[TOKYO]NouNouとGINZA SIXの蜜月
[SEOUL]韓国アートシーンの震源地で今起きていること
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NouNou and GINZA SIX
NouNouとGINZA SIXの蜜月
GINZA SIXのインスタレーションでおなじみのジャン・ジュリアンさんも、実はソウルに縁が深い。ここでは友人ホ・ジュヨンさんと手掛ける「NouNou」が9月13日からGINZA SIXの4Fで開催する日本初上陸のポップアップに注目!
プロダクトもイベントもアートのひとつ
ロンドンのアートスクールで意気投合したジャン・ジュリアンさんとホ・ジョヨンさんが2006年に立ち上げた「NouNou」は、ジャンさんの独創的なアイデアをデザイナーのジョヨンさんがプロダクトへ落とし込むクリエイティブレーベル。
「自分たちがつくりたいものをつくる」ために始まったNouNouのプロダクトはどれも魅力的だ。食器やカトラリーをはじめバッグ、アパレル、生活雑貨……とバラエティ豊かなプロダクトは大胆なアートワークが印象的ながら、普段づかいできるほど親しみやすい。彼らにとってGINZA SIXのような商業施設は、作品を発表する格好の舞台でもあるという。
「アジアの商業施設はヨーロッパの百貨店よりはるかに挑戦的。GINZA SIXのように多様性豊かで魅力的な空間にジャンの作品が展示されることを知ったときはうれしかったです」
ジョヨンさんはそう語り、特に東京には他の都市にはない独特の魅力があると続ける。
「韓国はどんどん新しいものに飛びつくけれど、日本は昔の文化が今も影響力をもっているし歴史が文化の深みを生み出しているのが面白い。更新され続けている一方で変わらないようにも思える東京はすごく不思議な場所ですし、そんな場所でNouNouとして発表の場をつくれることをうれしく思います」
都市の熱気が溢れる商業施設でこそ、NouNouの作品は輝いて見える。希少なアートワークと市販のグッズはしばしば区別されがちだが、NouNouにとっては両者を止揚することこそがクリエイティブな営みでもある。
「プロダクトもイベントも、アート表現のひとつです。日常的なグッズを通じて人々はアーティストの思いを理解できるし、イベントはアーティストとファンが交流するコミュニティの場にもなる。今後はメンバーシッププログラムをつくるなど活動の場を増やしながら、新しい表現に取り組んでいきたいですね」
写真/右_新プロジェクトArt Furnitureから、7体のキャラクターによる全12脚のベンチとチェアの一部。職人による特殊な技法で鉄を折り曲げた塗装仕上げ。
NouNou Pop up
日本初上陸! NouNouのポップアップでは今年の秋冬コレクションも一部が世界最速販売。また今イベントを記念しジャンがこのために描き下ろしたオリジナルベンチとチェアが4Fの共用部に期間限定で登場する「Art Furniture」も同時開催!
9月13日(水)-10月10日(火) 10:30-20:30
THE POP UP 4F
NouNou
ノウノウ/ビジュアルアーティストのジャン・ジュリアンとデザイナーでディレクターのホ・ジョヨンによるクリエイティブレーベル。世界各地のブランドやショップを巻き込みながら、多くのプロジェクトを展開中。ふたりの個性が伝わってくる似顔絵は、本特集のためにジャンが描き下ろしてくれたもの!
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ポップアップに続くアーティストの実験場
銀座の中心地とは思えぬほど緑豊かで解放感溢れるGINZA SIX ガーデンもまた、アーティストによる新たな実験の場でもある。ギャラリーや美術館と異なり老若男女がふらっと立ち寄る開かれた場が、クリエイションの可能性を広げるのだ。今年6月にはガラスアーティストの池上創が昼夜で異なる顔を見せる有機的なガラスアートを展示し(写真左)、9月8日(金)からはロープアーティスト、Hajime Kinokoがインスタレーションを展開(写真右)。一般的な「緊縛」への偏見から軽やかに逃れロープで人と人をつなぐHajime Kinokoは、インスタレーションを出会いの場と捉えた。「生活の延長にある商業施設で上質なアートに出会えるのは素晴らしい。様々な人や文化が交わる憩いの場でもある屋上庭園を活かし、ふと立ち止まった人を笑顔にできるような空間をつくりました」
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Where New Talent Grows
새로운 재능을 싹 틔우는 토양
韓国アートシーンの震源地で今起きていること
香港や東京を追い抜く勢いでアジア最注目のアートシーンを築きつつあるソウル、果たしてそこにはどんなエコシステムがつくられているのか。気鋭のキュレーター、チュ・ソンアさんに尋ねる。
新たな才能の土壌となるインディペンデント
「国際的アートフェア『FRIEZE』が開催されたことでソウルのアートシーンへの注目が高まっています。ただ、商業的な活動以前に、最前線で韓国のアートシーンをつくってきたのは、作家やキュレーター、批評家、様々な種類のアート機関です」
サムソングループが運営するリウム美術館のキュレーターを務めるチュ・ソンアさんはそう語る。韓国のアートといえば欧米メガギャラリーの展開やビエンナーレが注目されがちだが、実際には自立的に活動するアーティストの多種の活動や展示の可能性を模索により、豊かなアートシーンが育まれたのだ、と。
「2010年代前半から、アーティスト自身が運営するスペースが急増しました。制度に左右されない自立した空間を求める人々が増え、美術館とは異なる独創的なギャラリーが生まれたのです。彼らは、どうすれば自分たちの居場所を持続させられるのか考えていました」
日本でもアーティストが運営するオルタナティブスペースは以前から注目されているが、なぜ韓国では実験的なスペースが多く成長できたのか。その理由のひとつは、政府による積極的な支援だ。なかでも韓国文化芸術委員会やソウル文化財団、芸術経営支援センターといった公的機関による支援制度は充実しており、2年間は自由な活動基盤が得られる。
「こうした支援制度によってアーティストがパンデミック期間中も活動を続けられたからこそ、感染対策のために経済を止めていた中国から韓国へとアートマーケットの注目が移った側面もあるはずです。ただし、支援期間を超えて活動を続けられるケースが少ないことも事実です。新しく誕生したスペースの多くが、消えてしまってもいます」
より持続的な活動を設計しシーン全体を成長させるには俯瞰的な視点も必要となるが、若い世代のキュレーターはまだ少ないのだとチュさんは続ける。どうすればこの熱狂を持続させられるのか、韓国のアートシーンは、再び問われているのだろう。
「これからは商業的な機関と非営利の独立した機関が相互補完的に活動できるようになるといいですね。前の世代はその境界に閉鎖的でしたけど、アーティストやキュレーター、批評家など、アートに関わる人々が各役割を果たしながら、どう意味のあるシナジーを生み出せるか、共に悩んでいくべきだと思います」
Sungah Serena Choo | 추성아
チュ・ソンア/キュレーター。梨花女子大学を卒業後、ソウル大学で修士号を取得。インディペンデント・キュレーターとして活動後、現在はリウム美術館のキュレーターを務める。この9月のFRIEZE SEOULでは、国内映像作家などを紹介するFRIEZE FILMをキュレーション。
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今注目すべきインディペンデント・ギャラリー3選
写真/Exhibition View of〈Skin and Skeleton〉 Photo by CJY ART STUDIO (Junyong Cho)
対話から始まる実践の場
프라이머리프랙티스
(プライマリープラクティス | Primary Practice)
光州ビエンナーレや釜山ビエンナーレのキュレーターを務めた経験をもつキム・ソンウが立ち上げた「Primary Practice」は2022年にオープンしたばかり。アーティストとの対話を重視した展示プログラムは、アートシーンや制度へ批判的視線を投げかける。
●Shop Information
Address: 鍾路区昌義門路11ギル7 B1F/B1F, 7, Changuimun-ro 11-gil, Jongno-gu
Open: 12:00 - 19:00
Closed: 月曜、火曜
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写真/Exhibition View of〈Monumental〉 Photo by CJY ART STUDIO (Courtesy of Museumhead)
美術館を擬態した実験場
뮤지엄헤드
(ミュージアムヘッド | Museumhead)
住宅を改装してつくられたという実験的スペース「Museumhead」は、“美術館”顔負けの広々としたスペースを使ったダイナミックな展示構成で注目されている。建物2Fにはプレミアムな韓国ティーブランド「Delphic」が運営する専門店も。
●Shop Information
Address: 鍾路区桂洞ギル84-3/84-3, Gyedong-gil, Jongno-gu
Open: 12:00 - 19:00
Closed: 日曜、月曜
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写真/Exhibition View of〈Memory of Rib〉 Photo by N/A
同時代的文化の“交差点”
엔에이
(エヌエイ | N/A)
多くのクリエイターから支持される「N/A」はまさにソウルのアートシーンを象徴する場所。「LESS」の名で知られる人気フォトグラファーのキム・テギュンや、バレンシアガとのコラボで注目のアンナ・ウッデンベルグなど、展示作家もバラエティ豊か。
写真/チュさんが今回インタビュー場所として選んだギャラリー「N/A」は再開発の進む乙支路(ウルチロ)エリアの雑居ビルに居を構えている。特殊な立地や独自性の高い内装もインディペンデントギャラリーの魅力のひとつだ。ギャラリー内ではアートブックやオリジナルグッズの販売も行われている。●Shop Information
Address: 中区昌慶宮路5ギル27 2F /2F, 27, Changgyeonggung-ro 5-gil, Jung-gu
Open: 12:00 - 19:00(日曜14:00 - 19:00)
Closed: 月曜、火曜、水曜
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[TOKYO]
Edit: Yuka Okada(81)
Photos: Asa Sato (items)
Text: Shunta Ishigami (MOTE)
[SEOUL]
Edit & Text: Shunta Ishigami (MOTE)
Photos: Hana Yamamoto
Coordination: Shinhae Song (Seoul / TANO International)
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