GINZA SIX EDITORS
ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。
世界へと発信する、GINZA SIXの「和の真髄と革新」 Conveying Japanese Essence and Innovation at GINZA SIX
伊藤 文
真骨頂は、「いまでや」が、2017年春、自社庫を開設して始めた、長期熟成日本酒の提案でしょう。海外との取引も果敢に進める小倉社長は、各日本酒が持つ特性によって、ワインと同様日本酒にもヴィンテージが可能であると実感し、日本酒の味わいの新たな可能性を引き出すことに挑戦しています。店長でいらっしゃる大川翔平さんの丁寧なガイドで、今までに味わったことのない、深い日本酒の魅力に触れてみてはいかがでしょう。
また、レストランフロア13階の「ミクソロジー サロン」も是非足を運んでいただきたいカクテルバーです。オーナーは、東京に5店舗を展開するミクソロジスト、南雲主于三さん。ミクソロジーとは、従来のレシピの枠を超え、自由な発想のもと創り出す新しいカクテルを生み出す新手法のこと。実は南雲さんは、パリでカクテルと料理とのマリアージュディナーを開催したことがあり、私もお手伝いさせていただくという僥倖にあずかりました。味にうるさいパリの美食家をして「ワインを忘れさせるカクテルだ」と言わせる好評価を得たのです。
この銀座のサロンでは、著書もあり、クラシック・カクテルで権威のある伊藤学さんが、チーフ・バーテンダーを務めます。ミクソロジーという舞台で、新たな挑戦をしたいという伊藤さんのカクテルへの想いは熱く、南雲さんのレシピの中で昇華されています。
この銀座店の軸は“日本茶”です。ウォッカに自家製蕎麦茶を浸して香りを出した液体をベースに、フレッシュのパイナップルを加え、味噌のパウダーを散らした「蕎麦茶カクテル」や、やはり玉露を贅沢に浸して香りづけしたウォッカベースの「玉露マティーニ」。バーボンウイスキーと宇治抹茶のマリアージュが美しい「グリーンティファッションド」など。いずれも、お茶の魅力がカクテルによって研ぎ澄まされ引き出されていた傑作でした。
世界への舞台を開く人は、伝統を知りぬき、素材をとことん突き詰めたからこそ、新たな価値、文化を創造する力がある。「いまでや銀座」も「ミクソロジー サロン」も、世界に誇る食を通した日本文化の未来の可能性に出会える場所なのです。
Text:Aya Ito Photos:Masatoshi Uenaka Edit:Yuka Okada
GINZA SIX EDITORS Vol.1(Food)
伊藤 文
食執筆家・翻訳家。著書に「フランスお菓子おみやげ旅行」、「パリを自転車で走ろう」、翻訳書にグリモ・ド・ラ・レニエール著「招客必携」、ジョエル・ロブション著「ロブション自伝」、フランソワ・シモン著「パリのお馬鹿な大喰らい」など。近著に「パリ、カウンターでごはん(2016年7月刊)。 日仏バイリンガルによる食のウェブマガジン&イベントプロデュース“DOMA”主宰運営(http://domapress.com)。 2017年9月末からはMAG2にて”美食大国フランスから、週刊食関連ニュース”を週刊配信。Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中