【親子で楽しむ自由研究】
フラワークリエイターから学ぶ、
ドライフラワーの楽しみ方。
篠崎恵美|edenworks 代表 × SCUOLA GINZA SIX
生花を棄てないドライフラワーのパッケージングや紙を使い繊細な花の世界を表現するなど“花”の可能性をどこまでも自由に広げるフラワークリエイターの篠崎恵美さん。GINZA SIXで開催された次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム「SCUOLA GINZA SIX」でドライフラワーを使ったワークショップを開催。その様子をレポートしながら、篠崎さんに花の命を無駄にしない、フラワーロスを防ぐことにもつながるドライフラワーの楽しみ方について話を伺いました。
MAGAZINE|2022.07.26
発色がよくて色鮮やか。
スペシャルなドライフラワー。
ワークショップのテーブルに用意されたのは、カーネーションやアジサイ、母子草、ラグラス、かすみ草などのドライフラワーたち。篠崎さんのクリエイションファクトリーである「PLANT by edenworks」のドライシステムで管理されています。まず、その発色がよく鮮やかなドライフラワーに感動します。
「edenworksは“花を棄てず、次に繋げる”をテーマに掲げています。ドライフラワーは、独自の製法で1本ずつきれいに色が残るように丁寧にドライにしています。それでもドライフラワーは退色が早い。なので必要なものは食紅などを使い染色もしています。食べても大丈夫な染料を使うことで安心して花に触れてもらえるし、きれいな色をずっと楽しんでもらうことができます」(篠崎さん)
実験のようなワクワク感。
親子参加のワークショップ。
この日のワークショップでは、篠崎さんのドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」でも取り扱うオリジナルパッケージ「POST FLOWER(ポストフラワー)」を作ります。まず、お母さんは、好きなドライフラワーをコラージュのように選んでパッケージに。子どもたちは、お花の缶バッジを作ります。
ピンセットでシャーレに花びらや小さな蕾など好きな花を並べます。実験のようでちょっとワクワク。猫じゃらしのようなラグラスやかすみ草のピンクやブルーの淡いカラーがかわいくて子どもたちに人気でした。花を自由に並べてアレンジメントが出来たら、最後は自分で押し花のようにプレスします。好きなものを自由に選んで、デザインしたドライフラワーの缶バッチが完成です。
大好きな水色と紫色をベースに。「これがかすみ草?」と花の名前が書かれたカードを眺めながら、花の名前や花言葉を知ることができたのも、とても楽しそうでした。
お母さんも同じように20〜30種あるドライフラワーの中から好きなものを選び、パッケージに。どの向きで入れるときれいに仕上がるか、色のバランス、配置を考えながらセレクトした花をパッケージに詰め込みます。篠崎さんが「花の後ろに葉っぱを差し込むときれいに仕上がりますよ」とアドバイス。パッケージは真空パックにすることで、湿気や劣化を防ぎ、虫がつくこともありません。
花を贈る行為が繋がっていく。
パッケージに込められた想い。
親子で作ったアイテムをひとつのパッケージにまとめて完成。このパッケージは定形外郵便として140円切手を貼って送ることができるそうです。
「このパッケージのアイデアを実現したいと思ったのは、もっと気軽に花を送りやすくしたかったから。生花を送ろうとするとクール便で手配しないといけないし、配送料もそれだけかかる。子どもたちにとっては、全然気軽じゃないですよね。
このパッケージは郵便局に何度も足を運んで、どんなパッケージなら立体的にドライフラワーを送ることができるかなと考えて生み出したもの。縦長サイズは長型の和封筒と実は同じサイズなんです。横長サイズのものもあり、それは洋封筒と同じです。厚みが3cmというのも規定通り。その中であれば自由に中身を考えることができました。
パッケージを透明にしたことで中が花だとわかり、郵便局の方もとても丁寧に届けてくださる。販売をはじめて6、7年が経ちますがつぶれてしまった、などおしかりを受けたこともありません」(篠崎さん)
POST FLOWER relay a message ver.(ポストフラワー リレー ア メッセージ バージョン)は、送るだけの一方通行ではなく、パッケージの中にはもうひとつ返信用のポストカードも封入しています。
「これはもちろん受け取った方がお返事を書いてもいいし、別の方にドライフラワーのパッケージをまた送ってもいい。どこへ向かってでもいいと思うんですが、繋がっていてほしくて。私が、ドライフラワーのパッケージをはじめたのは母の影響なんです。うちの母がずっとドライフラワーを飾っていて。その頃は私もまだ若くて『埃がたまるからもう棄てて』とお願いしたら、思い出の花を棄てられない、と一つひとつビニール袋に入れてリボンをかけて、飾りつけし直したんです。それが、このドライフラワーのパッケージの発想に繋がっています。残したいものをどう大事にするか、そして、花の楽しみ方の可能性を循環させていきたい。そんな願いが、込められています」(篠崎さん)
棄てずに、新しい価値を。
EW.Pharmacyの処方箋。
篠崎さんは、2015年に自身初のフラワーショップ「edenworks bedroom」を代々木上原にオープン。生花の破棄を出したくないと、開店は週末限定。それでも枯れてしまうもの、棄てないといけないものが出てしまうと、それを加工する発想を思いつきます。ドライフラワーとして新しい価値を見出そうとドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」を2017年から始動しました。
「Pharmacy(ファーマシー/薬局)」と名付けたお店では、処方箋を出すように、その人その人に合わせたドライフラワーをセレクトし、オリジナルのパッケージやボトルに。また、ドライフラワーを作る「PLANT by edenworks」ではドライフラワーに加工してくれるサービスも。
「お店で選んでいただくのはもちろん、自分でドライフラワーを作ることもおすすめします。生花を購入したら、5日ほど楽しんで、そのあとドライフラワーにしてみてください。ドライにしたあとは、そのまま飾っておいてもいいし、花びらだけを瓶詰めにしたり、ポプリにするのもいいですね。花の世界は、いろいろルールがあるイメージですが、わたしは常に自由でいいと思うんです。自由に花の世界を、いろんな楽しみ方をしてみてほしいんですよね」(篠崎さん)
親子でドライフラワー作り。
大切にすべき3つのポイント。
篠崎さんが教えてくれた、ご家庭で作るドライフラワーのルールは3つ。
⑴ドライフラワーにしやすい花を選ぶ。
⑵日の当たらない場所で乾燥させる。
⑶自然乾燥で、しっかり1ヶ月程度干す。
「まず、おすすめなのがバラやかすみ草。手に入りやすいですし、かすみ草はとくにドライにしやすいので1〜2週間できれいにドライになります。色があるものを選ぶとふわっとした印象で素敵です。バラは花の芯までしっかり乾燥させるのに1ヶ月程度。花を下向きにして吊るしてください」(篠崎さん)
色をきれいに残すためには直射日光は絶対にNGだそう。
「バルコニーなどは避けてくださいね。日に当てないほうが色の持ちがいいので、暗めの部屋か窓のないところに吊るしてください。お風呂場など湿気のある場所もNGです。浴室乾燥でドライにするのもいいと思いますが、その場合はしっかり湿気をとってから干すようにしてください」(篠崎さん)
ドライフラワーにオススメの花をさらにいくつか。
ケイトウ、エリンジニウム、セルリア
デルフォニウム、カンガルーフォー、スターチス
どれも1ヶ月程度干して、しっかりドライにしてからアレンジを。
「水分が残っているとカビてしまうこともあります。乾燥の目安は、吊るしている状態から元に戻して、花の頭がお辞儀をしない状態ならOKです。触ってみた感触や、ピーンとたっている様子で判断を。ドライも日々変化しますから。その様子を楽しんで、花たちの変化を感じ取ってみてください」(篠崎さん)
篠崎恵美|フラワークリエイター、edenworks 代表
2009年に独立。ディスプレイやブランドとのコラボレーション、映像や広告などでも花にまつわる様々な創作を行う。2015年フラワーショップ「edenworks bedroom」を代々木上原にオープン。続く2017年にドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」を奥渋谷に、2019年に「PLANT by edenworks」をスタート。 2021年には花と人を繋ぐフラワーショップ「ew.note」を新宿駅に開店。アーティスト活動としては、イタリアミラノにて紙の花のプロジェクト「PAPER EDEN」を発表。その後アムステルダム、上海、パリなど国内外でインスタレーションを行なっている。
Photo:Masanori Kaneshita
text:Kana Umehara
Edit:Rina Kawabe(Edit Life),Hitoshi Matsuo(Edit Life)
ABOUT SCUOLA GINZA SIX
GINZA SIXが企画運営を行う「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを開催していきます。今後の企画にもぜひご注目ください。