GINZA SIX magazine - Spring 2020 ヒューマニティという共感。
次の共感を言語化してビジュアルに落とし込む仕事柄もあるが、むしろ何かと明日を見失いがちな一個人として、日々の取材や普段の生活の中で「本当にその通りだ」と大きく頷ける言葉との出合いをひたすら探している。
たとえばスマホでいくらでも音楽が聴ける今、あえて超高級オーディオシステムの開発を指揮し世界的なヒットに導いたナショナルブランドの女性は、こんなことを言っていた。
「程なくAIやロボティクスと完全に共存する時代が来ても、人間が中心となって、人間らしさを発揮して、人間としてどう幸せに生きていけるか。そういう未来をすべての技術者は、ある程度の倫理観も必要としながら、今こそ自分の頭で考えて目指さないといけない」と。
また上昇気流にある飲食チェーンのCEOは、時代の主役になりつつある全く新しい世代とコミュニケーションを図る秘訣をこうも語った。
「異質な人間もそのまま受け入れる。彼らにとって仕事なんて人生のほんの一部で、根っこは環境活動家のグレタさんのようなアクティビストも増えている。
だからサステナビリティとか地球環境とかクィアの問題とか、より普遍的なテーマでないとこれからの企業や社会は繋がれないかもしれない」と。
どちらも「本当にその通りだ」と腹落ちした。
それぞれが人間としてどう生き切るか。
私たちはいつの間にか、間違いなく、そんな時代に身を置いている。
一方でファッションやブランドビジネスの世界に目を向けても、ここにきて確かな潮流となっているのが“ヒューマニティ”というコアバリューだ。目の前の消費やトレンドだけを煽ってきた時代からやっと切り離され、どこもこれからの自然界や人間社会のためにありとあらゆる取り組みを始めている。
今回のGINZA SIX magazineでは、そんな動きをひとつひとつ拾い集めて、いったん差し出してみたい。
そこに物や事の背景にある新たな情熱を、明日に向かう何かしらの共感を、何より私たちの次のアクションへのヒントが見つかることを願って。
GINZA SIX magazine 編集長
岡田 有加
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