世界へ発信するTea ceremonyを学ぼう
子どもたちは未来の伝統文化アンバサダーです。日本の伝統文化である茶道を学ぶことで、礼儀作法や心の落ち着きを身につけ、周囲との和を大切にする心を育めます。GINZA SIXによる次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」では、裏千家教授の竹田理絵先生をお招きし、子どもたちに向けた茶道体験を開催しました。
未来の茶道はよりグローバルに
Tea ceremonyとは何かを学びます
本日は、茶道を通じて日本の伝統文化を学びます。
教えてくださるのは、東京都神楽坂生まれの江戸っ子で、茶道師範のお母様をもち、幼少期から自然に茶道に親しんできた竹田理絵先生です。ブルネイ国王即位50周年のイベントでの茶会披露、フランスの凱旋門やニューヨークのタイムズスクエアでのお茶会など、世界に通じる茶の道「Tea ceremony」をわかりやすく伝え、注目されています。
「世界に飛び立つためには何が必要でしょう? 英語ができること? 勉強ができること? それも重要ですが、日本人として、日本の文化を理解し、身につけていることがとても大切です。日本文化にはたくさんの種類がありますが、なぜ今日は茶道を体験するかというと、茶室には、日本の伝統文化の全てが詰まっているからです」と竹田先生は語ります。そして茶室について解説してくれました。
「今日の掛け軸は宝珠。全ての願い事が叶いますよ、というおめでたい柄なんですよ。お花は生花。海外のフラワーアレンジメントは大きくて華やかですが、華道は少ない本数で自然美を表現します」。漆塗りや竹細工などのお道具や、民族衣装である着物など、茶室では様々な日本の伝統美を感じることができます。将来、日本人として自分たちが誇る文化を伝えられるよう、今日は、英語を交えての茶道も体験してみます。
千利休が説く和敬清寂を学び
心を清らかに静かに整えましょう
「さて、お茶はどこから来たのでしょう? お茶はもともと、中国から日本に渡ってきました。今から800年ほど前です。そして、茶道は日本の文化と結びついて、約500年前に千利休が完成させました」と先生は歴史を伝えます。
「皆さんがお家などで普通に飲む煎茶と、お抹茶はちょっと違います。抹茶は、5月の新芽が出る頃に黒い布をかけて、太陽が当たらなくなるようにします。そうすると葉っぱが柔らかくなり、甘味が出ます。新芽を手で摘んで、蒸して乾かして、茶臼で引いて粉にします。そうすると、茶葉そのもの、100パーセントを取り込むことができ、とても体に良いと言われているんですよ」。
千利休が生きたのは織田信長、徳川家康などがいた戦国時代。「通常、お茶室には、60cm四方の小さな入り口があります。躙口(にじりぐち)、と言います。武将は大きな刀を外に置いてしか、茶室に入ることはできません。どんなに身分の高い人も、頭を下げて入らなければならないお茶室は、平等で平和な世界なのです」と竹田先生。
千利休が大切にしている和敬清寂という言葉があります。「和」みんなで仲良く、「敬」敬い、「清」清らかに、そして「寂」はどんな時でも落ち着いた心でいることが大切、という意味です。
「お茶室の中はもちろん、いつも心の中を綺麗に。ということです。自分の心の中は見えなくて、埃が溜まりやすいですが、一日1回でも、お友達に優しくしてみようと思うと、心が澄んでいきます」
お茶を学ぶことは心を整えることでもあるのです。
「英語で表現すると『和』harmony、『敬』respect、『清』purity、『寂』tranquilityですね」
流れるように美しいお点前を拝見し
客人としてお茶をいただく体験を
「では早速、お点前をご覧に入れます。まずはこの赤い布、帛紗で綺麗に道具全てを清めます。道具だけではなく、私の心も精神統一をして、清めます」
と竹田先生は流れるように無駄のない動きでお茶を点てます。
「本日のお菓子はチョコレートケーキです。懐紙はお菓子を乗せる紙、この小さな木のナイフのような黒文字で一口サイズに切ってお召し上がりください」
茶道では、お菓子を召し上がった後にお抹茶を頂きます。
「お家ではお煎茶や紅茶などとお菓子を交互にいただくことも多いと思いますが、茶道では、甘いお菓子を先に召し上がっていただき、あとからお茶を飲みます。その方が、お茶を美味しく召し上がれると考えられています。和菓子でなくても、この濃厚なチョコレートが、お抹茶にとてもよく合いますよ」と竹田先生は語ります。子どもたちは席を移動し、客人となってお茶をいただきました。
「茶碗の正面には、美しい絵が描かれています。後ろには模様がありません。綺麗な模様を皆さまに尊敬の意味を込めてお出しします。お茶碗を右手で受け取り、左手の手のひらに乗せてください。右手でしっかり押さえて、「いただきます」の感謝の一礼をします」という先生のお手本に子どもたちも習います。
「綺麗な部分に口をつけては申し訳ないので、右に2回まわして、模様がないところで飲んでください。お茶碗の手触りや、抹茶の味を楽しみながら少しずつ楽しみましょう」。そして最後は吸い口と言って音を鳴らして飲むのが礼儀。
「茶室ではあまりおしゃべりをしたり、音を出しませんが、最後までいただきました、という声には出さない音を出すんですね」と竹田先生。音で相手にメッセージを伝えるのです。
今度はもてなす「亭主」として
お抹茶を点てることにもチャレンジ
実際に抹茶を味わって「苦かった」「お菓子が美味しかった」と様々な感想を語る参加した子どもたち。なかには「なんかちょっと薄い気がした」と答えた子も。
「いつも飲んでいるのかしら? 今日は子どもたち用に少しお抹茶を少なくして点てたんです。よく気が付きましたね」
と竹田先生も感心していました。
竹田先生のサロン、茶禅では茶道が初めての人でも美味しくいただけるよう、宇治の甘味の強いお抹茶をブレンドしています。
最後のお稽古は茶せんを手に、お茶を点てるチャレンジです。・お茶碗はTea bowl、茶せんはTea whiskなど、お道具を英語では何と呼ぶのかなども教えていただきました。
「お抹茶が2グラム。お湯は70度くらいで、100ccくらいの量です。先ほどの柄杓で半分くらいの量です。Tea whisk(茶せん)で、数字の1を書くように、手首のスナップを使って、点ててみてください。左に行ったり右に行ったり、全体がよく混ざるように。最後に表面のあたりも点ててから、大きく円を描くようにして静かに持ち上げます。うまくできたかな?」
お茶碗に手を添え、真剣に手をうごかす子どもたち。さあ、うまくできたでしょうか。点てたお抹茶を保護者さまにどうぞ、とお渡し。
お子さまの初めてのお抹茶でのおもてなしに、皆さん笑みがこぼれます。
誇らしげな顔の子どもたちからは「自分でお茶を点てられた!」「(茶道具が)おうちにもほしい。」といった言葉も。
竹田先生は語ります。
「1日で物知りにはなれません。日々の積み重ねが大切です。今日の茶道もその一歩です。この後も茶道から日本の文化を知りたいなと思うきっかけになったら嬉しく思います」
世界各国で茶道について発信する竹田先生ならではの、グローバルでわかりやすいレッスンでした。
ABOUT SCUOLA GINZA SIX
「SCUOLA GINZA SIX(スクオーラ ギンザ シックス)」は、GINZA SIXが、2022年より、継続して開催している次世代を担う子どもたちに向けたカルチャープログラム。「Enrich your creativity」をテーマに各界で活躍する一流の講師陣を迎え、カルチャー・アートを中心としたワークショップを行っていきます。
※SCUOLAとはイタリア語で「学校」という意味です。