GINZA SIX EDITORS
ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。
それぞれがGINZA SIXで見つける体験の編集 Becoming an ‘Editor of Experience’ at GINZA SIX
立石 郁 編集者・ライター・構成作家
東京の西側…多摩地方出身の自分にとって、都外に実家のある人にどんな形でも「地元の土地柄」があるのは羨ましいことだったし、都心出身の人が持つ(否が応でも)洗練されるやわらかさ、みたいなものもずっと憧れだった。私の出身は都心まで1時間程度でアクセスできる、都内だけれど学校の近所の川でサワガニが採れるような田舎のTHE ベッドタウンで、「なんだか中途半端な場所だなぁ…」と子供の頃から思っていた。つまり、文化に対してビシッとしてもいないし、逆にマイルドヤンキー的なゆるさもそんなにない。微妙…。
そのうえ、私は好きなものが多岐にわたるせいで“推し活”に充てる時間が足りなくて、興味のあるものを手当り次第に編集し、記事に認めて仕事にしてしまうことで、なんとか生きてきたタイプのオタクな人間だ。メディアはラジオ・Web・紙媒体、ジャンルは美容・サステナブルな暮らし・ファッション・アート・音楽…と仕事の主力を絞れずに10代の頃から何かと引き受けてきた。雑誌で推しのコスメについて話した日の午後には、好きな若手ミュージシャンのラジオ番組の原稿を書く。それってものすごく「サブ」な存在であって、どのジャンルのメインライターにはなりづらい。20代はその寄る辺なさみたいなものがとてもコンプレックスだった。
そんな自分にとっては、GINZA SIXのような施設に集まる国内外のクリエイティブが心の友。ひとつの思想に束ね上げられていない新しくて個性的な感性が集まるその世界は、学校が窮屈でしょうがなくてオタクっぽく没入するけれど移り気な自分を解き放ってくれた。
そして今回、GINZ SIXを歩くことになってまず初めに訪れたのは「Gluxury(グラジュリー)」(B1F)。買い物オタクが過ぎて、近年では付いている値札のフォントを見ただけで「どの会社がこの店を経営しているのか」「どのインポーターが買い付けたか」みたいなことがおおよそ想像できてしまう私にも、見たことのない世界の良品が多くてワクワクさせられる。
店内には、ギフト使いにも良さそうな暮らしまわりのアイテムが揃っている。歴史あるインドの紡績技術を活かした〈Micro Cotton〉は、インド綿を100%使ったサステナブルでラグジュアリーなタオルブランド。製品の安全性だけでなく、環境や働く人にも配慮した生産体制を保証する「エコテックス」の一番高い基準のラベルを取得したタオルなどは、そのエピソードも素敵で使っていて気分が良さそう! 高級タオルがそんなに珍しいものでもなくなった昨今、使っていて気持ちいいだけでなく、やっぱり語れる部分があるって大事ですよね。
日本のタオルは毛足が長くてふわふわしているのが高級なイメージだが、それらと違って、パイルの目が短くみっしり詰まっているシリーズ最高級の「プレミアムシリーズ」のバスタオル(16,500円 ※以下全て税込価格)はモコッとした“洋モノ” 感溢れるリッチさ。ギフトの他にも、引っ越しを機にタオルを入れ替えるという人も多いのだとか。真似したい…。
ショップ名の「Gluxury」はGreen + Luxuryを掛け合わせた造語で、ショップには他にも国内外のサステナブルで上質なアイテムが。500年以上の歴史を持つ〈RATHBORNES〉のキャンドル(7,700円)は100%ナチュラルな素材でハンドクラフトされた、蜜蝋をベースにハーブの香りが心を満たしてくれる。パッケージもFSC認証を取得した紙や再生可能なダンボール製。「使う」だけでなくて、その後のことまで心配りがなされているのが嬉しい。
加えてグラジュリーを運営するONODAという会社は、バングラデシュなど海外のインフラを支える事業も行っている。「ただ、いいモノを売るだけではない」という姿勢がとても今の時代にフィットしているし、それがセレクトのセンスに現れているようで、そういうお店の方が買って応援したくなる。並んでいるブランド一つ一つのエピソードを伺うのが楽しいひと時だった。
そしてお次は、B2Fのフーズフロアへ。
店頭に、まるで図鑑のように並べられた焼き菓子は、どんぐりや松など木の実をふんだんに使った山の恵みが主な素材。これらの焼き菓子がギュッと詰められた詰め合わせ缶やパウンドケーキなどを販売する「パティスリー GIN NO MORI」(B2F)は、岐阜県・恵那の人気店「恵那 銀の森」がオープンさせた、本店以外では全国初のフラッグシップショップだ。
シックなネイビーを基調にしたお店の中心にはシルバーの大きな樹がそびえ、その周りには、焼き菓子にもふんだんに使われているどんぐりをモチーフにしたライトが。そして、料理長の「チェス」と副料理長の「ナッツ」という名前の2人(2匹?)のリスがいて…というおとぎ話のような世界観が見た目からも伝わる。森の生き物がたくさんあしらわれたブルーの缶自体にファンも多く、限定パッケージは特に人気なのだそう。
知る人ぞ知るお話として、この「パティスリー GIN NO MORI」を運営している会社の母体が、岐阜県の恵那の森におせちのOEM工場を持つ企業だということ。だから、実はこの焼き菓子の缶詰めにも、おせちのお重詰めの技術が使われていて、形が崩れないように美しく計算して詰められているのだとか…!! どおりで、見た目以上にぎっしりとした重みのはずです。
通販では数ヶ月待ち、お店に行列もできるという人気のクッキーは洗練された雰囲気でお持たせにぴったり。甘い物好きさんが集まる撮影やちょっとしたお茶の時間なら、絶対に歓声が上がりそうなクッキー缶「プティボワ」(180サイズ 5,940円)、ここぞとばかりに購入してしまった。
最後に向かったのは、B1Fのビューティフロア。美容オタク憧れのエステで自分へのご褒美を…。
「MARY COHR(マリコール)」(B1F)は、エステティック発祥の地・フランスで売上ナンバーワンのシェアを誇る大手ブランド。特徴は、ハンドマッサージと独自のマシーンを融合させたその施術内容だ。
私が選んだのは、顔とデコルテを引き上げる「カチオリフト」(80分 22,000円)のコース。
個室でホットベッドに寝そべり、クレンジングから角質ケアで肌をやわらかく整えてもらったら、微かな電流が流れるマシーン「カチオビタルリフト」で顔をリフトアップ。顔の筋肉に直接働きかけて、肌をしっかりと刺激しながら美容成分を肌の奥まで届けてくれる。
このマシーンの施術は痛いわけではないけれど、驚くほどに筋肉を持ち上げられるので最初は「おぉっ…!?」と動揺するものの、ぐいっと肌が上がる感じがどんどん心地よくなってきます。毎日、リンパマッサージを欠かさずやっているものの、施術直後からわかるさらなるリフトアップ感にはとても感動…。
お店にはマリコールのリッチなスキンケアシリーズもフルラインナップ。スキンケアのお買い物だけでももちろんオーケー。私が受けた「カチオリフト」(80分 22,000円)のコースは、定期的に1回ほど受けることでリフトアップをキープするお客様が多いのだとか。銀座のど真ん中で自分のための時間を持てるって、すごく贅沢。
それにしても、施術前のスキンケアチェックで、この湿度の高い時期でも「肌が乾燥気味ですね」と言われてしまい不覚…。月に1回のお手入れにGINZA SIXに訪れるというのは、上階のファッションや雑貨を見ながらの気分転換に最適かもしれない。
こうして、今回3店舗を回って感じたのは、個性的なお店が集まる館の中で自分に合った楽しみ方を開発することの楽しさだ。ここでは私たちのようなエディターに限らずとも、訪れる人が自然とそうして「体験の編集」をしているんだなと感じた。
10代の私をあたたかく迎えてくれた百貨店やセレクトショップのオトナな接客と、20代の働き詰めだった私を癒やしてくれたお買い物体験を思い出す。30代で新たなライフステージを迎えた今、この日感じたおもてなしの多様性とニュースな感性の詰まったGINZA SIXで、まだまだ自分に合った遊び方を探求していきたい。
Text: Kaoru Tateishi Photos: Kozue Hanada Edit: Yuka Okada(81)
GINZA SIX EDITORS Vol.110
立石 郁
編集・ライター、放送作家。18歳よりフリーランスとしてラジオ局に勤務。編集プロダクション、制作会社での雑誌・Webの制作経験を経て、美容・ライフスタイル・ファッション・カルチャーなどを中心に多様なメディアで執筆。クリエイターのマネージメントなども務める。 Instagram : @mimi_puffer Twitter: @mimi_pufferInstagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中