GINZA SIX EDITORS
ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。
幸せな記憶と共によみがえる、銀座の“特別感” Ginza, a Special Place Then and Now
関谷 麻美
東京に生まれ育った私にとって、子供時代の銀座は、おめかしして電車に乗って出かける、特別な街でした。冬なら赤いマントにキツネのファーの襟巻、ブーツ。祖母と映画やお芝居へ、父の手帳や本探しのお供に、母とデパートにギフト探しに。名店と言われる甘味処でのおやつタイムを、どれほど楽しみにしていたことか。
その特別感と格式、豊かで上質な衣食住が叶うという確信。それこそが昔も今も変わらない“銀座”の魅力ではないでしょうか。
仕事でファッションやジュエリーに深く関わるようになり、銀座を頻繁に訪れるようになってから久しく、そんな銀座の“特別感”を忘れていました。が、GINZA SIXに一歩足を踏み入れると、世界中の一流ブランド、こだわりの名品、最新作が衣食住すべてが並び、ここが特別な場所だという感覚が見事によみがえります。
GINZA SIXの1F角にあるのは、90年以上の歴史を持つローマのラグジュアリーブランド「フェンディ」。ファサードは荘厳なローマのコロッセオ、はたまたフェンディ本社のあるイタリア文明宮を彷彿とさせ、銀座にいながら永遠の都を訪れたような、優雅な気分に浸れます。店に入るとまず、新しいカプセルコレクション「リボン&パール」をまとったマネキンが。甘口モチーフの二乗ですが、色がシックなモノトーンなうえ、職人技を駆使したアート作品のようなディテール。どのアイテムにも大人の贅沢な甘さが香ります。
私が何よりフェンディを素晴らしいと思うのは、90年以上の歴史を誇り、数多のヒット名品を生みながらも、常に最旬を目指し、新鮮なアイデアでブームを牽引しているところ。例えば、近年の「バッグストラップ」ブームの発端はフェンディ。ファーやキャラクターチャームの流行もフェンディが火付け役。
2018春夏ミラノコレクションのランウェイでは懐かしのFFロゴが多用されましたが、モノグラムは今季のトップトレンド。フェンディが台風の目になること間違いありません。店内のFFロゴのストラップやラッピーに、自然と目を奪われます。
2Fのメインはシューズとプレタ。世の足元では相変わらずラグジュアリースニーカーの勢い強く、進化を続けていますが、加えて2018春夏はいわゆる“つっかけサンダル”も流行しそうです。やっぱりある、すでにフェンディにはある。左足に「FEN」、右足に「DI」とスタッズで描かれたポップなデザイン。スニーカーかサンダルか? 迷うところです。また2Fにも「リボン&パール」のプレタが並びますが、カフス部分にだけパールを配した黒のブラウスを発見。ロゴ入りファーを合わせた、甘さ控えめなスタイリングに心が動きます。
さて、私のフェンディGINZA SIX店のイチオシは、実は時計です。何せピースが小さいゆえ、B1Fから3Fまであるこの広い店内のどこにあるのか気がつきにくいのですが、1F奥に比較的手が届きやすいなモデル、3Fにはダイヤモンド入りの高額モデルがお待ちかね。中でも、フェンディ家4代目で、自らのブランドでも活躍中のジュエリーデザイナー、デルフィナ・デレトレズ・フェンディが手掛けた「ポリクロミア」が、私の大のお気に入りです。
ローマの街にインスパイアされたというデザインは、クラシカルなのに未来的、メカっぽいのにナチュラル。相反する要素が見事に調和する、一度見たら忘れられないフェイスに、デルフィナの才能を感じてなりません。特に神秘的なグリーンのマラカイト×ダイヤモンドのモデルに魅かれてたまらない私ですが、マラカイトは“魔除け”としても有名とか。私、除けるべき魔物でもついているのでしょうか? 笑
路面店ではないのに目につきやすく、名門ジュエラーなのにとても立ち寄りやすい。フェンディの後に立ち寄ったフレッドはGINZA SIXの中でも存在感のある店構えとポジション。ホワイト、ピンクゴールド、ネイビーを基調とした落ち着いたインテリアを退屈に感じないのは、中央やテーブル付近に飾られた爽やかなビジュアルのせいかもしれません。フレッドはパリのジュエラーですが、デザインのイメージソースはフレンチリヴィエラ。創業者フレッド・サミュエルはアルゼンチン生まれで、その心には、かの地に降り注ぐ美しい光の記憶が生き続けているからだといいます。
そんなフレッドのジュエリーの中でも、私が大好きなのが「フォース10」コレクション。ヨットのシャックルとケーブルをモチーフにした、大胆かつ爽やかなデザインは、サミュエルが楽しんでいたマリンスポーツに着想を得ています。店内中央のビジュアルはそこからのインスピレーションというわけ。そしてケースの中を見ればわかるように、「フォース10」ブレスレットはバックルの素材、ダイヤモンドの有無、何よりケーブルのカラーバリエーションが驚くほど豊富で、それらの組み合わせは自由自在。さらに自分で簡単に着脱できるのも大きな魅力です。
店長の倉林さんにあれこれアドバイスを受けながら、新作である細みのリンクチェーンの「フォース10」ブレスレットを見つけて試着してみると? まあ、なんて素敵なんでしょう! 洗練されていてとてもおしゃれ。 ケーブルやレザータイプと重ね着けしても良いし、1本をさり気なく、ブラウスやニットの上から着けても、モード感が出そうです。
さて「フォース10」といえば、エンゲージやマリッジリングも見逃せません。プラチナをケーブルのように撚って創り出すシャンクのデザインは優美かつユニーク。1カラットのセンターダイヤモンドに匹敵する存在感があります。そもそも、ここフレッドGINZA SIX店に、小さいながらもブライダルコーナーがあること自体が朗報。仰々しい門構えに緊張せずとも、気軽に一流の輝きを見ることができるのですから。奥にはリゾート感満載のビジュアルも飾られ、ハネムーンまで一気にイメージが沸く? フレッドGINZA SIX店でのリング探し、狙い目です。
私はグルテンフリーなので、GINZA SIXのB1Fに「ELLE Café」を見つけた時は、思わず小躍り。良く行く街では必ずその手の店を見つけるようにしているのですが、銀座にはヘルシー志向の店があまり多くありません。だからここは救世主。コスメフロアの真ん中にあるのでちょっと見逃しやすいけれど、なるほど、コスメ関係のお買い物目的でGINZA SIXに来た方はやっぱりヘルスコンシャス。午後の早い時間なのにグルテンフリーカヌレは間もなく売り切れです。そこでこの後、会う方への手土産に、箱入りクッキーをテイクアウト。
飲んだことがなかったコールドプレスジュースを試飲させて頂きその効能についてお聞きしていると…メニューに「バターコーヒー」を発見!そう「シリコンバレー式」で話題沸騰のあのコーヒーです。自分で作るのは大変だなと思っていた矢先、早速トライ。痩せて頭も良くなるというスーパーコーヒーの味は? クセになりそう! すでにクセになっている抹茶テリーヌとの相性も抜群。しっとり甘い抹茶味と円やかな苦みのコーヒーのコンビを、“銀座味”と感じるのは私だけでしょうか。やっぱりここは特別な街。子供時代の記憶と一流で最旬の衣食住が交差して、幸せな午後が過ぎていきます。
Text:Mami Sekiya Photos:Akemi Kurosaka Edit:Yuka Okada
GINZA SIX EDITORS Vol.25
関谷 麻美
ファッション ディレクター/エディター。東京生まれ。「流行通信」「CREA」「ハーパース・バザー日本版」編集部を経てフリーランス。ラグジュアリーモード誌、ジュエリー&ウォッチ誌、ウエディング誌、ファッション関連広告&カタログ、ウエブ、単行本などで活躍中。コレクション取材歴は25年以上に及ぶ。他に大学や企業向けセミナー講師、コンサルティングなどにも従事。Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中