命」を余すところなく活用
先人の智慧と工夫が、愛らしい逸品を生む
革製品の原料となる皮は、そもそもが食肉加工の段階で出る副産物。いただいた命に感謝しつつ、食べられない皮も捨てることなく鞣すことで生活に有益な道具を作り出してきた人類の英知は、革製品がはるか昔からエコな素材であることを証明しているといえる。
「ソメスサドル」では、個体差ゆえの歩留まりの悪さで余ってしまう革を有効利用するため裁断に工夫を重ねるほか、バッグを作る際に出る革の切れ端を用いてチャーミングなキーフォブを製作。馬具製作から始まったブランドならではの馬モチーフや、アイコンバッグ“ドレッサージュ”を模したものなどキュートな魅力で知る人ぞ知る人気に。
さらに、革製品は経年変化による風合い変化の楽しみがあり、修理を重ねて永く使うことで愛着がさらに増すというのも格別だ。環境に有害な薬品を使わず、自然由来のタンニンを用いるタンナーで知られる「栃木レザー」との関わりも10年以上となるというソメスサドル。先人たちが伝統とともに築き上げた精巧な技術に、サステナブルなアップデートを重ねるその企業努力もまた、誠実で尊い。
<Long-Lasting Leather>
日本で唯一の馬具メーカーとして1964年に北海道で創業。熟練した職人の手による質実剛健なものづくりの信条が、機能性と耐久性の高さを裏打ちしている。
写真/●バッグ “ドレッサージュ ミニ”〈H14×W21×D5cm〉¥70,400、キーフォブ (左)〈H10.5×W5cm〉¥5,500・(右)〈H8.2×W6.8cm〉¥4,400/ソメスサドル(5F)
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食品残渣から抽出した染料ならではの
優しくおだやかな色合いが足元を包み込む
アカカブ、ジンジャー、マッチャ、ブルーベリー。美味しそうな食材名が色名として記されたソックスは、それらの食材を加工後の出がらしや廃棄部位から特殊な技術で染めた「FOOD TEXTILE(フード テキスタイル)」の糸で編み上げたものだ。
食品廃棄物は、日本で年間約2800万トン、世界では年間約13億トンにもなる。FOOD TEXTILEは、ただ捨てられていくだけの廃棄物を、ファッションや生活のシーンで再活用できないかと生まれたプロジェクト。ライフスタルカンパニーの豊島が中心となり、50以上の企業から食品残渣を回収。そこから染料を抽出する高度な技術は、すでに特許も取得しているという。
ソックスのナチュラルな色合いも、天然原料を90%以上使っているからこそ。糸も生産者の顔が見えるトレーサブルコットンを用いる徹底ぶりで、小さいアイテムながらも環境への優しさで溢れている。
<How it Works>
製品になるまでの工程は、廃棄予定の食品残渣を回収→成分を抽出→独自の技術で染料を製造→糸や生地、製品へ染色→FOOD TEXTILEアイテムに、という流れ。現在ではファッションの他にも、インテリア製品や企業ユニフォームなどにも活用の幅が広がっている。
●写真/“FOOD TEXTILE アメリブショートソックス” 各¥1,430/タビオ ジャパン(4F)
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再生素材を当たり前に
サーキュラー・エコノミーを日常に
日本でリサイクルという言葉が登場したのは1970年代のこと。その後、人々の意識の高まりと技術革新により、環境への負荷が格段に低くなったのは周知のとおり。再生素材はより高品質となり、循環型経済も軌道に乗り始めた今。私たちの日常は徐々に理想の持続可能社会へと近づいている。
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次の世代へサステナブルなバトンを渡す仕組みは
服の思い出とともに、人とのつながりも可視化
子どもの健やかな成長はあっという間。もう着られなくなったけれどまだまだキレイで使えるし、しまい込んでしまうのはもったいない…そんなベビー&子ども服をサーキュラー・エコノミー(循環型経済)の仕組みで活用していこうというのが「#プチバトン」プロジェクトだ。
着られなくなった「プチバトー」の古着をGINZA SIX店をはじめとする全国10店舗で回収。高温スチームで消毒後に吉祥寺店で再販売するこのプロジェクトは、本国のフランスで先行スタートし、日本では2022年11月から始まったばかり。もともと丈夫で持ちがいいことでも知られるブランドだけに古着となっても味わいがあり、懐かしいコレクションやレア物も発掘できると大好評。今では吉祥寺店2Fフロアの1/2が再販売ゾーンになっているというから驚きだ。さらに、再販売される古着のタグには元の持ち主からのメッセージが直筆で記載されているのもポイントで、愛情のバトンをつなぐという意味で気持ちをほんわかと和ませてもくれる。
フランスのショップでは、子ども服をレンタルするサブスクリプションも実験的に始まっているとのこと。子どもたちの未来のための意義深い取り組みが着々と進められている。
<Second-Hand Program>
着られなくなった古着を店頭に持ち込み、査定後の金額はショッピングの際に使えるポイントとして付与するシステムも。
●写真/右上から:ワンピース ¥2,750、デニムワンピース ¥2,750、ロンパース ¥1,650、ショートパンツ ¥1,100/プチバトー(4F)
「#プチバトンは、子どもたちの未来へ向けて循環型の仕組みを実現させていこうという取り組みで、GINZA SIX店では2023年の1月から回収をスタートしています。それまでも『子どもが大きくなったけれど捨てるのがもったいない』『お下がりで譲るならブランドを好きな方に着てほしい』という声をお客様から数多くうかがっていたのと、寄付や社会貢献活動に普段から取り組まれていてこのプロジェクトに賛同くださる方も多く、現在ではひと月に15〜20件ほどの古着のお持ち込みをいただいています。
店頭では、再販する際に付けるタグに自筆でメッセージを書いていただくことができるのですが、『おばあちゃんちへこの服を着てよく遊びに行きました』や『親子でお揃いで着ていました』など、そのほとんどが愛のあるメッセージばかりで、受け取る私たちも胸が熱くなるほどです。なかにはお話をしている間に服を手放したくなくなる方もいらっしゃって、そのお気持ちもわかるような気がします。私たちスタッフもふだんの接客ではなかなかできない体験をさせていただいている感があり、アイテムを通して素敵な思い出のバトンをきちんと受け取り、次の世代にきちんと渡していこうという気持ちに自然となっていますね」
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環境に配慮したアイテムを早くからリリース
ブランドに根付いたサステナブルな哲学は必見
ブランドの設立時より、オーセンティックでありながら都会的なテイストで長く着られるアイテムをリリースし続け、サステナブルの哲学がしっかりと根付いている「マーガレット・ハウエル」。自然の色合いそのもののオーガニックコットンを用いたアイテムをコレクションに加えたり、アップサイクルにも早くから取り組んだりと、シーズンごとに常に進化を遂げている。
今春夏のコレクションでは、工場から回収された製造廃棄物を再生したリサイクルナイロンに抗ウイルス・抗細菌加工を施したポケッタブルなトートバッグと、日本のバッグブランド「PORTER(ポーター)」にスペシャルオーダーしたリサイクルナイロンショルダーバッグが登場。どちらも普段使いにちょうどいい軽量かつコンパクトな仕上がりで、洗練されたデザインとニュアンスカラーが、どんな着こなしにもすんなりとはまる。モダンなフォルムのユニセックス仕様なので、家族やパートナーとシェアする現代的なスタイルにも大いにマッチしそうだ。
●写真/左:ショルダーバッグ ¥24,200(マーガレット・ハウエル)、右: バッグ ¥13,200(マーガレット・ハウエル ハウスホールドグッズ)/マーガレット・ハウエル(4F)
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新色や限定モデルも続々リリース予定の
ブランド初のサステナブルシューズに刮目せよ
驚くほど軽量でモダンなルックスがスタイリッシュなスニーカーは、ブランド初となるサステナブルシューズ。アウトソールには天然のタンポポ由来のゴムを25%以上含むフラワーフォーム™を採用し、アッパーは再生素材を含むヴィーガンマイクロスウェードや再生フェルトファブリックを使用。靴紐やパッケージにはリサイクル性の高いポストコンシューマー廃棄物を再利用するなど、サステナビリティにフォーカスするためにゼロから開発したというその徹底ぶりには1ミリの隙もない。
当然ながら、ランやトレーニングといったアクティビティにマストな衝撃吸収性や、快適な通気性といった機能も完璧なまでに網羅している。今後もブランドが掲げる「チェンジフォワード」というアクションキャンペーンのもと、シーズンごとに新色やスペシャル・エディションがリリースされるというから、革新的なこの一足に視線が集中するのは必須なのだ。
●写真/左:スニーカー “ジェネレーション・ゼログランド・Ⅱ SQL”(メンズ・ウィメンズ)各¥24,200/コール ハーン グランドショップ(5F)
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もはや定番となった再生繊維トップス
SDGsが声高に叫ばれる以前から、健康的なライフスタイルとともにあるブランドとして、ウェルビーイングな理念を掲げてきた「ルルレモン」。スタイリッシュなウェアやギアをリリースするかたわら、スポーツや社会貢献活動を通じたコミュニティづくりにも関わってきた。サステナビリティのビジョンはプロダクトにも色濃く反映されていて、ウィメンズの定番であるスウィフトリー テックシリーズや、メンズの定番ギアのメタル ヴェント テックシリーズで用いる素材には、リサイクルポリエステルを使用。吸湿速乾性を備えつつ、繰り返し着てもパフォーマンス性を高く保つ持続性を併せもつこれらは、環境負荷の低減にも大いに貢献する。ブランドから匂い立つポジティブなエネルギーは、今日もまた爽快で心地いい。
<Store Reopening!>
4月13日、5Fのストアが4Fに移転し、リニューアルオープン。フロア面積はこれまでの2倍となったほか、ゴルフウェアなども充実したフルラインナップが揃う。
●写真/左:トップス“スウィフトリー テック ショートスリーブ シャツ 2.0”(ウィメンズ)¥8,500、右:同“メタル ヴェント テック ショートスリーブ シャツ アップデイテッド”(メンズ)¥8,500/ルルレモン(4F)
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永く、大事に使う日本の伝統工芸品は
サステナブルのお手本
昔ながらの手作業で大量生産せず、その地に根ざした原料を必要なぶんだけ用い、壊れたら修理をして永く使う。伝統工芸は、これまでも、これからも持続可能だ。
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代々受け継がれていく「時」の重みは
世代を超えた心の架け橋となって未来へ
上は「玉川堂」の代表的な製品である壷形・玉打の急須の新品(左)と、数十年使用した同型(右)を並べて撮影したもの。永く使い込むことでなんともいえない渋い味わいが生まれ、経年変化ならではの凛とした美しさをたたえているのが一目瞭然だ。
壊れたら修理をしてさらに永く使うことが美徳とされる日本の伝統工芸品は、そもそもがサステナブルだということはいわずと知れたこと。新潟県燕三条に工房を置く玉川堂の製品も多くの工程が手作業で行われており、電気などのエネルギー消費もごくわずか。地産の原料を必要なぶんだけ活用し、技術や製法を継承しながら、生活スタイルの変化に合わせた新製品の開発など常に進化を続けている。熟練した職人たちの手で作り上げる日本の伝統工芸が現代まで継承されてきたのは、持続可能だったからなのは間違いない。
<Sustainable Copperware>
職人が一つひとつ金鎚で叩いて作り上げていく鎚起銅器は、時間とともに趣がぐっと増す。燕鎚起銅器の技術は国の選択無形文化財にも指定されている。
●写真/左: 急須 壺形 玉打(400ml)〈高さ10.5×横幅16cm〉¥88,000/玉川堂(4F)
「日本各地の様々な伝統工芸品は、日々の生活の中で手入れをしながら使用することで、味わい深く経年変化し、唯一無二の存在感と円熟味を増していきます。できあがったばかりの製品は本当の意味での完成品ではなく、そこからお客様の人生と歩みを合わせるように、長い時間をかけて少しずつじっくりと育っていくものなのです。
玉川堂が掲げる『打つ。時を打つ』というコーポレートメッセージには、私たちが製作する銅器が親から子へと代々受け継がれることで、世代を超えた心の架け橋のようなものになって欲しいという願いを込めています。
日本人が古来より慈しんできた『ものを大切にする心』を育むことは、修繕を通して、最終的には環境負荷の低減にもつながります。無駄な消費を良しとせず、必要に応じて直して大切に使い続けていく。そういった昔ながらの美徳を現代に伝えることにも、伝統工芸品とその製作に携わる私たちの存在意義があると考えています。私たちは先人たちが積み上げた智慧と思いとともに、日々、『時』に思いをはせながら銅器の製作に励んでおります」
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環境に配慮したアイテムを早くからリリース
ブランドに根付いたサステナブルな哲学は必見
昔から器を手に持って食事をしてきた日本人にとって、熱々のお味噌汁やご飯をよそってもしっかりと手に持つことができる木製のお椀は、日々の暮らしに欠かせない道具のひとつ。そんな断熱性の高さに加え、保温性が高く冷めにくく、美味しさが長持ちするのは、木製の椀ならではの大きな利点だ。
1919年創業の「漆器 山田平安堂」が作り続ける漆器のお椀もまた、天然の木を削り、漆を塗って制作する伝統工芸品のひとつ。製作工程のほとんどがエネルギーを使わず手作業で作られ、古くなれば修理して再利用することも可能。いわずもがな、漆器そのものがサステナブルなアイテムであることがうかがえる。贈答品や記念品に漆器が選ばれるのも、末永く愛用してほしいという贈り手の心づかいが現れたものなのだ。
<Made with Sustainable Tools>
漆器の職人たちが製作に用いる道具さえも自然素材のものがほとんど。蒔絵などの加飾もまた、天然由来の原料を粉状にしたものを、漆を用いて接着させる。
●写真/汁碗 朱平筋/溜平筋〈直径11×高さ7cm、天然木、漆塗〉¥22,000(ペア価格)/漆器 山田平安堂(4F)
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環境への負荷を減らすことが
共生への第一歩に
エコバッグを持ち歩いたり、食べ残しを出さないようにしたり。環境に負荷をかけない取り組みは、日常に無理なく取り入れることが大事。普段づかいのものを選ぶ際も、サステナブルなアイテムならよりベター。小さな積み重ねを続けることが、やがて大きな成果を生み出すことになるはず。
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環境配慮型のアイテムを続々とリリース
男女兼用タイプはパートナーとシェアしても
大自然のフィールドで活躍する機能的なアイテムやギアを手掛けるアウトドアブランドは、早くから環境保護活動に熱心なことでも知られる。リサイクルや修理対応などのプロジェクトを展開する「ザ・ノースフェイス アンリミテッド」も、アイテムや小物にサステナブルな素材を多用した商品を多くリリース。自然環境負荷の低減に、一役も二役も買っている。
今春夏シーズンのおすすめは、自然での視認性が必要とされるカラーパーカの表地に、あえて無染色素材を用いたマウンテンジャケット。大量の水を使う染色作業を省くことで水の使用を大幅に削減しており、布地のもともとの色を生かした表地にはリサイクルポリエステルを用いるという徹底ぶりだ。一方で、シンプルな黒のデイパックは、サボテン由来樹脂のヴィーガンレザー製で、バックルやファスナーなどのパーツも全てリサイクル素材で仕上げたもの。たっぷりの容量と軽さが特徴で、本革と見紛うほどのクオリティかつ重厚感のある質感がポイントに。
こうした環境配慮型のアイテムは今後も続々と投入されるそうなのでラインナップが大いに楽しみだ。
<Environmentally Friendly>
GINZA SIX店の内観。ブランドは早くから多くの環境保護活動に参画。楽しみながら地球を守る「GREEN IS GOOD」などのプロジェクトも多くの実を結ぶ。
●写真/1枚目: ジャケット“アンダイドマウンテンジャケット” ¥39,600、2枚目: デイバッグ“デザート バークレー”〈H49×W35.5×D18.5cm〉¥46,200(ともにユニセックス)/ザ・ノース・フェイス アンリミテッド(5F)
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赤ちゃんに優しいものは地球にも優しい
生分解性の糸で編み上げるニットアイテム
チャーミングで愛らしいモチーフや柄が持ち味の「マールマール」は、新しい家族を迎える大切な人へのギフトとして高い人気を誇るブランド。名前を刺繍するサービスも大好評だ。生まれたての赤ちゃんや家族にも優しい機能がところどころに配され、360°、どの角度でもよだれをキャッチする丸型のスタイは、その便利さから多くのファミリーから支持され、今ではシグネチャーアイテムになっているほど。
その優しさは地球環境にも向けられており、写真のニットスタイは、オーガニックコットンと、生分解性があり土に還すことができるポリ乳酸を使用したPlaX(プラックス)を用いた糸で編み上げたもので、抗菌・速乾性も兼ね備える。また、ブランケットとして使え、ニットバンドを利用すれば授乳ケープとしても使えるニットスワドルも、ニットスタイと同素材製だ。また、不用な衣類の回収も店頭で行っている。
ブランドのホームページに、月ごとにサステナビリティに関するリポートや製品情報が掲載されているのも頼もしい限り。未来を担う子どもへの愛が全方位から感じられる。
●写真/左:ニットスタイ 各¥4,180、右:ニットスワドル(おくるみ)¥9,900(マールマール)/マールマール/マトー バイ マールマール(4F)
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精巧なクラフトマンシップに
サステナブルな価値が加わったヘア小物
世界中のセレブリティに愛される「アレクサンドル ドゥ パリ」のヘアアクセサリーは、全て熟練した職人の手によるメイド・イン・フランス。華やかなビジュー装飾の付いたファッション性の高い逸品から、永遠のベーシックまでが揃う豊富なコレクションには、環境への負担を低減する素材や溶剤を用い、サステナブルな価値が加わったアイテムが複数ラインナップされているから見逃せない。例えば右写真のまるで大理石のように美しいマーブルパターンのヘアクリップは、環境に配慮した素材で作られた土台にユニークなカッティングを施したデザイン。同柄のバレッタやボールピンとともに、シンプルなコーディネートにこそ華やかに映える唯一無二の存在感を放つ。
他にも、自然に還すことのできるケミカルフリーの溶剤を使用したクリップなど、チョイスのバリエーションも多数。小さく華奢なヘアアクセサリーでさえも、美しさとサステナブルを共存させるお国柄と巧みなクリエーションに、ブランドの矜持が透けて見える。
●写真/上: M クリップ〈H4.5×W9cm〉¥29,700、中: ボールピン〈H1.5×W5cm〉¥20,900、下: バレッタ〈H1.5×W8cm〉¥24,200/アレクサンドル ドゥ パリ(3F)
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様々に実を結ぶデニムの進化こそ
SDGs達成の最先端
大量の水で洗い、化学薬品を用いた加工がなされることで、かつては環境汚染アイテムの筆頭格とまで言われていたデニム。だがここ数年、水のリサイクルやカーボンニュートラルといった技術革新の成果が実を結び、SDGsの優等生へと劇的にチェンジ。デニムは今や時代の最先端をいく素材に!
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エコフレンドリーな
リサイクルプロジェクト
NY発のデニムブランドとして始動した「ラグ アンド ボーン」が5年前から取り組むのは、不要になったデニムパンツを店舗で回収し、工場で綿に解体した後に建築資材やマットなどにリサイクルする「デニムリサイクルプロジェクト」だ。GINZA SIX店をはじめとする直営店で年2回開催されるこのイベントでは、サイズが合わなくなったり、クローゼットで眠ったままの穿かなくなったデニムパンツを、ブランドを問わず回収。回を重ねるごとに多くの賛同を得ていて、2023年春のイベントでも多くのデニムパンツが持ち込まれリサイクルされる予定だ。次回は秋に開催予定とのことなので、ぜひ店頭に問い合わせを!
<Added Bonus>
穿かなくなって不要になったデニムパンツを直営店に持ち込んだ際に、その場で新品のデニムを購入すれば、定価の20%オフになるという嬉しい特典付き。
●写真/デニムパンツ(ウィメンズ)¥38,500/ラグ アンド ボーン(3F)
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多様なアプローチでデニムの魅力がさらに倍増
ブランドの心意気が盛り込まれた一本に視線が集中
一生モノの上質でプレミアムなジーンズを作る「デンハム」が掲げるステイトメントには、世界でも名高いデニム職人、ジェイソン・デンハム氏が創業したジーンズメーカーらしい最上級のこだわりとともに、社会的責任を果たすための持続可能な代替素材への取り組みが同時に語られる。
ヴィンテージ風の無骨な表情が持ち味の“イースト ワイダー MIJ22”は、その厳格な環境基準とクオリティで名高い「USAコットン」を用い、1980年代に製造された豊田自動織機製 G型自動織機「GL9」で織られたオリジナル生地で作られた、マニアも唸る珠玉の一本だ。また、再生可能な木材パルプ原料のリヨセルに再生ポリエステルをブレンドした素材を用いたウィメンズの“スプレー FMZCD”は、より環境負荷の少ない「ゼロコットン」シリーズとして開発されたもの。肌触りが柔らかく、穿き心地もコットンと遜色ない仕上がりとなっている。
いずれもジーンズ本来の魅力を最大限に活かしながら、多様なアプローチで持続可能なものづくりに成功した好例に。ブランドの心意気も大いに盛り込まれている逸品だ。
●写真/ジーンズ “イースト ワイダー MIJ22”(メンズ)¥50,600、“スプレー FMZCD”(ウィメンズ)¥36,300/デンハム(5F)
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SDGs目線でデニムの産地の魅力を積極的に発信
持続可能で多彩なクリエーションが未来をつくる
日本最大のデニムの産地・広島県福山市を基点に、世界的にも突出した産地の技術と国内外のデザイナーとのクリエーションを融合させたコレクションを展開する「ジャパン デニム」。2022年の本誌春号でもジャパン デニムが架け橋となって未来へ向けて前進する、サステナブルなデニムへの取り組みを特集したばかり。
その革新的な取り組みとしてまず挙げられるのが、トレーサビリティの確保だ。リンスドウォッシュデニムの風合いが魅力的な「CULUNI(クルニ)」のセットアップなど、店頭に並べられた全ての商品には、産地と事業名に加え、環境への貢献がひと目でわかるアイコンとそれらの情報にアクセスするQRコードを記載したタグが添えられる。原料から完成までの情報を視覚化することが信頼につながり、買う側にとっても選択の参考になるという具合だ。現在進行形で広がるデニムのサステナブルな可能性に期待したい。
<Denim Transparency>
GINZA SIX店は、3月に移転&リニューアル。国産デニムのクオリティとデザイン性の高さを知る海外からのお客様も多く来店し、情報を記載したタグが大活躍。
●写真/デニムジャケット¥39,600、デニムパンツ¥29,700(クルニ)/ジャパン デニム(4F)
「SDGsが世界の潮流となる半世紀も前から、瀬戸内海に面する地域には環境保護や水質保全のための瀬戸法(瀬戸内海環境保全特別措置法、1973年より施行)があり、それぞれの事業者たちは厳しい基準をクリアする技術改革を常に行ってきた歴史があります。
広島県福山市をはじめとするデニム産業もしかりで、産地の織布業者さんなどは環境に配慮したデニム生地を作っていたのですが、アパレル製品の生産や加工の現場では、それらがやや遅れをとっていた状況がありました。それがこの5、6年ぐらいで急速に環境への負担を軽減できるテクノロジーが発達し、現在ではデニム製品が最も環境に配慮されたアイテムだと言われるまでになることができました。
今後も使用した水のリサイクルや化学薬品を用いない工程などをさらに突き詰めていくのに加え、全ての製品にサステナブルポイントを導入することで、より環境に配慮した仕組みが構築できていくことになると思います。技術革新や企業努力でまだまだサステナブルな進化を続けていくジャパン デニムに、これからも注目していただけたら嬉しいです」
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Edit & Text: Satoko Hatakeyama
Photos: Michika Mochizuki (shop & portrait), Yoshio Kato (item), Yasushi Nagai (SOMÈS SADDLE / workshop), Ooki Jingu (玉川堂, 漆器 山田平安堂 / workshop)
Photo credit: Cartier (shop)
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