地球温暖化を止める微生物を探す、カルチャープログラムを実施。GINZA SIXガーデンの「土」と「空気」に隠されたメッセージを、探しに行こう!
土の中に地球温暖化に
ストップをかける微生物が存在する。
6月23日(日)、GINZA SIXガーデンで、土の中に住んでいる、目に見えない小さな小さな"微生物"の不思議を体験するワークショップが行われました。土の中には、地球温暖化にストップをかける微生物がいる可能性もあるそうです。
このイベントは、GINZA SIXが実施している「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」の一環のひとつで、今回のイベントは小学校4年生から中学3年生が対象です。
この日、みんなに、「土」と「空気」について教えてくれたのは加藤広海先生。普段は、東北大学で微生物の研究をしています。
そして、ラジオ番組TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』のご協力で、パーソナリティーを務めているユージさんが番組を飛び出して、イベントの司会をつとめていただきました。
イベントの最初に加藤先生から地球温暖化についてお話がありました。地球温暖化の原因として、よく知られているのは、CO₂(二酸化炭素)です。私たちが呼吸をしたり、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やしたりすると発生します。この二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが、地球を布団のように包み込むことで、熱が宇宙に放出されなくなり、その結果、地球温暖化につながってしまうのだと言います。
「でも、二酸化炭素よりももっと強力な温室効果ガスがあるんです」と、加藤先生は続けます。それが、N₂O(一酸化二窒素)です。恐ろしいことに、N₂Oには、二酸化炭素の300倍もの温室効果があるのだそう。このままでは地球は暑くなるばかり。参加者のみんなが大人になる頃には、地球はどうなってしまうのでしょう?
そう聞いて、参加者が不安そうな表情を浮かべると、加藤先生から、「でも今から対策すれば、急激な地球温暖化は防ぐことができるんです」と力強い言葉が!
「土の中には、このN₂Oを分解する微生物がいることがわかっています。その微生物をたくさん増やすことができれば、地球温暖化を食い止めることができるかもしれませんよ。ところで、みんなは微生物を見たことがありますか」
参加者のみんなに加藤先生が質問をします。微生物とは、目には見えない小さな生き物のこと。ゾウリムシで1ミリの10分の1、バクテリアは1ミリの1000分の1の大きさです。やはり肉眼で見るのははやり難しそうです。さらに、加藤先生は、1グラム(1円と同じ重さ)には、100億匹もの微生物がいるのだと教えてくれました。100憶といっても簡単にイメージができないかもしれませんが、現在の地球上の人口が約80憶人です。土の中には、私たちが想像もつかないくらい多くの微生物が存在しているのだとか。
しかも、微生物の研究は、約350年前から行われていますが、地球上にいる99パーセントの微生物の正体はまだわかっていないと言います。
「だから微生物はお宝の山。微生物の能力を上手に利用して、地球環境を守るために使っていきたいです。僕たちは、そのために、日々、研究を行っているのです」
土の匂いの正体は、
微生物たちからのメッセージ。
今回のカルチャープログラムは、加藤先生たちが日々行っている研究プロジェクト「地球冷却微生物を探せ」(*)の一部を体験するというもの。この日は、加藤先生と共に、同プロジェクトの大久保智司先生、青木裕一先生も参加。今回のイベントをサポートしてくれました。
「早速、GINZA SIXの土を、顕微鏡でのぞいてみましょう!」
参加者のみんなは、小さなスプーンで、屋上の土を丁寧にすくいます。
「ぜひ土の匂いをかいでみてください。土の匂いの正体は、実は微生物が作り出す物質なんですよ!」
その後、参加者自身が採取した土を、60倍のハンディ顕微鏡で覗き込んでみました。微生物は見えませんでしたが、拡大された土は神秘的で、参加者は真剣に顕微鏡越しに土と向き合っていました。GINZA SIXの土以外にも事前に先生たちが、田んぼ、畑、川の土を用意してくれていました。これを顕微鏡で見てみると、同じ「土」でも大きな違いがあることを実感できます。なお、この時使ったハンディ顕微鏡は、おみやげとして、参加者にプレゼントされました。加藤先生からは、「土や葉っぱだけでなく、机の表面など、物質を見てみても新しい発見があるかもしれません」とアドバイスも。
さらに、土の表面にある藻のような部分を、1000倍の倍率の顕微鏡で見た様子がモニターに映し出されると、そこにはたくさんの小さな“何か”がうごめいていました。
「これが微生物です」
参加者は、身を乗り出してスクリーンを眺めていました。
「微生物のなかには、動かないヤツもいれば、早いヤツもいます。僕は研究に疲れると、微生物たちが動いている様子を眺めています(笑)」
参加者は、そんな加藤先生の言葉に耳を傾けながら、スクリーンを真剣に見つめていました。やがて、「彼らは何をしているの?」と参加者から質問が飛びます。すると、「それが知りたくて研究をしているんです」。
この日、この場所の空気は、
この瞬間にしか採取できない。
イベントの最後には、「銀座の空気を容器に採取する」という実験も行いました。それぞれの参加者が実験用の注射筒を使って採取したGINZA SIXの空気は、特製の桐箱に入れて、プレゼントされました。
え、空気のプレゼント⁉ 会場に少し不思議な空気が流れます。
「今日、この日の銀座の空気は、今しか採取することができません。数十年後、今日集めた空気や土は、たとえば、10年後に銀座の空気や土を調査する時、地球の環境がどう変わったかを知るための、貴重な手がかりになるんです」。と加藤先生が言う通り、ほんの少し前まで無意識に吸っていた空気は唯一無二のもの、もう二度と採取することはできないのです。
また、この日、みんなが採取したGINZA SIXのサンプルは、加藤先生たちが研究所に持ち帰り、しっかりと分析を行い、「どんな微生物がいたのか。その微生物はN₂Oを分解する力を持っているのか、みなさんにきちんとご報告しますね」(加藤先生)。
今日の司会をつとめたユージさんが最後にインタビューを行いました。この日の様子は後日、TOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」で放送されるとあって、子どもたちも少し緊張しながらマイクに話しました。
「土を研究するのが楽しかった。実験ははじめてだけどまたやってみたい、いろんなことを研究したい。」
この日、参加者は土のなかに、空気のなかに、重要な何かが存在し得ることを、実感して会場を後にしました。
「見えないものを見ようとする、聞こえないものを聞こうとする、その想像力が大事なんです」と、イベントの最中、加藤先生は何度か口にしていました。もしかしたら、そんな“見えない”微生物たちが地球の未来を守ってくれるかもしれません。
土も空気もロマンにあふれている──、そんなことを体感できるカルチャーイベントでした。
今回の分析結果はこちらからご覧いただけます
https://dsoil.jp/gsix
ABOUT SCUOLA GINZA SIX
「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、GINZA SIXが、2022年より、継続して開催している次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを行っていきます。
※SCUOLAとはイタリア語で「学校」という意味です。
*)ABOUT 市民科学プロジェクト「地球冷却微生物を探せ」
東北大学 大学院生命科学研究科 土壌微生物研究室では、市民科学プロジェクト「地球冷却微生物を探せ」(https://dsoil.jp/cool-earth/lab/)を展開。よりN₂Oの分解力が高い地球冷却微生物を探すために、一般の人たちに自分たちの住む地域で採取した土を研究室に送ってもらい、その中にいる微生物の種類や分解力などを調べています。現在も、一般の人たちの参加を募集しています。